現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2015年 5月 綺麗な水のための地球的運動

綺麗な水のための地球的運動

ジェイソン・フランシスによるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏へのインタビュー


ウォーターキーパー運動は、世界の河川や海岸をパトロールし保護する非営利団体の地球的ネットワークである。ウォーターキーパー運動のウェブサイトは、このような地域の団体について次のように述べている。「ウォーターキーパーは、水上で汚染者を追跡中でも、環境法規のより強い実施を求めて法廷で弁護していても、タウンミーティングで地域の支援を呼び掛けているときでも、教室で若者に教えているときでも、彼らが守る水のために声を上げている」
ウォーターキーパー同盟は、この地球的な運動を世界中の多くのウォーターキーパーたちと連帯させ、彼らに手段を提供するために、1999年にウォーターキーパー運動の一部として設立された。ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、ウォーターキーパー同盟の代表である。彼はまた、自然資源保護会議の上席弁護士であり、ニューヨークのペース大学法学部の環境法の教授でもある。ジェイソン・フランシスが、本誌のためにロバート・F・ケネディ・ジュニア氏にインタビューした。


シェア・インターナショナル(以下SI):地域のウォーターキーパー団体は、世界中に幾つあるのでしょうか。

ロバート・F・ケネディ・ジュニア:29カ国に、252の地域のウォーターキーパー団体があります。パトロールされている水際の全長は200万マイルに及びます。

SI:ウォーターキーパーが実際に汚染者を捕まえることは、どのくらいあるのでしょうか。
ケネディ: よくあることです。それは、パトロールする水路にもよります。ウォーターキーパーの役割として、汚染パトロールの重要度が低い水路もあります。役割としては、水のサンプリングや教育機能が考えられます。ある成功しているウォーターキーパーのグループは、汚染パトロールを全くしていません。なぜなら、汚染はその地域の問題ではないからです。そこでの問題は、土地の使用法、漁獲量の割り当て、地元のロブスター漁師と他の漁師との関係です。その地域は、綺麗な水を得ることに真剣に取り組んでいます。そのため、問題は汚染源を無くすことではなく、すべての人が共に働き、給水システムがどのように機能しているかを理解するようにすることです。そして規制当局が、水路の保護に十分なリソースを確実に割り当てるようにすることです。

SI:汚染者が分かった場合、ウォーターキーパーは次に何をするのでしょうか。
ケネディ: 汚染者にアプローチして、何が起こっているか、なぜ彼らは汚染しているのかを突き止めるかもしれません。それは状況にもよります。誰かが設置したパイプが汚染源であり、彼らに明白な故意や悪意がある場合、私たちは汚染者に対して直ちに手紙を送るかもしれません。苦情を申し立てる前に、法律に従い、(連邦)水質浄化法、または資源保全再生法などの他の環境的な立場に基づき、彼らに60日間の通告期間を与える必要があります。汚染の種類にもよりますが、一般的には意向表明書を送付します。60日経過後に苦情を申し立てます。

SI:1972年に可決された水質浄化法は、アメリカの水路を保護する上で具体的にどのような影響がありましたか。
ケネディ: 水質浄化法は多大な影響が、ある領域では重大で即座の影響がありました。多くの主要な産業的な排出が一掃されました。例えば、1969年に8階の高さの火災が発生した(オハイオ州の)カヤホガ川です。ニューヨーク州、タリータウンのゼネラル・モータースの工場でトラックがどのような色のペイントで塗装されるかによって、アメリカの川は色を変えていました。国中に産業廃棄物の運搬路になっている川がありました。そして水質浄化法は、そのような状況をほとんど瞬時に終わらせました。
水質浄化法のもう一つの成功は、アメリカの地方自治体に、下水処理場で最大で85%の汚染物質の二次処理ができるように下水処理場を改新させたことでした。それ以前は、汚染物質の約30%しか除去されていませんでした。水質浄化法は、同様に他の多くの成功を収めました。
水質浄化法には、多くの失敗もありました。私たちは、発電所の取水口での魚の大量死を止めることができませんでした。発電所の取水口では、大西洋と太平洋で1年に1兆匹近くの魚が殺されています。雨水排水に関しては、それほど多くの成功はありませんでした。これらの失敗が続いている理由は、最初の法律が大規模な汚染者の政治的影響力によって損なわれていたことです。最初の法律はすべての汚染者が1984年までに水質汚染を終わらせることを想定していましたが、それは実際には起こりませんでした。

SI: 水路に入る主な汚染源は何でしょうか。
ケネディ: 最大の汚染源は畜産業、特に工場式畜産農場です。(大量の動物を狭い空間に閉じ込める)いわゆる集中動物給餌操作からと、石炭を燃やす火力発電所から、そして石炭の全ライフサイクルからです。石炭は、おそらくアメリカで最も深刻な水の汚染源です。汚染は山頂除去の露天掘り、石炭の運搬、選鉱、流通から、また同様に採掘作業に付随する巨大な懸濁液のため池や、石炭の燃焼に関連した灰の池などからも発生します。石炭を実際に燃やすことは、酸性雨だけでなく水銀によっても水を汚染しました。最近のFDA(食品医薬品局)の研究は、アメリカの多くの淡水魚が危険な水準の水銀を体内に持つことを示しました。

ウォーターキーパーのキャンペーン

SI:ウォーターキーパー同盟の気象イニシアチブとは何でしょうか。
ケネディ: それは、私たちのすべての水路にとって気候変動が最も大きな脅威の一つであることを認識することです。生存にとっての最大の脅威ではないとしてもです。私たちの水路の多くは、雪解け水と降雨に依存しています。もし水を使い切ってしまうと、他のすべての問題は二次的なものになります。また海面上昇は、沿岸湿地帯と漁獲地域に影響を、特に世界中で巨大な漁場である河口に影響を与えます。多くの初期のウォーターキーパーは河口を保護しています。
海面上昇は、水域の生物学的健全性にだけではなく、水域に依存している地域社会にも深淵な影響を与えています。このようなすべての地域グループはこれを認識しており、化石燃料のコストを上昇させることによる気候変動に対する地域での取り組みや、石炭や石油を使用する工場でコストを内部化さる活動を調整することで、より競争力があり効率的な再生可能燃料への道を開くことに同意しました。また地域グループは、国内や国外のグループと共同して気候変動に取り組み、これらの選択肢やクリーンなエネルギーの経済への移行を奨励しています。2015年12月にパリで開かれる国際気候変動会議では、気候変動の世界的に著名な活動家であるジェイコブ・シェール氏がわれわれの代表となります。また彼は、米国連邦議会で、気候変動問題に関して私たちの声を伝えています。

SI:ウォーターキーパー同盟のクリーンで安全なエネルギー・キャンペーンについて、お話しいただけますか。
ケネディ: クリーンで安全なエネルギー・キャンペーンは、地域の石炭を使う工場や、他の汚染源の工場にコストを内部化させるための運動です。例えばノース・カロライナ州には11の石炭火力発電所があり、巨大な灰の池が公共の水路に脅威を与えています。しかし、その石炭エネルギーは、補助金を得ているためにコストを下回って安価に販売されています。私たちの努力の一部は、国中の石炭火力発電所に対する訴訟をまとめることで、外部化によって彼らが一般大衆に払わせてきたコストを内部化させることです。

SI:あなたは、企業畜産農業が水質汚染の主要な原因であると言われました。企業畜産農業の活動は、水をどのように汚染しているのでしょうか。

ケネディ: 私たちは、工場式畜産農場による汚染に取り組んできた指導的グループの一つでした。工場式畜産農場は、アメリカでも最も大きな栄養素汚染源の一つであり、膨大な量の廃棄物を排出しています。例をとると、スミスフィールド食品の工場の一つでユタ州にあるサークル4は、80万匹の豚を飼っています。それぞれの豚は、人間の10倍の重量の糞便を排出します。つまり、80万匹の食用豚を持つ農場は、ニューヨーク市のすべての人間と同じ量の汚物を毎日出すのです。ニューヨーク市が汚物の処理のために10億ドルのコストをかけて14の下水処理場を建設したのに対して、サークル4は下水処理場を持っていません。すべての廃棄物を単純に環境に捨てているのです。そして環境や健康への影響という意味では、人間と食用豚の廃棄物は何の違いもありません。
スミスフィールド食品は政治的な影響力を行使して、環境法規の複雑さと自由市場の規律を回避することができました。家族農業者は、実際にはこのような大規模な工場式畜産農場よりも効率的に食用豚を育てることができます。工場式畜産農場が市場で機能できる唯一の道は、大規模な事業者が利用可能な巨額の補助金を得ることです。それには、環境に対して廃棄物を単純に投棄する権利が含まれています。

SI:ウォーターキーパー同盟は、こうした懸念にどのように取り組んでいるのでしょうか。
ケネディ:? 私たちは工場式畜産農場に対して訴訟を起こします。彼らに法律を実際に順守させるように努力しています。私たちは大きな成功を収めてきました。政府機関が工場式畜産農場への許可証を作成する際に従わなければならない規約があります。例えば、工場式畜産農場は廃棄物を長年原野に投棄し、それを肥料と称し、従ってそれに対する許可は不要であると主張してきました。水質浄化法には、肥料に対する免除条項があります。彼らは、原野に廃棄物を肥料として投棄していると主張してますが、実際には多すぎる肥やしを原野に置いていることになり、ノース・カロライナ州ではバーミューダ・グラスしか育たないのです。もし牛がその領域に入り草を食べたとすると、その牛は死んでしまうでしょう。
工場式畜産農場を規制する州の環境当局は、それが規制する産業に対する専属代理店のようになっていました。こうして彼らは茶番を続けていたのです。私たちは連邦裁判所に告訴しました。連邦判事は、それは肥料ではなくごみの処理であると言いました。工場が野外にごみを捨てるようなものです。それは法律に違反しています。彼らは、産業廃棄物を処分する他のすべての工場と同じ基準に置かれる必要があります。ですからこの訴訟は、このことに終止符を打ちました。その結果、スミスフィールド食品は、ビジネスのやり方を劇的に変えざるを得ませんでした。

SI:ウォーターキーパー同盟の教育アウトリーチ活動について話していただけますか。
ケネディ: 私たちは、ストラウド水研究所と一緒に高校のカリキュラムに取り組んでいます。そこでは、生徒たちは地元の水流や水路の、最先端のテクノロジーを用いた生態学的な基準値検査を行います。高校のクラスでは、水流を選び、私たちが『リーフパック』試験と呼ぶものを行います。生徒たちは水流中の石の下に、葉を詰めた布袋を置きます。生徒たちは数週間後にそこに戻り、布袋に付着した動物プランクトンや植物プランクトンや細かな無脊椎動物を取り除き、それらを数えます。それらの割合により、単にpHのサンプルを取ったり化学的な検査を行うよりも、水質をずっと正確に測定することができます。
例えば、カゲロウ、トビケラ、トンボの幼虫が相当な数で生息している場合、そこが実際には健全な水流であることが分ります。なぜなら、これらの無脊椎動物の種類の割合がどうあるべきか知られているからです。一方、無脊椎動物の大部分がイトミミズ属の昆虫である場合は、深刻な水質の劣化があることが分かります。生徒たちは自分たちの水流と、生徒や科学者が同じ手法を用いる世界中の何千もの水流を比較することができます。私たちは、こうして生徒たちと共同して世界のすべての水流の基準値を確立しており、その過程が教育にもなっているのです。

SI:ウォーターキーパー同盟がここ数年で達成した成功例を挙げていただけますか。
ケネディ: サンタモニカ・ベイキーパーは、カリフォルニア運輸省に対して数百万ドルの訴訟に勝訴し、太平洋の海岸に放出され、海水浴客、サーファー、水路を使う人々を不快にさせてきた雨水排水を浄化させるようにしました。チャタフーチー川キーパーは、ジョージア州アトランタ市に対して、チャタフーチー川に下水を放出していたことに関し、数百万ドルの訴訟に勝訴しました。アトランタ市のプランナーは、市の下水処理施設の改良に10億ドルを費やしました。ハドソン川キーパーは、ニューヨーク市に対してキャッツキル山地の貯水池の保護に10億ドルを大幅に超える金額を使わせました。ニューヨーク市は処理施設とインフラを改良しました。例をさらに挙げることもできます。

SI:市民に綺麗で健康的な水を提供するために、政府はさらに何をする必要があるのでしょうか。
ケネディ:政府が実行できる最も重要なことは、連邦の選挙運動資金法を改正することです。石油企業や他の大規模な汚染者が選挙運動で10億ドルもの資金を使用できる限り、これらの環境法規は、どれも役に立ちようがありません。アメリカには非常に良い環境法規がありますが、問題は強制力がないことです。強制力がない理由は、汚染者が選挙運動資金法を用いて規制当局を取り込み、専属の代理店のようにしてしまったからです。つまり、民主主義が機能していないのです。私たちは、選挙運動資金法を改正する必要があります。


詳しくは次を参照: www.waterkeeper.org

?

?