現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2007年 6月 力強い瞬間

力強い瞬間

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フェリシティ・エリオットによるアービン・ラズロ博士へのインタビュー
アービン・ラズロ教授はローマクラブの共同設立者であり、ブダペストクラブの会長である--この二つの団体は「持続可能な世界への転換を目指した」活動に専念している。システム哲学者、場の理論家として彼が提唱したいわゆる「第五の場」は、科学だけでなくすべての社会システムに対して広範囲の現実的な影響を及ぼしている、宇宙と意識の統合的な量子場について描写するものである。ラズロ博士にとって、科学と哲学はぴったりと符合する。私たちは是非とも、世界とすべての生命とを相互に連結したものと見なし始めなければならない。ラズロ博士はシステム哲学と総合進化論の分野の第一人者の一人であり、70冊以上の本と400本の論文を発表してきた。『ワールド・フューチャーズ:総合進化ジャーナル』の編集者でもある。
その多くの著書の中には、『マクロシフト--「見えざる手」の終わりと、サステナブルワールドの始まり』、『あなたは世界を変えることができる:21世紀のための行動ハンドブック』、『カオス・ポイント--持続可能な世界のための選択』などがある。
哲学と未来学の教授としての長い学問的な経歴をもつラズロ博士は、米国、欧州、極東の多くの大学で教鞭をとり研究を行ってきた。クラシック音楽のピアニストでもあり、数曲のピアノ協奏曲の録音も行っている。博士はイタリアのトスカーナ地方に住んでいる。?
フェリシティ・エリオットが本誌のために電話でインタビューを行った。
「人類は崩壊してカオスへと陥るのか、持続可能で倫理的なグローバル共同体へと進化するのか、その選択に直面している。 世界に違いをもたらすこれほど力強い瞬間は歴史上かつてなかった」

記事や本を書いているにせよ、インタビューに応じているにせよ、アービン・ラズロ博士は、自分が語るすべてのことに穏やかな緊急性という調子を持ち込む。インタビューが始まってすぐに、私はこのことについて彼に尋ねた。彼は私たちの個人的、集合的な生命を構成するプロセスについて話し、それらがいかに崩壊しつつあるかを描写した。「方向を変えない限り、行き着く先も変わらない」という中国のことわざを知っているでしょう、と彼は語った。
変化の必要性はどれほど差し迫っているのかと彼に尋ねたとき、彼は写実的に答えてくれた。
アービン・ラズロ:もうあまり時間がありません。安全である方がいいのですが、私たちは崖っ縁にだんだん近づいています。縁に近づき過ぎればどうなるかご存じでしょう。足場を失い、滑り始め、這い上がってくるのが非常に難しくなります。
自分自身や他の多くの研究者の予測によると、私たちは重大な変化を起こさなければならない --次のおよそ5年以内に本当に方向転換をしなければならない--とラズロ博士は語った。その上、様々な部門からあらゆる種類の警告が発せられ、変化が促されている。
シェア・インターナショナル(以下SI):幾つか特定の例を挙げていただけますか。
ラズロ:一つには、大衆意識に変化が生じているように思えることであり、それが私たちに変化を予感させます。
私たちの環境は危機的な状況にあり、何かをしなければならないという非常にはっきりとした警告を発しています。真剣に受けとめる必要がある気候関連の問題について私たちは毎日耳にします。こうした気候変動は、膨大な範囲に及ぶすべての地域社会の暮らしを脅かしています。実際に、もし私たちの惑星が苦しんでいるとすれば、気候変動は私たちすべてに影響を及ぼしています。これは、私たちが認識しなければならないことです--つまり、すべてが相互に連結しているということです。私たちはこの事実を受け入れ始めています。
水不足があり、干ばつはより頻繁により長期にわたって起きています。農家は食糧を生産するのに四苦八苦しています。砂漠は広がっています。汚染が恐ろしい問題になっています。
私たちが目にしているもう一つのプロセスは、ますます増大しており持続させることが不可能な、富裕層と貧困層の格差、富の偏在です。世界の最も大きな都市の多くに見られる貧困のレベルと人口の過密ぶりもご覧になってください。
ですから、もしこうしたプロセスのどれか一つを取り上げ、本当の事実を直視し、その事実から推測するならば、このようなやり方を続けていくことができないのは明らかです。それは不可能です。そのようなわけで、私や他の多くの人々は、私たちが決定的な瞬間を迎えており、根本的な変化をもたらす時がいよいよやって来たと言っているのです。問題は、一部の専門家と一部の政治家が、それぞれの問題をいまだに別々に取り扱うことができると考えていることです。一時期に一つの問題を取り上げ、それを解決し、それから次の問題に移っていくことができると信じています。
SI:しかし、あなたはそうした取り組み方に同意しないのですね。
ラズロ:はい、そうです。それは現実的でありません。すべてのものが相互につながっています--これらすべてのプロセスがつながり合っています。一つの分野での堕落や破壊は、他のすべてのシステムに影響を与えます。地球温暖化、化石燃料の使用、燃費率とCO2排出量、健康や食糧自給能力への影響を考えてみてください--私たちの子供や孫たちに、生きた惑星を残してやらなければならないのは言うまでもありません。しかし、私たちは経済のために、惑星を、健康を、子供たちを犠牲にしているのです。
SI:特定の科学者が次のように言っているのをあなたはもちろん知っていますね。気候変動は一部の者が騒ぎ立てるほど深刻ではなく、誇張されており、破滅論者の言い分にすぎない、と。このことをどう思いますか。
ラズロ:誰かを名指ししたくはありませんが、私は偶然、特定の権益集団が環境破壊、気候変動、汚染に関する情報が公開されないよう議会工作を行っているということを事実として知っています。地球温暖化という発想の誤りを暴くことで報酬を得ている科学者もおります。またしても利益が動機となっているのです。
SI:あなたの記事や本を読んで気づいたのですが、あなたは一般的な生命観とはかなり異なった生命観を持っておられますね。さきほどもそれに触れて、すべてのものが相互に連結しているという考えに言及されました--もっと詳しくおっしゃっていただけますか。
ラズロ:実を言うと、このことが分からない人がいるとき、私はいつも驚くのです。それは私にとって非常に明白であるように思われます。すべてのプロセス、すべてのシステム、すべての生命--すべてのものが相互に依存し合っています。一つの場所で起こることは、他のところにもその影響を及ぼします。私たちはこのことを、量子物理学を通して今では科学的に知っておりますし、古代哲学を通して何世紀もの間知っておりました。それが毎日あらゆるレベルで起きているのを目にします。
宇宙には「非局在性」というような事実があることを理解しようとしています。非局在性とは、先程申しましたように、すべてのものが相互に連結していることを意味します。この原則は「干渉性」とも描写することができます。分子は何らかの媒体を通して他の分子がしていることを「知っている」ようです--これが「非局在性」という言葉で私が言おうとしたことです。さらに、情報はどんな距離をも超えて「即座に」知られたり転移したりします。それは、私たちが時間と空間を新しい方法で見始めている--超越しようとさえしている--ことを意味しています。これは、惑星において真実であり、宇宙において真実であり、私たち人間にとっても確かに真実であります。
SI:このことは、私たちが地球上の他のすべての生命とどのように関わり合うか、そして他の人々とどのように関わり合うかということに関して、とてつもない意義を持っていますね。
ラズロ:はい。私の著書『カオス・ポイント--持続可能な世界のための選択』で、私は新しい倫理の必要性について述べました。
SI:新しい倫理の基盤となるのは何でしょうか。それはすべての人に訴えかけなければならないもの、宗教的、人種的、民族的な相違を超越しなければならないものではないかと思います。
ラズロ:それに相当するものがたいていの宗教に多くあるのは確かですが、すべての人が宗教に関わっているわけではありません。その上、新しい倫理は和合をもたらすべきです。「お互いに干渉せずにやっていく」という古い考えは、他の多くの倫理規定と並存してきましたが、今では欠陥のある考えになっていると思います。それは寛容をほのめかすと同時に、無関心もほのめかしています。今後もこの考えを取り入れていくならば、非常に豊かな人々が貧しい人々を無視しながら現在のような生活を続けていくのは許容できることだと合図していることになります。それは、一部の人々が森林を破壊し、空気や河川を汚染し、海で魚を乱獲し、同胞を搾取することは大目に見られるべきだということを意味しています。私たちに必要なことは、他のすべての人がまっとうに暮らせるよう生活を簡素化することを学ぶことです。
SI:それを聞くと、ガンジーが言ったことを思い出します。
ラズロ:はい、ガンジーはこう言いました。「他の人々が生きることができるよう簡素に生活しなさい」と。私たちの必要を満たすのに十分なものだけを使用する必要があります。生活様式を簡素化しなければなりません。私たちの生活の礎として競争から協力へと移行することが絶対に必要です--個人的にもそうですし、まさしく私たちのすべての制度に関してもそうです。
SI:あなたは生活水準の喪失、生活の質の低下を支持していると懐疑論者たちが反対しているようですね。
ラズロ: いいえ、そんなことは全くありません。私が主張しているのは、量ではなく生活の「質」を向上させることです--純粋に物質的な満足から移行することです。幸せになるために私たちが本当に必要とするものは何でしょうか。私たちが毎日必要とするものは何でしょうか。
SI:人々--「普通の人々」--が同意し、生活を簡素化したいと思うでしょうか。
ラズロ:何百万もの人々がひどい貧困の中で生活しています。実際、それが私たちを変化へと駆り立てている要因の一つです。私たちが現在行っている不公正な富の分配は持続不可能なものです。ですから、何百万もの人々が変化を望んでいます。さらに、「文化的に創造力豊かな人」と呼ばれる人々が何百万もおります--環境、地域社会、より大きな利益--民富--の保護という原則に基づいて生きる理想主義的な人々です。彼らはどのように生活すべきかについて気を使い、すべての人にとってより良い状態を要求します。彼らは物質主義的ではなく、彼らにとっては生活の質が根本的な基準となっています。
私たちは誇大な過剰消費を持続させていくことはできません。経済成長の目標には疑問の余地があります。現在のあらゆるシステムは貪欲によって駆り立てられています。それは持続不可能なものです。
SI:私たちはグローバルな経済的、財政的なシステムを持続させることができると思いますか。
ラズロ:いいえ、できないでしょう。経済は、少なくとも表面的には適正な形を保っているように見えますが、非常に多くの専門家や国際通貨基金(IMF)自体も(例えば2005年度『経済見通し』の中で)「調整」が時間の問題だけであることを示唆しています。それは唐突な調整になるかもしれません。
この時点で私は、一般に信じられている考えを反映する幾つかの言葉についてラズロ博士に意見を求めた。最初の言葉は次のとおりであった。「私は一人の小さな個人にすぎない。変化を起こすことなどできない」
ラズロ:これは、あなたが一人きりであり、分離しているという考えに基づいていますが、それは真実ではありません。あなた自身がその変化になることができるのです。あなたは変化を起こすことができますし、他の人々と一緒に働くならば、さらに力強くなり、社会にはるかに大きな影響力を及ぼすことさえできます。最近では、非常に簡単に他の人々とつながり合うことができます。
SI:「市場が決定を下す。市場の力が利益を分配するのであり、トリクルダウン理論はうまく機能している」
ラズロ:そこには、人生とはすさまじい苦闘であるという考えがあります。それはもちろん、私たちが熾烈な競争によって支配されているということを意味しています。その考えはまた、私たちが他の人々の悲惨な境遇を何かと理由をつけて放っておくのに役立ちます。それはある意味で、慰めになる神話です。しかし、それは神話にすぎません。
SI:「大量消費は良いことだ。持つものが多ければ多いほど幸せになれる」
ラズロ:実施された調査の結果を吟味すると、面白いことが分かります。富裕層は自分の裕福さによってより幸せにはなってはいないようです。すべての人が志向すべき偉大な目標としてアメリカンドリームを掲げている世界で最も強大な国においても、物質的には非常に幸福であるにもかかわらず、かつてないほど多くの人が意気消沈し、不満を抱え、自分自身や自分の生活のことをよく思っておりません。なぜそうなのかを問わなければなりません。
他の人々も生きることができるような方法で私たちも生きることができるよう、個人としても、相互連結した社会としても、自分たちがどのように移行できるかを真剣に考えていく必要があります。すべての人が安全に暮らすことができるような、信頼で満ちあふれる世界をどうやってつくることができるのでしょうか。誰も疎外されず、飢えることがない世界、医療を必要とするすべての人が医療を受けることができる世界、自分の地域社会がどのように運営され、何が優先事項となるべきかについてすべての人が意見や発言権を持っている世界です。政治家や公務員が本当に国民に奉仕することを確実にするために、私たちには何ができるでしょうか。私たちはどのようにして惑星を救い、どのようにして空気を吸い、水を飲むことができるでしょうか。自然を搾取するのではなく自然と共生することが、どのようにしたらできるでしょうか。
今こそ、私たちは是が非でも変わらなければなりません。私たちは知識を持っており、変化は可能です。私たちは崩壊してしまうのではなく、前進していくことができますが、今こそ行動しなければなりません--この瞬間を力強い瞬間とすることができるのです。
詳しくは:www.clubofbudapest.org

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