現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2013年 6月号 若者の暴力に代わるものを提供する

若者の暴力に代わるものを提供する

ダイアン・ラティカー氏とのインタビュー
ジェイソン・フランシス

“キッズ・オフ・ザ・ブロック:Kids Off The Block”(子供たちにスラム街の外の社会を体験させる)は、イリノイ州シカゴに拠点を置く非営利組織であり、“一度に一人ずつ、若者に暴力を止めさせることに”専念している。その組織は2003年にダイアン・ラティカー氏によって設立され、低所得層の若者たちが曝されている犯罪組織、麻薬中毒、不登校、暴力などの危険な生活や少年司法システムに代わるものを提供している。ラティカー氏は組織設立のための最初の基金作りのために自分のテレビを売り、彼女の自宅に若者たちのコンピュータ・ラボを設えるためにダイニング・テーブルと椅子を売り払った。CNN、『アルジャジーラ』、『ザ・ガーディアン』、『シカゴ・トリビューン』を含むいろいろなメディアが、“キッズ・オフ・ザ・ブロック”についての特集を組んでいる。2011年に、CNNにより“今年のトップ・テン・ヒーロー”の一人にラティカー氏は選ばれた。ジェイソン・フランシスが、本誌のためにダイアン・ラティカー氏にインタビューした。

シェア・インターナショナル(以下SI):“キッズ・オフ・ザ・ブロック”を形成するために、あなたに影響を与えたのは誰ですか。

ダイアン・ラティカー:私の娘アイシャと私の母親、そして宣教師のルース・ジャクソン氏です。私は8人の子持ちです(4男4女)。アイシャは最後の子供で、13歳でした。彼女を元気に育てるために、彼女と彼女の友達をスケートや水泳、映画や他の遊び場へよく連れて行ったので、彼女たちは外でのトラブルに引き込まれることはありませんでした。私の母はそのことを見ていて、「あの子たちはあなたのことが好きで、とても慕っている。彼らと共に何かするべきよ」と言っていました。私は何かをしたいとは思いませんでした。アイシャが大学へ行けば、私は5年間、自由になると思ったのです。後は何もないのです。

SI:“キッズ・オフ・ザ・ブロック”が提供しているのは、どのような種類の奉仕活動ですか? また、一人の若者を建設的な子供育成活動に関与させることは、彼らの成長にどのように役立つのでしょうか。

ダイアン・ラティカー:奉仕活動には、個別指導、助言者としての指導、音楽、ドラマ、スポーツ、一般教育資格取得への準備(GED)、リーダーシップ研修、そして紛争解決が含まれています。若者たちをレクリエーション活動に関与させることは、彼らにとって非常に重要なことなのです。彼らは、これらの活動を通して自分たちのエネルギーを解放するだけではなく、自分たちは何かに属していると感じることができ、また、自分自身を快く感じられるのです。

SI:あなたの組織は、どのくらいの数の若者たちを支援しているのですか。

ダイアン・ラティカー:日によって違いはありますが、平均25人~45人位の若者たちが毎日参加しています。去年、私たちが支援したのは、300人以上でした。

SI:なぜ子供たちは、犯罪組織や麻薬、および不登校などの危険に陥るのでしょうか。これらの若者たちの生活において、両親や親戚たちは一体何をしているのでしょうか。

ダイアン・ラティカー:若者たちが犯罪組織と接触したり、他の反社会的な行動に巻き込まれるのは、十分な家族の支えがないか、全くないために指導も受けられず、成長を促す環境条件もなく、そして最も大切なのは十分な愛が与えられないためです。若者たちの家族は、子供たちよりも遥かに劣悪な状態に置かれています。彼らは、貧困、失業、貧弱な教育、親の役目を果たすスキルのなさ、麻薬、生活指導のない日常と向き合っています。

SI:あなたのもとへやって来る子供たちの経済状況はもちろんのこと、感情情緒面や精神状態はどのようなものでしょうか。

ダイアン・ラティカー:私たちが関わっている若者たちは、全員が極めて低い貧困ライン以下の生活を送っています。彼らのマインドは、必死に生き延びようとする状況にいつも置かれています。彼らはこの状況から抜け出そうとしますが、彼らが知っている唯一の方法は、麻薬取引きか誰かを襲って強奪することです。

SI:“キッズ・オフ・ザ・ブロック”を開始するのに必要な資金を作るために、あなたは自分の私財を売却しました。現在は、他の資金源を持っていらっしゃるでしょうか。

ダイアン・ラティカー:すでに10年が過ぎましたが、今でも財政支援不足に悩んでいます。ボランティアや私には、給与がありません。個々人からの寄付と自分たちのポケットマネーで、どうにかやり繰りしています。

SI:あなたの組織とともに働いている若者たちの人生にとって、社会奉仕はどのような重要性を担っていますか。

ダイアン・ラティカー:社会奉仕はとても重要です! とても重要なので、私たちは、自分たちの居住区や近隣地域の清掃など、すべての地域プロジェクトに若者たちが確実に関われるようにしています。与えることについて、自分の仲間たちへの指導や高齢者たちへの援助、および休日の食事提供などについて、私たちは若者たちに教えます。

SI:地元の学校や市民団体、およびコミュニティーのメンバーたちは、あなたの組織に対して協力的ですか。

ダイアン・ラティカー:はい、若者たちが目標を達成するためのあらゆる手段が確実に利用できるように、私たちは多くの組織と提携しています。

SI:若者たちの帰属意識や相互依存の感覚、さらに世界に貢献できる役に立つ手段を持っているという自覚を与えるために、家庭や学校、およびコミュニティー全体として、適切な基盤を提供することは非常に重要だと思われますか。

ダイアン・ラティカー:「一人の子供を育てるには、一つの村全体が関わる必要がある」という諺は、実行すべき真実です。一人一人の子供のための総合的な受け入れ態勢を、私たち全体が創造する必要があります。自分たちが一人ではないこと、また、コミュニティーが自分たちの世話をすることを子供たちが知っている、このことを確実にする必要があります。

SI:旅行をすることによって、スラム街から離れた別の生活を体験する機会を若者たちに与えることの重要性についてはいかがでしょう?

ダイアン・ラティカー:若者たちを、彼らの現在の環境の外へ連れ出すことはとても大切です。自分たちのスラム街以上のものが、自分たちの生活にあることを、彼らは学ばねばなりません。現在までに20以上の都市を訪問しました。自分たちのスラム街の外に出た時に彼らがどんなふうに反応するか、見ていると驚きます。

SI:若者たちが犯罪組織や不登校、および麻薬の罠に落ちた時に、多くの人々は彼らに見切りをつけてしまうのでしょうか。

ダイアン・ラティカー:そのとおりです! 彼らを救う価値などないと私は繰り返し言われてきました。悲しいことに、若者たち自身がこれを自覚しているだけに、絶望的です。

SI:誰かが世話をし、愛情を与え、尊重し、新しい生活が可能であることを若者たちに理解させる時、若者たちの態度はどのように変化しますか。

ダイアン・ラティカー:簡単には説明できません。彼らの目は輝き出し、周りの世界に対して以前よりも前向きになり、より重要味を帯び、そのことを彼らの仲間たちに広めます。彼らは感謝の気持ちを表すために、それを教えてくれた仲間に対して献身的になります。本当に驚きます。このことが私を前向きにさせてくれるのです。

詳細:www.kobchicago.org