現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2010年 9月 地球の友になる

地球の友になる

ジェイソン・フランシスによる エーリッヒ・ピカ氏へのインタビュー

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「Friends of the Earth(FoE)(フレンズ・オブ・ジ・アース:地球の友)」は1969年に設立され、ワシントンDCに拠点を置く非営利組織である。それは、「FoE International」の一部門であり、77カ国のグループと、5,000を超える地方の活動家グループが、より健康で正しい世界を創造するために一緒に働いている一つのネットワークである。世界中の200万を超えるメンバーと支持者たちと共に彼らが焦点を置いている活動は、地球温暖化に対する解決策としてのクリーンエネルギー、潜在的に有害性を持つ技術からの人々の保護、低公害輸送の促進、開発途上国における貧困撲滅と気候変動プログラムへの基金源としての、金融取引税(導入)の支援活動が含まれている。(国際的な環境汚染の削減、そのための規制に対する)エネルギー助成金の国際的なエキスパートとして知られているエーリッヒ・ピカ氏は、「FoE USA」の理事長である。ジェイソン・フランシスが本誌のためにインタビューした。

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シェア・インターナショナル(SI):「FoE USA」が現在関わっている幾つかのプロジェクトについて、話していただけますか?


エーリッヒ・ピカ:私たちが現在実施している最も大規模なキャンペーンの一つに、気候変動に関する国際的な交渉と連結している「気候正義キャンペーン」があります。背景の主だった論点としては、「FoE International」のほとんどのグループは、発展途上国に対するクリーンエネルギーへの転換と、気候変動に適応するための重要な基金提供を始めとして、地球温暖化ガス削減の重要性を強調する一連の気候変動・行動指針に同意してきたのです。これらの財源を利用可能にすることに加えて、米国と他の先進国は、開発途上国よりも地球温暖化ガス放出をもっと大規模に削減する必要があります。
これらの行動指針を実行に移すべく、過去数年の間、「FoE International」と「FoE USA」は、コペンハーゲンやボン、その他どこであれ、国際的な気候変動条約の交渉が行われている、国連主催のいろいろな会議へ活動家を送ってきました。ヨーロッパ、米国、アフリカ、南米、そしてアジアからの活動家たちは、これらの会議において開発途上国の要求を代弁します。気候変動に適応するための基金作りと同様に、気候変動緩和に対して非常に積極的な姿勢を推し進めることを確実にするために、私たちは開発途上国にも中央政府と共に働く活動家を持っています。
米国にいる活動家たちは、米国政府にさらに多くの基金提供と、現在、米国議会にて論議されているエネルギー法案の制定においてより先見性を持つように、圧力をかけています。これらの多角的なキャンペーン活動は、さらに強固な排出規制や融資目標に対して、かなり大きな声を国際舞台においてつくり出します。

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SI:「FoE」が過去に成し遂げた幾つかの成功例にはどんなものがありますか。


エーリッヒ・ピカ:「FoE USA」は2002年、カリフォルニアにて、乗り物に対する最初の地球温暖化ガス放出規制法となったパブレイ法(Pavley Law)の法案作成を支援しました。オバマ大統領はつい最近、乗り物に対する地球温暖化ガス標準を米国法として制定しました。「FoE」の活動家たちは、米国陸軍工兵隊に反対し、無数の河川が堰き止められて流れが変わるのを防ぐために、過去において200以上のダムと堤防建設を阻止しました。
私たちの最初の戦いの一つは、超音速旅客機が開発されるのを止めることでした。超音速旅客機プログラムは、政府基金による旅客用航空路線の研究であり、音速よりも早く移動する旅客機の一団を形成する計画でした。私たちは環境とオゾン層破壊への影響に基づいて反論を繰り広げ、その戦いに勝ちました。
私たちはあらゆる努力を注ぎ、「緑の鋏キャンペーン(Green Scissors campaign)」と呼ばれる多くのキャンペーンを実施してきました。それは、連邦全体として無駄の多い、また、環境上役に立たない支出を連邦予算から削除するという目的を持った納税者・環境・公益・消費者グループの連合です。私たちは数年にわたって、原子力発電、追加ダム建設、および石油やガス油田調査にかかる助成金を削減し、米国の納税者のために、このプログラム実施期間中に約550億ドルを節約しました。
世界の仲間たちと働くことを通して、最近私たちは、米国とカナダの海域周辺に、排出規制地区を設定することができました。巡航船や観光遊覧船は、現在、おそらく世界一汚いバンカー燃料を燃やしており、かなりの量の毒素と汚染物質を放出しています。国際海事機関(IMO)と米国環境保護庁(EPA)と共同して、カナダと米国からおよそ200マイルに広がる海域を設定することができ、その海域内では、これらの船舶は、よりきれいに燃焼する蒸留液海洋燃料を使用することが要求されています。この変更は、クリーン・エアEPA標準値に違反している国内水域の40港湾周辺地域の健康医療費を削減するでしょう。これらは、私たちが成し遂げた勝利のほんの数例です。

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SI:環境問題と同様に、社会正義も「FoE」の仕事にとって重要です。社会正義と環境保護との関係に対するグループの見解とはどのようなものでしょうか。


エーリッヒ・ピカ:「FoE」にとって、社会正義と環境保護は一緒に進行していきます。例えばあなたは環境を保護することができて、あなたの唯一の使命が一区画の土地を保護することであったとします。しかし、まず最初に、何がその環境破壊を引き起こしているのか、背景にある社会的・経済的原因を特定しない限り、あなたはどのような状況においても、たとえそれが海洋での乱獲であれ、インドネシアの森林伐採であれ、ブラジルのエタノール生産、あるいは米国の貧しい共同体に建設されている石炭による火力発電所であれ、環境に影響を与える根本的な原因をずっと持ち続けることになるでしょう。特に環境悪化は、世界中の先住民が直面している不平等と共に進行します。

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SI:原子力発電の擁護者たちは、地球温暖化の解決策としてそれを執拗に宣伝します。原子力発電に対する「FoE」の見解はどのようなものですか?


エーリッヒ・ピカ:「FoE USA」は、一つには原子力発電に反対の立場で創設されたのです。経済的な角度から見ると、原子力産業はいまだに自己採算が取れないままの状態です。ウラニウムの採掘と生産から廃棄物処理まで、米国政府は原子力発電に巨額の助成金を支給しています。環境の視点から見ると、ウラニウムの採掘と生産過程の問題、および一旦原子炉を通過した後どのように処理すべきか、世界の誰もが解決していない放射性廃棄物の処理に関連する問題があります。これが環境問題の一つですが、同時にモラルの問題でもあります。なぜなら、私たちは将来の世代に何万年もの間、原子炉で発生した放射性廃棄物の管理責任を背負わせているのです。
地球温暖化の基本的な観点に立てば、原子力発電は、採掘からウラニウムの生産過程で炭素廃棄物を発生させています。それはまだ無炭素技術にはなっていません。新しい原子炉の建設には10年はかかるでしょうし、私たちは、エネルギー燃料効率や再生可能エネルギーのためにもっと早く投資することができ、それが遥かに良い結果を私たちにもたらすことを知っています。私たちは、原子力発電が実行可能な選択であるとは決して見ていませんし、原子力発電の削減をすぐにでも開始する必要があるのです。

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SI:政府高官を牛耳っている石油産業と原子力産業両方の権力を弱めるために、変化を起こすには何が必要ですか。


エーリッヒ・ピカ:私たちには着手せねばならない多種多様の段階の改革があります。まず、企業にはあまりにも多くの権利が与えられています。最近、米国最高裁判所は、(保守的・共和党系の市民連合で、全米ライフル協会や全米商工会議所の支援を受けている)“市民連合(Citizens United)”の訴訟案件に関し裁決を下しました。その裁決は、基本的には無制限な企業献金を政治運動に対して許容しながら、企業に制限のない言論の自由を与えたものです。
企業が人権を持つべきであるという法理論は、およそ100年もの間続いてきました。その見解は法律として条文化され、判決を通過した幾つもの先例が、私やあなたの権利を企業にも与えています。どのようにして企業の力を置き換えるかを私たちが理解するまでは、抜本的改革に着手したり、または、環境、ヘルスケア、あらゆる社会正義、漸進的な目的などの重要課題に取り組むことができるとは、私たちは信じていません。その一つに“市民連合(Citizens United)”と選挙資金改正の問題があります。さらにもう一つに、企業は人間としてのすべての便宜を手に入れながら、何一つ責任を負っていないのです。
メキシコ湾の油田掘削装置災害において、英国石油会社(BP)の労働者11人に起きたことは、本質的には過失致死でした。オイル流出が湾岸の共同体に与えているのは、環境殺人です。もしこれが殺人現場であったなら、私たちはこれらの人々を投獄していたでしょうし、テレビに出て話したり、正当化したり、自分たちの行動を隠蔽するのを許さなかったでしょう。
市場や企業信奉主義者たちは、「企業ゆえに我信ず」の哲学に象徴されるように、世界経済同様に米国内経済においても過去40年間にわたって過ちを犯してきました。私たちはもはや企業の意思決定に異議を唱えず、政府監督機関の企業規制を断念し、その結果、私たちは何の根拠もない企業信奉主義が、大恐慌以来の最も大きなウォール街の暴落へと導いたこの哲学の影響を目の当たりにしたのです。私たちは、「企業ゆえに我信ず」というこの哲学を、英国石油会社(BP)の油田掘削装置災害の一要因として理解しました。私たちは自己満足に陥っていたのです。さて、私たちは現在、企業力や企業信奉主義者と同じレベルに立っています。
私たちは社会共同体として、その立脚点を取り戻したいのです。そのような社会はさらに広い進歩的な運動を、環境共同体、ヘルスケア共同体、市民権共同体、組合、同性愛(ゲイ、レスビアン、トランスジェンダー)の権利共同体から、引き受けるようになるでしょう。そのような社会は、米国政府や経済システムの中のこの企業信奉主義を背後へと追いやることに着手するためにも、これらの進歩的なすべての領域からの集約的な運動を必要とするようになるでしょう。

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SI:このより広がりのある集約的な運動を見ると、共通の基盤と統一するビジョンがなければならないでしょう。その統一性というのは、世界のどこにでも見られる、競合的、分離的、物質至上主義的な社会から私たちは立ち去る必要があり、経済システムとあらゆる組織・機関を分かち合いの下に置き、そこでは人々と環境が最優先される、そのようなことを受け入れるということでしょうか。


エーリッヒ・ピカ:まさにその通りです。現在、私たちは、経済成長と幸福をすべて間違った方法で評価しています。私たちのあらゆる関係と健康な食物を提供する能力に対して、私たちはどのくらい消費し購買するかを評価しているのです。
私のオフィスには、「われらの時代のパラドックス」と呼ばれているダライ・ラマ法王の引用文があります。それは、「私たちは、より大きな家を持っているけれども、より小さな家族しかいません。さらに便利になったけれども、時間がありません」で始まります。私たちの消費ベースの経済の影響は、私たちはより多くの物を持っているけれども、思ったほど充実した人生を送っていないということです。私たちはさらに多くの物を捨てながら、買っているという、まさに物自体に取り付かれています。私たちはこのことを再考せねばなりません。なぜなら、この地球は私たちの過激な物の消費を維持することはできません。

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SI:私たちは、気候変動と他の環境問題の取り組み方について、何が間違っていたのかについて議論してきました。一方で、気候関連法の制定を正しく導くために、何をしなければならないのでしょうか。


エーリッヒ・ピカ:いかなる気候関連法も科学から始めなければなりません。また、科学者が最悪のシナリオと呼んでいるものよりも、もっと数値の高い、積極的な削減目標で始めねばなりません。削減目標は20%を遥かに超えるまで推し上げることを意味します。2020年までに、40%~50%に削減目標を設定して開始すべきです。
米国はこれらの汚染の最大の汚染国であるという確固とした認識も必要です。中国の現状にかかわりなく、米国は歴史的に見て最大の汚染者です。科学的目標の上位に、それを凌ぐ道徳的義務を負っています。なぜなら私たちは、基本的にこの地球を崖っぷちまで追い詰めた国の一つだからです。
削減目標に関しては、どのように排出を削減するか、そしてウォール街に基準を置く方式を用いないでカーボン(炭素)経費を設定するか、考え出す必要があります。米国議会で現在議論されている立法の問題点は、“キャップ&トレード”(総量排出制限をした排出量取引制度)という市場原理の価格装置を使用していることであり、それは本質的には、世界のウォール街やゴールドマン・サックス(グローバルな投資会社)に金を稼ぐ方法を見つけ出させ、そして、地球を温暖化する排出を緩和してしまう可能性もある権限を与えることになるということです。すでに社会の中において巨大な権力を持っている企業に、ウォール街の暴落に続いて、地球温暖化ガスの削減に関する権限を権限を与えることは、狂気の沙汰のように思えます。私たちは、連邦政府によって管理される税金取立て方式か、料金体系を通して、炭素価格を設定する必要があります。
本質的には、世界をこの混乱の中に陥れた石化燃料と原子力産業に対して、政府が助成金を出したり保護したり、さらには、彼らの将来の居場所を認めることさえ、全く意味をなしません。私たちはクリーンエネルギーの研究と開発に投資をしなければなりませんが、もっと重要なことは、その技術を展開・配備することです。私たちはこれらの技術を展開・配備するために、ある程度まで市場を信頼することができますが、ある時点においては、第二次世界大戦や、ケネディ大統領が人を月に送ったように、私たちはこの問題に取り組まねばなりません。ある時点において、政府は事前の対策を立て、市場、経済、消費者たちに省エネを実行させるために基金と能力を使い、規制し、立法化することが必要です。
これらは気候温暖化防止法案の核となる原則です。違った方法でもできるでしょうが、それは起こるべくして起こるものです。

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SI:他に何か付け加えたいことはありますか。


エーリッヒ・ピカ:地球温暖化は、私たちの自然理解の限度を超えた、初めて体験する地球の根源的な生命活動の兆候であり、エネルギーをどのように使用し、生産し、消費するか、私たちに根本的に再考することを要求しています。私たちが目にしているのは、多くの兆候のほんの始まりにすぎません。
私たちは海洋生態系の急激な崩壊を目にしています。世界中の共同体の飲み水の不足を目にしています。過去40年以上にもわたって定着してきた機械化農業による農地への影響を目にしています。炭素、窒素、水の循環サイクルかどうかにかかわりなく、過去150年におよぶ産業革命の結果、地球の生態系や自然体系の多くの崩壊を目にしています。
より良い方法があることを社会に確信させることによって、これらの問題を根本的に、確実に回復させることは、現在の環境保護活動の目標であり、要請なのです。それは未来の声であり、現在の要請です。もし私たちが成功しなければ、50年後にこの地球がどのようになっているかを想像するのは困難です。

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(詳細は:www.foe.org; www.greenscissors.com)