現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2011年 11月 思いやりを持って出される温かい食事

思いやりを持って出される温かい食事

ジェーソン・フランシスによる ナラヤナン・クリシュナン氏ヘのインタビュー

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アクシャヤ・トラストは、インドのタミール・ナドゥ州のマドゥライの貧しい人たちや家のない人たちに食料と思いやりをもたらす献身 的なボランティアたちのグループである。アクシャヤ・トラストの創始者はナラヤナン・クリシュナン氏──ホテル経営の学位を持つ大学出身者──である。あ る体験により、マドゥライの貧しい人たちに食料を提供し、威厳を回復させることに自らの人生を捧げようと思ったとき、クリシュナン氏は職業上の経歴が成功 を収める間際にあった。彼は、国際的なニュース・ネットワークCNNが授与する2010年ヒーロー・オブ・ジ・イアー・アワードにノミネートされた1万人 の中から選ばれた10人の最終候補者の一人だった。ジェーソン・フランシスが『シェア・インターナショナル』としてナラヤナン・クリシュナン氏にインタ ビューした。

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シェア・インターナショナル(以下SI):どのような体験によって、あなたは職業上の成功を追求することから貧しい人たちの必要に仕えることへと人生の進路を方向転換されたのですか。

ナラヤナン・クリシュナン:2002年6月にマドゥライの混雑する通りを車で走っていたとき、自分の排泄物を食べている老人を見ました。途轍もな い衝撃を受け、辺り構わず私は車から飛び降り、その老人のところに行きました。彼がひどい空腹にあり、心が正常な状態ではないことに気づきました。すぐに 幾つかのイドリス(塩味の蒸しケーキ)を持っていき、彼に与えました。老人は、それまで見たこともない速さでそれを食べ、私の手を握りました。それは強力 なエネルギーを持つとてもリアルな感覚を私に与えました。内的な幸福感と満足感を私は感じましたが、それはそれまでに経験したことがないもので、私の人生 を永遠に変えました。この深く刻み込まれたユニークな体験は、今なお私に強力な力をもたらしています。

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SI:あなたはなぜ「アクシャヤ」という言葉を選んだのですか。

クリシュナン:アクシャヤはサンスクリット語で不朽、不滅を意味します。人間の思いやりが決して朽ちることも滅びることもなく、助け合いの精神が果てしなく広がるべきだということを強調するためにこの名前にしました。

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SI:あなたはいつから飢えた人たちに食事を提供しているのですか。

クリシュナン:食料提供の計画は2002年6月に始めましたが、数カ月間はどのような支援も受けず、誰にも気づかれずに続けました。私がしている ことが一般に知られるようになったとき、徐々に手助けされるようになりました。支援の輪が口伝えで広がっていきましたが、この運動が一般の人々の支援を受 けるようになったことで、私はこの仕事を正式なものにすべきだと感じました。そうして、アクシャヤズ・ヘルピング・イン H.E.L.P トラストがマドゥライで2003年6月に結成されたのです。
2010年にCNNに認められ、アメリカからの支援が大規模に寄せられ始めました。この支援を奨励し、寄付者の税額控除を保証するためにアクシャヤUSA が登録され、税額控除の資格が2010年10月に得られました。アクシャヤUSAは、アメリカでの私たちの活動の調整、支持者たちとの連絡維持、資金調達 イベント開催の手助けをしています。

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SI:どのような人たちがアクシャヤ・トラストの援助を受けているのですか。

クリシュナン:私たちは、家族に見捨てられて道ばたで暮らす貧しい人たちの世話をしています。彼らは病気で、誰の世話も受けられず、精神的に利発 ではなく、自立するにはあまりにも高齢で衰弱しています。ほとんどの人が50歳以上です。75歳を超えた人もいます。このグループには男性もいれば女性も おり、インドの様々なところから来た人たちがいます。

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SI:アクシャヤ・トラストは、彼らが配る食料をどこから得ているのですか。

クリシュナン:最初は道路沿いの店から買って配っていました。2003年1月からは(経費と衛生上の理由から)毎日新鮮な食材を購入し、私の家で自分で調理し、小型トラックで朝昼晩それを配り始めました。2011年8月の時点で180万食近くの食事を提供してきました。

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SI:マドゥライには、家がなく飢えている人たちがどれくらいいるのですか。

クリシュナン:マドゥライで私たちは約450人の人たちに毎日3回食事を提供しています。2002年に始めたときは約30人でした。徐々に私たち はもっと多くの無力な人たちを見つけ出し、また資金を入手できるようにもなったことで、より多くの人たちを援助できるようになりました。
現在私たちが集中しているのは、幾つかの大きな通りとその近くにあるわずかな脇道だけです。いろいろな問題があるため、すべての通りを網羅してはいませ ん。概算では、約700人から800人の人たちがマドゥライの路上で生活しているでしょう。その人数は変わります。新たに人たちがやってきて、以前いた人 たちが出ていき、また亡くなる人たちもいるからです。

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SI:マドゥライの人たちはどうしてホームレスになったのでしょうか。

クリシュナン:マドゥライは、多くの人たちが訪れる巡礼の地です。支えることができなくなった人たちを重荷になった家族が道路に置き去りにしてい くのです。彼らは普通は置き去りにされたところに留まるのですが、ときどきすぐ近くの地域に移動していきます。また、精神状態が正常ではない人たちが家か らさまよい出し、何の目的もなく、自分がどこに行こうとしているのかを知らずに、歩き続けます。ある場合には、老人たちが個人的な問題や家族の誤解により 家から追い出されることもあります。また、幾つかの病院の場合、付き添いのいない患者や、回復の見込みがなく、金銭的な支えのない人たちは路上に置き去り にされます。

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SI:ボランティアの人たちや地域からの支援はありましたか。

クリシュナン:ボランティアの人たちや地域からの素晴らしい支援はあります。最初の数カ月は全く支援はありませんでした。実際、親しい友人や身内 から手厳しい反対を受けました。私の行動が異常に思えたからです。しかし、徐々に変わっていきました。2004年の終わり頃にはメディアが私がしているこ とに注目し始めました。支援は年を追って拡大していき、2008年には信頼できるCNN── IBNリアル・ヒーローズ・アワードを受賞したことにより全国レベルで認知されるようになり、2010年のCNNのトップテン・ヒーローズ・アワードに よって世界的に認知されるようになりました。

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アクシャヤ・ホーム

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SI:アクシャヤ・ホームについてお話しいただけますか。

クリシュナン:アクシャヤ・ホームは、私たちの長期的な目標において鍵になる要素です。基本的な避難所だけではなく、私たちはリハビリのための安 全な環境を提供したいと思っています。安全は重要な関心事です。社会の非道な人たちによって生命が容易に危険にさらされる無防備で精神的に問題のある女性 たちにとっては特にそうです。アクシャヤ・ホームは、見捨てられた老人たちが最後の日々を平和に暮らす場所になるでしょう。
その始まりはゆっくりで困難でしたが、アクシャヤ・ホームは今、現実のものになり始めようとしています。完成したとき、100人の男性と100人の女性のための健康管理と支援の施設を含む、約2,300平方メートルの生活スペースになるでしょう。
現在進行中の重要な資金調達の課題には、スタッフの採用、ホームの機能維持はもちろん、全般的な設備と医療設備の調達も含まれます。アクシャヤ・ホームが 困窮する人たちのための長期にわたる陸標になるためには、このような資金調達に長期的な献身と確約が必要となるでしょう。

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SI:アクシャヤ・ホームはマドゥライの貧しい人たちに住むところを提供し、定期的に食事を与えるだけではなく、威厳、帰属感覚、生きる意味を回復させるためにどのようにして手助けするのですか。

クリシュナン:極端な状態のもとでは、人間は自尊心を失い、自分が人間以下だと感じます。基本的な栄養──肉体への食料と魂への愛──が与えられ ると、多くの場合、人々は正常になる傾向があります。安全に滞在できるところと栄養のある食料が与えられ、安心が保証されたホームレスの人々がより意味の ある人生につながる自信を回復させることを私たちは期待しています。

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SI:貧困のような不正義をきっぱりと排除するために、社会で何が変わらなければならないのでしょうか。

クリシュナン:同胞に対して長きにわたって親切にすることの必要性を大多数の人々が理解したときに初めて、前向きな変化が可能になります。自分が 社会に与えたものを自分が受け取るということを理解することが必要です。社会に対して親切になり協力的であるとき、私たちは同様の扱いを受けます。人々は この因果関係を正しく理解することが必要です。

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SI:他の人々を回復させることが自分自身の魂を高めるとあなたが言うとき、それが何を意味しているのか説明していただけますか。

クリシュナン:それぞれの人が分かち合いの喜びを体験することが必要です。現在の目まぐるしい世界において、人々には他の人々のことを考える時間 はなく、ましてや、不運な同胞が経験している痛みや苦しみをより深く理解する時間はありません。苦しみを和らげ、病気の人の不安が取り除かれるのを観察す る第一歩を踏み出すならば、他の人たちの苦境を理解することができるでしょう。
最も簡単な例は、本当に飢えている人が食料を与えられたときにその人の目に見られる喜びを体験することです。他にもよく似た例があります。喉が渇いている 人に一杯の水をあげたり、寒さに震える人に一枚の毛布をあげたりです。この内側からの個人的な体験をうまく伝えることができる言葉はありません。このよう な多くの体験に恵まれることで、一人の人間が喜びの体現者になり、自分自身を高いレベルへと上昇させるのです。自分自身の魂を高めるという言葉で私が意味 したのはこのことです。

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SI:何か付け加えたいことはありませんか。

クリシュナン:私たちはできる限り、できる限りどこでも、できる限りいつでも、人々を助けるべきだということだけです。これが他の人々の好意や恵みを私たちにもたらし、私たちの人生をより意味のあるものにするのです。

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さらなる情報をお求めの方は:www.akshayatrust.org、および、 www.akshayausa.orgをご覧ください。

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