現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2012年 2月 この惑星の肺を監視する

この惑星の肺を監視する

アトッサ・ソルターニへのインタビュー
ジェイソン・フランシス


サンフランシスコに拠点を置く非営利団体「アマゾン・ウォッチ」は、アマゾンの熱帯雨林を保護し、その地域の先住民の権利を向上させるために1996年に創設された。アマゾンの熱帯雨林は最も多様な生物が生息する世界最大の熱帯雨林であり、米国本土よりも広く、9カ国の領土に属している。アマゾン・ウォッチは、人権、企業の説明責任、アマゾンの生態系保護のために先住民の組織や環境団体と共に活動している。アトッサ・ソルターニ氏はアマゾン・ウォッチの創始者であり、事務局長である。ジェイソン・フランシスが本誌のために彼女にインタビューを行った。


シェア・インターナショナル(以下SI):なぜアマゾンの熱帯雨林の保護を重要と考える必要があるのでしょうか。


アトッサ・ソルターニ:アマゾンの熱帯雨林は私たちの地球の気象にとって極めて重要で、南アメリカだけではなく、世界中の気候と降雨を調整しています。それは全世界的な気候のエンジン、雨を降らす機械、この惑星の肺とも呼ばれてきました。アマゾンは地球の生命維持装置の極めて重要な部分であり、この惑星上の約70億人それぞれがアマゾンとその働きに依存しているのです。
アマゾンはまた、地球上のすべての動植物のうち推定3分の1から2分の1に当たる無数の動植物の種の生息地でもあり、これらの植物の多くには医薬的な価値があります。アマゾンの植物のうちその医薬的特性がすでに研究されているのは1%にも達しませんが、癌や糖尿病やエイズを含む治療剤が見つかるのではないかと考えられています。

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SI:アマゾン・ウォッチの今後の方針はどのようなものですか。また、あなたはなぜこの団体を創設しようと思ったのですか。


ソルターニ:アマゾン・ウォッチは、先住権と環境保護を向上させるためにアマゾン一帯の先住民と連携して働きたいと思っています。何千年にもわたって先住民の人たちは森林の極めて優秀な管理者で、今もアマゾンの保護のために最前線で闘っています。そのため、彼らを支持することは私たちにとって森林を保護する絶好のチャンスなのです。また、先住民の生活方法、彼らの文化と伝統的な知識は、現代社会が自然界とバランスを取ってどのようにして生きることができるかを教えてくれます。
私たちは、先住民の土地の権利と自己決定の権利、持続可能な環境的発展、企業の説明責任、そして、アマゾンの熱帯雨林およびそこに存在する先住民の伝統的な知識双方の価値と重要性を世界に認めさせるために連携して行動しています。
例えば、森林破壊や水質汚染の責任を企業に負わせる運動をしています。また、先住民の土地を守り、彼らに所有権を与えるために、彼ら自身のアドボカシー・イニシアチブ(公共政策に影響を与えるような自発的な権利擁護活動)を支持するプログラムに取り組み、公共投資を破壊的なエネルギーや巨大プロジェクトから持続可能な開発へと移行させるよう働きかけています。私たちの任務の核になっているのは、先住民には権利があり、彼らは人類すべてに奉仕しているという信念です。私たちには、彼らの闘いと知恵から学ぶべきことが多くあります。もし彼らが祖国と森林と文化を失うならば、私たちもまた多くのものを失うことになります。彼らが消えていくならば、アマゾン全体が消えていくことになります。
個人的に、私は非常に若いときから、アマゾンの熱帯雨林という壮大で信じ難いほど素晴らしい現象に強く気持ちを動かされてきました。私は1983年の大学1年の時、それについて学びました。それ以来ずっと、これがこの惑星にとっていかに重要な闘いであるか考えるのをやめることができず、私の生涯のうちこれまでの21年間を、この特別な全世界的危機――森林破壊の中止、そしてアマゾンの保護と先住民の権利の支援――との取り組みに費やしてきました。

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森林破壊

SI:アマゾンの森林破壊の割合は現在どの程度なのでしょうか。

ソルターニ:アマゾン全体で実際にどの程度進んでいるかは分かりません。実際、明らかになる森林破壊のデータの大部分がブラジルのアマゾンだけのものです。そのため、推定するのは難しいです。エクアドルのような国々での森林破壊が高い割合であることは知っています。アマゾンの60%がブラジルに属するため、何年かの間にはベルギーと同じ広さ、別の数年間にはフランスと同じ広さの森林が破壊されている可能性があります。それは変動しますが、一般的に言って、ここ40年~50年の間にアマゾン盆地全体の約20%の森林が失われたと言ってもよいでしょう。それには、ブラジル、ボリビア、エクアドル、ペルー、コロンビア、ガイアナ、フランス領ギアナ、スリナムも含まれます。さらに盆地の20%の森林が、生態的、水文学(水循環科学)的な機能が揺らぐ点にまで著しく荒廃しています。おおよそ20~40%の森林が破壊され荒廃しているのです。
私たちはタイムレコーダーと闘っています。おおよそ40~50%が、アマゾンの水循環全体が崩れ始める生態的な限界点です。その点から遠く離れておらず、おそらくせいぜい数十年以内にその点に達します。すでに十年でこの点に達するだろうと言う人もいます。

SI:アマゾンの森林破壊と冒涜の原因は何なのでしょうか。


ソルターニ:原因は場所によって様々です。山間の高地森林を擁するアンデス・アマゾン地方では、森林破壊の原因は独特なものです。多くの場合、森林破壊は人が近づけない地域への道路建設によるものです。樹木の伐採、石油や天然ガスの調査などのために道路が建設されており、パイプラインのようなインフラが整備されます。この種の計画は遠隔地への通行手段をつくり出し、密猟者や土地を求める都市部の人々が殺到することになります。入植と森林破壊は農業、時には産業形態の農業を通してそのような結果をもたらします。
ブラジルのアマゾンの場合、伐採の原因に牛の牧場と大豆やパームオイルの大農園の建設も含まれます。アマゾン下流には、アマゾンの広大な地域を浸水させる幾つかの巨大ダムがあり、ある場所での浸水地域の広さは何千平方マイルにも及びます。


ベロモンテ・ダム

SI:ブラジルのパラ州にあるシングー川に建設予定のベロモンテ・ダムについて話していただけませんか。

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ソルターニ:それは世界で3番目に大きなダムになり、110キロワットの発電能力を持つものになります。しかし実際には、雨期と乾期の水位変動により、おそらくその30~40%の発電にとどまるでしょう。このダムはシングー川を60キロメートルにわたって破壊し、川沿いの地域――先住民、漁師、農民が暮らす地域――に巨大な影響を与えることになります。そして、約600平方キロメートルの広大な地域が浸水することになり、その中にはアルタミラも含まれ、2万5,000人から4万人のアルタミラの人々が移住を強いられることになるでしょう。
幾つもの地域がダム建設に反対しており、社会闘争につながるでしょう。約10万人の移民労働者がダムに関わる短期労働を求めてアルタミラを訪れています。それがこの町の人口を倍増させ、犯罪増加、公衆衛生問題、食料不足、土地投機を引き起こしています。この地域の科学機関の推定によると、移民労働者がこの地域に殺到することによって、このダム建設は実際には、パラ州の5,000平方キロメートルの森林を破壊することになるとのことです。この州はすでにブラジルでの森林破壊の最大の割合を占めており、森林保護活動家、労働組合、農民組合に対する暴力的な犯罪が最も多発しています。
それは、重大な影響を及ぼす巨大な計画ですが、実際には不必要なものです。このダムを建設しなくても、エネルギー需要を満たす代替手段がブラジルにはあります。



SI:このダム建設のための資金はどこから来ているのですか。


ソルターニ:ベロモンテ・ダムは最初、1980年代後半のブラジル独裁政権のときに推進されました。それは当初、反対運動によって中止されました。世界銀行がダム建設への資金を提供する予定でしたが、この計画から撤退しました。しかし現在では、この計画の80%以上の資金がブラジル国立開発銀行から提供されることになっています。国立開発銀行が、公的年金基金を使用した低金利の補助融資を提供します。このダムはシングー川に建設可能な4つのダムのうちの最初のものであり、今後20年間にブラジルのアマゾンで計画されている60のダムのうちの最初のものになると言うべきでしょう。ブラジル政府がこれらのダムの資金のほとんどを提供することになるでしょう。したがって、それは公共資金の誤った配分であり、貧困化、犯罪、森林破壊、文化崩壊に対するプロジェクトや、他の方法でも可能な発電計画に対して本来用いられるべきものです。


「アマゾンのチェルノブイリ」

SI:何人かの専門家が「アマゾンのチェルノブイリ」と呼んでいるものについてお話しいただけませんか。


ソルターニ:それは、シェブロン・コーポレーション(旧テキサコ社)が汚染し荒廃させた地域を指すために使われてきた名前です。1960年代後半、同社はエクアドル北部のアマゾンに石油を発見し、世界の他のほとんどの地域では違法とされた技術を使って石油を採掘し、有毒物質を含む1,800ガロンの水と1,800ガロンの原油を、5つの先住部族が住む地域の川と小川に廃棄しました。これは地方の約3万人の農民にも影響を与え、この地域全体を荒廃させました。
同社は1990年にこの地域から去り、広大な汚染地域を後に残しました。そこでは公衆衛生面での危機が見られます。人々は、癌の異常発生、出生異常、皮膚の異常、石油汚染に関係するあらゆる種類の病気に苦しんでいます。同社はこの地域の汚染除去を拒否し、訴訟を必死に戦い、2011年2月に最初の勝訴を勝ち取りました。エクアドル裁判所はシェブロン社に有罪の判決を下し、汚染除去の費用と同社がその地域にもたらした損害の賠償金として95億ドルの支払いを求めていたのですが。私たちは確信しています。いずれは正義が広まることを。そして、シェブロン社が汚染除去の責任を果たし、石油汚染による損害を受けた地域へ緊急に必要な救済がもたらされることを。

SI:アマゾン・ウォッチが始めた「クリーンアップ・エクアドル・キャンペーン」とはどういうものですか。


ソルターニ:シェブロン社がテキサコ社を買収した2001年にさかのぼります。アマゾン・ウォッチはエクアドルでの汚染の責任をシェブロン社に負わせる運動を始めました。私たちは訴訟の原告ではありませんが、原告を支援して一緒に働いてきました。それは3万人のラテンアメリカ系の先住村民が起こした集団代表訴訟です。17年か18年続いています。
私たちの仕事は、地域を支援し、彼らの声を聞いてもらえるよう手助けすることでした。また、シェブロン社の意思決定者たちの戸口の上がり段に彼らを連れていき、シェブロン社に責任を負わせるために機関投資家から支援を喚起することでした。このキャンペーンはまた、現地の地域社会に非常に必要な支援をもたらし、「クリーンアップ・エクアドル・キャンペーン」の要求を支持する手紙や嘆願書に署名した世界中の大勢の関心を抱く市民を巻き込んできました。キャンペーンの要求は、土壌と水質の汚染を浄化する責任をシェブロン社に受け入れさせることです。そして、すでに亡くなった人や今も病気に苦しむ地域の人たちに対して補償し、この地帯に医療支援をもたらし、この地帯の影響を受けた地域社会に、飲用に適した水をもたらすことです。


SI:州政府はなぜ、アマゾンの熱帯雨林を荒廃と冒涜から保護し、先住民の権利を搾取から守ろうとしないのですか。

ソルターニ:これらの国々――例えばペルー、コロンビア、ブラジル――の政府は国営の石油企業や電力企業を持っています。これらの企業と、政府のエネルギーと鉱業に関する省庁はアマゾン資源を採掘するために民間企業と連携しています。そのため政府は、環境規制者と人権擁護者の役割を果たすのではなく、先住民地域の資源の速やかな採掘を促進する協力関係を結ぼうとしています。
その一方、憲法による保障もあります。ラテンアメリカ諸国それぞれで、先住民に彼らの土地と資源に関する権利を与え、彼らの自決権を保障する条項を、政府は憲法に盛り込んでいます。しかし、これらの政府のほとんどには、こうした憲法上の保障を十分に施行する規定がありません。これらの国の司法制度は機能しておらず、アマゾンの辺鄙な地帯の環境を独自に監視することはごくわずかしかありません。こうしたすべての難問に加えて、先ほど私が言いましたように、自然資源を速やかに採掘するために政府が企業と手を組もうとしているのです。政府を支配する経済的な企業利益に反対して先住民が闘う原因は、利益のこの究極的な不一致です。


SI:アマゾン・ウォッチは先住民の権利をどのようにして向上させているのですか。そして、先住民の人たちはアマゾンの熱帯雨林を守るために闘う力を強めることができつつありますか。


ソルターニ:アマゾン・ウォッチの原理となる戦略は、先住民の組織を強化し、先住民主導の開発を支持し、先住民が彼ら自身の権利のより良い主張者になるよう支援することでした。私たちは先住民の声を拡大するために私たちにできることをしてきました。私たちは、彼らの国内組織を強化するためだけではなく、多国籍企業のような挑発的な団体や、世界銀行や米州開発銀行のような国際的な金融機関と闘う方法を知るための手段と訓練をも彼らが得られるよう援助しています。
アマゾン・ウォッチが創設された1990年代後半に、私たちが先住民のリーダーたちにEメール・アカウントを取得させ、インターネットの使用法、ウェブ検索、ジャングルにある最も近い町からのEメール送信を学ぶのを手助けしたことが思い出されます。今日では、かなり高度に機能しており、先住民のリーダーたちは国際社会や支持者たちだけではなく、お互いと、地域と地域でオンラインでつながっています。彼らはお互いに鼓舞し、実例を提供するよう助け合っています。それは実際、エキサイティングなことだと思います。
彼らはすでにラテンアメリカで一大勢力になっています。先住民は政府を打倒し、政府の議題を規定してきました。彼らは政府に対して法律を改正するよう強い、ある場合には、市民としての反抗を通して企業の平常通りの業務を中断させ、企業を追放してきました。彼らは闘う一大勢力です。


SI:何か付け加えたいことはありませんか。


ソルターニ:私はアマゾンの森林から何千マイルも離れたところにいる世界中の人々に勧めます。日常生活でしていること――食べている食料、消費しているエネルギー、投資、銀行口座――、そして、こうした選択が私たちの自然生態系を破壊している制度をいかに強めているかについてよく考えてくださいと。
私たちは総合的な取り組みをし、次のように問う必要があります――「私のお金はどこから来ているのか。それをどこで得ているのか。それはどこに行くのか。そして、エネルギーであれ衣服であれ、私の消費パターンが世界の残りの地域にどのような影響を及ぼしているのか」と。
しかし、それだけでは十分ではありません。私たちは消費を少なくし、一新することが必要です
――地元の商品を買い、自分で育てた食材を食べ、私たち自身の一人当たりのエネルギー消費をできるだけ少なくするのです。また、最前線の地域とつながり、彼らを支援することが必要です――通信源、金銭、エネルギー、積極的な行動です。将来の世代はこの世代の行動にかかっているのですから、私たちは活動家になる必要があります。それはアマゾンと世界中の森林にも当てはまることです。それは、漁業、私たちの海、私たちの気候にも言え、民主主義と正義にも当てはまることです。
行うすべてのことに総合的に取り組む全世界的な集団連帯運動をすべき時です。この惑星を変えるために行動してください。今すぐに。これからの10年間が重要です。それが私たちの惑星の次の千年間の状態を決めるのです。今しかありません。

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