現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2014年 12月号 地球の『ブルーハート』を大切にする

地球の『ブルーハート』を大切にする

ジェイソン・フランシスによる
メアリ・クローリー氏へのインタビュー

海洋航海協会は、1979年に国際的な船員、教育者、保護活動家によって設立されたカリフォルニア、ソーサリートを拠点とする非営利団体である。この団体は海運の技術や科学を教え、世界の海洋の保護に専念している。2009年に海洋航海協会によって設立されたカイセイ・プロジェクト(日本語で『海の惑星』の意)は、海洋のゴミを除去したり、問題に対する意識を向上させることにより「太平洋をプラスチックの侵略から救うこと」に集中している。環境問題の専門家であるメアリ・クローリー氏は、海洋航海協会の共同設立者で代表であり、またカイセイ・プロジェクトの共同創始者であり、同協会のプロジェクトの一つの責任者でもある。ジェイソン・フランシスがシェア・インターナショナルのために彼女にインタビューした。


シェア・インターナショナル(以下SI):あなたは海のことをなぜ私たちの『青いハート』と呼ぶのですか。
メアリ・クローリー:海は地球の72%を占めており、地球上の酸素の半分以上を産み出します。海の健康が地球と私たちの健康に直接影響を及ぼすということを人々が理解することは、非常に重要なのです。海洋の生態系がいかに大切かを多くの人は理解しません。それは私たちの地球の青いハートなのです。私たちの青い地球を美しく保っているものなのです。

使い捨てのプラスチック

SI:海に人工の海洋ゴミがどのくらいあるのか、ご存じなのでしょうか。
クローリー:その正確な数を知っている人は誰もいません。私たちは何世紀もの間、海をゴミ箱として使ってきました。過去60年間にわたり、かなりの量のプラスチックが実際に海に捨てられてきました。毎年3億トン以上のプラスチックが製造されます。その中で再利用されるのはわずか6%から8%のみです。プラスチックの多くは使い捨てであり、それらは皿、コップ、ナイフ、フォーク、ポリ袋などです。その内のかなりの量が最終的に海に捨てられます。一般的な材料としてのプラスチックを問題にしているのではありません。様々な医療分野でのプラスチックの使用は素晴らしいかもしれません。鉄道でのプラスチックの枕木、色々な種類の恒久的な建造物で使用されるプラスチックなどは素晴らしい材料かもしれません。しかし、私たちの社会で非常に良く使用されている使い捨てプラスチックは、海に対して深刻な問題を引き起こしています。

SI:「プラスチックの渦」とは何ですか。

クローリー:プラスチックの渦とは、海流がゴミを同じ領域に集める傾向のある場所のことです。北太平洋、南太平洋、地中海、インド洋、北大西洋に渦潮があります。これらは、地球的なゴミの集合をつくり出す海流の主要なシステムです。また同様に、海流が渦を巻き、ゴミが集まる沿岸地域もあります。ゴミが河川に捨てられた後に、流域を通り、河口から海に流され、ゴミの集まりとなる場合があります。

小さな源、大きな問題

SI:なぜそのように多くのゴミが海に行くのでしょうか? あなたはゴミを川に捨てる人々のことを話されましたが、そのように多くのゴミが海に行くとしたら、他にも訳があるのではないでしょうか。
クローリー:多くの人は、砂浜や船から水中にゴミを捨てる人々が問題の原因だと考えます。国連ではゴミの発生源に関する研究を行い、その結果、ゴミの20%は船からで、残りの80%は河川流域から来ることが分りました。その多くは海に意図的にゴミを捨てた人から来るものではありません。中央アメリカ、アフリカ、特定の島国の一部には、ゴミ収集システムを持たない国があります。このような地域では、海をゴミ箱として使用します。
ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、世界の他の地域に関しては、大量のゴミを結局は『間接的に』海に捨てているのです。それは通常、多くの小さな源が原因です。溢れたゴミバケツやゴミ箱の横に何かを置く人が原因かもしれません。リサイクル・センターで風が吹いて、何かが飛ばされたことが原因かもしれません。プラスチックは非常に軽量な原料です。トラックがプラスチックを一杯に積みどこかに向かう途中で何かが飛ばされた場合、それは最終的に川や河川の分岐点に行くことでしょう。多くのゴミが洗われながら海に運ばれます。地球的な気候変動が原因で、より多くの地域が豪雨や洪水に見舞われるようになるため、洗われながら海に運ばれるゴミは増加しています。

SI:海のゴミ、特にプラスチックは、海洋の野生動物に対してどのような影響を与えていますか。
クローリー:それは、海洋の野生動物に対して重大で恐ろしい影響を与えています。私のメンターで友人である海洋生物学者のシルビア・アール氏は、毎年30万頭をはるかに超える数の海棲哺乳類が海洋のプラスチックを摂取することで死亡していると推計しています。例えば、2歳のクジラが海岸に打ち上げられられたとします。検死を行えば、クジラの胃はプラスチックで一杯であり、餓死してしまったことが分かります。多くの海ガメやアホウドリなどの海鳥は、プラスチックを摂取すると死んでしまいます。ミッドウェー島地域全体やハワイ諸島の北西地域は、アホウドリの巨大な繁殖地であり、これらの鳥は知らずに雛鳥に対してプラスチックを与えているのです。調査旅行で、私たちは魚がプラスチックを食べる問題を調査しました。私たちが調査したある魚のグループは、ハダカイワシです。これらは通常プランクトンを食べ、より大きな魚に食べられます。ハダカイワシは、プランクトンの他に多くのプラスチックの小片を食べています。そのため、プラスチックとそれに関連する毒素は、私たちの食物連鎖に確実に入っています。

SI:有毒な化学物質など、他の汚染源も海に入ってきていますか。
クローリー:はい。残念ながら、海はとてつもなく広いため、何を捨てても処理できると考えられてきました。それは全く真実ではないと、今では分かっています。化学物質は恐ろしいものです。化学肥料、農薬、他の汚染物質による化学物質の溢れ出しが原因のデッドゾーンが世界の多くの地域にあります。また、日焼け止めや他の種類のローションが、珊瑚の健康にとって有害であることが発見されました。私たちは、地上や海洋の化学物質に関して細心の注意を払う必要があります。

私たちの行動を浄化する

SI:海のゴミ、特にプラスチックを除去するために、どのような解決策が提案されていますか。
クローリー:どのような解決策にあっても重要なことは、プラスチックを捨てることをやめることです。私たちは、プラスチック製の袋やボトルの禁止を支持しています。実際、すべての使い捨てプラスチックの禁止が必要なのです。それを可能にするために、あらゆる技術革新が起こり得ます。例えば、ガラスやステンレス・スチールの再利用可能な水のボトルを持つことは、より健全です。再利用可能な袋や革新的なパッケージを作り出す方法があります。私が知っている多くの人が、食べ残したものを持ち帰られるように、レストランに自分のガラス容器を持参しています。彼らは店に行くときには、自分の容器を持参してゴミを増やさないようにします。また私は、常に自分のボトルを持参してカプチーノやラテを飲み、使い捨てのカップを絶対に使わないようにしています。使い捨てのものを使わないことが環境にとってだけではなく、自分の健康にも良いということを、人々はますます気づいています。
別の解決策としては、すべての段階での清掃を奨励することです。私たちは近所での清掃、つまり自宅の庭や道路の清掃を奨励しています。私たちは、河川の清掃を支持しています。川辺を通るととても綺麗に見えますが、その端に沿った水路の探索を始めると、あらゆる種類のプラスチックのゴミを見つけることになります。私たちは浜辺の清掃を支持しています。
プロジェクト・カイセイでは、海の大規模な清掃をしているのは私たちが中心です。渦潮に対して清掃を行った探検から、見つけたゴミを幾つかのカテゴリーに分類しました。そして、それぞれのカテゴリーに対して良好な清掃の解決策を講じました。
例えば、非常に衝撃的で主要なカテゴリーは、遺棄された漁業装備です。「幽霊網」と呼ばれるものがあります。これは紛失した漁業用網の場合や、 密漁者が証拠を残さないために網を切ったものの場合もあります。海の波の動きにより、これらの網は回転して他の網や海の生物やプラスチックを捕らえます。これらは「幽霊網」と呼ばれ、まるで勝手に漁業を続けているかのようです。それらは、海の生物を捕まえ、絡まるという理由で、害を及ぼしています。また、幽霊網が珊瑚に達した場合、珊瑚を覆ってしまうという理由でもそれらは有害です。
これらの幽霊網を海から取り除くことは重要です。それを行うためには、海洋産業で使用されている装備が必要です。これらの有毒な素材と海洋生物に対する死の罠をすべて取り除くためには、クレーン、フック、掘削機など、2トンから10トンに及びこれらの大きな網を掴める装備が必要です。私たちは、幽霊網を清掃することを強く提唱しており、それを行う良いテクノロジーがあります。
ゴミの一つのカテゴリーは、洗濯洗剤の容器、漂白剤の容器、油の容器、ペットボトル、バケツ、箱、包装用の紐などで、私はこれらを消費者のゴミと呼びたいと思っています。これを清掃する本当に良い方法は、プラスチックの除去のために、商業漁船から漁業用のネットを流用することです。プラスチックの除去に対して漁師にお金を払うことは、二重の意味で良いことです。彼らは実際に重要な海の清掃をしており、また、プラスチックを取り除くことで報酬を得ているため、乱獲がある程度防止されているのです。より持続可能な漁業が始まっており、海がより健康になろうとしています。
ゴミのもう一つのカテゴリーは、試作品のプラスチックの小片(プラスチックが出荷される形態)や劣化したプラスチックなどのマイクロ・プラスチックです。その除去のために、自然界で見られる生態模倣の原理をも用いています。

SI:海のゴミや、海で生じている人間が原因の問題に対処するという点では、各国政府はどのように協力していますか。
クローリー:海の清掃という問題は、ヨーロッパでは大きく関心が持たれています。この問題に取り組む上での主要なリーダーシップは、環境問題に集中する家族基金や環境団体から来ています。私は意味のある海の清掃を行うため、頑張って資金集めをしています。それをする上で、政府の参加や人々の共同作業がより多くなっていくと思います。活動は国をまたいだ共同の活動になることが理想的です。私たちはそのような方向に行きたいのですが、現在はそうなっていません。

今がその時

SI:人類が海に及ぼしている恐ろしい害に関してあなた方がしていること、そして状況を変えるために行われたことを念頭に置き、地球の海の未来に対して、あなたはどのような希望を持っていますか。

クローリー:これは解決できる問題なのです。巨大な変化は必要ありません。そのためには、小さな変化をする多くの人と、ある程度の創造性が必要なだけです。私たちは、何をする必要があるかについて多くを学びました。今こそ、未来の世代のためにより良い世界を創造するときです。今こそ、私たち自身が散らかしたものの掃除に参加するときです。何を行ったかを学びながら、そして未来のために行動を改善しながらです。これは挑戦であり、私は希望を持っています。

SI:何か付け加えたいことはありますか。
クローリー:私は、すべての人がこの過程に参加することを勧めます。世界のために可能なことに実際に参加することには、驚くべき面白さと喜びがあります。私は、すべての年齢の人々がより多くの創造性と肯定的なエネルギーを解き放つ方法を見つけたいと思います。若い人々は本当に美しいエネルギーと創造性を持っています。引退した人々は生涯の経験を持っており、世界をより良くする上でとてつもない貢献ができ、そしてもちろん、その間にすべての人がいます。人々は、自分ができることは多くないと感じる場合があります。自分自身を教育し、行動に小さな違いをつくり、地域社会や近所に対してより貢献するだけで多くのことが可能だと、私はすべての人に伝えたいと思います。私たちは皆、もっと寛大に、より多くを分かち合い、より多く貢献することを目指して互いに勇気づけ合うことにより、青緑色の地球を美しい住処に保つことができます。

詳しくは次を参照:
ceanvoyagesinstitute.org、projectkaisei.org