現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2014年 5月号 命を救う ―― 石けんを一つずつ

命を救う ―― 石けんを一つずつ

ジェイソン・フランシスによるサム・スティーブンス氏へのインタビュー

アメリカ、ジョージアを拠点とする地球石鹸プロジェクトは、2009年から使い掛けや捨てられた石鹸をホテルから集め、何百万個もの新しい石鹸にリサイクルすることにより、地球規模で健康を改善してきた。新しい石鹸は、地球規模の健康プログラムによって、石鹸を使用できず適切な衛生管理のない世界中の人々に配布されている。このグループの標語は「ゴミを減らす。命を救う。石鹸を一つずつ」である。ジェイソン・フランシスがシェア・インターナショナルのために、地球石鹸プロジェクトの責任者であるサミュエル・スティーブンス氏にインタビューした。

シェア・インターナショナル(以下SI): 世界中で子供の主な死亡原因は何でしょうか。

サミュエル・スティーブンス: 世界で5歳未満の子供の主な死亡原因は下痢性疾患と肺炎であり、合わせると毎年2,400万人以上の子供の命を奪っています。

SI:これらの病気を防ぐ最も有効な手段は何でしょうか。

スティーブンス:子供の二つの主要な死亡原因
である疾病を防止する最も効果的で手頃な方法が、実際には石鹸で手を洗うことだと知ると多くの人は驚きます。CDC(US Centers for Disease Control and Prevention、米国疾病抑制防止センター)と世界保健機関による研究では、単に石鹸による手洗いを奨励するだけで、下痢性疾患と肺炎の発病率を47%減少させることができます。つまり、適切な時に石鹸で手洗いすることにより、子供の生存率がほとんど2倍になるのです。子供の死の主要原因に対処することは、非常に有効な方法です。同時に、石鹸を最も必要としている人に届けることは、非常に手頃な手段です。

SI: 世界全体で、石鹸が使用可能でない人の数はどのくらいでしょうか。

スティーブンス:それを数値化することは難しいです。なぜなら、それは使用可能の定義に戻るからです。地球石鹸プロジェクトでの使用可能の定義についてお話しすると、ただ単に使えるだけでなく、石鹸をなぜどのように使うかを理解すること、石鹸について教育を受けていることも意味しています。世界中の多くの地域で、石鹸そのものは実際に使用可能です。人々は近くの市場や村へ行き、石鹸を購入することができます。しかし私たちが発見したのは、これらの地域の多くでは石鹸そのものは実際に入手可能かもしれないけど、石鹸の使い方を教えられておらず、そして最も大切なことですが、なぜ石鹸を使うか教えられていないとこです。ですから人々は、そのような種類の購入を選択していないのです。彼らがこれらの命を脅かす病気に感染する危険にさらされているのは、手を洗わないのが原因なのです。しかし多くの場合、彼らは望めば石鹸を購入でき、そうした考慮の上での決定をするために必要な教育を受けられるのです。

石鹸を必要とする人に届ける

SI:地球石鹸プロジェクトは、石鹸を必要とする人にどのように届けているのですか。

スティーブンス:私たちの仕事の一つの段階は、ホテルから石鹸を集めることです。私たちは、アメリカの約1,200のホテルと協力し、使用済みや捨てられた石鹸をリサイクルし、それらを新しい石鹸に作り変えます。2番目の段階はリサイクルの過程で、使用済みの石鹸を新しい石鹸に作り変えます。3番目の段階は、その石鹸を最も必要としている人に届けることです。そのために私たちは、戦略的に調査を行っている世界的な健康機関と協力しています。CDC、CARE(Cooperative for Assistance and Relief Everywhere――至るところでの援助と緩和のための協同組合)、石鹸が必要な地域で強力なプログラムをすでに実施している他の組織などです。
車輪を再発明するようなことはせずに、私たちは、ある種の補足的なプログラム――学校教育、衛生設備、清潔な飲料水のイニシアチブ――をすでに考えている組織と協力しています。私たちは彼らのこれまでの成果を利用し、彼らと共同し、そのような命を脅かす疾病の脅威に最もさらされている人々に石鹸や衛生教育を提供するための活動を計画しています。つまり地球石鹸プロジェクトとして現地で実務作業をするのではなく、コストを低く抑え、また石鹸を最も必要としている人に確実に届けるために、これらの地域社会ですでに存在感を持つ組織と協力しているのです。

SI:使いかけや捨てられた石鹸は、ホテルの部屋から世界の反対側の地域社会の新しい石鹸へとどのように旅するのですか。

スティーブンス:それは素晴らしい過程です。私たちは、その過程を成功させる途上で数多くのパートナーに依存しています。私たちの最初のパートナーはホテルです。ホテルの清掃スタッフが部屋を掃除する時、使用済みで廃棄された石鹸を捨てたりトイレに流すのではなく、石鹸を集め、1日の終わりにすべての部屋の石鹸をまとめます。ある期間を経てホテルで十分な量の石鹸が集まると、私たちの所に発送します。ホテルでは石鹸を出荷する際の送料が控除可能であり、さらに私たちが受け取った石鹸の価値に応じて減税を受けることができます。これら1,200以上のホテルとの協力関係がなければ、石鹸を作るのに必要な供給を受けることはできなかったでしょう。
2番目のパートナーはボランティアです。私たちは非営利組織であり、プログラムに参加するホテルからお金を貰うわけではないので、多くの従業員に給料を払う大金はありません。そのため私たちは、毎年何千人ものボランティアの援助に依存しており、彼らは実際の工場で使用済みの石鹸を新しい石鹸に作り変えています。石鹸を選別し、洗浄し、細かく砕き、練り直し、新しい石鹸に成形します。工場では5人のスタッフがフルタイムで働いていますが、彼らをサポートするボランティアが毎年何千人も必要です。
新しい石鹸が外に出せるくらい十分な量に達すると、石鹸を通常はコンテナに入れて出荷します。石鹸はコンテナ一つ当り約16万個であり、物流会社によって末端のユーザーに運ばれ、世界的な健康機関の現地の職員が受け取ります。石鹸が私たちが望むような影響を確実に及ぼすように、私たちは健康機関と協力して、分配を監督し報告が行われるようにします。
石鹸を最も必要としている人に届けるために、私たちはホテル、ボランティア、NGOなどのパートナーに全面的に依存しています。これらすべての基盤になるのが、経済的な援助を提供する個人、企業、基金などの寄付者の共同体です。私たちは効率的ではありますが、支払いをしなければなりません。このような経済的な援助があるため、私たちは事業を拡大し、より多くの人に奉仕し、より多くの石鹸を必要としている人に届けることができます。

何百万個もの石鹸をリサイクルする

SI:地球石鹸プロジェクトは、年間で何個の使用済みの石鹸を集め、そこから何個の新しい石鹸を作っていますか。

スティーブンス:集めた使用済みの石鹸の数を数えることは、難しい問題です。石鹸の種類はホテルによって違いますし、そのためサイズも異なります。あるホテルの石鹸はとても大きく、あるホテルの石鹸はとても小さいです。ですから私たちは、ホテルから受け取る石鹸を重さで計測する傾向にあります。1,200以上の協力ホテルから私たちが本年に受け取る石鹸は、25万ポンド以上になるでしょう。ホテルで使用している小さな石鹸を考えてみてください。その何百万個もの石鹸が今年リサイクルされているのです。石鹸のサイズが異なるため、何個かという数字を挙げることはできません。手順を経て、これら何百万個の使用済みの石鹸を百万個以上の新しい石鹸に変えていきます。新しい石鹸は1個4オンスのかなり大きな石鹸で、世界中の協力関係にある世界規模の健康機関に送られます。

SI:地球石鹸プロジェクトの仕事は、多くのパートナーを通して何カ国で行われていますか。

スティーブンス:戦略的な協力関係のお陰で、私たちは、地元アメリカでホームレスや難民の人々に提供する小規模な分配の試みから、世界中の他の30カ国まで、2009年から四大陸31カ国で仕事をしてきました。

SI:石鹸が使用可能でありながら石鹸を使う大切さを理解していない人々のことをあなたは話されましたが、地球石鹸プロジェクトが援助している地域で、石鹸を実際に初めて見る人はどのくらいでしょうか。

スティーブンス:面白いことに、私が予想していたよりも多いです。それは私たちが援助している人々の中でかなりの割合です。半分以下だと思いますが、石鹸を初めて見て体験する人数としては相当の数です。私たちが仕事をしている多くの地域で、人々は石鹸を以前に見たことがあっても、正しく使用したことがなかったのです。多くの地域では、石鹸を贅沢品か、衣類の洗濯などに使う実用品と見ており、健康であるために必要な衛生手順の一部だとは考えていません。

SI:地域社会があなた方の提供する無料の石鹸に依存せずに、継続的に石鹸が使用可能になるために、地球石鹸プロジェクトはどのように仕事をしているのでしょうか。

スティーブンス:それが私たちの仕事の核心です。私たちは1年かそれ以上にわたって石鹸と衛生教育を提供する長期のアプローチをしているため、私たちの希望と目標は、仕事をしているほとんどの地域で行動を実際に変えられるようになることです。私たちは、石鹸を定期的に使用しておらず、そのため生命を脅かす病気になる危険のある人々の地域を取り上げ、彼らに石鹸の使い方だけでなく、なぜ石鹸を使うのか、日常の生活習慣の中に石鹸を取り入れることがなぜ非常に大切なのかを教えることができます。
長い年月をかけて、彼らは石鹸を正しく使っているだけでなく、石鹸の価値を理解しています。彼らはそうすることで、可能な場合に石鹸を購入する選択をする可能性がより高くなります。私たちが仕事をしている地域で、石鹸が購入可能であり比較的安価な場合、私たちの目標は人々がそのように地元で石鹸を購入することにつなげることです。そのため私たちは地域社会に入っていき、無料の石鹸により私たちが最初に及ぼした影響は、参加者が自分自身で石鹸の購入を選択することにより持続可能になります。
あいにく、災害や難民危機で仕事をするような状況に置かれ、外に出て石鹸を入手する選択がただ単にないような場合もあります。難民キャンプに住んでいる場合は、外出して石鹸を買う機会はありません。その場合、私たちにとって長期間の仕事になる傾向にあります。地元の供給網が元に戻り稼働し、またそれらの人々がある種の正常状態に戻れるまで石鹸を提供し続けます。私たちはそれを、パキスタンの洪水の時やリビアの難民キャンプなどで見てきました。そこでは人々がある期間、他の手段が利用可能になるまで私たちに依存していました。私たちが仕事をしている地域で、行動の修正に集中している場合、長期的な目標は彼らが購入可能な場合は必ず石鹸を買う選択を行い、私たちの無料の石鹸に依存しないようにすることです。

SI:適切な衛生環境がある場合、人々の生活はどのように変わりますか。

スティーブンス:石鹸で手を洗うことは全く単純なことと思われるかもしれませんが、実際には健康を改善する上で信じられないくらい有効です。私たちは命を救うことについてだけ話しているのではありません。生活の質を改善し、尊厳を守ることを話しているのです。人々がより清潔になり、石鹸をより日常的に使うようになれば、彼らはより健康になり、生活の質が向上します。
私たちは、石鹸が生活を向上させる上で持つ直接の影響を単に見るだけでなく、二次的な効果を見ています。子供を例に取りましょう。もし子供が石鹸を使う習慣を持てば、彼らはより健康になり、より頻繁に学校に通えるようになり、より明るい未来の展望を持つことができます。同じことが大人にも言えます。もし大人が石鹸を使う習慣を持てば、彼らはより健康になり、より多く働けるようになり、そしておそらく家族のためにより多くのお金を稼ぐでしょう。ですから、健康を改善し命を救うことには直接の利益があり、それは非常に重要であり、私たちの仕事の鍵です。しかし私たちはまた、より輝く未来を、ある意味では経済的な発展をもたらす仕事をしているのです。人々がより健康的になれば、健康を改善した結果として彼らはより生産的でより良い人生を生きることができるのです。

詳しくは次を参照:www.globalsoap.org