現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2013年 10月号 地球を守る法的な義務

地球を守る法的な義務

ケイティ・オリビア・ヴァン・テルゴウによる
ポリー・ヒギンズ氏へのインタビュー

「エコサイド(環境破壊犯罪)という犯罪は、法律が自然に進化したものである。エコサイド法はその権限において過激なものではない。それは反対に、汚染の影響とより高位の責任を扱う法令の進化の一部である。法律の視点から見れば、エコサイドという犯罪を創設することは悪のドアを閉めることではない。それは実際、生命の、すべての生命の神聖さという、より高い価値を守ることに関係している」──ポリー・ヒギンズ

ポリー・ヒギンズ氏はロンドンの法廷で弁護士として差別訴訟や会社法に関して個人や企業を弁護していた時期に、地球には良い弁護士が必要だと確信するようになった。地球もまた不公平に扱われており、ヒギンズ氏の仕事の道具は十分ではなかった。率直に言って、地球の利益を保護する法律は存在しない。
2010年にポリー・ヒギンズ氏は国連に対して、エコサイドを平和に対する5つ目の犯罪とするように提案した。現在ローマ規定では、平和に対する4つの罪(ジェノサイド〔集団殺害犯罪〕、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪)を提示している。彼女の著書『エコサイドの根絶──地球の破壊を防ぐ法律とガバナンス(Eradicating Ecocide: Laws and governance to prevent the destruction of our planet)』は、ノンフィクション部門で2011年のピープルズ・ブック賞を受賞し、『地球は私たちのビジネス──ゲームのルールを変える(Earth is our Business - changing the rules of the game)』が後に続いた。
ケイティ・オリビア・ヴァン・テルゴウが、本誌のためにポリー・ヒギンズ氏にインタビューを行った。(2010年7月号のポリー・ヒギンズへのインタビューも参照)

シェア・インターナショナル(以下SI): 私たちの地球を守ろうとするあなたのアプローチに人々は驚きましたか。それとも敬遠されましたか。これはあなたが認識していることですか。

ポリー・ヒギンズ:面白いことに、外の世界はそれを奇妙だとは思っていません。仏教はそれを理解します。先住民の世界はそれを理解します。私が地球の権利や、地球の生きる権利について話し始めたとき、多くの弁護士が私のアプローチに疑問を感じ、次のように質問しました。「あなたは何のことを話しているのですか。地球は生きる権利を持っていませんよ」。私は言いました。「地球は生きている存在です。地球は確かに生きる権利を持っているのではないですか」
私は、自分と同じように考える人が他にいるに違いないと考えるようになりました。そして私は周囲を見回して、このことを本当に理解する3億7,000万人の仏教徒と、これを全く自然と考える3億8,000万人の先住民がいることを発見しました。それはヨーロッパの人口と同じです。7億5,000万人の人々が私と同じように考えるのです。
私はロンドンで伝統的な弁護士たちに囲まれていました。そして、自分と同じような考えを持つ弁護士がいることを悟り始めました。その空間により深く入り始めると、霊的な約束の空間にいることになります。そしてこれは霊的な旅であることを認識し始めます。それを神と呼ぼうが仏陀と呼ぼうが、また天使や高位の存在と呼ぼうが、私たちはこれらのエネルギーと繋がりを持っており、真の源のエネルギーと繋がりを持つかどうかを選択できます。
一度そのことを知れば、後戻りすることはありません。あなたはそれを感じ、関わることができます。それは筋肉を鍛えるようなものです。瞑想やあなた自身の高位の存在との会話によって鍛えます。すべてが変化し、人生には目的と、それまでよりはるかに大きな理解が備わるようになります。

SI:あなたはずっとこのような考えだったのですか。それともある時期からこのように考えるようになったのですか。

ヒギンズ:私はカトリックの厳しい躾を受けました。私の経験では、カトリックは人間によって人間のために運営される、全くの「命令と管理」の宗教です。また、私のカトリックの学生生活は、恐怖と暴力と管理によって動かされていました。そのため私は本当に宗教と宗教に関連するすべてのものを拒否しました。
5年近く前まで、私は真剣に瞑想した経験がありませんでした。自分と同じ考えを持つ人がいないかを探し求めていたとき、デボンのシューマッハー・カレッジを見つけました。私はそこで地球法学の1週間コースを受けました。そしてそこで、サティシュ・クマール(著者、環境活動家)が指導する瞑想に出会いました。それは私の人生を一夜にして変えてしまいました。もし私の瞑想がなかったなら、私は現在していることをしていないでしょう。


SI:瞑想によって、あなたはより創造的になりましたか。

ヒギンズ:はい、大いになりました。私の人生の目的は創造的になることだと思っています。エコサイドの法律はその一部です。

SI:あなたは瞑想をして、奉仕への衝動は強くなりましたか。

ヒギンズ:はい。実際に私にとって、私が行うことは、自己よりも大きなものに奉仕することに関係しています。私たちは自分が奉仕していると分かると、心の中で何かがシフトします。可能なことについてのビジョンを拡大しているのです。あなたの関心の輪を拡大しているのです。それは自分や、自分と友達についてではなく、動物たちの福利、地球の福利、すべての存在の福利に注意を払うようになります。そしてあなたは、すべての生命が神聖であることを理解します。


SI:エコサイドのアイディアについて、このアイディアをどのように思いついたかについて、より詳しく説明していただけますか。

ヒギンズ:私は2009年にコペンハーゲンで気候に関する会議で発言していました。私は地球の権利と地球の生きる権利について話していました。聴衆の中の誰かが、この大規模な損害と破壊を扱う新しい言語が必要だと発言しました。新しい世界を作るためには新しい言語が必要です。私自身は、この大規模な損害と破壊は大量殺戮(ジェノサイド)のようなものであり、生態系の殺戮(エコサイド)にすぎないのではないかと考えるようになりました。エコサイド──それは明らかに犯罪であるはずです。ところが、私は実際には、その言葉がその時点で存在していたことを知りませんでした。私はロンドンに急いで戻り、厳密な知的調査に没頭し、それを見つけ、最初の原理に戻りました。従来の国際犯罪にはどういうものがあるのだろうか。この法律は残りの法律に対してどのような位置付けになるのだろうか。既存の法律にこれを追加できるのだろうか。私は寝室の中を歩き回り、「私たちはエコサイドの犯罪を創設すべきなのだろうか。本当にこれを犯罪とする必要はないのだろうか」と声に出したことを覚えています。
これは実際には、陰の自己に直面して名前を与えることなのです。陰の自己に直面して名前を与えたときにだけ治癒を開始できるのです。私たちは問題を見る必要があり、直面する必要があります。問題は見られ、見えるようになり、名前を付けられなければなりません。そして許しと同情は、うまく行っていないことは何かを理解し特定したときに来るので、これは本当に大切なのです。
私たちは、このエコサイドを停止させなければならないと確認しました。それに名前を与えること、法律用語で定義を与えることで、法律を使うことができます。法律は道具であり、破壊に対する力になることができます。
私たちの法律は多くの問題を引き起こしました。知らず知らずに、つまり意図せずにです。
私たちは、ある種の故意の盲目を私たちに許すような、結果を見ない法律を導入しました。たとえあるレベルでは知っているとしても、知りたくはないのです。この故意の盲目は既存の法律によって置いておかれています。これは例えば、CEOと取締役会が株主の利益を第一に置いているような法律です。つまり、彼らは利益を第一にしているということです。そして結果を考えずにこれをした場合、世界規模の経済が大規模な損害と破壊を起こしながらお金儲けをすることになります。商業的なタールの抽出、フラッキング、遺伝子組み換え食品、原子力エネルギー、どうして良いか分からない大量の食料を備蓄すること、廃棄物の問題、北極圏での掘削などの結果が起こります。これらすべてが、人々と私たちの地球とそこに住むすべてのものに膨大な危害を引き起こします。これはうまくいかないシステムなのです。私たちはそれがうまくいかないことを知っています。私たちは単に動物たちに目を向ける必要があります。種の絶滅は恐ろしい速度で増大しています。


SI:もしエコサイドが現時点から事実として受け入れられたら、すべての環境破壊は直ちに止まりますか。

ヒギンズ:私は5年間の移行期間を提案しています。なぜなら、あらゆる法律は移行期間を必要とするからです。これは実際、法的期限において極めて寛大なものです。5年間の移行期間の間に、大量破壊を行っている企業は活動を変える必要があるのです。
基本的に起こることは、例えば、そのような汚いエネルギー企業がクリーンなエネルギー企業になるということです。彼らの補助金は引き上げられます。5年の間に徐々に無くなります。そして同時に彼らは技術革新と指導のための補助金を受けます。これは非常に大切です。このようにして問題を解決策に変えていくのです。そしてこれは、このような企業の多くでは実際には本当に素晴らしい人々が働いていて、彼らはうまくいかないシステムの中で行き詰まっているという真の認識です。ですからこれは、実施する新しいシステムの枠組みを、そのシステムへの非常に迅速な移行への枠組みを国際法に与えることによって行われます。さらに、それを達成するために必要なすべての援助を与えることです。それには援助が必要です。それには政府の援助、政府の方針、政府の資金援助と民間の投資が必要です。これは、国際社会に長期的な投資のシグナルを送るということです。これは生命を肯定するものです。そして、これは銀行の投資先を変え、すべてのことを変えます。これは危険な産業活動への資金の流入のスイッチを切り、他の方向への投資の流入のスイッチを入れます。それは集合的レベルでの意識の移行をつくり出します。


SI:既存の環境法規に関して何かお話しいただけますか。

ヒギンズ:世界中に500を超える環境上の法的な合意があります。問題はそこには多くの意図があるのに、法的な強制がないことです。多くの良い言葉がありながら、結果がありません。例えばイギリスでは、原子力発電の容量を拡大していませんが、核兵器を製造し他の国に売っています。
これは本当に、真に説明責任を持ち、法律を実施することに関わるものです。ある法律があることと、法律に強制機構を与えて、実際に強制を実施することとには違いがあります。ですからこれが、大規模な損害と破壊を起こすことを犯罪にするのが本当に大切な理由です。
これはまた、罰金から離れることでもあります。罰金とは「捕まえられるものなら捕まえてごらん」という法律です。もしある企業が環境的に悪いことをした場合、その企業が捕まればおそらく罰金を払うことになり、そしてその企業は10年間法廷で争うことができます。もし不利な影響を受けた地域社会が企業に対して行動を起こす場合、巨大な企業は膨大な財政的資源と法律の専門家を持つことが多いため、地域社会にとっては非常に困難でしょう。仮に地域社会が勝訴したとしても、それはほんのわずかな勝訴にすぎず、遅過ぎます。これのどこに正義があるのでしょうか。どこに説明責任があるのでしょうか。もし法廷に説明するために拘束されなければならないと実際に考えるなら、それは非常に強力な抑制になります。その場合、あなたは正しい決定をするように慎重になります。


SI:エコサイドに反対する法律は非常に論理的に聞こえます。なぜそれは、すでに存在していないのでしょうか。

ヒギンズ:私たちの文明に準備ができたときに、それが起こると私は考えています。そして私たちは今準備ができているのだと思います。これは理由なく現在出てきたのではないのです。


SI:現在、エコサイドの法律が最も必要なのは、どの国だとあなたはお考えですか。

ヒギンズ:世界中の多くの場所でエコサイドが発生しています。北側によって──例えばアメリカ、イギリス、そしてここオランダで登録されている大きな多国籍企業によって──南アメリカで発生している隠れたエコサイドがあります。またアフリカで、そしてカナダのような先進国で、多くの大規模な損害と破壊が発生しています。例えば、アサバスカ・タールサンドです。〔アサバスカ・タールサンドまたはアルバータ・タールサンドとも呼ばれるアサバスカ・オイルサンドは、カナダのアルバータ州北東部に位置している。アサバスカ鉱床は、確認されている世界最大の粗ビチューメン埋蔵地であり、アルバータ州の三つの大きなオイルサンド鉱床の中で最大のものである〕
エコサイドを国際法にすることで、世界中の枠組みをまさに根本的に変えていることになります。そしてそれが非常に大切なのです。それは一国だけで実施するのではないのです。その場合、おそらく次に起こるのは、大企業が登録を抹消して他の国で再登録するだろうということです。これはまさに、全体にわたって公平な場をつくり出すことです。


SI:あなたは2番目の種類のエコサイドについて話されていますね。それについて詳しくお話しいただけますか。

ヒギンズ:同じように重要な2番目の種類のエコサイドがありますが、それについては理解されないことが多いです。これは自然に発生するエコサイドであり、海面の上昇、津波、洪水などです。
エコサイドに対抗する法律は、人間が引き起こした環境破壊だけを対象としたものではありません。それはまたすべての国が一緒になり、自然に発生したエコサイドによる危険に直面している人々を援助する、法的な保護の義務をつくり出すことでもあります。私たちはその対話を今開始する必要があります。

Polly Higgins: Earth is our Business─changing the rules of the game. Shepheard-Walwyn (Publishers) Ltd. London, 2012.

EUでエコサイドを犯罪にするためのヨーロッパ市民イニシアチブについて詳しくは、www.endecocide.euを参照。エコサイドを国際的な犯罪にするサポートをしているWish20地球市民イニシアチブについては、www.eradicatingecocide.comを参照。請願書の署名期限は2014年1月21日である。