現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2012年 12月 豊かな国と貧しい国の間の貿易と負債の関係

豊かな国と貧しい国の間の貿易と負債の関係

パトリシア・ピッチョン



2008年の経済危機の後、影響は銀行だけに限られるだろうと当初は考えられたが、それは公的債務として政府の巨大な負担となった。そして今では、世界中の豊かな国と貧しい国の両方が影響を受けていると私たちは理解している。これは、現在の経済システムを支えるためにさらに多くの負債を抱えようとする国際的な経済機構や政府を通しての悪影響という事例にとどまらない。それはまた、現在のシステムが緊急の改革を必要としており、そうした改革の幾つかは形をとり始めているということである。ただし、相当の困難があり、現状から依然として利益を得ることができると信じる者からの反対もある。
投機が高レベルで許容されていることにより不安定さが増し、崩壊の危険が増すことはよく知られている。少数にとっての興奮は多くにとっての不幸となる可能性があり、実際にそうである。1980年より以前には、世界中を循環する資金の約20%が投機性のもので、約80%が最終的に実際のプロジェクトに投資されていた。1980年代の規制緩和後にこの投機と投資の関係は逆転し、資金の約20%が投資され、80%が投機に費やされた。これは最終的に人々と国家を疲弊させる要因の一つである。

投機を抑制する

一つの例は現在の商品における投機である。ある集団にとって「面白い」ことが他の人々、特にこれらの商品(様々な穀物、石油など)に依存している人々にとって、正しく食物を得ることができないという結果になる場合がある。また人々は、そのような投機による大きな価格変動に対処できるだけの貯蓄をすることができない。各国政府は何もできないわけではない。各国政府は結束し、議会で投機を抑制する法律の草案を作り、制定することができ、多くの方法で市場の予想変動率を小さくすることができる。政府は民間セクターにおける主要な参加者の力を、特に活動が高いリスクを伴う場合に制限することができる。これらには、利益と損失の両方が高くなる可能性のある、あまり理解されていない高リスクな金融商品を創造して使用することが含まれる。
すべてを「自由市場」に任せるべきだというアイディアの背後にある思考は、日和見的で浅薄であると証明された。それにより多くの場合、多数の犠牲のもとで少数が利益を得るのであり、責任のあるガバナンスとはほとんど関連のないものである。世界中の政府は、たとえ他の責任を果たさなくても、すべての人に食料、住居、健康管理、教育へのアクセスを提供する義務を持っている。これらの四つの基本的な必要は本質的には人間の権利であり、これらに応えることは様々な政治システムや経済システムと両立できる。このアプローチを支えているのは、人間の生命に対する尊重と、他者には否定するものを自分たちのために望むことはできないという信念である。

自由貿易はなぜ、どのように自由ではないのか

自由貿易は自由市場の考え方の重要な表現であるが、実際には、豊かな国と貧しい国の間の貿易協定は貧しい国に不利な場合が多い。例えば、1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)を通したアメリカ、カナダ、メキシコの貿易関係を振り返ってみる。ジョセフ・スティグリッツ氏とアンドリュー・チャールトン氏は、彼らの著書『フェアトレード――格差を生まない経済システム』(日本経済新聞出版社、2007年)で次のように結論付けた。アメリカは農業補助金を維持したため、「巨額の補助金を受けた米国の農業セクターと、メキシコの小作農・家族経営農場が戦うことになった」。アメリカはまた、非関税障壁を使い、メキシコ産品の一部を締め出した。アメリカの農家は、「メキシコ市場での価格を大幅に下回る価格で多くの作物をメキシコに輸出し、メキシコ国内産品の価格を引き下げた」。これは、全労働者の5分の1が農業に従事し、国民の約75%が貧困である国で起こったことである。自由貿易の最初の10年の終わりには、メキシコの輸出額は年率10%の割合で増加していたが、平均実質賃金は下落し、アメリカの自国の農民に対する助成金のために一部の最貧層はさらに貧しくなった。

債務をどのように扱うか:債務法廷

生産的な融資や投資には一定の役割があるが、貧しい国が自国内の資源を動員するのではなく、外国の財源に過度に依存しているとき、彼らは非常に大きな(最終的に返済不能な)債務を背負うことになる。ティム・ジョーンズ氏の最近の報告書『債務の状況』の中でジュビリー債務キャンペーンが指摘しているように、資源を動員することは、例えば納税の促進や、税金逃れ、脱税、資本逃避への対処などを意味する。それはまた、一般的により一層の透明性を実現したり、国からのまたは国への流れを監視することも意味する。しかし、指導者が無謀にも全く返済不能な額の融資を受け、現在の世代がその結果に苦しんでいる国も幾つか存在する。無謀な貸し手側もある程度の責任を負わなければならない。この報告書において出されている興味深い提案は、何年ものキャンペーンの後でついにその時が来たのであるが、債権者と債務者から独立した債務法廷を創設するというものである。この法廷では、債務が大きすぎる場合、独立国家は調停機構を利用して債務の帳消しを求めることができる。債務法廷は問題の国家からだけではなく、市民団体などの他の参加者から証拠を聴取することができる。法廷への控訴期間中は、債務返済の猶予が布告される。借款が帳消しにされるのは、それが不当に不合理に負わされている場合である(自らの懐を肥やす指導者によって負わされている場合、例えば、被統治者の同意を得ていない場合であり、あるいは、見境のない貸手、つまり詐欺的で曖昧な融資条件を意図的に提示する者によって負わされている場合である)。残存する債務は、その国が人間の基本的な権利と必要を守れるように軽減される。これは不良債権を返すためにさらに借り入れをすることになる現在のIMFの救済融資よりも好ましいと、報告書は指摘している。

債務そのものの取引:ハゲタカファンド 

債務を抱えた開発途上国をかろうじて債務を返済できる状態に留め、意味のある開発を妨げていることが多い世界銀行とIMFの融資方針の側面が一因となり、現在、債務の脅威は開発途上国(エチオピアがその良い例である)へと戻りつつある。そのため、しばしば秘密主義をとるハゲタカファンドの活動を抑制することが特に重要である。そのようなファンドの一つであるFGヘミスフィアは、(1980年代にモブツ将軍の下でコンゴの国営鉱山会社によって生じた)コンゴ民主共和国の債務を300万ドルで購入し、ジャージー管区に持ち込まれた訴訟において、1億ドルを求めてコンゴ民主共和国を告訴した。大衆の反感を買う例はほかにもあった。そのため、イギリスは2010年に、貧困国から請求できる金額を制限する法律を可決した。「王室属領」のジャージー管区においてイギリスの枢密院が2012年に下した判決は、ハゲタカファンドのFGヘミスフィアにとって不利なものであった。
成すべきことが多く残っているのは明らかであるが、より公正な貿易と融資方針、過度な投機の抑制、そして公正で開かれた過程を通しての債務の帳消しは、貧困国の一層の安定と開発に貢献し得るものである。