現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2012年 4月 命のための水

命のための水

ジェイソン・フランシスによる
ジョン・マクドナルド氏へのインタビュー

「グローバル・ウォーター」は、世界中の地域社会に安全な飲料水と衛生設備を提供することに専心する国際的なNGO(非政府組織)である。国連によると、世界中の約9億人の人たちが清潔な水を入手することができず、合計26億人以上の人たちが基本的な衛生設備を利用できないとのことである。
開発の専門家であり、元国連大使であるジョン・マクドナルド氏は1982年に、医師であり、カーター元大統領のホワイトハウス特別補佐官であったピーター・ボーン博士と共にグルーバル・ウォーターを創設した。グローバル・ウォーターは水資源問題についての認識を喚起する権利擁護団体として始まったが、全世界の水資源供給計画に直接関わることへと移行していった。マクドナルド氏は「国連水と衛生の10か年計画」(1981年ー1990年)に着手し調整した人であり、現在ではグローバル・ウォーターの会長である。ジェイソン・フランシスがシェア・インターナショナルのために彼にインタビューした。

シェア・インターナショナル(以下SI):「国連水と衛生の10カ年計画」はどのような結果を生み出しましたか。

ジョン・マクドナルド:その10年間に11億人が安全な水を入手し、7億6,900万人が衛生設備を利用できるようになりました。これは、世界保健機関が示した数字です。その期間内にそのようになったのには四つの理由があります。
最初の理由は政治的なものです。国連総会がこのアイデアに着手し、様々な国の40人の開発大臣が国連で発言して、10カ年計画を求める私の決議案を支持してくれました。彼らは自らの国に戻り、国連でこの重大な発言をしたことを上司に話し、彼らはそれに関して何かをしなければならなくなりました。そのため、彼らはこのアイデアに対して行動指向的になったのです。
私たちが行った二つ目のことは、世界銀行と国連開発計画に対して水用のポンプのデザインを改めるよう求めたことでした。この点に関する問題は、西洋諸国が高く精巧なポンプを持ち込みましたが、それが6カ月後か9カ月後には壊れてしまうことでした。予備部品が外国では交換できず、ポンプは世界中で廃棄されました。私たちは、ポンプを現地の材料で作り、現地の人々が組み立て、現地の通貨で販売するように決定しました。予備部品を簡単に取り替えることができるようになりましたが、その一番良い例はインドで見られます。10年間に1,500万台のマークIIポンプがインドで生産販売されました。この活動により3億6,000万人が安全な水を入手できるようになりました。
私たちが行った三つ目のことは、女性を村レベルで関与させることでした。女性は世界の水の運び手です。頭に水瓶を乗せて運ぶ女性を見ることは絵のように美しいのですが、それはきつい仕事で、彼女たちは水を求める人たちに新鮮な水を運ぶために1日4、5時間歩きます。水用のポンプと井戸が必要かどうか、それをどこに設置するかを決める村議会に女性を参加させるよう、私たちは強く主張しました。次に、ポンプの修理方法を女性たちに教えました。そのため、彼女たちは毎日5時間歩かなくても済むようになりました。
そして最後に、私たちは10カ年計画を監視する事務次官の職を国連に設けました。これらが10カ年計画が成功を収めた四つの理由です。

「命のための水」10カ年計画

SI:水と衛生の10カ年計画後に世界中で何が起こりましたか。

マクドナルド:こうした問題はレーダー網から外れてしまったため、2002年に私は第二の10カ年計画が必要だと決心しました。私は決議案を書き、8カ国の政府に出向きました。それの中には、合衆国、ロシア、カナダ、日本、そしてヨーローパの幾つかの政府が含まれていました。1カ国でもよいのでこの項目を国連総会の議題に上げてくれないかと1年間にわたって彼らに求めましたが、彼らはすべて「いいえ、私たちはそれには関心がありません」と言いました。
次に私は、2003年に国連淡水年に着手した中央アジアの国、タジキスタンの政府について調べました。そして、2003年に私はニューヨークにいるダジキスタン大使のところに行き、「あなたは素晴らしい仕事をされていますが、それはこの1年で終わってしまいます。それを10年間続けるにはどうすればよいと思いますか。どうしたらこの項目を国連総会の議題にすることができると思いますか」と尋ねました。
大使はそれが素晴らしいアイデアだとは考えましたが、私が大統領を説得することが必要だと言い、私に助言してくれました。大統領に手紙を書き、決議案を添えて、ニューヨークにいる自分のところに書類を送るようにと。大使は、このアイデアを支持する添え状を同封して、それを外交文書用郵袋で大統領に送ってくれたのです。
その6週間後に、タジキスタン大統領が首都で地方会議を開き、開会演説で彼は「命のための水」と呼ばれる第二の10カ年計画について呼びかけました。それは素晴らしいタイトルです。そこにいたすべての人たちが満場一致でそれを支持しました。そして彼は、大使に電話をし、「これを国連で世界に紹介してほしい」と言いました。私は大使に電話をして、「西洋諸国には近づかないように。それは私がやりますから。あなたがやる必要があるのは開発途上諸国から120件の署名をもらうことです。そうすれば、西洋諸国は後に従います。ラテンアメリカ諸国の署名をあなたが得るのを私は助けるつもりです」と言いました。2003年12月1日、彼は120件の署名を得て、狙い通り、西洋諸国は降参し始めました――アメリカは最後でした。そして、2003年12月23日に、2005年から2015年までの命のための水10カ年計画が着手され、それは今も条文化されており、実際に前進しつつあります。それは、開発途上諸国で必要とされるものを認識して物事を成し遂げる方法を、政治的なノウハウと組み合わせてみるという問題です。

グローバル・ウォーター

SI:グローバル・ウォーターは開発途上諸国で衛生設備の計画を立てていますか。

マクドナルド:もちろんです。グローバル・ウォーターがグアテマラで行ったことの実例を紹介させてください。世界中の多くの学校では衛生施設が利用できません。少女たちが思春期を過ぎ、6年生くらいになったとき、学校をやめてしまいます。というのは、彼女たちは茂みに行って用を足すのを怖がるからです。彼女たちは殴られたりレイプされたりするのを恐れるようになります。そのため、学校に行かなくなり、戻ることはありません。
私たちはグアテマラの20校の学校内に衛生施設を設置し、少女たちは学校に戻ってきました。私たちが最近推し進めているアイデアは、世界中の政府やNGOに学校内に衛生施設を造らせようというものです。それほどの技術はいらないため、実際にそうすることはいろいろな意味でとても簡単です。この問題の重大さを示す実例を挙げると、インドでは7億人に室内トイレがありません。この問題がいかに深刻かを物語っています。

SI:雨や湧き水の集水システムについて述べていただけませんか。

マクドナルド:雨の集水は、家の屋根の周りに雨どいを取り付けて、雨水を用水桶に集めることです。それはとても簡単です。湧き水の集水の例としては、ニカラグアには安全な水と衛生設備のない農村がありました。女性たちは泉まで丘を登り下りして8キロメートルも歩かなければなりませんでした。私たちは地域のNGOと一緒に働いており、彼らはどこに泉があるかを知っていたため、私たちは泉の周囲に、汚染から守るために基本的にコンクリートでできた集水設備を造りました。現地の男性たちが8キロメートルの水路を掘り、8キロメートルのパイプを設置しました。私たちは水を村に送るために重力を利用したシステムを使い、すべての人がそこから来る新鮮な水を台所の蛇口から得られるようになったのです。この計画の総費用は2万ドルで、それは私たちが支払いましたが、その2万ドルと、時間と労力を注いでくれた現地の人たちの労働から500人の人たちが恩恵を受けました。実際に計画がうまくいくためには、現地の人たちの賛同を得なければならないのです。彼らはそれを自分たちの計画と呼んでいますが、それが鍵なのです。

SI:アメリカや他の政府はグローバル・ウォーターに資金を提供しているのですか。

マクドナルド:グローバル・ウォーターは政府から資金をもらってはいません。すべてNGOや民間人からです。別の例として、「ピースコー(平和部隊)」は長年にわたって水と衛生設備の大きな計画に取り組んできました。私たちはグアテマラでピースコーのボランティアからなるグループと一緒に働いています。彼らが水と衛生設備の計画を実行する資金がないことを知りました。というのは、ピースコーはいつも火の車だったからです。そのため私たちは、ピースコーのボランティアの人たちにアメリカにいる家族に手紙を書いてもらい、彼らの家族はグローバル・ウォーターに寄付してくれました。それは税控除になります。私たちはそのお金をピースコーのボランティアの人たちに渡し、彼らは水と衛生設備のための彼らの計画をやってみることができたのです。物事を行うためにはあらゆる種類の工夫に富んだ方法があります。
私たちの事務局長であるデッド・クーパーは、非常に少額で中央アメリカの一つの村全体に衛生施設を購入する計画を監督しました。その計画が終わるとき、村のリーダーは言いました、「あなたたちは私たちに威厳を取り戻してくれた」と。それは素晴らしい言葉だと思います。簡単な行動が生活を変えるためにどれだけのことができるかは信じられないほどです。あなたの雑誌が言っているのはそういうことです。それは分ち合いです。計画の構築を分かち合わなければなりません。そして次に、その恩恵を分かち合うのです。

SI:開発諸国と開発途上諸国両方の政府は、衛生設備と安全な水の必要性にどのように反応していますか。どう考えても、彼らはできるだけのことをしているようには思えませんが。

マクドナルド:彼らはしていません。まず最初に、私の言っていることを西洋諸国が理解するのは難しいです。そこに行って見てくるべきです。インドでは室内にトイレがない人が7億人いることを想像できますか。それは信じ難いことです。アメリカや開発諸国の多くの人は、そこに問題があることさえ知らないのです。
政府について言えば、2005年にアメリカで「貧困者のための水資源法」と呼ばれる法律が通過署名されました。この法律は、新鮮な水と衛生施設のための資金を諸政府に提供する上で大きな成功を収めました。アメリカは諸政府に対してこの3年間に毎年約3億2,000万ドルを配分してきました。しかし、諸政府はそのほとんどを都市部で使ってしまいます。彼らは都市部や大きな衛生工場などに神経を使っています。彼らは農村貧困者のことは気にしていません。この法律が想定している対象は彼らなのですが。「貧困者のための水資源法」のアイデアは、まさしく私たちが語っていることをすることです。つまり、都市部ではなく、村レベルで貧困者に水と衛生設備を提供することです。しかし、政府に資金を農村レベルに送らせるのは難しいことです。彼らは村の心配をする前に、まず最初に都市部の人たちと政府の構造を大事にします。それは開発途上国の大部分に言えることです。

SI:この問題はどの程度克服されつつあるのですか。そして水計画は、それを必要としている農村部に行き届きつつありますか。

マクドナルド:それは難しいです。それはその国のリーダーシップによって決まります。私は最近、ドイツで会議に参加し、ケニアの水灌漑大臣に会いました。幸運なことに、大臣は女性(チャリティー・カルキ・ンギル氏)でした。彼女は、私が少女たちや衛生設備について述べたことを本当に理解しました。そのため、農村計画に着手し、この水資源問題を村レベルにまで進展させようとしています。この問題を理解する人たちを献身的にさせ、それを実現させなければなりません。
私は、ミレニアム・ウォーター同盟と呼ばれる、アメリカの29のNGOからなるグループに参加しています。私たちはすべて、開発途上国の貧しい地域が安全な水と衛生設備を利用できるようになるのを助けるために一緒に働いています。私たちは学校に衛生設備が設置されることを望んでいます。というのは、教育は発展の核心だからです。この同盟はその資金のほとんどを支援組織から受けており、学校内に衛生設備を造ることを将来の資金調達の第一の優先事項にしています。

SI:清潔な水が様々な必要すべてを満たすために利用できるようになったとき、地域はどのように変わるのでしょうか。

マクドナルド:それは革命的です。小さな子供たちはそれを信じることができません。彼らはいつも微笑んでいます。ここで私が話した村のリーダーは次のように言いました。「あなたたちは私たちに威厳を取り戻してくれた」と。それが、私たちすべてが携わっていることの核心にあります。安全な水と衛生設備を提供することで、人々の生活を改善しようとすることです。

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www.globalwater.org