イスラエルの若者が兵役を拒否する
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アレス・クステックによるリオル・ボリニッツ氏へのインタビュー
- 20歳になるイスラエルの青年リオル・ボリニッツ氏は、近年パレスチナ人に対するイスラエルの国策に抗して兵役を拒否することになった多くの若者の一人である。2005年3月に彼は、Shministim書簡の署名者である250名の高校生仲間に加わった。兵役を拒否する理由を説明するこの書簡は、イスラエル首相と他の高官たちに送られた。リオル氏は、彼が知っている限り、兵役拒否のゆえの軍事刑務所拘留を免れた最初のイスラエル人となった。アレス・クステックがスロベニアのマリボルで、シェアインターナショナル誌のために彼にインタビューを行った。
- シェア・インターナショナル(以下SI):なぜあなたは、イスラエルの兵役を拒否したのですか。
- リオル・ボリニッツ:私はイスラエルの兵役につくことを拒否しましたが、その第一の理由はそれが私を強要するからです。イスラエルではすべての若い男性は3年間、女性は2年間兵役に服さなければなりません。私は、もしそうしたら間違ったことをすることに身を置く状況に耐えられなかったのです。イスラエルのパレスチナ支配と隣国の人たちへの圧迫、例えばレバノン人に対するイスラエルの戦争やイスラエル軍の他の政策は、私には同意することができない行為です。私は政策が正しくない軍に入ることはできませんし、暴力が解決策であり、平和がそれによってもたらされるということを信じることはできません。平和を達成するには他にもっと良い道があると思います。
- SI:あなたが兵役を拒否した結果はどうでしたか。
- ボリニッツ:イスラエルの兵役を拒否するすべての人は、一定期間を軍の刑務所で送らなければなりません。幸いにしてそのようなことにはならずにすみました。私は良心的に反対するという理由で、兵役を拒否するということを記した書簡を政府と軍に送りました。私はまた、同年齢の250人の若者たちと連帯して、イスラエルによるパレスチナ領土占領ゆえに兵役を拒否する旨のShministin書簡(高等学校最上級生による書簡)を書きました。私は刑務所に入れられることを覚悟していましたが、驚くべきことに、刑務所に送られるであろうと予想した日以前に、兵役を免除する司法権を持つ「良心委員会」という特別委員会に出頭するように呼ばれました。そこで私は、イスラエルのパレスチナ占拠になぜ同意できないかの理由を述べたにもかかわらず、そして、政治的な反対ではなく平和主義者にのみが拘留が免除されると思われたのに、入獄が始まると予想された日の前に、私は兵役を免除されたのです。幸運としか言いようがありません。
- SI:イスラエルの多くの若者が兵役を拒否しているのでしょうか。
- ボリニッツ:私たちに連帯し兵役を拒否することを公にしている約250人の若者がいます。政治的または個人的な理由によって兵役を拒否している若者が他にも大勢いるのですが、このことはメディアによって報道されていません。2006年に兵役に赴くであろうと思われていたイスラエル人の50%は、兵役に就かなかったか、兵役を完結しませんでした。この数は毎年増えています。
- SI:この問題は、どのようにしてイスラエルのメディアに提起されているのですか。
- ボリニッツ:私は、2005年に起こった私たちのケースについてのみ話すことができます。私たちは非常に説得力のある手紙を書き、その中で私たちの理由を説明しました。私たちが拒否したのは、イスラエル社会に反対するからではなく、この社会を愛しているからであり、私たちの国の平和を愛しているからであることを示して、この書簡を民主主義の手段として送りました。私たちはこの手紙を政府のみでなく、メディアにも送りました。その反応は衝撃的で、様々なところでこの書簡が公開されたのです。イスラエル首相でさえ、メディアに向かって私たちの書簡を非難しました。それはまことに重大な結果をもたらしました。もちろん多くの人が私たちに反対の意思表示をしましたが、過去においては、兵役に服することは当然のことと受け取られてきた事柄であったので、私たちはそのことを良い事柄であると受け取りました。現在少なくとも私たちは、17歳の年頃の者が今は自分たちのために考えることができる、独立的思考の最初の兆候だと見なしています。それゆえ、たとえもし大多数の記事が私たちに事実上反対しても、私たちはこの問題を公の場所に持ち込みます。そのことが大変重要なのです。
- SI:イスラエルの占領はパレスチナ人にどのような影響を与えていますか。
- ボリニッツ:1967年のウエストバンクとガザの占領以来、パレスチナ人はつねに外国軍隊の支配の下で生活してきました。このことはウエストバンクとガザには民主主義がないこと、またはパレスチナ人の生活を支援することのできる、パレスチナ人が信頼をおける機関がほとんどないことを意味しています。代わりに、外国の軍隊が彼らの土地全域を支配しています。軍隊は人々について、軍が望むことなら何でも行うことができます。そして、彼らの土地や財産を理由を告げることもなく取り上げることができます。これらは占領というものの性質です。これに加えて、近年占領状態はますます悪くなっています。
パレスチナ人に対する最初にしておそらく最も悪質な抑圧的行為は、ユダヤ系イスラエル人を、パレスチナ人が生活しているパレスチナの領土に、軍事力を背景に強制的に入植させて彼らの入植地を作ったことです。このことは、パレスチナ人が買うことを許されず、住むことも訪ねることも許されない家を、イスラエルが建設することを意味しています。占領された領土内で、イスラエル人とパレスチナ人の間には完全な分離があります。同じことが道路についても言えます。たとえば、イスラエル軍はパレスチナ人が使用を許されない道路をたくさん造ってきました。それらの道路は、そのような道路を造ることによって、そしてそれに検問所を設置することによって、パレスチナ人の移動を制限するのです。各都市の入り口に添えられた検問所は、パレスチナ人がある場所から他の場所へ移動することを極めて困難にしました。人であっても輸送車であっても、イスラエル軍の許可なしにはそこを通ることは許されません。そのことは、もしあなたが生徒・学生であり学校へ行くために検問所を通ろうと思うならば、イスラエル軍がまず最初にあなたがそこを通ることを許可しなければならないことを意味しています。もしあなたが病院に行く必要があるなら、軍隊がまず始めに検問所を通過する許しを出さなければなりません。ですから、パレスチナの領土に住む人には移動の自由がないのです。
その上、占領地の広大な地域でのいかなる自発的な行為、例えば、家を建てたり家を拡張したり、商売を始めたり、フットボールに関するチームを作るといった地域の連帯組織を作ることでさえ、イスラエル占領軍の許可が要求されるのです。もしあなたが家を建てる許可を得ずに家を建てようものなら、イスラエル軍がやってきてそれが打ち壊されるだけでなく、逮捕されるかもしれません。このような状態なので、パレスチナ人は外国の軍隊による占領下に生きなければならず、このことが彼らの生活のあらゆる面を支配しています。こうした状態が、テロリズムが起こる理由であり、両国の間に憎しみがある理由であり、私たちが平和に暮らすことができない理由だと思います。 - SI:他のイスラエル人たちは、パレスチナの占領をどう見ていますか。
- ボリニッツ:占領が実際にパレスチナ人に何をもたらしているかについては、イスラエル社会に広く理解されてはいません。人々はパレスチナ人がイスラエル人の居住地からさほど遠くないところに住んでいることは知っているのですが、彼らに会うことも彼らを訪ねることもありません。テルアビブに住むイスラエル人は、そこが車でパレスチナから20分ほどのところであるのに、イスラエル軍の兵士でもない限り、パレスチナ人に会うことはありません。彼らがパレスチナ人と最初に出会うのは、彼らが兵士となり軍服を着て、パレスチナ人の村を侵攻するときです。このことは、平均的なイスラエル人は、パレスチナ人の生活がどうであるかのの手がかりさえ持っていないことを意味します。
- SI:他方であなたは、大勢のパレスチナ人に会ったのですね。
- ボリニッツ:私の体験は(一般のイスラエル人と)大変に違っています。私はイスラエル軍がやってきて根こそぎにした土地でオリーブの木を共に植える、人道的かつ政治的グループを通してパレスチナ人とコンタクトしてきました。私はまた、学校へ通う子どもたちを助けてエスコートしたり、人種分離壁の建設やパレスチナの土地を盗み取ることに反対する示威行動に加わってきました。
- SI:あなたは若い世代として、イスラエルとパレスチナの将来をどのように見ていますか。あなたは両者の人がいつか良き友人として平和裏に共に暮らす日が来ると思いますか。
- ボリニッツ:私はいつか共に平和に暮らす日が来ることを確信しています。しかしそのためには、私たちは共通の椅子に座り、両者が平等であることについて合意に達することが不可欠です。不幸なことに、イスラエルはこの地域で、そこがあたかも(自分たちのための)孤立した土地であるかのように行動しています。しかしもし私たちが、自分たちを私たちの隣人から引き離すのであれば、私たちは単に物理的な壁を築くだけではなく、心理的な壁を築くことになります。私たちは彼らを排除するのみならず、転じて私たち自身をゲットーに入れることになるのです。私はイスラエルとパレスチナ両国間に、両者がエルサレムを共通の首都とするそれぞれの部署であるという合意と、ある程度の保証金を与えて避難民を帰還させるという合意に達することができると信じます。実際これは極めて現実的な解決方法であり、多くの提案がすでにイスラエルとパレスチナの有力な政治家たちによって同意を得ていますが、現在のイスラエルとアメリカの首脳部はこれらを支持しません。時間がかかるでしょうが、私は両者の間に平和が訪れるであろうことを信じています。最終的には、平和は住民たちによって獲得されるのであり、政治家によってではありません。
- リオル・ボルニッツ氏は2006年10月17日にイスラエル軍の「良心委員会」に出頭し、兵役を拒否する旨を宣言した。リオル氏はここで良心的(兵役)拒否者と認定され、兵役を免除された。リオル氏は彼がなぜ兵役を拒否するに至ったかを釈明する次のような文章を記した。
- 「イスラエルの政策が検問所と拘留、襲撃と爆撃、暗殺と誘拐、分離壁と差別を伴う限り、このような戦争犯罪に加担する軍務に服することを拒否するに足る十分な理由があります。この私の行為はそのすべてに釣り合わないかもしれませんが、この政策を遂行するための代償は、単にイスラエルの隣人によってのみではなく、等しく私たちイスラエルによって支払われるべきものです」
「政治家たちは、最近の対レバノン戦争のための社会保障と名づけられた銀行口座開設の法案を通そうとしています。そしてアミル・ペレツ国防大臣の装甲車の経費は、将来民営化される会社を解雇される労働者によって負担されます。レバノン市民の殺害のための代価は、イスラエルの遺族によって支払われます。そして、なお数年間イスラエル人は、私たちが『なぜ彼らは私たちをそれほどまでに憎むのであろうか』と嘆く期間の代価を支払い続けるでしょう」
「この最近の戦争の間に、私は自分自身が一人の兵士となり得る年齢に達しました。私は高級軍事プロフィールを所有していますので、軍はおそらく私をレバノンに送るでしよう。もし私がこのことに疑問を抱かなければ、私は素直に命令に従ったでしょう。しかし私は、兵士にはなりたくはありません。そして、戦争が荒れ狂っている限り私は、流血に反対し、あらゆる政治問題を軍事的解決を通して遂行できるとする政策に反対する活動に参加します」
「(兵役)拒否にあたり私は、他の兵士たちおよび徴収兵たちに対し、メッセージを送ります。私は、彼らに他の道があることを知ってもらいたい。私のメッセージはまた、イスラエルの政策によって被害を受けたすべての人々に送られます。彼らに、違うイスラエル人がいることを知ってほしい。この行為がたとえ小さな一歩であろうとも、イスラエル社会がもっと正しく、もっと平和を愛する社会になるように、心からこの行為をイスラエルのために捧げます」
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