現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2006年 11月 水の権利のためのキャンペーン

水の権利のためのキャンペーン

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ジェーソン・フランシスによるトニー・クラーク氏へのインタビュー

トニー・クラーク氏はポラリス研究所の事務局長である。ポラリス研究所は、カナダのオンタリオ州に基盤を持つ非政府組織で、民主的な変化のために戦っている世界中の市民運動を援助するための戦略を開発している。彼は、経済的グローバリゼーションに反対する調査教育団体でサンフランシスコに基盤を持つ『グローバリゼーションに関する国際フォーラム』で働き、2005年の『正しい生き方賞』を共同受賞している。彼は『ボトルの中:ボトル入り飲料水産業への告発』(2005年)の著者であり、『青い黄金:世界の水を搾取する企業との戦い』(2002年)の共著者である。これらの本は、世界の水供給量の低下と、多国籍企業が水に対する‘権利’を、最も高く売りつけるための‘ニーズ’に変えようとする企て、そして世界中の地域社会が水資源のコントロールを取り戻そうと苦闘する様子を見事に対比させて描いている。ジェーソン・フランシスが『シェア・インターナショナル』を代表してトニー・クラーク氏にインタビューした。
シェア・インターナショナル(SI):経済的グローバリゼーションとは何でしょうか。
トニー・クラーク:経済的グローバリゼーションは本質的に、世界中に自由市場経済を拡大することと関係しています。1980年代後半のベルリンの壁の崩壊と共に、共産主義と資本主義に二極化した世界経済が突然、資本主義が支配する一極化した世界経済に取って代わりました。その結果、多国籍企業の数が飛躍的に増加し、世界中に市場を開拓しました。「最後のフロンティア」の一つは公共部門であり、政府が住民のために大量の資本のコントロールを維持している分野です。利益主導の多国籍企業に関する限り、その手法は、公共部門を新たな潜在的市場として狙いをつけ、これらの市場を企業が引き継ぐ戦略を開発することです。公共部門は大部分が「コモンズ(共有財産)」として知られるものを保全し守るために存在しており、つまりそれは、私たちの日常生活のための利益主導でない空間、市場の需要と供給の法則に従うべきでない場所を意味します。それは空気、水、食物を育てるための種子、生命そのものを構築する遺伝子などを含みます。多くの国々や文化では、それは保健医療、教育、交通その他の公共サービスをも含みます。
経済的グローバリゼーションの名の下に、多国籍企業は、政府からの援助を受けて、貪欲にこれらの公共空間や公共サービスの民営化に取り組み、共有地を市場に変容させ、そこでは文字通り「すべてのものが売出し中」となります。
民営化の負のインパクト
SI:民営化が地域社会や世界環境に与える影響は何ですか。
クラーク:民営化には三つの形態があります。第一に、水道や他の公共サービスなどの公共資産を政府が完全に営利企業に売却する、民間所有モデルがあります。第二に、政府が水道その他の公共サービスを一定の期間(通常25年、50年、100年)企業に委託する、民間免許モデルです。第三は、料金請求や代金徴収のような公共サービスの一部を民間企業と契約し、他の管理についてはコントロールを維持する民間契約モデルです。最もよく用いられるのは第二の免許モデルで、通常「民間と公共のパートナーシップ」を通して開発されます。この過程を通して、市民が「公共財産と公共サービス」として理解していたものが「民間の商品とサービス」に変容します。分配の仕組みは市場となり、もちろんそれは支払い能力に基づいて決定されます。支払うことのできる者だけがサービスを受けることができ、支払い能力のない者はサービスを受けられません。例えば、水道が営利企業に受け継がれたとき、株主への配当を保障するために水道料金は常に引き上げられます。さらに、水道メーターが備え付けられ、それが貧しい地域に破壊的な影響を与えます。例えば、ヨハネスブルグの貧しい地域では、値上げした水道料金を払えなかった何百万もの人々が水道を止められました。同じことはデトロイトでも起こり、4万人が突然水道を止められました。水道のような公共サービスを民営化することは、本質的に、権力を地方自治体から営利企業の手に移行させ、企業はしばしば外国資本に支配されています。
民営化は自動的に環境保護を保障するわけでもありません。水道サービスの大手企業は環境対策の貧しさで悪名が高く、その理由は主に、その最も利潤の低い事業が下水処理、廃棄、埋め立てだからです。その一方で、水道料金を上げることで水の消費量が下がると水道会社が不満を言う事例もあります。それは収入と利益の低下を意味するからです。
SI:ボトル飲料産業の影響は何ですか。
クラーク:多くの意味で、ボトル飲料は水道サービスの民営化の最先端です。それは現代社会における水の商品化と商業主義の第一の実例です。水は郊外の泉や地域の水道管から取られ、ボトル(大部分はプラスチック)にパッケージ化されて、通常の水道料金の数千倍の値段で消費者に販売されます。15年から20年前は、ほとんどの人々は地域の水道管からの水を日々飲んでいましたが、今ではアメリカ人の5分の1はボトル入りの水だけを毎日飲んでいます。これは消費者の習慣の顕著な変化であり、水道管の水よりもボトル入りの水の方が優れていると強調した大量の市場キャンペーンの結果です。もちろんこの主張には現実的な根拠はありませんが、ますます多くの国民が水を買うようになっています。そして、ボトル入りの水を買う習慣を身につけ、日々の水への必要を満たすのに多くのお金を支払う人々が増えれば増えるほど、公共水道施設を民営化すべきだという理論に与するようになる人々も増えるのです。
ボリビアの実例
SI:世界銀行と国際通貨機構(IMF)は、しばしば国家公共サービスの民営化を含む条件付ローンを提供します。これらのローン条件の実例と、それに反対したときの結果の実例を幾つか挙げていただけますか。
クラーク:典型的なのはボリビアのケースです。1999年に世界銀行はボリビア政府にローン更新の条件をつけ、コチャバンバなどの市の水道を民営化することを要求しました。コチャバンバの公的水道施設はアメリカの建設会社ベクテルの子会社に売却され、株主への配当のため即座に地域の水道料金を値上げしました。彼らは地元の人々が雨水を集めることにも課金したのです! 2000年の春にコチャバンバの人々が反抗し、ベクテルの幹部は荷物をまとめて退却することを余儀なくされ、水道施設は地域に返還されました。しかし、それは長くは続きませんでした。そのすぐ後に、ベクテルはオランダとボリビアの投資協定を利用して、ボリビア政府を提訴して将来の利益と収入の損害賠償として2,500万ドルを請求しました。ベクテルは、オランダの子会社を通して二国間の投資協定の下に提訴することができたのです。要するに、ベクテルのようなアメリカの大企業は、他国に関する二国間投資協定を使って、ラテン・アメリカで最も貧しい国に何百万ドルもの支払いを要求することができるのです。さらに当時、世界貿易機構(WTO)で水道サービスを含む交渉が成立していれば、アメリカ政府はボリビア政府に対して、コチャバンバのような市の水道サービスの民営化を要求し、経済制裁を強化できる立場に立っていたでしょう。
行動への示唆
SI:政府が水をすべての人々の権利として認識し、環境保全を促進し、企業に環境基準を守らせるために何ができるでしょうか。
クラーク:初めに、政府は自分の家を整理する必要があります。すべての国で、政府は憲法と法律によって、すべての国民がきれいな水を入手する権利を認識する必要があります。公共水道サービスを強化し、ボトル入り飲料産業を民主的なコントロールの下に置いて、すべての人のために平等な水の配分を保障するための法律と公共政策を採用すべきです。そうするためには、政府は、湖、河川、流水のような地表水だけでなく、地下水も保全し規制する必要があります。このような手段は、農業や産業のための水使用の規制を完全に監視し評価することを含まなければなりません。国際的な領域においては、水を人権として確立する国連協定が必要であり、地球上の現在と将来の世代のために政府が公的に保護する環境トラストを設ける必要があります。このような協定は、多国籍企業の権力を抑えるための道具によって強化されなければなりません。加えて、特に途上国政府に水道サービスの民営化を強制するために、世界銀行と世界貿易機構によって利用されている権力と道具を除去するための集中した運動が必要です。それに代わって、これらの国際的金融貿易機関は、政府の良い公共水道サービスを提供する能力を強化するために用いられるべきです。
SI:多くの人々は、彼らの水供給が盗まれるのに甘んじていません。地域社会は水資源のコントロールを取り戻し、一致協力した世界的運動を起こすために何をしていますか。
クラーク:おっしゃることは正しいです。世界中の国々で世界的な水の正しい利用を求める運動が急速に高まっており、このような水の窃盗や権利の侵害を受け入れていません。結局のところ、これは地上における生命の本質そのものの問題なのです。水なしに生命は存在しません--植物も動物も人間も存在しないのです。人間について言えば、人体の60-75%は水でできています。ヨハネスブルグの貧しい地区では、人々はメーターのついていない水道管をつなぎ直すことで水道会社とそれによる断水を拒否しています。ウルグアイでは、地域の活動家と労働者が組織化して、水への普遍的権利を憲法に明記するよう国民投票を呼びかけています。世界中の都市で、ジャカルタからブエノスアイレス、マニラとヨハネスブルグに至るまで、スエズ社のような営利水道サービス企業は地域の反対運動の一番の標的になっています。インドでは、村人たちが座り込みを行い、コカコーラ社とペプシ社による採水に抗議して60以上の都市でデモが行われました。この水の正義を求める運動は、反対運動をしているだけではありません。公共的な代替案を提示するためにも力を合わせています。「民間公共パートナーシップ」を通して公共水道サービスの民営化を促進する代わりに、この運動は「公共地域パートナーシップ」という新しい形を通して公共水道システムを再構築することを提唱しています。そして、これらの新しい運動の指導力の多くは、南半球の途上国の市民と地域に根ざしたグループから来ています。
さらなる情報は:www.polarisinstitute.orgとwww.canadians.org.
水に関する事実
地球上の水の97.5%は塩水であり、残りの2.5%が真水で、その70%は北極と南極の氷山である。他の30%の大半は土壌の中の湿気または帯水層の中にある。人間が利用できるのは世界全体の真水の1%未満にすぎない。
水に関する現実
・11億人がきれいな水を入手できない。
・24億人が基本的な衛生設備を欠いている。
・汚水のために15秒に1人の子供が死んでいる。
・汚水に起因する下痢の脱水症状で1日に6,000人の子どもが死んでいる。
・世界の病院のベッドの半分は水に関係する病気の患者で埋まっている。
・途上国の国民の60-70%は安全な水と十分な衛生施設にアクセスできない。
・しばしば遠く離れた汚染された水源から水を集めるために、毎日女性や少女が2億時間以上を費やしている。
・1人の人間が生存するためには1日に4-5ガロン(18-22リットル)の水が必要である。平均的なアメリカ人<1人>は毎日100-176ガロン(455-800リットル)を用いている。平均的なアフリカ<世帯>は毎日5ガロン(22リットル)しか使っていない。
・水と衛生設備に対する援助は300億ドルに倍増される必要がある--これは飲料水に対する世界の年間支出の3分の1に満たない。
・きれいな水と衛生設備の資金を含め、子供に対する1ドルの投資は、長期的な公共サービスのコストを7ドル節約する。
・30カ国に住む世界人口の20%は水不足に直面しており、2025年には50カ国で世界人口の30%に増加すると予測されている。
・途上国の貧しい人々は、地域の水道システムにつながっている市民よりも12倍の値段を支払っている。彼らは少ない水しか使っていないが、その多くは汚染されている。

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