現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2006年 11月 人々を永遠に抑圧することはできない

人々を永遠に抑圧することはできない

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アンドレア・ビストリッヒによるラジ・ソラニ氏へのインタビュー

人権擁護のために第一線に立って活動しているガザ地区の弁護士ラジ・ソラニ氏は、パレスチナ人権センターの創設者であり理事長である。1980年代に、彼はイスラエル軍事法廷で多くのパレスチナ人の代理人になったり、自分自身もイスラエル軍によって4度勾留され、精神的および身体的な虐待を受けたりした。1988年には、アムネスティ・インターナショナルの良心の囚人として世界的な支持を得た。2006年4月には、法学専門家実行委員会の国際委員会メンバーに選出された。ソラニ氏は人権国際連盟と国際人権法グループ国際理事会のメンバーでもある。
彼は現在ガザ地区に入れず、エジプトで生活している。アンドレア・ビストリッヒが本誌のために電話でインタビューを行った。
シェア・インターナショナル(以下SI):人権に関する国連特別報告者ジョン・ダガード氏は、最近ガザを訪問した際、ガザは牢獄であり、イスラエルがその牢獄の鍵を放り投げてしまったと述べました。ガザで何が起こっているのでしょうか。
ラジ・ソラニ:ガザ地区の365平方キロメートル全体が密閉され、外界から孤立しています。西岸地区に行く方法はありませんし、イスラエルへ抜ける道も完全に閉鎖されています。ということは、生存のために必要な医薬品などの物資すら輸入できないということです。
状況は非常に厳しく、非常に悲惨です。前例がないほどです。これ以上悪かったことはありません。イスラエルは、私たちが海に出る方法も奪いました。漁師さえも海に出ることができず、水産業は壊滅しています。外界との唯一の接点であるラファ検問所を通過できたのは、ここ4カ月間で2~3日だけで、それ以外はずっと閉鎖されています。
イスラエルは戦闘機を飛ばして建物を破壊し、抵抗する兵士をせん滅します。私たちの外務省、産業省、首相官邸、標的となった無数のパレスチナ人市民やアパートが爆撃されました。夜間はイスラエルのアパッチ・ヘリと無人飛行機がガザ上空の支配者になっています。ほとんど毎日のように、300個から400個の砲弾がガザの居住区から数百メートルしか離れていない所に落下します
--人々は絶え間ない、言いようのない恐怖の中で暮らしています。
特に東部と南部は四六時中、イスラエル軍の侵攻を受けています。イスラエル兵は難民キャンプを急襲し、パレスチナ人の家や庭を不当に破壊します。何千本ものオリーブの木を根こそぎにし、畑や道路をすべて更地にし、電線や衛生設備や下水道を徹底的に破壊します。水は1日に2~3時間しか供給されません。
イスラエルは大通りや、道路や、6つしかない橋を空爆して瓦礫と灰にし、ガザ地区全土で音響爆弾を使用しています。昼夜を問わず、160万人の男や女や子供たちを恐怖に陥れています。6月28日には、イスラエル軍のF16戦闘機がガザ地区唯一の発電所を破壊し、ガザの6割の地域に電力が供給されなくなりました。これは特に病院にとって壊滅的な痛手です。発電所の破壊は違法であり、国際法に照らして戦争犯罪と見なされなければなりません。その攻撃に軍事的な理由はありませんでした--発電所は純粋に民間の施設だからです。
SI:パレスチナ人が陥っている窮状に対して、海外から--特に国際メディアから--どんな反応が寄せられているのでしょうか。
ソラニ:ガザで実際に起こっていることに誰も関心を抱いていないようです。それが私たちの印象です。国際メディアがガザの壊滅的状況についてほとんど報道しないというのは、私たちが全く初めて体験する事態です--報道したとしても、不十分であるか間違ってさえいます。
ガザの全人口のうち、85%の人々が失業中であるか給料をもらっておらず、90%が貧困ライン以下で生活しています。ガザで暮らし生き延びることは、ここ数カ月間極めて困難であり、信じられないほど重苦しい問題になっています。ガザは非常にわびしく、暗く、血なまぐさい所になっています。しかし、人々が陥っている大変な苦境や、そうした状況下での生活の様子は聞こえてきません。メディアが--少数の例外を除いて--報道していないからです。私たちは非常に落胆し、理解に苦しみながら、こうした事態を見守っています。
SI:いつからこれほど状況が悪化したのでしょうか。これは、2006年6月25日にイスラエル兵ギラド・シャリット伍長が拉致されたことと関連しているのでしょうか。
ソラニ:不思議なことに、全世界がギラド・シャリット伍長の拉致のことを言いますが、ナビル・アブ・サルメヤ博士の家族について語る人はいません。イスラエルのF16戦闘機が午前2時45分に彼の自宅を襲撃したとき、サルメヤ博士を含めて、11人家族のうち9人が殺害されました。彼らのように、罪のない無防備な人々が何百人も負傷し、手足を奪われ、殺害され、家々が破壊されています。6月25日以降、300人の市民が殺害され、そのうち85人が子供、70人が女性であったことを誰もとりたてて心配していないようです。パレスチナの人々がいかにひどく苦しんでいるか、絶望的な困窮の中であえいでいるかをほとんど誰も気にしていません。
聖なる血も不浄な血もありません。聖なる苦しみも不浄な苦しみもありません。人間の苦しみがあるだけです。同じ人間の血があるだけです。誤解しないでください。私には武装兵士や過激派集団を擁護する権限はありません。民間人について話しているだけです--イスラエル軍によって攻撃目標とされた無防備なパレスチナ市民について話しています。これはイスラエル国家が実行している国家テロです。
ジュネーブ条約(第四条約)第一条によると、国際社会はこの条約を尊重し順守することを約束しました。これは被占領民の保護を保証することを意味しています。イスラエルの占領下でパレスチナの人々が享受したいと願っている特権について話しているのではありません。そうではなく、国際社会は市民の保護を確実なものにし、占領者による暴力行為、威嚇、集団処罰から市民を守らなければなりません。占領地域の人々は戦争犯罪に日々さらされており、今では悲惨な窮乏生活と飢餓に沈み込む可能性すらあります。
SI:国際社会はこの状況に目をつむっているように見えます。世界はなぜ、具体策を実施し、明確な立場を取るのをそれほどためらっているのでしょうか。
ソラニ:これは2001年9月11日以降、はっきりと見られることです。全世界がもっともな理由からテロリストを憎みました。ワールドトレードセンターへの攻撃は、全く普通の米国市民を標的にしたものであったからです。彼らは国際的な人道法や憲法をジャングルの掟に換えようとしました。
私たちは今日、すべての国家の中でも米国がジャングルの掟を支持していること、また、今年4月に援助支払いを中止したことで欧州も米国に加わったことに着目しなければなりません。米国と欧州が一緒になって、イスラエルがパレスチナ人に対して犯した犯罪について沈黙を申し合わせています。
占領地域の人々は奇跡を待っているのではありません--正当な人権の実現とジュネーブ条約(第四条約)の履行を待っているのです。こうした必要不可欠な法的取り決めと人道的な規制は、パレスチナ人のビジョンではなく、欧州が二つの世界大戦を経験した結果です。当時、学者や社会主義者や外交官が集まり、無防備な市民に対する戦争犯罪のような、ひどい残虐行為を防止したり予測したりする方法を見いだそうとしました。国際的な人道法は明確な行動基準を定めており、武力闘争の時には、戦闘行為に関与していない人々や戦線から離脱した人々は保護されるようになっています。忘れてならないのは、第二次世界大戦中の欧州のユダヤ人に対するホロコーストが、この条約の成立に大いに影響を与えたという点です。
しかし今日、私たちパレスチナ人がこうした法律を支持し保証することを要求すると、まるで何か特別なものや独占的なものを要求しているかのように見られます。これは非常に屈辱的であり、全く許容できないことです。国際的な人道法は知識人や外交官のために制定されたのではありません。それはいかがわしく、禁じられた、漠然としたものではなく、また、秘密裏に話し合わなければならないものでもありません--それは意図的に生み出されたものです。なぜなら、世界がそれを必要としているからです。したがって、それを履行し、それに忠実でなければなりません。
SI:戦争犯罪を犯した疑いのあるイスラエルの政治家、外交官、軍の代表に対する国際法の履行を支持しますか。
ソラニ:はい、人権活動家はすでにこれを開始しており、今後も続行するでしょう。
ホコロコーストから50年たっても、ユダヤ人はこうしたひどい犯罪を犯した者たちを忘れていないし許してもいません。当然ながら、ホロコーストに加担した者たちを裁判にかけることが彼らの権利であることは、誰も否定しないでしょう。
同時に、イスラエルは何十年もの間、パレスチナ市民に対する最悪の犯罪を実行したかどで罪に問われています。ですから、私たちはこう言っているのです。私たちはイスラエルが犯したことを決して忘れないし許そうとしないだろう、私たちはあらゆる可能な手段を使って--国際法も含めて--説明責任を負っている者たちを呼び出し、彼らによる犠牲者に報いるだろう、と。これは、パレスチナ人の犠牲者に対する一人の弁護士としての、パレスチナ人としての義務であるばかりでなく、この惑星の人間としての義務でもあります。犯罪者が結果を全く恐れずに、勝手気ままに踏みにじるような法律の原則には、どれほどの価値が残っているでしょうか。こうしたことが全世界的に見られます。
SI:レバノン戦争後、イタリア政府は監視者として行動し双方の市民を守るために、占領地域に平和維持軍を配置することを提案しました。あなたはそのような提案を支持しますか。
ソラニ:私たちは20年以上の間、パレスチナ市民をイスラエルの戦争犯罪から守るために国際平和維持軍の派遣を要請してきました。1999年6月と(インティファーダ後の)2002年の二つの会議で、私たちは国連平和維持軍をパレスチナ地域に配置するよう訴えてきました。残念なことに、最初の意見聴取は、米国からの圧力のせいでちょうど15分後には打ち切られ、2つ目の会議も6時間後には中止されました。
私は完全にイタリア政府に賛成しており、パレスチナの人々がかつてないほど、国際的な人道法とジュネーブ条約の規定と並んで、国際的な平和維持軍による保護を必要としているということを保証し確認したいと思います。こうした保護は国連によって即座に承認されるべきです。
SI:欧州連合は、パレスチナ統一政府樹立を通して和平プロセスに復帰することが可能だという希望を表明しました。統一政府が樹立されれば、状況は緩和すると思いますか。
ソラニ:パレスチナ人は、自分たちが当然受けるべきものが与えられるよう、何度も何度も証明したり確認したりするのに飽き飽きしています--後でまた落胆するだけだからです。統一政府さえも必要であるどうかは決定的な要因ではありません。
紛争の原因が変わることはないからです。以前はアラファト議長が和平の妨げになっていると言われましたが、今度はそれが突然、ハマスになりました。彼らはいつも新しい理由を見つけ、新しい要求を考え出します。
パレスチナ人の要求は非現実的なものではありません。それどころか、地球上のどの国民も実施しているような、非常に単純かつ当然な要求です。パレスチナ人は自己決定権を行使し、エルサレムを首都とした自分たちの国家を持ちたいと思っています。最も重要なことは、彼らが二つのことを、つまり占領が終結することと、国際法が順守され人権が保障されることを望んでいるということです。これは可能なことであり、奇跡などではありません。
ハマスが選挙で勝利した後でパレスチナ人への援助を凍結したとき、欧州は重大な過ちを犯しました。民主的で自由な選挙によって、米国と欧州とイスラエルが承認しない政府を選んだために、このようにして国民全体が損害を被りました。これが民主主義でしょうか。この行動は民主主義の原則に全く逆行しています。実際のところ、私たちはアラブ世界で最初の民主主義国です--さらには、占領下にある地球で初めての民主主義国です。しかし、このことを認識し、新しいハマス政権との対話を無条件に追求するかわりに、国民全体が飢えており、イスラエルはやりたい放題にパレスチナ人への締め付けを強化しています。
パレスチナ市民が比較的正常な生活を送れるよう、国際社会、特に米国と欧州が正気に戻り、平和と正義を切実に必要とするこの地域を安定させる一助となることを期待しています。
SI:新しい統一政府の支持と援助支払いの再開のために中東和平4者協議が設けた条件の一つは、イスラエルの認知です。ハマスはイスラエルを認知すべきでしょうか。
ソラニ:中東和平4者協議は現実感覚を失ってしまったようです。私たちパレスチナ人が犠牲者なのです。イスラエルではありません。パレスチナ人こそ苦しんでいる人々、諸権利が否定されている人々です。私たちこそ昼夜を問わず包囲攻撃を受けて破壊され、殺されている人々です。占領軍であるイスラエルの方こそ、パレスチナ人を認知しなければなりません。その逆ではありません。
パレスチナ人は自分たちの国家、自分たちの故郷を必要としており、その権利を持っています。西側諸国はこのことをいよいよ認識すべきです--そして、注意を怠ってはいけません。人々を永遠に抑圧することはできません。米国とその同盟国は中東紛争にジャングルの掟を持ち込みました。法と正義の支配を信じる人はこれを受け入れるべきではありません。
イスラエル兵ギラド・シャリット伍長が拉致される直前
2006年6月21日:イスラエル占領軍(IOF)が実行した裁判外の処刑が失敗に終わり、3人のパレスチナ人の子供が死亡し、15人が負傷した。
2006年6月14日:国家治安部隊によって2人のパレスチナ人が殺害された。
2006年6月13日:ガザの民間車両へのIOFの空爆により、男性とその2人の子供、2人の救急医療隊員を含む11人のパレスチナ人が殺害され、30人以上が負傷した。
2006年6月13日:ガザ地区と西岸地区におけるファタハとハマスの緊張が高まる。
2006年6月10日:イスラエルの攻撃が激化する。ガザ地区では24時間以内に、2人の親、その5人の子供、2人の兄弟を含む14人のパレスチナ人が殺害され、36人が負傷した。
2006年6月6日:ジャバリアでIOFにより、2人のパレスチナ人が裁判外で処刑された。
(ガザ、パレスチナ人権センター)

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