現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2015年 8月 人々が飢えているのに、なぜ食べ物を無駄にするのか

人々が飢えているのに、なぜ食べ物を無駄にするのか

オリビエ・ダネスによるアラッシュ・デラムバーシュ氏へのインタビュー

アラッシュ・デラムバーシュ氏は、パリ北西部のクールブボア市における「多様な権利」のための市会議員であり、雄弁で意志の固い人物として知られている。彼が最近始めた、食べ物の無駄をなくすキャンペーンは、スーパーマーケットが売れ残った食品を慈善に回すようにする法的制度の導入につながった。フランスのスーパーマーケットは売れ残った食品を廃棄することが禁じられ、代わりにそれを、食品廃棄を罰する法律の下で、慈善のために贈与したり動物の飼育用に寄付したりするようになるであろう。フランスの国会は、全会一致でこの法律を通した。これは食べ物の無駄のまん延への闘いであり、大規模な食品会社と食べ物に事欠く人々とを分断する壁に光を当てることになった。
飢餓状態とはどのようなものかを知っていると述べるアラッシュ・デラムバーシュ氏にとって、現在の関心事は同様の法律が世界中に行きわたることである。オリビエ・ダネスがパリで、シェア・インターナショナル誌および、そのフランス語バージョンのPartage Internationalのために彼にインタビューを行った。


シェア・インターナショナル(以下SI):この分野であなたが活動的になった背景にはどのような動機があったのですか。
アラッシュ・デラムバーシュ:私は法科の学生であった頃、家賃を支払った後は月400ドルで生活しており、ちゃんとした食事を通常午後5時頃に1回とっていました。私はパスタかジャガイモを食べましたが、お腹がへっているときはいつも、どこで次の食事にありつけるかを考え続けていて勉強に集中できませんでした。ホームレスや貧しい人々、失業している人々が飢えている一方で、食べ物を無駄にしたり故意に腐らせたりすることは恥ずべきことであり、また不条理なことです。

SI:どのようにして始めたのですか。
デラムバーシュ:私は地元のスーパーマーケットで売れ残った食品を集めて、それを分配するキャンペーンを始めました。毎日、私たちは地元のスーパーマーケットで、ほぼ100人を援助しました。何人もの子供を抱えるシングルマザーとか、低賃金で働く年金受給者や労働者、そして約半数を占める路上や避難所の生活者を援助しました。

SI:どのようにして法律に関与したのですか。
デラムバーシュ:私たちは法律の抜け穴を利用しました。認可された組織(例えば地方の財団)が受け取った食品を貯蔵する方法については法的な枠組みがあります(冷凍庫や冷蔵庫などが必要です)。けれども、食品を直ちに分配することを統制する法律はありません。
そのため、どのような市民でも組織をつくることができます。それは単純で、県(地方の行政府)に赴いて登録し、販売業者を訪ね、食用に適する売れ残りの食品を集め、それをその日の夕方に、それを必要とする人々に分配するのです。食品を保管するわけではないので、貯蔵のための衛生義務は生じません。

SI:私たち読者になにかアドバイスがありますか。

デラムバーシュ:ありません。これはアドバイスを与えるような問題ではありません。私が言いたいのは、ただ行動するのみだということです。やってみてください。行動を起こしてください。市民が自らそうしなければなりません。
フランスに関する限り、モデルはあります。私たちは、世界規模のキャンペーンを始める前に、クールブボア市の私の住む地区でテスト過程を企画し実験的にそれを始めました。
友達やボランティアと共に、スーパーマーケットで売れ残った食品を貧困者に、特にホームレスの人々に週に3回、夕方に配りました。ベルギーのヘルスタルですでに成功していましたが、それと同じように行いました。このモデルを手本として皆さんの住む地域で実行するだけでよいのです。食べることのできる(消費し得る)食品は40kgあり、私たちは通常、それをスーパーマーケットのごみの容器に入れます。それは500ユーロに相当し、100人を賄うことができます。

SI:当然のことですが、それぞれの国で法律や規則が異なりますね。
デラムバーシュ:そうです。例えば、アメリカや日本などの読者の場合、もし商店が売れ残った食品をキャンペーンに使うことを拒むことがあれば、議員に相談し、残った食品の提供を義務化する法律を作るように働きかける必要があります。売れ残った食品を入手し、夕方に分配してください。私たちのような国であっても、人々がお腹を空かせているのは明日ではなく、今日なのです。

SI:現在あなたは、欧州連合(EU)が同じような法律を可決することを望んでいると理解してよいのですね。

デラムバーシュ:リスボン条約は、もし(欧州連合の参加国の25%──現在は7カ国の)100万人が何かの事柄の請願書に署名するならば、欧州委員会はそのことを十分に考慮しなければならないと定め、可能性への道を設けています。私たちはそのような請願活動にchange.org(ウェブサイト)を通して取り組み始めました。

SI:あなたのキャンペーンで最も困難な局面は何であったのですか。
デラムバーシュ:この仕事を妨害しようとする勢力は、食品会社や「貿易と分配に関する企業連合体」といった圧力団体に限られます。私は彼らに、もしあなた方が売れ残りの食品を私たちに供給しないのであれば、これまでに行ってきたように、供給を義務化する法律の制定に努めます、と述べ、実際にそうしてきました。もうこれ以上、ためらうことのできない時期がやって来ます。もし関係者がそうすることを望まないのであれば、そして、彼らを説得することができなければ、法律に頼るほかありません。売れ残りの食品を提供することで食品会社を説得できない場合は、私たちは仕方なく、食品会社に食品を提供することを義務付ける法律を通過させます。
そして、付け加えますと、私は現時点で、食品をごみ容器の中で漂白するスーパーマーケットの人たちと議論するのを控えています。
私は商売や、雇用を創出する人々に敵対する考えは持っておりませんが、彼らがお金儲けだけに関心がある場合には、そうはいきません。そして、もし彼らが責任意識を持ち合わせていないなら、法律が必要になってきます。私は「憤り」に駆られているわけではなく、行動することが好きなのです。

SI:政治家の役割をどう定義されますか。
デラムバーシュ:政治家の役割は、市民を援け、守ることです。政治家は市の中に調和を作り上げるために存在するのです。充分に食べられない人がいるときに、どうして私たちは調和した気持ちでいられるでしょうか。


最近、フランスのメディアは、貧しい家族や学生、無職の人たち、ホームレスの人たちが、スーパーマーケットのごみ箱で夜間にしばしば、消費期限が近づいているという理由だけで捨て去られているまだ食べられる食品を、生き残るために人目を忍んであさる状況を取材するようになった。だが、スーパーマーケットの中には、ごみ箱の食べ物を食べて食中毒にかかるのを予防するという口実で、売れ残りの食品に漂白剤をかけるところがある。
他のスーパーマーケットでは、ごみあさりを阻止するために、ごみ収集車による収集用の鍵のかかる貯蔵用倉庫にわざと捨てている。スーパーマーケットのごみ箱で食べ物をあさる行為は、危険を伴わないわけではない。ある人は腐った果物を取り出したり、ヨーグルトやチーズ製品や出来合いのピザを取り出したりするが、これは盗み行為として警察によって取り締まられたことがある。2011年に、マルセイユのモノプリ・スーパーマーケットで極めてわずかの給料で働いていた、6人の子供を持つ59歳の父親が、ごみ箱にあった6個のメロンと2つのレタスを取り上げるのを見た同僚によって警備員に告げられ、寸前のところで職を失いかけたのである。

デラムバーシュ氏は、国連が貧困を終わらせるミレニアム開発目標を今年9月に議論し、また、11月にトルコでG20経済サミットが開催され、12月にパリでCOP21環境会議が催される時期に合わせて、U2の歌手ボノによって設立された「グループONE」のキャンペーンを通して、この問題を議題にしてもらう計画を立てている。

フランスでは、消費者で67%、レストランで15%、商店で11%の、推定計710万トンの食品が毎年ごみとなっている。EU全体では、8,900万トンの食品が廃棄され、世界全体では、推定13億トンが廃棄されている。