現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2013年 11月号 地球に対する勝手放題の実験

地球に対する勝手放題の実験

ジェイソン・フランシスによるマイケル・マン氏へのインタビュー

物理学者で気候学者のマイケル・マン氏は、世界で名の知られた気候変動問題の専門家でもある。彼は2001年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3次科学評価報告書の寄稿者であった。元米国副大統領のアル・ゴア氏と共にIPCCは、2007年にノーベル平和賞を受賞した。IPCCが一般に広く知られるようになったのは、マイケル・マン氏や他の多くの人々の貢献によるところが大きい。マン氏はペンシルベニア州立大学の著名な気候学の教授で、大学付属の地球システム科学センターの所長である。ジェイソン・フランシスがシェア・インターナショナル誌のために彼にインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以下SI):どのような根拠から気候学者たちは、地球が温暖化していることを、そしてそれが主に人為的要因、すなわち人間によって引き起こされていることを確信しているのですか。

マイケル・マン:それは200年前の単純な物理と化学に完全に基づいています:
まず初めに、温室効果──化石燃料の燃焼によって生まれる二酸化炭素のような特定の気体が、地球の大気と表面を温めるという現象です。1800年代初期のジョゼフ・フーリエなどの科学者たちは、温室効果を理解していました。これらの気体が地球を温めるということを私たちは200年前から知っているのです。化石燃料の燃焼によって発生するそれらの濃度上昇は疑う余地のない事実です。ここ数百万年の間で初めて、現在大気中の二酸化炭素濃度が400ppmの境界を越えました。私たちは地球を使ったコントロールされていない実験に加担しているのです。──温室効果が基本的な物理・化学であることを理解しており、そして化石燃料の燃焼によって温室効果が増大していることは事実です。地球が温暖化していないと説明することはできないでしょう。
またあらゆる種類の測定結果があります。100年を超える測定期間を持つ世界中の温度計データや、過去にさかのぼって正確に地表面の温度を推定できる地中の掘削穴からのデータなど。様々な花の開花、渡り鳥の到来、海面上昇の計測、北半球の冬季積雪の減少などの証拠があります。地球が温暖化していること、そして化石燃料の燃焼と他の活動によって温室効果ガスの濃度が増加し続けているために私たちの予想を超えて気候が変動していることをはっきりと示す文字通り大量の証拠があります。

二酸化炭素濃度の上昇

SI:もし大気中に放出されている二酸化炭素量が減少せずに持続する場合、その濃度はどこまで上昇すると予想されていますか。

マイケル・マン:非常に遠い過去である1億年前の白亜紀初期までさかのぼれば、基本的には上限がありません。その時期にはおそらく数千ppmという現在の数倍の数値であったことが知られています。これらすべての二酸化炭素は、自然のプロセスを通してゆっくりと地中に埋もれていきました。有機物質の形でこれらすべての炭素が吸収されるにつれて、二酸化炭素濃度はゆっくりと減少していきました。これらの有機物質は地表から地下に沈み、最終的には地殻の十分に深い領域に到達し、石油・天然ガス・石炭といった化石燃料へと変化していきました。私たちが現在行っているのは、1億年の時間スケールで地球に埋もれたすべての炭素を採掘し、百年間でそれを大気中に放出しているのです。これは吸収時の百万倍のスピードです。
もし現在の状態をそのまま継続すれば、基本的には白亜紀初期のレベルである1,000ppmに近いところまで戻らない理由はありません。現在の化石燃料燃焼のスピードでは、数十年のうちに450ppmに到達します。遅くて今世紀中頃、おそらく今後20年から30年の間に。気候変動の影響を調査している多くの研究者たちは、もし450ppmを超えてしまったら、予測モデルでは、確信を持って産業革命前の気温と比較して気温が2℃上昇すると述べています。そのような上昇が起これば、気候に大きな影響を与え、気候が元に戻らない可能性があると私たちは考え始めています。

SI:2013年9月にIPCCは第4次科学評価報告書を発表しました。その主な研究成果について教えいただけますか。

マイケル・マン:幾つかの重要な成果がありました。私たちが予想していたとおり、前回発表したIPCC報告書から6年間の間に、温暖化の科学はようやく強固なものとなり、その証拠がようやく増えました。今回、IPCCは過去半世紀に見られたほとんどの温暖化は、人為的な温室効果ガス濃度の上昇によるものである可能性が「極めて高い」と結論づけました。可能性が「非常に高い」と表現していた過去の報告から確かさのレベルを上げました。さらにすでに海面上昇、氷の融解、熱波や大洪水などの極端な天候の増加という形ですでに温暖化の影響が見られると結論づけました。

二酸化炭素濃度を安定化させる

SI:維持すべき安全な二酸化炭素濃度はどれくらいでしょうか。そしてそれは達成できるでしょうか。

マイケル・マン:NASAゴダード宇宙研究所の前所長であったジェームズ・ハンセン氏のような何人かの科学者たちは、危険な可能性がある海面上昇や気候に対するその他の影響を回避したいのなら、二酸化炭素濃度を数十年前の値である350ppm以下にすべきだと主張しています。それは数百万にわたる過去の気候と二酸化炭素濃度レベルからの判断に基づいた一つの議論です。大気中の濃度レベルが350ppm以上となった時に、今まで見たこともないような気候変動の増大が観測されたと主張しています。ですから私たちは、たとえ数十年前のレベルで二酸化炭素濃度を維持したとしても、より大きな変化──氷床の融解など──を引き起こすことになるでしょう。二酸化炭素レベルを350ppmに戻すことは、早急にエネルギー生成のための化石燃料の燃焼を停止させるだけでなく、大気中から二酸化炭素を文字通り抜き去るための外気吸着のような技術の採用が必要となってきます。それは非常に高価な提案です。
地球への危険な影響を回避するための二酸化炭素濃度レベルの低下については、まだ科学的な合意がありません。気候変動の地球への影響を研究しているほとんどの専門家たちは、産業革命前の気温と比較して、確実に2℃より低い温度で温暖化を安定させる必要があると述べています。私たちはすでにその中間にいます。もし私たちが旧態依然とした化石燃料の燃焼を続ければ、450ppmの限界点を数十年のうちに超えることが分かっています。
複数の気候予測計算モデルが、そのような二酸化炭素レベルによって、2℃程度の気温上昇という危険な人間による気候システムへの妨害をもたらすと予測しています。450ppm以下に二酸化炭素を安定化させるためには、幾つかの計算では、次の数十年で排出のピークに持っていき、その次の数十年では年率数パーセントで減少させる必要があることを示しています。それを実行することができれば、おそらくレベルを450ppm以下に保つことができるでしょう。そして私たちは本当に危険で元に戻らない可能性のある気候変動を回避する十分な可能性があります。それは市場メカニズムに対して、化石燃料の燃焼から急激に抜け出し、別のエネルギー生産の方法、例えば太陽光、風力、地熱、その他の可能性のあるエネルギー技術などへと向かうように要求するでしょう。要するに、もしエネルギー生産のために化石燃料に依存し、化石燃料の燃焼から抜け出すことができなければ、おそらく数十年のうちに気候に関して危険な変化を私たちが被るでしょうということなのです。

参加すること

SI:気候変動の科学に反対する組織的な活動を打ち破り、政府内の自分たちの代議員たちにもっと多くの行動を行わせるために、人々には何ができるでしょうか。

マイケル・マン:個人ができる多くのことがあります。産業がつくり出した偽装グループによって、論説、投書、ブログの書き込みという形をとって流されている多くの偽情報があります。それゆえ、新聞に投稿し、実際の証拠と気候変動の危険性と自分たちの社会にどんな影響が起きるかを表明し、彼らの隣人、友人、家族、地域社会に知らせる活動に参加することが各個人にとって重要なのです。あなたの州や政府レベルの代議員に手紙を書いてください。なぜなら彼らは化石燃料の利益団体から大量のロビー活動を受けているのです。もし彼らが市民からの声を聞かなければ、彼らの関心は代議員になることだと知ることができます。そしてそれは人々の利益とはならないでしょう。それは特定の汚染者の利益なのです。
議会の代議員に手紙を書くことによって、友達や隣人にその問題を分かりやすく話すことによって、政策立案者たちに汚染者の利益よりも市民の利益を代表するように圧力を加える活動を行う草の根運動を組織し参加することによって、市民は自分たちの意見を聞いてもらう必要があります。産業の心配や選挙で選出されることに特別な関心を持つことよりも、私たちの心配を代表する用意があるかどうかを政治家に確かめてください。そしてあなたは投票しなくてはなりません。それからあなたの友人や隣人が投票するのを確かめる必要があります。あなたは政策決定者が正しい行動を取るように圧力をかけることができるすべてのことをする必要があります。
参加可能な二酸化炭素排出削減を支援する多くの自発的な行動があります。リサイクル、再利用、消費の減少、エネルギー効率の良い機器の購入、リサイクルショッピングバッグの使用、電気自動車やハイブリッドカーの購入、公共交通機関の利用など。私たちには多くの出来ることがあり、それらの多くは簡単な行為です。実際、それらの多くは後悔のない行動です。なぜなら、炭素の排出を減らすだけではなく、自転車通勤のように私たちをより健康にします。省エネの機器は、お金の節約になります。
私たちは、とにかくこれらすべての自発的行動手段をとるべきです。しかしながら、残念なことにそれだけでは十分ではありません。化石燃料の燃焼や二酸化炭素の大気中への放出による損害に対して値段をつける(炭素税や炭素排出上限や売買規則など)市場メカニズムがなければ、市場で炭素に値をつける政策を実施しなければ、私たちは化石燃料への依存からの移行を支援するのに必要な誘導政策の枠組みをつくることができないでしょう。包括的な気候に関する立法を通過させる唯一の道は、議会や他の立法権力者に正しい知識をもった代表者を必ず選ぶことです。

詳しい情報は:www.realclimate.org; climatechange2013.org; michaelmann.net; thehockeystick.net; direpredictions.com