核使用の習慣を打破する
ジョン・ローレツ氏へのインタビュー
ジェイソン・フランシス
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いったんそのような認識に到達すれば、私たちは全世界で核兵器を除去しなければならないという政治的な結論に至ります。私たちが提案する改善措置は、いわゆる核兵器廃絶条約を通して核兵器を廃止することです。これは全世界で交渉が行われている条約であり、核兵器を廃絶し、将来における核兵器の製造、開発、実験を禁止するというものです。
大衆向けであれ政策決定者や政治家向けであれ、私たちはできる限り多くの場所で科学的・医学的な結果について研究発表を行います。世界中にある私たちの提携団体、特に核兵器国の提携団体は、核兵器廃絶条約のために自国政府に働きかけを行います。その条約の条件と、そのような条約を適切に検証し施行し監視することができるという証拠(私たちには現在でもそうする能力があります)を検討するよう政府に要請します。彼らはまた、核兵器廃絶条約と、成功裡に交渉が終わった化学・生物兵器条約や地雷禁止条約などの既存の条約との類似点を探るよう政府に求めています。医学的な見解はそのような作業に根拠を与え、その緊急性を高めます。こうした団体が行っている支援活動は、この世界条約のアイディアを真剣に受け止めるよう各国に促すことです。
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その合意には三つの基本部分があります。この条約の第6条は、核兵器廃絶のための交渉を行うという条約締結時点での核兵器国──アメリカ、ソ連(現在はロシア)、イギリス、フランス、中国──による約束です。NPTの第2条は、核兵器を取得したり、核兵器計画を開発する試みと受け取られかねない民間の核兵器計画には関与したりしないという当時の非核兵器国による約束です。さらに核兵器国は、非核兵器国が核兵器を取得する援助はしないことに合意しました。
この条約の第三項には、締約国である非核兵器国は、もし希望するならば商業的な核エネルギー計画を開発する際に科学的・技術的な援助を受ける権利を有すると書かれています。このことが過去30年間、この条約を施行し監視しようとする際に問題が際限なく生じる原因となってきました。
この条約が発効した1970年以降、インドとパキスタンは核兵器を開発してきました。両国は条約に調印していないので違反はしておりませんが、現在、この条約の枠外で核兵器国となっている二つの主要国があるわけです。条約を締結してない三つ目の国家はイスラエルです。イスラエルは核兵器国であると認めることを長年にわたって拒否し続けてきましたが、実際には核兵器国であるということは周知の事実です。※
また、NPTは核兵器廃絶のためのいかなる期限も設定しませんでした。そのため、この重要で根本的な条約は、いくつかのかなり深刻な点で制約を受けています。私たちは、NPTに明記された義務を履行する唯一の方法は次の段階に進むことだという結論に達しました。それが核兵器廃絶条約であり、これは全世界的な廃絶条約となるでしょう。
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28カ国の個別の国家と、116カ国からなる非同盟運動グループが再検討会議で核兵器廃絶条約を強く支持しました──それは前例のないレベルの支持でした。IPPNWと核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は今後2年間、このようなレベルの支持を足掛かりとし、他の国々を仲間に入れるためにそうした多くの国々とともに活動していくでしょう。
さらに、核兵器国の中には、核兵器廃絶条約のアイディアを容認しないまでも、軍縮を真剣に考えていることを国際社会に印象付けるために懸命に取り組んでいる国もあります。イギリスは、同国の最新の戦略核兵器システムであるトライデント・リニューアルの計画を縮小しようとしています。アメリカとロシアは核兵器の削減について話し合い、保有数を継続的に減らそうとしています。現時点で、本当に希望の持てることがたくさんあります。
問題は、核兵器が安全保障政策の中に非常に深く根付いており、抑止力の概念がそうした国々の安全保障体制に大きな支配力を有しているため、こうした兵器を現実に除去する包括的な計画の必要性を彼らに認めさせることが困難であることです。彼らがそれを認めるまで、私たちはこの問題に関して必要とされる進歩を遂げることはないでしょう。
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IPPNWや核兵器廃絶を主張する他のほとんどのNGOはこの立場を取りますが、これはほとんどの政府が固執している点です。原子力エネルギーと原子力ルネッサンスという考えが産業界によって政府に売り込まれてきたため、核兵器を除去すると同時に原子力発電を廃止する必要があるという議論に対して政府はそれほど心を開いているわけではありません。私たちの目標は核兵器を除去することですが、原子力発電については別の文脈でそれ自体の問題として心配しています。しかし、一つのものを廃止するにはもう一つのものも廃止する必要があるというのが私の個人的な見解です。
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私たちは世界中に蔓延している不法な武器移転に目を向けることにしました。2001年には「防止を目指して」というキャンペーンを開始しましたが、それは小型武器と軽火器の問題の公衆衛生の領域を際立たせるのに貢献しました。年月を経るうちに、これは厳密に小型武器についてのプログラムから、武器を用いた暴力全般が公衆衛生に及ぼす影響をもっと幅広く見るものへと進化していきました。2003年にはIANSA(小型武器に関する国際行動ネットワーク)とともに活動を開始し、彼らと一緒にIANSAの公衆衛生ネットワークを開発しました。これは、単に武器貿易の問題であるだけでなく公衆衛生の領域も存在しているという事実を強調するために医師と公衆衛生の研究者を連帯させる一つの方法でした。
過去2年間、私たちは世界保健機構(WHO)の「暴力防止のための連合」と非常に緊密に連携して活動してきました。それは、武器を用いた暴力の健康関連の問題に焦点を当てるだけでなく、こうした問題に対処するいわゆる生態学的モデルについて考察するためでした。そのためには、世界中にある武器を用いた暴力の問題を緩和することに向けた、根拠と臨床診断に基づいたアプローチを見いだす必要があります。私たちはこの分野でWHOやこのような関心を共有する他の団体とともに非常に新しく面白い仕事を行ってきました。
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SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、全世界の軍事支出は2008年に1兆4,640億ドルでした。そのうち、アメリカの支出は6,070億ドル、つまり約41.5%でした。世界銀行は、2015年までにすべてのミレニアム開発目標を達成するためには毎年400億ドルから600億ドルかかると見積もりました。それは、世界が兵器と戦争に費やしている額の3%にも満たないものです。そうした機会費用が、武力紛争による犠牲者や物理的破壊、直接の経済的な影響に付け加えられなければなりません。
保健、衛生、教育、住居、経済発展、環境保護などの計画がうまく進まないのは、資金がないからだと世界各国は主張します。しかし、人類は毎年、兵器に1兆ドル以上を費やしています。世界中の人々に安全保障を本当に提供することができるもの──保健、教育、環境保護──の資金が不足しています。そのようなものが、私たちがこのように戦争や軍事支出に熱中していることによる真の損失、真の悲劇なのです。
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