現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2010年 12月 核使用の習慣を打破する

核使用の習慣を打破する

核使用の習慣を打破する
ジョン・ローレツ氏へのインタビュー
ジェイソン・フランシス

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核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は62カ国の医師組織の連盟であり、何千人もの医師、医学生、保健ワーカー、関心のある市民がこの連盟に関与している。1980年に設立され1985年にノーベル平和賞を受賞したIPPNWは、核戦争の防止と核兵器の廃絶に尽力している唯一の国際医師組織である。ジョン・ローレツ氏はIPPNWのプログラム部長であり、同組織のジャーナル「医学と地球存続」の編集主幹でもある。ジェイソン・フランシスが本誌のためにジョン・ローレツ氏にインタビューを行った。

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シェア・インターナショナル(SI):核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の形成を鼓舞したのは何ですか。


ジョン・ローレツ:二人の心臓専門医がその形成を鼓舞しました。バーナード・ラウンというアメリカ人とユーギニ・チャゾフというロシア人です。彼らは1980年に心臓学の会議で出会いました。それはレーガン政権が始まり、米ソ間の冷戦が徐々にエスカレートしていった頃でした。彼らは医師として、世界の人々に対してかつてない人道的な大惨事、つまり両国間の核戦争を防止する責務があるという結論に至りました。彼らは米ソの医師による組織を結成し、言葉の応酬を鎮めるよう、そして相手国に対して兵器を使用することについて話すよりも兵器を除去する計画を作り始めるよう自国政府に働きかけるようになりました。

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SI:IPPNWは今日、核兵器を廃絶するためにどのように活動していますか。


ローレツ:私たちはこの問題に関する二つの視点を一緒にします。一つは医学的・環境的な視点であり、それは道徳的なメッセージでもあります。核兵器の医学的な影響、環境に対する核戦争の影響、放射能の影響とその結果として生じる人道的な大惨事に関して私たちが知っているあらゆることを根拠として、医師たちは次のような結論に達しました。つまり、核戦争が起こってしまったら状況を改善するために彼らにできることは何もないという結論です。
いったんそのような認識に到達すれば、私たちは全世界で核兵器を除去しなければならないという政治的な結論に至ります。私たちが提案する改善措置は、いわゆる核兵器廃絶条約を通して核兵器を廃止することです。これは全世界で交渉が行われている条約であり、核兵器を廃絶し、将来における核兵器の製造、開発、実験を禁止するというものです。
大衆向けであれ政策決定者や政治家向けであれ、私たちはできる限り多くの場所で科学的・医学的な結果について研究発表を行います。世界中にある私たちの提携団体、特に核兵器国の提携団体は、核兵器廃絶条約のために自国政府に働きかけを行います。その条約の条件と、そのような条約を適切に検証し施行し監視することができるという証拠(私たちには現在でもそうする能力があります)を検討するよう政府に要請します。彼らはまた、核兵器廃絶条約と、成功裡に交渉が終わった化学・生物兵器条約や地雷禁止条約などの既存の条約との類似点を探るよう政府に求めています。医学的な見解はそのような作業に根拠を与え、その緊急性を高めます。こうした団体が行っている支援活動は、この世界条約のアイディアを真剣に受け止めるよう各国に促すことです。

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SI:既存の核兵器不拡散条約(NPT)についてはどうでしょうか。


ローレツ:核兵器不拡散条約は1960年代後半に交渉が行われ、1970年に発効しました。軍縮と不拡散に関する根本的な条約となっています。その締約国の数は世界的合意の中でも最多──188カ国(北朝鮮の地位は係争中)──となっています。
その合意には三つの基本部分があります。この条約の第6条は、核兵器廃絶のための交渉を行うという条約締結時点での核兵器国──アメリカ、ソ連(現在はロシア)、イギリス、フランス、中国──による約束です。NPTの第2条は、核兵器を取得したり、核兵器計画を開発する試みと受け取られかねない民間の核兵器計画には関与したりしないという当時の非核兵器国による約束です。さらに核兵器国は、非核兵器国が核兵器を取得する援助はしないことに合意しました。
この条約の第三項には、締約国である非核兵器国は、もし希望するならば商業的な核エネルギー計画を開発する際に科学的・技術的な援助を受ける権利を有すると書かれています。このことが過去30年間、この条約を施行し監視しようとする際に問題が際限なく生じる原因となってきました。
この条約が発効した1970年以降、インドとパキスタンは核兵器を開発してきました。両国は条約に調印していないので違反はしておりませんが、現在、この条約の枠外で核兵器国となっている二つの主要国があるわけです。条約を締結してない三つ目の国家はイスラエルです。イスラエルは核兵器国であると認めることを長年にわたって拒否し続けてきましたが、実際には核兵器国であるということは周知の事実です。※
また、NPTは核兵器廃絶のためのいかなる期限も設定しませんでした。そのため、この重要で根本的な条約は、いくつかのかなり深刻な点で制約を受けています。私たちは、NPTに明記された義務を履行する唯一の方法は次の段階に進むことだという結論に達しました。それが核兵器廃絶条約であり、これは全世界的な廃絶条約となるでしょう。

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SI: IPPNWが提案する核兵器廃絶条約のような世界的な軍縮条約の枠組み、全世界が合意する枠組みに各国が到達するには何が必要とされるでしょうか。


ローレツ:最近開催された核不拡散再検討会議までの──本当に恐ろしい事態が生じていたブッシュ政権時代の終わりから──1年くらいの間に、いくつかの進歩の徴候が見られました。核兵器廃絶条約やそれに類したものを要求する非核兵器国の数がこれまでになく多くなっています。核兵器廃絶のために活動するIPPNWやその他の何百という組織が、これまで長いこと見られなかった一途な姿勢で2010年5月の核不拡散再検討会議に臨みました。
28カ国の個別の国家と、116カ国からなる非同盟運動グループが再検討会議で核兵器廃絶条約を強く支持しました──それは前例のないレベルの支持でした。IPPNWと核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は今後2年間、このようなレベルの支持を足掛かりとし、他の国々を仲間に入れるためにそうした多くの国々とともに活動していくでしょう。
さらに、核兵器国の中には、核兵器廃絶条約のアイディアを容認しないまでも、軍縮を真剣に考えていることを国際社会に印象付けるために懸命に取り組んでいる国もあります。イギリスは、同国の最新の戦略核兵器システムであるトライデント・リニューアルの計画を縮小しようとしています。アメリカとロシアは核兵器の削減について話し合い、保有数を継続的に減らそうとしています。現時点で、本当に希望の持てることがたくさんあります。
問題は、核兵器が安全保障政策の中に非常に深く根付いており、抑止力の概念がそうした国々の安全保障体制に大きな支配力を有しているため、こうした兵器を現実に除去する包括的な計画の必要性を彼らに認めさせることが困難であることです。彼らがそれを認めるまで、私たちはこの問題に関して必要とされる進歩を遂げることはないでしょう。

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SI:原子炉は核兵器を製造するのに必要な原料を生み出すため、原子力発電を廃止することが不可欠でしょうか。


ローレツ:原子力発電を廃止することなく核兵器を効果的に廃絶することはできません。それは軍用にも民生用にも利用できる技術であるからです。原子力エネルギーを生み出す原子炉があるときはいつでも、兵器級のウランやプルトニウムを濃縮し製造するのに必要な原料となる燃料や副産物を使用しています。原子力発電が悪い考えだという理由が他にもたくさんあります。例えば、経済的にも、それは効率のよい、つまり費用効果の高い技術ではありません。私の同僚の一人はそれを「水を沸騰させるための時代遅れの20世紀の技術」と呼んでいます。※※
IPPNWや核兵器廃絶を主張する他のほとんどのNGOはこの立場を取りますが、これはほとんどの政府が固執している点です。原子力エネルギーと原子力ルネッサンスという考えが産業界によって政府に売り込まれてきたため、核兵器を除去すると同時に原子力発電を廃止する必要があるという議論に対して政府はそれほど心を開いているわけではありません。私たちの目標は核兵器を除去することですが、原子力発電については別の文脈でそれ自体の問題として心配しています。しかし、一つのものを廃止するにはもう一つのものも廃止する必要があるというのが私の個人的な見解です。

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SI:通常兵器は世界を破壊するだけの潜在力を持っておりませんが、それは実際に大量破壊と苦悩を引き起こしています。IPPNWの「防止を目指して」キャンペーンと世界保健機構(WHO)の「暴力防止のための連合」や国連への参加について話していただけますか。


ローレツ:IPPNWの仕事のこの部分は、私たちが地雷禁止のための国際キャンペーン〔シェア・インターナショナル誌2007年7月号参照〕に非常に積極的に関与していた1990年代半ばにまでさかのぼります。地雷禁止条約がついに生み出され1990年代終わりに発効したとき、特にアフリカと南アジアの一部の提携団体は地雷に関する調査と作業を続けましたが、IPPNWにとっては世界的なキャンペーンではなくなっていきました。私たちは周りを見回して、「私たちは次にどこに行くのか」と問いました。核問題は私たちにとって中心的な問題ですが、私たちは何年も前に、核兵器と核戦争は、現在大きな苦悩と害悪をもたらしている武器を用いた暴力の連続体の終局点にあると認識するようになりました。
私たちは世界中に蔓延している不法な武器移転に目を向けることにしました。2001年には「防止を目指して」というキャンペーンを開始しましたが、それは小型武器と軽火器の問題の公衆衛生の領域を際立たせるのに貢献しました。年月を経るうちに、これは厳密に小型武器についてのプログラムから、武器を用いた暴力全般が公衆衛生に及ぼす影響をもっと幅広く見るものへと進化していきました。2003年にはIANSA(小型武器に関する国際行動ネットワーク)とともに活動を開始し、彼らと一緒にIANSAの公衆衛生ネットワークを開発しました。これは、単に武器貿易の問題であるだけでなく公衆衛生の領域も存在しているという事実を強調するために医師と公衆衛生の研究者を連帯させる一つの方法でした。
過去2年間、私たちは世界保健機構(WHO)の「暴力防止のための連合」と非常に緊密に連携して活動してきました。それは、武器を用いた暴力の健康関連の問題に焦点を当てるだけでなく、こうした問題に対処するいわゆる生態学的モデルについて考察するためでした。そのためには、世界中にある武器を用いた暴力の問題を緩和することに向けた、根拠と臨床診断に基づいたアプローチを見いだす必要があります。私たちはこの分野でWHOやこのような関心を共有する他の団体とともに非常に新しく面白い仕事を行ってきました。

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SI:通常兵器だけでなく──核兵器、化学兵器、生物兵器といった──大量破壊兵器を製造し維持することによって経済的、社会的にどのような影響が及ぼされるでしょうか。


ローレツ:こうした巨大な貯蔵兵器を維持する費用は莫大です。ステファン・シュワルツ氏〔ブルッキングズ研究所出版部、「原子力に関する監査」という記事〕によると、原子力時代の始まり以来、アメリカが核兵器や核関連のインフラに費やしてきた費用は少なくとも5兆ドルにのぼります。他の核兵器国の貯蔵兵器にかかった費用の総額に関する比較可能な調査は把握しておりませんが、アメリカのこの費用はロシア(ソ連)に匹敵するものだと推測します。
SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、全世界の軍事支出は2008年に1兆4,640億ドルでした。そのうち、アメリカの支出は6,070億ドル、つまり約41.5%でした。世界銀行は、2015年までにすべてのミレニアム開発目標を達成するためには毎年400億ドルから600億ドルかかると見積もりました。それは、世界が兵器と戦争に費やしている額の3%にも満たないものです。そうした機会費用が、武力紛争による犠牲者や物理的破壊、直接の経済的な影響に付け加えられなければなりません。
保健、衛生、教育、住居、経済発展、環境保護などの計画がうまく進まないのは、資金がないからだと世界各国は主張します。しかし、人類は毎年、兵器に1兆ドル以上を費やしています。世界中の人々に安全保障を本当に提供することができるもの──保健、教育、環境保護──の資金が不足しています。そのようなものが、私たちがこのように戦争や軍事支出に熱中していることによる真の損失、真の悲劇なのです。

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SI:他に何か付け加えたいことはありますか。


ローレツ:IPPNWは最も初期の頃から一つの非常に単純なメッセージを伝えてきました。それは、私たちが命拾いをして生き延びているということです。私たちは諸民族の間での何らかの衝突なしに理想的な世界を迎えたことは一度もありませんでしたが、核兵器を所有するまでは、数時間ですべてのものを一掃する能力を持ったことはありませんでした。私たちは冷戦の絶頂期であった1980年代にそのことについて非常に心配していました。今ではそれほど心配しているわけではありませんが、潜在的な可能性はまだそこにあり、兵器もまだそこにあり、事故によるものであれ意図的な行為によるものであれ、私たちはこれらの兵器を使用して地上にあるすべての生命を数時間でほぼ全滅させる能力をまだ持っています。人類と核兵器は相容れないものだと私たちは考えます。IPPNWにとって、それは核兵器と私たち人類のどちらを優先するかという問題にすぎません。私たちはこうした兵器をできるだけ早く廃絶する必要があります。核兵器を廃絶しないで生活している毎日、私たちは命拾いをして生き延びているのです。

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詳しくは www.ippnw.org をご覧ください。

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※ ベンジャミン・クレームの師である覚者は、大量破壊兵器を所有する国家の数は、受け入れられている数値よりもずっと多いことを確認している。事実、ベンジャミン・クレームによると、24カ国が核兵器を公然と、もしくは秘密裏に所有している(『光の勢力は集合する』116ページ)。

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※※ ベンジャミン・クレームの師である覚者は、原子炉からエーテル界に漏れ出している放射能が、増加するアルツハイマー病や自閉症を含む現在の多くの病気の原因となっており、地球上の人間の生命にとって最大の脅威になっていることを確認した。