現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2014年 11月号 熱帯雨林を救うための得意分野を見つける

熱帯雨林を救うための得意分野を見つける

デービッド・シーボルグ氏へのインタビュー
モンテ・リーチ

1984 年に創設された非営利団体「世界雨林基金」は、生物多様性を保ち、世界中の雨林、主にラテンアメリカの熱帯雨林を救うことに力を注いでいる。このグループは、地球上で最大の手つかずの雨林であるブラジルのアマゾンに焦点を置いている。同基金は、原住民が雨林地帯にある自分たちの故郷を救うのを手助けし、雨林保護のための特別な価値あるプロジェクトを実行している非営利団体に補助金を出し、雨林保護の大切さについてアメリカ市民に教えている。世界雨林基金の創設者であり会長であるデービッド・シーボルグ氏は、進化生物学者であり、長年にわたる環境保護活動家である。モンテ・リーチが本誌のためにデービッド・シーボルグ氏にインタビューを行った。
シェア・インターナショナル(以下SI):熱帯雨林の破壊に関する現在の状況はどのようなものでしょうか。あなたのウェブサイトには、毎分300エーカー〔訳注:東京ドーム約26個分の広さ〕が破壊されているという劇的な統計が掲載されていますね。
デービッド・シーボルグ:そのとおりです。世界中で毎分300エーカーの熱帯雨林が伐採か焼失によって破壊されています。それは毎年、カリフォルニア州のおよそ半分の面積がなくなることを意味します。

SI:あなたがこの問題にかかわるようになって以来、状況は好転しましたか、それとも悪化しましたか。
シーボルグ:好転すると同時に悪化しました。エクアドルは進歩を遂げています。コスタリカは多くの土地を保存してきました。ブラジルは(最近まで)減少率を低下させてきました。一方、インドネシアとマレーシアでは、主にヤシ油の生産のせいで急速に悪化しています。ヤシの木の単一種植栽のために、生物多様性に富んだ森林が伐採されています。ヤシ油は多くの製品に使われます。したがって、一部の地域では状況が好転し、幾つかの勝利がありましたが、他の国々では悪化していることになります。

SI:全体的に見て、どちらであると言えますか。
シーボルグ:全体的に見ると悪化していますが、認識は高まってきています。双方が戦いの中で強くなっています。保存のために戦っている側はより洗練され、より博識になっており、原住民や地元の人々だけでなく世界中の環境保護団体との間でより良い協力関係を構築し、多くの勝利を勝ち取っています。例えば、エクアドルでは、エクアドル政府が相手でした。ですから、すべてが悪いというわけではありません。しかし、世界の人口が増えており、人口過多が森林に圧力をかけています。富む者と貧しい者との格差は拡大しています。お金は富む者に対し、破壊的な行動を取り勝利を収める力をさらに多く与えています。

アマゾンでの勝利

SI:あなたのグループが行ってきた仕事について話し、あなた方が実現するのを手伝った幾つかの勝利について紹介していただけますか。
シーボルグ:私たちの最新のプロジェクトの一つはエクアドルで行われており、私たちは今、そこにより大きな焦点を当てています。エクアドル政府はエクアドルの法律に反して、1万エーカーの雨林につながる道路を建設していました。ミズーリ植物園の科学者によると、この雨林には1エーカー当たり世界で最も多くの種が生息しています。私たちは昨年、OSA基金に3,500ドルの補助金を供与しました。これは、エクアドルの雨林を救い、広げようとする仕事をたくさん行ってきた人物によって運営されている基金です。彼は私たちの補助金を使い、道路について調査する人々を雇っています。その道路はエクアドル政府が承認したものよりも広いことを彼らは見いだしました。その補助金はまた、道路がこの原生雨林にとっていかに破壊的であるかをエクアドル政府に示すための雑誌の印刷にも使われました。もし道路が建設されれば、なにがしかの利益を求めて誰でも中に入り、森林を伐採したり焼いたりして搾取するでしょう。
この仕事によって説得される形で、エクアドル政府は道路の承認を撤回しました。私たちは今、森林を恒久的に保護するために活動していますが、差し当たっては、少なくとも森林を救いました。道路が建設されれば、森林の破壊につながっていたからです。森林には非常に多くの種が生息しており、私たちはわずか3,500ドルでその森林を救ったので、寄付金1ドルで救った種の数に関して史上最多の記録を打ち立てたかもしれません。

SI:あなたが言及したい世界雨林基金のプロジェクトは他にありますか。
シーボルグ:私たちはまた、カヤ基金とともに活動しています。カヤ基金は小規模融資を提供して人々に力を与えています。もし一人が森林を伐採し、持続可能な形で森林を利用するという合意を守らなければ、プロジェクトにかかわるすべての人が融資を失うという条件でその融資は提供されます。これは、人々がお互いを監視するのに役立つ優れたモデルです。
こうした小規模融資がエクアドルのケチュア地域でも行われています。原住民のケチュア・インディアンは石油会社から金銭を提供されました。これは、森林に入り込んで石油掘削により森林を「開発」することができるようにするためです。しかし、エクアドル憲法によると、石油会社は原住民の許可を得る必要があり、そうでないと掘削できません。ケチュアの人々はとても貧しく、お金によって誘惑されます。しかし同時に、彼らは自分たちの森林を救いたいと思っています。
ケチュアの人々は有機農園をつくるだけの専門知識を持っていますが、それを活発に始めるための資金を必要としています。もし有機農園を始めることができれば、産物を食べ、余分なものを売り、石油会社に「ノー」と言うことができます。これは大きなプロジェクトです。もし私たちが彼らを助けなければ森林は破壊される可能性が高く、実際に助ければ森林は救われるからです。私たちはすでに、このプロジェクトを進めるための補助金をカヤ基金に供与しています。その力を倍加させるような、ぴったりと適合した補助金を得て欲しいと思っています。したがって私たちは、資金調達を行うウェブサイト上にこのプロジェクトを立ち上げるのを手伝っています。カヤ基金は、利用可能な資金額を倍増させるための梃子として私たちの補助金を使っています。

SI:あなたのグループは、ともすれば資金提供を受けられない価値あるプロジェクトのために資金を工面するのを手伝う世話役のようですね。

シーボルグ:そのとおりです。私たちの得意分野は、注意深く調査した上で、他の人々が支えることのできないプロジェクトに資金を提供することです。寄付金が雨林を救うにあたって最も効果を発揮するように、私たちは資金を提供するのに最適なプロジェクトを見つけます。生物多様性を最大限に救い、原住民や地元の人々に力を与えるようなプロジェクトについて検討します。もしそのプロジェクトが支援されなければ成功せず、逆に支援されれば成功するような熱帯雨林関連のプロジェクトです。私たちはまた、自分たちの影響を倍増させるような、あるいは3倍にするような適切な補助金を融通します。しかし、優れた実績を上げており、一生懸命働いて良い仕事をするものと当てにすることのできる人々の支援に限定しています。

熱帯雨林の重要性

SI:大衆への教育活動を行うなかで、熱帯雨林の保護がなぜ決定的に重要なのかをたいていの人は認識していると思いましたか。
シーボルグ:いつもそうとは限りません。知っている人もいますが、話の一部しか知らない人もいます。雨林が大事なのは、それが二つの方法で地球の気候を統御しているからです。一つは、光合成が、主要な温室効果ガスである二酸化炭素を大気中から吸収し、酸素を放出するという方法です。木が燃やされたり切られたりすると、二酸化炭素が大気に戻され、状況が悪化します。木を切ることによって協力者を遠ざけるのではありません。協力者を敵に回してしまうのです。木が燃やされたり切られたりするとき、木は二酸化炭素を放出するからです。
巨大ダムが建設され、雨林が水没すると、メタンが放出されます。メタン分子は二酸化炭素よりも25倍強力な温室効果ガスです。したがって、そこから途方もない地球温暖化効果が生じます。雨林を伐採して、ハンバーガーを作るために家畜を育てると、家畜はメタンを放出します。
森林破壊が気候に影響を及ぼすもう一つの方法は、アルベト、つまり太陽の光を地球が反射する割合です。地表が緑であれば、木を伐採して地表が茶色になっている場合と違います。地表からの反射率の変化は空気の流れや降雨パターンを変え、洪水や干ばつを引き起こします。地域の気候も影響を受けます。蒸発散量の過程によって木は地域に降雨をもたらすからです。木部は水を吸い上げて葉に水分を行きわたらせ、それからその水分は葉から抜けていきます。アマゾンの水の半分は木に由来し、他の半分は大西洋上の蒸発に由来します。
この過程は、大西洋から対流や還流によって、そして降雨を通して至るところで進行し、はるばるアンデス山脈にまで達します。そこは寒いので雪へと凝結し、そして融けて川を潤します。木を伐採すると、この周期を壊すことになります。地域で干ばつが発生し、地域の農家や原住民は食糧を栽培することができなくなります。
私たちが地球温暖化に影響を及ぼすと、これは降雨に影響を及ぼすことによって世界の食糧生産に影響を及ぼします。雨が通常通りに農場に降る代わりに、洪水や干ばつが引き起こされます。さらに、世界の種の半数は雨林地帯にあります。したがって、雨林を破壊することによって、私たちは世界の種の大量絶滅を引き起こしているのです。

地球での生存

SI:あなたは長年この分野で働いてこられました。私たちがこの地球で確実に生存し続けるためには、環境保護の観点から何が必要だとお考えですか。
シーボルグ:私たちの考え方や態度を完全に変革することが必要です。自然それ自体が存在する権利を持っており、人間は自然を守る道徳的な責務を負っています。私たちは目覚めて、自然を守る道徳的な責務に気づく必要があります。
私たちは実際的な環境保護主義に、つまり、食糧を栽培し水を手に入れるためには生態系サービスを必要とするということにも目覚める必要があります。
私たちは問題の規模と緊急性を理解する必要があります──例えば、地球温暖化は、先程指摘しましたように、雨林の破壊に関連しています。雨林の破壊は、アジア大陸の七つの河川を潤しているヒマラヤ山脈の氷河の融解を引き起こしています。水は、20億の人々と、周辺の森林の生態系にとって必要なものです。もし氷河が融け続ければ、最初は山から流れて来る水は多くなりますが、それから七つの河川の源である氷河はなくなってしまうでしょう。そうすると、20億の人々、それにすべての野生動物と生態系が水を失うことになります。それがまさに多くの問題の一つです。
私たちは水を獲得し食糧を生産する自分たちの能力を失わせています。そのため、それは多くの貴重な種と人類そのものの没落につながるでしょう。すべての人間が死ぬか、あるいは、少なくとも文明が崩壊し何十億もの人間が死ぬかのどちらかでしょう。途方もない大量絶滅と、人類がこれまで経験したどんなものよりも大きな異変が起こるでしょう。私たちはこの問題の重要性についての認識を必要としています。
私たちは化石燃料を脱し、エネルギー源としての石炭をやめ、太陽光、風力、一定のバイオ燃料、保全、エネルギー効率へと向かわなければなりません。世界人口は70億を超え、40年ごとに倍増しているので、人口を減らさなければなりません。食べる口が多く、エネルギーを使う人が多ければ多いほど、地球にかかる負担は大きくなります。女性が避妊や堕胎をすることができるように力を与え、単に母親としてではなく、働きに出て自分自身の選択をする人間として見なされるようにする必要があります。
車や飛行機をやめて、公共交通機関や電車へと移行する必要があります。再利用可能なすべてのものを社会全体として再利用する必要があります。生物学的なホットスポットにある埋蔵資源の利用は除外する必要があります。世界中の20カ所ほどのそうした場所を保存するためにかかるお金は200億ドルか、もう少し多いぐらいです。ホットスポットというのは、世界で最も種の多様性に富んでいることを意味します。私たちは雨林のある埋蔵地や世界中の国立公園、珊瑚礁を保存しなければなりません。雨林やその他の生態系を救うために、地元の原住民に力を与える必要があります。
軍事関連のものからお金を引き出し、保存の手助けをすることや、人々に力と食べ物を与えることにお金をつぎ込む必要があります。伝統的な農業のやり方を脱して、有機農業へと移行する必要があります。大金持ちがほんの少数だけいて、貧しい人々が大勢いるということがないように、企業資本主義をより公正な経済システムへと変革し、富の再分配を行う必要があります。

SI:そのすべてのことを行うために、私たちにはどのくらいの時間があるのでしょうか。
シーボルグ:あまり多くの時間はありません。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、地球の気候変動に関する世界中の科学者の知見をまとめ、定期的に報告書を発行しています。彼らは気候変動否定論者によって、間違っているとして攻撃されます。実際に、彼らは別の意味で間違っています。

SI:IPCCはあまりにも保守的であるとお考えなのでしょうか。
シーボルグ:はい。問題は、IPCCの報告書や報道機関が提示するものよりもはるかに悪いのです。報道機関はこのことに決して十分な注目を払いませんし、問題の深刻さについて決して十分に立ち入りません。したがって、大災害を防ぐために、私たちはしっかりと準備を整え、直ちに懸命に働かなければならないのです。

詳しくは次のウェブサイトを参照してください。
www.worldrainforest.org