現在位置: ホーム シェア・インターナショナル記事 2007年 12月 破壊のマーケティング

破壊のマーケティング

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ロンドンを本拠地とするNGO、武器貿易反対キャンペーン(CAAT)は、1973年の中東紛争(ヨーム・キップール・ウォー)後に武器貿易が拡大したことに懸念を抱いた幾つかのグループによって1974年に設立された。CAATは今日、武器輸出への政府の補助金と支援をやめさせようとしているグループや個人からなる幅広い連合である。彼らは武器貿易の削減と最終的には撤廃につながる措置を国内外で推進している。CAATは国際的な武器販売と世界の貧困との関係にも着目し、平和、正義、民主主義に向けた努力を奨励し、平和的な手段によるあらゆる国際紛争の解決を支持している。ジェイソン・フランシスがシェア・インターナショナル誌のためにCAATの広報担当、シモン・ヒル氏にインタビューを行った。
シェア・インターナショナル(以下SI):どのくらいの企業が兵器を国際的に売買することに関与し、年にどのくらいのお金が軍備に使われているのでしょうか。
シモン・ヒル:世界中で──石油を含めて──兵器以上にお金が使われているものはありません。全世界の武器への支出は最近、1兆ドルを上回りました。文字通り、何千もの会社が何らかの形で武器貿易に関与していますが、この貿易はロッキード・マーティン社、ボーイング社、BAEシステム社のような、数社の途方もなく強力な多国籍企業によって支配されています。
SI:国際的な武器貿易において、各国政府と民間企業はどのような関係を持っていますか。武器貿易においてG8諸国はどのような役割を果たしているのでしょうか。
ヒル:大部分の武器を輸出している5カ国は、国連安全保障理事会の5つの常任理事国です。米国の武器企業は長い間、特に選挙献金を通して政治家への影響を持ちすぎているということで批判されてきました。英国の兵器販売業者も非民主的な影響力を及ぼしていますが、英国の武器産業は圧倒的にBAEシステム社によって支配されているため、状況は異なります。他の英国の武器企業は小規模であり、たいていは部品を作っています(しばしばBAE社に売っています)。そのため、BAE社の力は途轍もなく大きくなります。BAE社の社長はダウニング街10番地〔首相の居住地〕の「庭のドアの鍵」を持っていると英国のメディアは報道しました。
SI:武器貿易において政府補助金はどのくらい供与されているのですか。
ヒル:政府に対して武器企業は大きな影響力を持っているため、武器貿易のために補助金が支払われることになります。英国と米国のほとんどの政治家は自由市場を信じると主張していますが、武器販売業者を相手にする場合にはこの規則を保留にするようです。多くの政府は民間の武器取引を保証するために「輸出信用」を提供します。政府の支援と助成は他の方法でも行われます。英国の防衛輸出サービス機構(DESO)は、税金によって設立された民間の武器販売業者のためのマーケティング機関です。CAATや他のグループが長年にわたって運動を行った結果、ブラウン英首相は2007年7月、DESOを廃止すると発表しました。これは大きな勝利です。私たちは今、DESOが解体されるときに定められる取り決めが守られるようしっかりと監視する予定です。
SI:武器貿易を促進するために軍関係者や外交官さえも活用されますか。
ヒル:はい、しばしば。英国では、政府閣僚や王室メンバーは外国旅行の際に英国の武器の宣伝をすることが期待されます。その旅行が武器や貿易とは何の関係もないと思われるときですらそうです。
SI:武器への支出が各国経済に与える社会経済的な影響としてどのようなものがありますか。
ヒル:武器貿易の犠牲者の多くは兵器によっては殺されません。彼らが死ぬのは、貧困を克服し医療を提供するために切実に必要とされるお金を、政府が武器に使うためです。例えば、パキスタンは医療と教育への合計支出額よりも多くのお金を兵器に使っています。大臣が賄賂をもらって、決して必要としないし使用もしない武器を買うようなときに、武器の購入は行われます。タンザニア政府が2002年にBAE社から高価でほとんど無用な軍事航空管制システムを買うことになったのは、汚職のせいであると広く申し立てられています。英国のような先進国は、貧困と戦い、公共サービスを改善し、気候変動に取り組むために使える何百万ドルものお金を武器貿易補助金として浪費しています。
SI:武器製造業者と各国政府は、その人道的および経済的な影響にもかかわらず、武器販売を続けることを承認するよう一般大衆を説得するためにどのような論拠を用いていますか。
ヒル:兵器販売業者は雇用を創出しているとよく主張します。これはしばしば、愛国心を示そうという見え透いた試みと関連しています。BAE社は「英国の雇用」を保護する「英国の企業」であることを自認しています。現実には、ほとんどのBAE社の株主は今、英国の外に住んでおり、近年では英国において雇用よりも余剰人材を創出しています。
SI:武器フェアとは何ですか。毎年何回開催され、誰が後援しているのですか。
ヒル:それは潜在的な買い手に対して自社の商品を見せびらかす機会を武器企業に与える大規模なイベントです。小規模な銃器販売のことを言っているのではありません。DSEi(国際防衛システムと設備展示会)武器フェアがロンドンで開催されるとき、通例では戦車と航空機が展示され、戦艦がテムズ川のドックに入れられます。武器フェアは通常、民間の買い手によって運営されますが、もちろん当該政府の支援がなければ開催できません。米国で開催されるSHOT(射撃狩猟アウトドアトレード)ショーは、射撃スポーツや狩猟産業に関係するあらゆる専門家たちのための最も大きく最も包括的な見本市です。昨年は、「1975年から成人男性を泣かせている」というスローガンを掲げた、拷問器具の販売会社を受け入れていることが分かりました。しかし、2007年には重要な進展がありました。(世界最大の武器フェアを所有する)リード・エルゼビア社はキャンペーンに応え、2007年末までにフェアのほとんどを売却することに同意しました。私たちは今、もし良い大衆イメージを保とうとするならば、こうしたフェアを買うことは選択肢としてふさわしくないことに気付くよう企業に勧めています。
SI:輸入された兵器が世界中の紛争に関係していることはよくありますか。
ヒル:武器の製造国では、比較的わずかな武器しか使われません。また、武器は複数の国で製造されることもあります──世界各地の企業が異なった部品を製造するのです。これは、武器貿易を追跡調査することが非常に困難な理由の一つです。
SI:「イスラエルの武装をやめよ」と呼ばれるキャンペーンについて教えていただけますか。
ヒル:「イスラエルの武装をやめよ」は、CAAT、War on Want(欠乏との戦い)、パレスチナ連帯キャンペーン、家屋破壊に反対するイスラエル委員会によって形成された連合です。私たちは一緒に、イスラエルへの英国の武器販売をやめるよう要求しています。「イスラエルの武装をやめよ」は、レバノン空爆の最中に形成されました。CAATはそのとき、英国が武器を供給することで紛争に油を注ぐのは間違っていると主張しました。CAATは、英国がヒズボラに武器を供給することにも反対する姿勢を明確にしました。
SI:武器貿易反対キャンペーン(CAAT)は軍装備品の国際的な販売をやめさせ、武装解除した平和な世界という理想を促進するために、どのように活動していますか。
ヒル:CAATは大規模な大衆キャンペーン、地方での草の根的な行動、メディアへの働きかけ、議会でのロビー活動を通して働いています。私たちのすべての仕事が厳密に言って非暴力なものです。私たちはしばしば、目的を共有する他の人々と一緒に活動します。昨年は多くの人々が、武器企業が政府に及ぼしている力に気付いたため、英国内の世論は武器貿易反対へと大きく転回しました。これはDESOとリード・エルゼビア社に関するキャンペーンの成功という結果をもたらしました。私はこの傾向が続くことを確信しており、それがさらに米国やフランス、そして世界中に反映することを大いに望んでいます。今年、英国の人々は、大西洋をまたにかけた英国の奴隷売買が廃止されてから200年がたったことを祝っています──これはキャンペーンによって変化が起こり得ることを証明した運動です。私たちの子孫がいつか、武器貿易が廃止されてから20年が経過したことを祝うことになると信じています。
米国の軍事費と世界の軍事費 米国の軍事費は世界全体の軍事費のほぼ5分の2を占めていた。 米国の軍事費は2番目に軍事支出が多い国、中国の予算のほぼ7倍であった。 米国の軍事予算は6つの「ならず者」国家(キューバ、イラン、リビア、北朝鮮、スーダン、シリアを指す)の軍事費の合計額146億5,000万ドルのほぼ29倍であった。 米国の軍事予算は、2番目以降の14カ国の合計額よりも多かった。 米国とその緊密な同盟国は、全世界の軍事費のおよそ3分の2から4分の3を占めていた。この割合はどの国を緊密な同盟国とするかによって違ってくる(一般にはNATO諸国、オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、韓国)。 ロシアと中国を含む6つの潜在的な「敵国」が使った軍事費は1,390億ドルで、米国の軍事予算の30%であった。 (『米国の軍事費と世界の軍事費』、軍備管理不拡散センター、2007年2月5日) 軍事費を国連の全予算と比較する: 国連とそのすべての機関や基金は、毎年約200億ドル、つまり世界に住む一人ひとりにつき約3ドルを使っている。これはたいていの政府予算と比べて非常に小さな額であり、世界の軍事費のほんの一部分である。そのため、国連はほぼ20年間、財政危機に直面しており、あらゆる分野の重要な計画に関して予算を削減することを強いられてきた。多くの加盟国が納付金を完全には納めておらず、国連の任意拠出基金への寄付金を削減してきた。2006年10月31日の時点で、加盟国の通常予算の未払い金が6億6,100万ドルを上回った。そのうち、米国だけで5億2,600万ドル(通常予算の未払い金の80%)を滞納していた。 (『国連の財政危機』、グローバル・ポリシー・フォーラム、2007年2月25日)

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