戦闘時の民間人の保護

ジェイソン・フランシスによるエリザベス・ディクレー・ワーナー氏へのインタビュー

2000年に設立されたスイスを本拠地とするNGO、ジュネーブコール(Geneva Call)は、武装非国家主体(ANSA)と関わりを持ち、彼らが国際的な人道的規範に準拠し、武力衝突における民間人の保護を改善するように促している。このような国際的な人道的規範は、ジュネーブ条約と他の国際条約に謳われている。

ジュネーブコールは当初、対人地雷の全面禁止に焦点を定めていたが、武力衝突における子供の保護や性的暴力の禁止、ANSAにおける性差別をなくすことなど、活動を他の分野にも拡大した。ジュネーブコールがその活動で使用する鍵となるツール(手段)は「誓約証書」であり、それはANSAが特定の人道的規範を尊重することを誓約することを可能にし、その誓約に公的な責任を負わせるものである。エリザベス・ディクレー・ワーナー氏はジュネーブコールの共同設立者であり、副理事として活動している。ジェイソン・フランシスが、本誌のためにエリザベス・ディクレー・ワーナー氏にインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以降SI ): あなたは何をきっかけとして、ジュネーブコールを共同で設立されたのですか。

エリザベス・ディクレー・ワーナー:それは、対人地雷を全面禁止するオタワ条約の調印(1997年)のすぐ後のことでした。対人地雷は安価で製造が容易であり、その主な使用者は武装非国家主体(ANSA)と呼ばれる反政府軍、武装勢力、解放運動などです。しかしながら、このような主体は国際条約に調印することはできません。その場合、何をすることが可能なのでしょうか。国家と同様にこれらの勢力が、戦闘員よりも多くの民間人を殺傷する武器を使用することを、どうしたら止められるのでしょうか。

これがジュネーブコールの背景にある考え方でした。つまり、ANSAに対して公式で公開の誓約を遵守する機会を提供し、責任を負わせるようにしたのです。こうして「誓約証書」が誕生しました。このツールは、非常に重要な役割を果たすことができます。それは決定の所有権をANSAに与えます。あるANSAの指導者は次のように語りました。「私たちは紛争の中にいたので、これは正式な誓約書に調印する最初の機会でした。そのため、私たちはそれを尊重したいですし、尊重されるようになって欲しいと思います」

それでも、武装集団の行動は対人地雷の使用に限られるわけではありません。民間人の保護を改善するため、子供兵士、戦争の武器としてのレイプ、拷問、学校や病院への攻撃など、他の問題にまで交渉を拡大することは不可欠でした。ジュネーブコールの交渉は今や、こうしたあらゆる問題を取り上げています。

国際人道法

 SI:国際人道法について、そしてそれが紛争時にどのように犯されているのか、お話しいただけますか。

ワーナー:国際人道法(IHL) は、戦争行為の振る舞いを規制する一連の規則です。それは、戦闘に関わっていない、もしくは関わらなくなった人々を保護することにより、また戦闘の手段や方法を制限することにより、武力衝突の影響を限定しようとするものです。IHLは国家やANSAの両方の、武力衝突のすべての参加主体に適用されますが、違反は今日広がっています。その例としては、民間人や、病院や学校などの民間施設への無差別攻撃、強制移住、性的暴力、子供兵士の使用、拷問や即決処刑などがあります。

 SI:なぜANSAは国際人道法の最大の違反者なのでしょうか。そして、ANSAの例を幾つか挙げていただけますか。

ワーナー: 私はANSAが IHLの最大の違反者だとは思いません。国家によって犯されている違反は、シリア、イラク、イエメン、コンゴ民主共和国など多くの国で多発しており、日常的になっています。

私たちはANSAを口にするとき、すぐにダーイッシュ(イラク・レバントのイスラム国)やボコ・ハラム(ナイジェリアのイスラム教武装勢力)と、彼らの民間人に対する重大な攻撃を思い浮かべます。しかし、世界には何百もの武装組織があり、それらの IHLの記録は変化しています。そのような組織の多くは IHLに準拠し、組織の支配地域で人道的な行動を促進しようと努めています。また、多くの組織は、内部行動規範を持っています。ジュネーブコールは、各ANSAと共にこれらの規則を改善し、それらを IHLに準拠させるようにします。議論は彼ら自身が書いたものから始まり、それは彼らに当事者意識を持たせます。何も外から強制されることはありません。それは各ANSA自身の行動規範から来るものであり、彼らに属するものです。自分たちの誓約の尊重はさらに高まるでしょう。

女性と子供の保護

 SI:暴力や戦争のときに、女性は特に影響を受けますか。

ワーナー:武力衝突や暴力の状況下で、女性は特に影響を受けます。何よりも、夫が戦っているときに村に一人で残されます。女性は家事をこなすだけではなく、家業や地域の仕事もしていかなければなりません。女性は性的暴力の犠牲者です(時には男性も性的暴力の対象になる場合もあります)。女の子は強制された早期の結婚の影響を受け、それは戦争時にさらに多くなります。女の子はまた、通学の危険性が増大するため通学をやめることになり、教育を奪われます。さらに、もし女性が戦闘員として一定期間過ごした場合、社会から非女性的、暴力的であると認識され、排除に直面します。

 SI:「武力衝突の状況下における性的暴力の禁止のため、および性的差別の根絶に向けての誓約証書」についてお話しいただけますか。

ワーナー:それには、ANSAの調印が必要です。すべての形の性的暴力を禁止し、この禁止に関して武装組織がその戦闘員を訓練するために、潜在的犠牲者の面倒を見るために、義務を尊重しない戦士を制裁するためにです。そして、ジュネーブコールの他の誓約証書と同様に、それはANSAの指導者によって調印され、共和国政府、ジュネーブ州、ジュネーブコールによって共同調印されました。

誓約証書には、性差別に関する幾つかの条項があります。この誓約証書への調印者は、リーダーシップ構造において女性の参加を増加させ、性差別と戦い、差別的な方針や慣例をなくすためにあらゆる可能な努力を行う必要があります。例えば、女の子の通学を妨げないことや、和平プロセスにおいて役割を担えるようにすることによってです。

SI:子供たちは、どのようにしてANSAのメンバーになるのでしょうか。

ワーナー:頻繁に報告されていることとは異なり、武装組織に参加する子供のほとんどは、最もましな選択肢を選ぶことにより「自発的に」それを行います。学校は閉鎖されており、家族が政府軍や他のANSAによって拉致されたり殺されたりして、子供たちは復讐をしたいと思います。このような子供たちは、自分たちの文化や人々を守りたいとも思い、戦闘員として「給料」を得られるため興味を持ちます。さらに女の子たちは、強制結婚や家庭内暴力から逃れるために家族から逃げます。このような子供たちに対して国際社会が別の選択肢を提供しない限り、武装組織での子供の兵士の存在を減らすことは難しいでしょう。

SI:「武力衝突の影響からの子供の保護のための誓約証書」とは、具体的にはどういうことでしょうか。

ワーナー:これは主に、18歳未満の子供の勧誘や戦闘での使役を禁止し、子供に対する保護手段を求めるためのツールです。また、すべての子供の通学が可能で、健康管理や類似の活動の恩恵を受けられるように援助することにANSAが最善を尽くすように求める条項もあります。ジュネーブコールは、順守を監視し、ANSAを離れる子供たちが別の選択肢を探す際に、武装解除の過程に貢献しようとしています。

 SI:地雷を廃絶する上で、「対人地雷の全面禁止の順守および地雷撤去の協力のための誓約証書」は、どれほど効果的でしたか。

ワーナー:それはジュネーブコールの誓約証書の最初のものであり、2000年から調印のために開放されてきました。今日では 49 のANSA(この中の幾つかはすでに活動していない)がこの誓約証書に調印し、対人地雷の使用、貯蔵、輸送を全面禁止しました。彼らはまた、支配地域での地雷除去作業と、同時に地雷の危険性の教育と犠牲者への援助を促進しました。

ジュネーブコールの活動のおかげで、何千もの備蓄された地雷と他の爆発物が、各ANSAの支配地域で破壊されました。それらの貯蔵物は、誓約証書に書かれている義務がなければ破壊されることがなかったものです。

SI:ジュネーブコールは、幾つのANSAと共に活動しましたか。そして、幾つのANSAが一つまたはそれ以上の誓約証書に調印しましたか。

ワーナー:ジュネーブコールは、現在 46 のANSAと関わっており、様々なレベルで 28 の他のANSAとコンタクトを持っており、一つまたは複数の誓約証書に調印した 54 のANSAを監視しています。

 SI:ジュネーブコールの主要な達成について、幾つかお話しいただけますか。

ワーナー:ジュネーブコールは2000年の設立以来、世界中で100を超えるANSAと対話を行いました。そのうちの半数は、一つまたは複数の誓約証書に調印しました。全体的に見て、彼らの順守の記録は良好でした。少数のケースを除いて、禁止の違反の決定的な証拠は発見できませんでした。調印したANSAは、子供兵士の動員解除や(今までで3万個以上の)備蓄された対人地雷の破壊など、誓約を実施するための具体的な措置を取りました。

一部の国では、ANSAが行った誓約は、切望されていた専門的な人道組織による支援プログラムの開始の助けになりました。それに加え、ジュネーブコールの努力の結果として、誓約証書に調印していない数多くの他のANSAが、民間人を武力衝突の影響から保護するために類似の取り組みを行いました。あるANSAは、人道的問題(地雷除去など)について政府と協力の同意すらしました。

 SI:何か付け加えることはありますか。

ワーナー:障害にもかかわらず、ジュネーブコールの経験は、保護問題にANSAを参加させるのは可能だということを、そして建設的なアプローチは IHLの順守を強化する上で有効となり得ることを示唆しています。国連事務総長は言いました。「非政府武装組織と関わったとしても、いつも保護が改善されるとは限りませんが、組織的関与がない場合はほぼ確実に、現在の紛争における民間人の犠牲者数は減少することなく、増加するでしょう」

以前、あるANSAの人が言いました。「私たちにただ武器を捨てさせるのではなく、私たちの行動を改善することについて誰かが話をしに来たのは、ジュネーブコールが全く初めてでした」

詳しくは以下を参照してください。

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