歩いて行くのをやめる

 

マイケル・テイルズ

水は地球上のすべての生き物と私たちを結びつけている。 安全な飲み水を手に入れることは、女性や子供たち、および家族の健康を改善することによって教育と仕事の展望を生み出し、あらゆる困難をチャンスへと変換する。

国連の水と衛生に関する持続可能で発展可能な開発目標「目標6」は、2030年までに安全で手頃な価格の飲料水が、世界中に平等に与えられることを求めている。
しかし、2025年までに世界の人口の半分が水不足地域に住んでいるだろうとも言われている。 これは、「目標6」が達成されるまでに世界の人口の半分が、すでに水不足地域に住んでいることを意味している。

挑戦

きれいな水が貴重な必需品となっている。2018年1月、南アフリカのケープタウン市は、清潔な飲料水不足が近づいていることを明確に表明した。メディアはこの状況を「ゼロの日──水道蛇口から水が出ない日」と呼んだ。ケープタウンの市民の水は、わずか3カ月しか残っていないと推定されていた。水不足の原因は、気候変動、人口増加、この百年間の最も深刻な干ばつとの相乗効果によるものと考えられていた。
南アフリカの水不足は、残念なことに唯一の状況ではない。 統計的データは、落胆させるような世界の姿を示している。
■ 5歳未満の子供たち30万人以上が、安全でない飲料水、不潔な衛生施設、および劣悪な衛生状態のため、毎年下痢症で死亡している。
■ 90秒に一人の子供が、水が原因の疾患で死亡している。
■ 8億4,400万人が安全な水にアクセスできないでいる。
飲み水を汲みに行く責任は、もっぱら、いや文字通り、この貴重な資源の集め役となりがちな女性と子供たちの肩にかかっている。国連児童基金(ユニセフ)は、女性と少女たちは、毎日飲み水を汲みに2億時間を費やしていると述べている。これは時間の無駄であるだけでなく、女性を貧困のサイクルに閉じ込めてしまう。 比較的安全な飲料水を収集するために費やされた時間の長さは、教育、仕事、または他の自発的な活動に費やされる時間を縮めていくのである。

好機

カナダアルバータ州立大学のジット・パテル氏とルトゥ・メータ氏の2人の学生が行動を起こすことを決心した。ルトゥ・メータ氏は21歳で、現在はビジネス経済学と法学の学位取得へ向けて、副専攻科目の財務管理を含め学習中である。彼女の将来の計画は、企業の弁護士になるだけでなく、アクア・シーラム(Aqua Caelum:学生によるビジネス・コンサルティング会社)が、世界中の何百万人もの人々を援助できる企業に成長するのを確実にすることである。ジット・パテル氏も21歳で、現在機械工学の学位を目指して勉強中である。彼の将来の目標はMBAの学位を取得し、アクア・シーラム(Aqua Caelum)が数百万の人々を助けることができる大いに成功した企業にすることである。
彼らは 「水危機を終わらせ、何百万人もの人々がきれいな水を手に入れることができるようにする」という使命を持つ企業を、一緒に共同設立した。本質的に、彼らは(水を手に入れるための)遠出をやめることを目指している。 彼らの研究と努力は、除湿器によく似た「大気水発生器」(AWG)システムの製造にたどり着いた。 その装置は、熱力学を使用して水滴を空気中から抽出し、水を濾過システムに通してきれいな飲料水をつくり出すものである。
マイケル・テイレス氏はシェア・インターナショナルのために、ジット・パテル氏とルトゥ・メータ氏にインタビューし、世界的な水危機に役立つことを望んでいる彼らの発明について話し合った。

SI(シェア・インターナショナル):どのように「大気水発生器」(AWG)に対する考えが浮かんだのですか。
私たちにその考えが閃いたのは、2017年の夏でした。数社のメディアの記事の見出しには、繰り返し書かれているテーマがあることに、私たちは気づきました。それは水危機でした。 ケープタウンのような大都市は水不足に直面していましたが、それは10年後に起こることではなく、今起こっていることでした。調査を行った結果、約10億人の人々が清潔な飲料水を手に入れることができず、国連によると、2025年までに人口の3分の2が水不足に直面することになります。何かをしなければならないことを実感した時、私たちは何百万人もの人々に清潔な飲料水を提供できる解決策を考え出すことにしました。

SI:「大気水発生器」(AWG)はどのように作動するのですか。
本質的に「大気水発生器」(AWG)が行うことは、空気から水を凝縮することです。 高温の湿った空気が冷たいコイルの上を通過すると、その空気中に閉じ込められた水分子を凝縮させます。凝縮された水は飲み水用に濾過されます。このプロセスは除湿器と同じです。

SI:1台の「大気水発生器」(AWG)で生産できる水の量は何リットルですか、また、その量をつくるのにはどれくらいの時間かかりますか。
現在、私たちは1日に20リットルの清潔な飲料水をつくり、汚染された水を飲む必要がないようにしています。 私たちが製品の研究開発を続けていく中で、この能力を向上させ、より多くの人々を援助することを目指しています。

SI:「大気水発生器」(AWG)が最高に有用性を発揮するのは湿度の高い地域のようです。より乾燥した気候下でも使用できますか。
現在、当社のシステムは湿度の高い場所で使用するように設計されていますが、40~50%の湿度でも使用できます。さらに研究を重ねることで、乾燥した気候下でも水を生産するシステム構築を目指しています。

SI:もし汚染レベルが高く空気の質が悪い場合は、その装置がつくり出す飲料水の品質に影響しますか。
汚染は間違いなく飲料水の品質に影響を与える大きな要因です。 汚染物質が空気中から侵入するのを防ぐための最も有効な解決法を決定するために、様々なエアー・フィルターをテストしています。バクテリアのような他の汚染物質は、水を浄化するのに役立つ水フィルターで処理されます。 私たちのフィルターは数カ月ごとに交換する必要があり、その手順はかなり簡単に学ぶことができます。 付属の取扱説明書には、これらのフィルターの取り付けと交換手順が段階的に示されています。

SI:その装置は、途上国にとって費用効率は高いですか。
現在、途上の国々の政府にいろいろな「大気水発生器」(AWG)を販売し、彼らが容易に導入して都市に普及することができるように検討しています。さらに必要な開発は、製造単価を大幅に削減し、これらの国々にとって費用効果が高くなることを保証することです。

SI:あなたはこれまでにどのような財政的または政治的支援を受けていますか。
われわれは、アントルプルヌール・シップ(Entrepreneurship:創造性のある起業家精神を持つ個人事業家)に対する財政的支援を、アルバータ州立大学、アルバータ・リンク(AlbertaLink)、アルバータ・エメラルド基金(Alberta Emerald Foundation)、およびコノコ・フィリップス(ConocoPhillips:世界6大石油企業)から受けています。

SI:あなたと仲間の学生は、学生・学者・ビジネスリーダーで構成される国際的な非営利団体エナクトゥス(Enactus)が主催する次回の「コンペ」で、このデザインを発表します。 過去の結果はいかがでしたか。
「コンペ」は2018年5月14日に行われます。われわれはアクア・シーラム(Aqua Caelum)と一緒に他の二つのプロジェクト、ヘンパクト(Hempact=小・中規模の企業・起業家へのサービス提供)とソーシャル・コミュニティー・コンサルタント(SoCo Consulting)をトロントのエナクトゥス大学(Enactus)・ナショナルコンペで発表します。

SI:あなたがインスピレーションを受けているこの道に沿って他の人が動くよう促すアドバイスはありますか。
私たちのアドバイスの一つとしては、いかなる解決策も大き過ぎたり小さ過ぎたりしないということです。 あなたが有益な何かを創造する可能性があると信じるなら、それを求めて行くべきです。世界は素晴らしいアイディアでいっぱいですが、成功するには行動が必要です。また、企業が成功する前には多くの間違いを犯しますが、そのことであなたが失望したり、諦めたりしてはなりません。 小さな努力のすべてが重要なのです。

詳細情報:www.aquacaelum.com