子供たちを解放する:子供の投獄を廃止する取り組み

 

 

「私たちの刑務所は人道的危機であり、私たちの子供たちは、非人道的で品位を傷つけるような方法で扱われている」── デイビッド・スコット博士
デイビッド・スコット博士は、イギリスのオープン大学に勤務しており、カナダ、トロント大学の客員教授でもある。彼は100以上の本の章や記事を発表し、5冊の著書を出版し、運動組織『エンド・チャイルド・インプリズンメント(子供の投獄をやめよ)』の創設メンバーである。彼は、『Justice, Power and Resistance(正義と権力と抵抗)』誌の共同創刊者であり、独立系出版社、EG プレスの創設者でもある。スコット博士は、以前は「逸脱と社会支配の研究のためのヨーロッパグループ(European Group for the Study of Deviance and Social Control)」の調整官であり、INQUESTの学術的顧問団の 一員である。彼は、数多くの短編ドキュメンタリーを製作し、2018年には、英国のドキュメンタリー映画フェスティバルで、映画(Hamlett Filmsと共同で)『グレンフェル塔と社会的殺人(Grenfell Tower and Social Murder)』で、ライフチェンジング賞を受賞した。シェリーン・アブデルーハディ・テイルズが、本紙のために、スコット博士にインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以下SI): あなたは、刑務所制度を廃止するための運動をいつ始めたのですか。そして伝えたいメッセージは何でしょうか。
デイビッド・スコット:私は過去13年間、この問題に関する運動に専念してきました。2006年ごろに、イギリスの「刑務所は要らない(No More Prisons)」と呼ばれる小さな圧力団体に関わった時、私はこの運動に関わり始めました。私は現在、子供の投獄を終わらせる運動に関わっており、それは2018年11月に国会議事堂で始まりました。子供は傷つきやすく、非常に大きな必要を持っており、子供たちが成長し発達できるようなシナリオを作る必要があることを、私たちは伝えようとしています。子供は間違いを犯します。それは、すべての人が間違いを犯すのと同じです。人生で最悪の出来事が起こってしまった子供は、すでに悪いスタートを切っており、すべての困難を経験しており、すでに暴力や乱用や危害や負傷に直面していて、彼らは司法制度に巻き込まれてしまったように思われます。本質的に、私たちがしようとしているのは、心理戦に勝つことです。罪と罰はすでに深く確立されたアイディアであり、私たちは、このようなアイディアを変えようとしているのです。イギリスでは、数え切れない数の傷つきやすい人々を投獄しているようであり、その中にはもちろん子供もいます。そして、このような子供たちは、しばしば人生の早い時期に大きな困難に次々と遭遇します。小さな時から施設に入れられていた子供たちの多くは、家族の愛やケアや愛着を一度も経験したことがありません。彼らは、コミュニティーの一員であるときにどのように感じるかを、全く知りません。彼らには、機会が与えられたことがありません。子供たちは子供たちであり、彼らを刑務所に送るのではなく、彼らにチャンスを提供すべきだと、運動では訴えています。また、このような子供たちの背景は、黒人やアジア系の少数民族系に偏っています。彼らは、すでに危害を受けており、人生で機会がほとんどなく、非常に困難な状況で成長してきました。そのため、彼らは、より深く傷つきやすく、人生のスキルを持たないため、人生に対処するメカニズムがないだけなのです。そして、このような恐ろしい子供の拘留中の死や、または子供の自傷行為や、薬物や他の活動に手を染めたりする状況があります。なぜなら、彼らは、普通の生活をこれから送ることはできないと思っているからです。刑務所は非常に有害であり、彼らは非常に有害な考えや行動を生み出します。

SI:あなたが子供のことを話されたとき、イギリスのどの世代のことを指しているのですか。
スコット: 現在、イングランド、ウェールズ、北アイルランドにおける刑事責任年齢は10歳です。スコットランドにおける公的な刑事責任年齢は、世界でも最低水準の8歳ですが、実際は12歳以上を対象としています。スコットランドでは、公的な刑事責任年齢の引き上げを計画しています。もちろん、刑事責任年齢を巡るこうした問題について考え始めると、少しおかしなことになります。子供は10歳の時に、同意の下でも性的関係を持つことが許されない、お酒を買うことが許されない、ペットを買うことすら許されないという事実があります。つまり法律のどこかに、子供は実際には責任のある個人ではない、まだ発達途中である、まだ学んでいる最中であり、間違いを犯すという考え方があるのです。理想的には、刑事責任年齢は18歳であるべきです。ですから、刑事責任年齢を14歳に、そして16歳に引き上げた場合、実際には特定の年齢グループの刑事責任を廃止することになり、その結果、刑務所の子供を減らすことになります。

SI:子供の実刑判決は、イギリスで特に問題となっていますか。
スコット:はい。イングランドとウェールズでは、途轍もない数の子供の終身刑があります。2006年から2016年の間に、197件の子供の終身刑がありました。イギリス普通法では、共同事業法としても知られているものもあります。この法律では、ある子供のグループが犯罪のことを知りながら止めるために何もしなかった場合に、起訴されます。つまり、非常に多くの子供たちが、文字通り何百人もの子供たちが、近年に終身刑の判決を受けましたが、実際には何も違法なことはしていないのです。彼らは、重大な犯罪を犯した人物を知っていただけなのです。欧州連合の他の国々では、子供の終身刑で収監されている子供は、合計で5人ほどです。つまりイギリスでは、おかしな状況になっているのです。

SI: あなたとあなたの団体は、政府に対して運動を行いましたか。何か反応はありましたか。
スコット:私たちは、2018年11月に国会議事堂で運動を開始し、刑法分野から多くの人が参加しました。そして私たちは、継続的に参加を行い、ロビー活動をしようとしており、それはイギリスの廃絶論者が長年してきたことです。廃絶論者に刺激を受けたもう一つのINQUESTという団体は、継続的に情報を提供し、国会や教会に対してロビー活動しようとしています。私たちは継続的に、人々が刑務所や刑罰に対して持っている情熱を挫こうとしており、それは人々や政治家に事実を知らせることなのです。刑務所の廃絶に関して、私たちはかなり過激なアイディアを提唱しています。このように子供たちに生じている損害をなくすためには、刑務所制度を完全に廃止する必要がありますが、とりあえず何かを始めなければなりません。ですから、私たちは、これらすべての問題について政府と関わりを持っています。それは労働党の政治家や影の閣僚と話をし、聞く準備のできているあらゆる人と関わりを持つことを意味します。

SI:政府と関わる上で、労働党の政府と保守党の政府で何か違いはありますか。いつも同じような反応でしたか。
スコット:若年層の司法を巡っては、二つの支配的な物語があり、これらは懲罰的、および非懲罰的なアプローチに関係しています。あるいは福祉、および正義です。それらは実際には完全に相反するものであり、関わる政治家によって異なり、政党の方針に必ずしも沿うものではありません。例えば、最近の保守党政権の下では、子供の収監者数の大幅な減少がありました。しかし、子供の収監者数が減少したとしても、黒人、アジア系、少数民族系の子供の数は実際には増加しており、彼らは、刑務所の子供の約46%を占めています。訓練請負センター(Secure Training Centres)や少年犯罪者施設のような、様々な施設があります。私たちは、それらを子供の刑務所とは呼びませんが、もちろんそれらは子供の刑務所です。そして、1990年代の労働党政権の下では、実際には、刑務所に送られる子供の数の増加がありました。現在の(保守党の)大法官デイビット・ガウキ氏が、刑務所が上手く機能するとは思わないと断固として語ったことは皮肉ですが、彼は代替案を持っておらず、彼らは今では刑務所の拡大運動をしていて、何年もそうしています。彼らは巨大刑務所を新たに建設しようとしています。現在の刑務所担当相は、6カ月以内の実刑判決を廃止するなどして、刑務所の削減を望んでいると発言していますが、そうした結果をもたらすような法律上、政策上の変更は、現在まで何も行なっていません。

SI:少年刑務所に対する代替案のアイディアは、何かありますか。
スコット:私たちは、戦略的に考える必要があります。第一に、子供の刑務所人口の削減の要求を試み、小さな成果を勝ち取ります。部分的、選択的な廃絶に集中するのです。次に、薬物使用の犯罪化に関連する特定の法律の廃絶を行ったり、子供の終身刑の廃絶などをしてみると良いかもしれません。しかし、代替案に関しては、教育的なアプローチや霊的なアプローチなど、別のアプローチがとても役に立つかもしれません。子供の熱意を育てたり、子供を魂を持つ存在として、可能な限り最高の人間になりたいと思う存在として理解するような、教育的なアプローチが、この場合、本当に価値があります。一つには、収監された子供の多くは、比較的軽微な窃盗犯が理由であることがあります。彼らが刑務所に入ったのは、本当に困難な人生を送っていたことが原因であり、もし私たちがそれに対処するとしたら、非懲罰的なアプローチを、したがって刑務所のないアプローチを取る必要があります。私たちは、このような子供たちの生活援助をどのようにつくり上げるかを考えていく必要があります。彼らは人生で援助をあまり得られなかったので、彼らに与え、肯定的な人生体験を与えることで彼らの人生をつくり上げたいと思います。たとえ、ある時点である種の国家のケアを必要とする子供たちがいたとしても、こうした子供たちをどのように扱うかに関して、基本的な基準があるべきです。子供たちが援助、愛情、ケアに関して満たされるような『子供が第一』というアプローチが必要です。子供たちをどのように扱うかについて基本的な基準があるべきであり、それはケア、愛情、援助などによるものであり、子供たちが対応に失敗するような障害をつくることによるものではありません。

SI:つまり、あなたの言葉では、すでに不足している子供たちが、間違った決定を行ったか、もしくは犯罪のことを知っていた状況があり、その結果、刑務所に入れられてしまい、そこで彼らはより良い未来への希望を失い、そして進み続ける意欲を全く持っていません。そのようなことでしょうか。
スコット:あなたは、私が正に同意するような「希望の終わり」という言葉を使いました。そして実際には、それが刑務所で供給不足になっているものなのです。そして刑務所は、実際には、この希望のない感覚を生み出す場所のようです。より良い道などない、物事は変わらない、永遠に今のままだろうという感覚です。もちろんそれは、大人と子供の両方にとって、自殺観念作用をつくり出す最大の要因の一つです。子供たちが愛されていると感じ、必要が満たされていると感じることは、極めて大切です。一方でまた、彼らはお返しに愛することができ、お返しに何かを与えることができると感じられるべきです。それは、子供たちに投資することを意味し、彼らを援助することを意味します。収監された子供たちのほぼ半数が、子供たちに無料の学校給食の資格のある家庭から来ているので、それは貧困化した子供たちの問題なのです。ですから、彼らに何かを与えてください。彼らの才能は何か、彼らは何を与えられるのか、彼らは何ができるのかを見つけてください。ただ単に彼らを切り捨てることはしないでください。

SI: 少年や大人の刑務所制度を廃絶しようとした国は、どこかにありますか。
スコット:私たちは、改革された刑務所が実際にどのように進化したかを理解する必要があります。もちろん、常に刑務所があったわけではありません。刑務所は19世紀の初期に発明されたもので、イギリスの最初の刑務所は1816年頃のもので、アメリカやカナダでも同時期でした。それは産業資本主義の隆盛と歩調を合わせて登場したものでした。刑務所と不平等さのレベルとの、その共生的関係を見る必要があります。特に経済的な不平等であり、また、認識された民族的アイデンティティー、性別、性的関心、年齢などです。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどの国々を見ると、依然として刑務所制度がありますが、より福祉志向のアプローチがあることが分かるでしょう。そして重要なことは、彼らはより社会民主主義的な社会形態を持っており、経済的な不公平への対処に関して、非常に異なったアプローチをしていることです。ですから、刑務所に対する異なったアプローチを取る国を探したら、社会をどのように組織するかに関して異なったアプローチを取る国が多いことが分かるでしょう。刑務所制度の先にあることを探求したいのなら、人々に異なった方法で対処する必要があります。間違いを犯す人々は、しばしば社会の底辺にいる人々であり、必要とされない人々、恵まれない人々、のけ者として見られる人々であり、誰も所有しない人々、社会の周辺にいる人々、そして高度な資本主義の目的の達成に失敗した人々です。彼らは、最終的に刑務所に行ってしまった種類の人々なのです。私たちが刑務所に対して異なったアプローチを取ろうとしたら、人々をどのように扱うかに関して異なったアプローチを取る必要があります。ごく簡単に言えば、私たちは不平等を問題にする必要があるのです。もし、協力を基盤とする社会を持つことができれば、そして、資本家的、家父長的、新植民地主義の人種差別的な国家を越えて移行することができれば、その時にだけ、現在の懲罰的、非人間的な制度から抜け出す道を見つけることができるでしょう。