今月号の内容概説

ほぼ1年半続いたパンデミックの後、世界が今や示しているはずだと期待できる反応が一つあるとすれば、それは協力の精神である。私たちは皆、世界中で同じ潜在的な危険に直面しているため、共通の「敵」に対しては完全な協力が最も適切な対処の仕方となるだろう。しかし、私たちの政府も、システムも、精神構造も、あまりに競争に固執しているため、私たちはこれまでのところ、この最近の「テスト」には合格していない──新型コロナウイルスとそれに付随するあらゆるものによって課せられたテストである。
 しかし、ベンジャミン・クレームの師である覚者はこう再確認している。「競争は人間を絶壁に導いた。協力のみが道を見いだすのを助ける」。問題は、私たちがその絶壁のふちのすぐ近くをヨロヨロと歩いていることを私たちと指導者たちが認識する──そして行動する──かどうかである。
 社会の不正義に反応して、地元レベルであれ国家レベルであれ、市民による共同の努力は拡大しており、労働者による改革に向けた行動は変化の力として認識されている。「民衆の力」はもはや、世界中の都市で行進し抗議する、元気づけてくれる大勢の人々だけではない。住民による活動もまた、意思決定に実際に直接参加するほどまで拡大してきた。「参加型予算編成」で描写されているように、そうした根本的な政策変更によって、状況の改善、労働者の権利の擁護、資源の公正な割り当てが確実に行われている。
 今月号の内容の大部分は、地球規模の問題に対する実施可能な解決策について概説している──こうした問題のすべては、私たちの幸福感を含めて、私たちの仕組みに対して競争が強いている緊張を反映している。あらゆる種類の不正義に特に焦点が当てられている。例えば、奴隷制、環境破壊、金融化、労働者の搾取である。こうした問題のそれぞれが他の諸問題を悪化させるいきさつを読むと、心がかき乱されると同時に興味がそそられる。奴隷制と気候危機が一緒になって悲劇をつくり出していることなど、誰が考えたことがあったろうか。「気候変動と現代の奴隷制には同時に取り組む必要がある」をご覧いただきたい。
 「人類へのマイトレーヤの接近」は、人類に近づき、導こうとする霊的ハイアラキーの継続的な努力について詳述している。今月号の選集「真の内向性」では、マイトレーヤ、偉大なアバターであるサイババ、覚者、ベンジャミン・クレーム、スワミ・ニリプタナンダの声に耳を傾けることになる。それぞれの方が私たちに対して内面に向かうよう、熟考するよう、自分自身の中に静けさを見つけるよう、そして真我とつながるよう促し、助言している。この教えはおそらく現在にはなおさら当てはまるものであり、自分自身と真我についての新しい体験を与えてくれる。内面に向かおうとする十分な姿勢が培われると、今日の難問にもっと的確に対処することができ、自然界と至るところの人々に恩恵をもたらすということが分かり始めることになるかもしれない。至るところのすべての人が繁栄できる状況を確実にもたらすために、以前にもまして今、その内的なビジョンを実際的な行動へと変換する必要がある。