1864年のジュネーブ条約とそれに続くジュネーブ諸条約は、敵対行為に参加していない民間人や、もはや敵対行為に参加しない人々(捕虜や傷病者など)の保護に焦点を当てている。
これらの条約の重要性は、ユーゴスラビア(1993年)とルワンダ(1994年)にかかわる戦争犯罪法廷の設立、および、国際刑事裁判所の創設につながったローマ規程(1998年)に反映された。
集団殺害犯罪(ジェノサイド)
国家的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部に対し、その集団自体を破壊する意図をもって行う次のいずれかの行為をいう。
(a)当該集団の構成員を殺害すること。
(b)当該集団の構成員の身体または精神に重大な危害を与えること。
(c)当該集団の全部または一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること。
(d)当該集団内での出産を防止することを意図した措置を強制すること。
(e)当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。
民族浄化
(a)武力や脅迫を用いて特定の集団に属する人々をその地域から排除することによって、その地域を民族的に均質にすること。
(b)ある民族または宗教集団が、テロを誘発する暴力的な手段によって、他の民族または宗教集団の民間人を特定の地理的地域から排除するために計画した意図的な政策。
人道に対する犯罪
民間人に対する広範または組織的な攻撃の一環として、そのような攻撃であると認識しつつ行う次のいずれかの行為をいう。
(a) 殺人。
(b) 絶滅させる行為。
(c) 奴隷化すること。
(d) 住民の強制追放または強制移動。
(e) 国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的自由の著しい剥奪。
(f) 拷問。
(g) 強姦、性的な奴隷、強制売春、強制妊娠、強制不妊手術、または同等の重大性を有するその他の形態の性的暴力。
(h) 政治的、人種的、国家的、民族的、文化的、宗教的な理由、性別または国際法上許容されないと普遍的に認められている理由に基づく、この項に掲げる行為または裁判所の管轄権内にある犯罪に関連して、特定の集団または共同体に対する迫害。
(i) 人の強制失踪。
(j) アパルトヘイトの犯罪。
(k) 身体または心身の健康に対して意図的に重い苦痛や重大な傷害を引き起こす類似の性格を有するその他の非人道的行為。
戦争犯罪
国際人道法(条約または慣習法)違反のうち、国際法上の個人刑事責任を負うもの。その結果、集団殺害犯罪や人道に対する犯罪とは対照的に、戦争犯罪は常に、国際的または非国際的な武力紛争の中で行われる。
関連するジュネーブ条約に基づいて保護される人または財産に対して行われる次のいずれかの行為。
(a) 故意の殺人。
(b) 拷問または非人道的な扱い(生物学的実験を含む)。
(c) 故意に大きな苦痛を与えること、または身体または健康に深刻な損傷を与えること。
(d) 軍事的必要性によって正当化されず、不法かつ恣意的に行う財産の広範な破壊または横領。
(e) 捕虜その他の被保護者を強制して敵対国の軍隊に従軍させること。
(f) 捕虜その他の被保護者の自由および公正な正規の裁判を受ける権利を故意に奪うこと。
(g) 不法な強制送還、移送または不法な拘禁。
(h) 人質をとること。
国際法の確立された枠組みの中で、国際的な武力紛争の際に適用される法規および慣例に対するその他の重大な違反〔これは完全なリストではない〕。
(a) 民間人そのもの、または敵対行為に直接参加していない個々の民間人に対する意図的な攻撃の指示。
(b) 民間の物、すなわち軍事目標でない物への意図的な攻撃の指示。
(c) 武力紛争に関する国際法に基づいて、民間人または民間の物体に与えられる保護を受ける権利がある限り、国連憲章に従わない人道支援または平和維持の任務に関与する人員、施設、物資、部隊または車両に対する攻撃を意図的に指示すること。
(d) 予期される具体的かつ直接的な軍事的利益全体と比較して、攻撃が、巻き添えによる民間人の死亡もしくは傷害、民用物の損傷または自然環境に対する広範、長期的かつ深刻な損害であって、明らかに過度となり得るものを引き起こすことを認識しながら意図的に攻撃を開始すること。
(e) 手段のいかんを問わず、無防備で軍事目標でない町、村、住居または建物を攻撃、または砲撃すること。
(f) 占領国が直接的もしくは間接的に、その占領地域に自国の民間人の一部を移送、またはその占領地域の住民の全部または一部をこの占領地域内外へ追放または移送すること。
(g) 宗教、教育、芸術、科学または慈善を目的とする建造物、歴史的記念物、病院および傷病者の収容所に対する意図的な攻撃。
(h) 襲撃により占領した場合であるか否かを問わず、町や場所を略奪すること。
(i) 強姦、性奴隷、強制売春、強制妊娠、強制不妊手術、その他ジュネーブ諸条約の重大な違反となる性的暴力を行うこと。
(j) 国際法に従って、ジュネーブ諸条約の特徴的な紋章を使用して、建物、資材、医療ユニット、輸送機関、要員に対する攻撃を意図的に指示すること。
(k) 戦闘の方法として、民間人からその生存に不可欠な物品をはく奪すること(ジュネーブ諸条約に規定する救済品の分配を故意に妨げることを含む)によって生ずる飢餓の状態を故意に利用すること。