ダンジャ・ミュラーによるフィリス・クリスタル氏へのインタビュー
フィリス・クリスタル氏は1914年にロンドンで生まれた。彼女は大学の教育学部を卒業後、アメリカに移る前に3年間高等学校で教えた。91歳の2004年に、彼女はドイツのミュンヘンに移り、95歳の時にスイスのチューリッヒに移り住み、2016年の12月に102 歳でイギリスで亡くなった。1950年代の終わりころ、クリスタル氏と一人の親友は、彼らが高次元意識(HiC:Higher Consciousness)と名付ける内面の英知の源に、実験的かつ定期的に接触することを始めた。それ以来、高次元意識に接触するのにシンボルを使用し、これを発展させて視覚化の方法を採用した。この技術は、外的な安心と支配への執着から人の意識を解き放ち、個人を、外部の何かではなく自己内部の高次元からの助力と指導を求めるものである。フィス・クリスタル氏は、この方法を分かち合うために多くの国でセミナーを開いてきた。彼女の最初の本『束縛の鎖から解き離たれて(Cutting the Ties that Bind)』は1982年に発行され、続いて『束縛の鎖からさらに解き離たれて(Cutting More Ties that Bind)』が発行された。また、この2冊に付けるワークブックも発行された。彼女は他にも、『サイババ:究極の体験』を発行している。彼女は生前、インドのマスターであるサイババをとても崇敬しており、この本でサイババとの体験を回顧している。フィリス・クリスタル氏は、この方法が即製のものではないことを強調している。彼女によると、人は変化を求めて外のものを無暗に求める代わりに、自ら進んで自己変革と自己向上の必要性に集注するならば、必ず支援が与えられると強調している。ダンジャ・ミュラーは、クリスタル氏の2013年の集中講義コースに出席し、シェア・インターナショナル誌のためにクリスタル氏にインタビューした。
シェア・インターナショナル誌(以下SI):過去50年間、あなたは、人々がしがらみに満ちた習慣や過去の苦痛に満ちた経験から解き放たれることのできる方法を発展させて来られました。この方法がいかに有効かについて話してくださいませんか。
クリスタル氏:私たちは、何かまたは誰かの支配から私たちを解放する方法を伝えてまいりました。もし私たちが、自分たちの生活を素直に(虚心坦懐に)見つめれば、私たちは、他人や記憶や習慣が私たちを支配しているばかりではなく、私たちもまた、他人を支配していることに気がつくことでしょう。そこで私たちに最初に与えられるものは、「数字の8」です。これは個々の人は自分自身のサークル(円)を持っており、二人が数字の8を共有していることを示す象徴です。私たちは、この数字を使うことで、一時的に誰か一方が他方を支配することをやめるのです。そうすれば(人間関係が)うまく機能するようになります。子供は特にこれに反応します。今日、とても多くの子供、幼稚園児でさえもが問題を抱えています。一方で他の子供は大変に攻撃的です。彼らが数字の8を使う作業を行うと、自分たちが一つのサークルにいて、他の子供がもう一つのサークルにいることを知るようになり、攻撃が収まります。要するに事態が動くのです。
SI:どのようにしてあなたはこの方法を見つけたのですか。
クリスタル氏:ある友達と私がある日、昼食を摂っていて、主婦であったり母親であったりの立場から、自分たちの命についておしゃべりをしていました。当時私たちには仕事が与えられておらず、私たち二人は大学を卒業していたのですが、それは正常ではありませんでした。私たちは、これはただ二人だけの問題ではないと考えました。そして私たちは、時々、問題に直面し、意識的にそれを解決しようとベストを尽くすのですが、解決に至らないことに気づきました。私たちは時に腹を立てて投げやりになったりします。そしてもうだめだと言います。でも夜に夢を見て、答えが見つかったりします。または、次の朝目覚めてみるととても明瞭な答えが得られたりします。そこで私たちは、心のどこかに答えをもたらす部分があるに違いない、そこに触れてみようと的を定めました。私たちは漫然と「潜在意識」や「現在意識」そして「超意識」という言葉を知っていました。私たちはただ漠然と(その存在を)気づいていた超意識にコンタクトしようとしました。その結果うまくいったのです。このようにして、(超意識と接する)方法を行い始め、それを広めることになったのです。
SI:あなたの本で紹介されている視覚化のエクササイズはとても簡単なように見えます。あなたが行うセミナーでは、参加者は、この方法がいかに自分の人生を変えたかの体験を分かち合います。自分たちの子供時代に受けた奥深くに潜んでいるトラウマでさえ解決できています。このような単純な視覚化と、明らかに進行している深層での癒しとの間に働くメカニズムは何でしょうか。
クリスタル氏:とても単純なステップを踏んで行われます。まさにそれは私たちに与えられているものであって、時にはわずかなステップにすぎないように見えます。最初私たちは数字の8についての見方が教えられます。それから、私たちの親が何らかのステージで私たちをいつも支配しようとしていたことが示されます。過去の思春期の儀式を振り返ってみましよう。古代の人々は若い人が思春期に達したときに賢い方法でその時期を通過させました。彼らは少女を「ロングハウス」と呼ばれるところに呼び出します。少年は別なロングハウスに呼ばれます。それから賢い婦人が少女に、賢い男性が少年に、どのようにして両親から独立し、どのようにしてグループの立派な一員になれるかを教えます。世界のあるところでは今もなおこの方法がとられています。多くの本に、動物が自分たちの縄張りを守ろうとする行動について書いてあります。この方法では、私たち人間よりも動物の方が熟達しています。もしあなたが犬や猫を飼っているなら、特に1匹以上の動物を飼っているならば、このことをよく知っておられるでしょう。それぞれのペットは家の中に自分自身の居場所を持っています。そしてもし他の動物がこの場所に入り込もうとすると、争いが始まります。しかし人間はそのことの意味を認識してはいません。これが、私たちがこの方法を使って始めるために数字の8を採用した理由です。このことは、私の最初の本である『束縛の鎖から解き放たれて』の中に記されており、ワークブックの中に非常にはっきりと描かれています。『束縛の鎖から解き放たれて』の儀式はかなり長くかかります。約1時間かかります。それは徹底的であり、両親との束縛を断ち切り、次に私たちの生活を「支配」している誰かの束縛を断ち切ることから始めます。次の本『束縛の鎖からさらに解き放たれて』は、習慣とか常習的な癖、そしてあらゆる種類の非人間的な要素といった、他の種類の支配から自由になるように導きます。
SI:あなたはワークショップで、参加者にいつも視覚化の初めに「高次元意識」に接触することを勧めておられます。「高次元意識(Higher C)」は何を意味しているのでしょうか。
クリスタル氏:高次元意識とは精神(spirit)の魂(soul)です。街に住んでいる男女にとっては、高次元意識について考えることすらとても難しいことです。私たちは七つまたは八つのシンボルのある小冊子を用意しています。この冊子の中では私たちが日常使っている意識と、記憶として蓄えられている潜在意識の概要が示されており、次にこの高次元意識が示されています。この冊子は、いかにすればこの接近が私たちの助けになるかを、シンボルを使って説明しています。この種の事柄について何のバックグランドもない読者のために2冊目の冊子もあります。この中で私は残りのシンボルについて紹介しています。これらすべてによって、高次元意識にどうしたら接触できるかが説明されています。高次元意識とは、私たちの本来の自己であり、身体が死んでもわれわれと共にあり続ける存在なのです。
SI:あなたは訓練のセッションの中で、この方法が「新時代の心理学」になると語っておられます。このことについてもっと話してくださいませんか。
クリスタル氏:あなたはおそらくサイババについてお聞きになったことがあるでしょう。この事柄について本を書くことを促したのはまぎれもなく彼(サイババ)でした。そうでなければ私は決して本を書こうとは思っていませんでした。本を書くことは私の心にはありませんでした。私がサイババの前に座っていた時に、彼は「あなたは本を書くべきです」と言ったのです。彼の言葉によって私は本の執筆を始めました。彼は私にまた、原稿を持ってきなさい、そうすればそれを祝福してあげましょうとおっしゃいました。彼が原稿に祝福を与えた時、彼は私に、できる限り多くの世界の人にこの方法を知らせるために本が出版されるべきであると語りました。サイババは後日、別なインタビューにおいて、これは人々が自己変革するのを助けることができ、同時にもっと愛のある、もっと哀れみと助け合いのある世界をつくることができる方法が示されていると説明しました。彼はいつもその時代のことを「黄金時代(The Golden Age)」と呼んでいました。そして四つのユガがあると説明したものです。(彼によると)私たちはまさに第4番目の、もっとも破壊的な時代を終えつつあり、最も建設的なユガの時代に入りつつあるというのです。この方法は、否定的な習慣や状況、そして「新時代(New World)」にふさわしくないものを取り除く機会を私たちに与えてくれます。
SI:この世界は、環境危機や世界規模の飢餓や核廃棄物などの数々の大問題に直面しています。あなたの方法は世界にもっとバランスの取れた状況を招く助けとなり得ますか。
クリスタル氏:この方法は人々が自己変革するのを助けます。そして世界は人々が集まってできていますから、もしたくさんの人々が個人として変われば、必然的に世界が変わるはずです。なぜならば、最終的に「積極的な力」は否定的な力を凌駕するからであり、その力によって加速度的に人々は自由になるからです。
SI:あなたはこの積極的な方法を行っているモデルとして、今もなおこの方法を世界中に広げるために働いておられます。あなたが99歳というのに、このような挑戦的な試みを続けておられるそのエネルギーはどこから来るのでしょうか。
クリスタル氏:それはただ高次元意識に接触し続けることによってです。サイババは私に、可能な限りこの方法を世界中の人に届けなさいとおっしゃったのです。この言葉が支えとなって、なおもこれを喜んで続けているのです。
SI:あなたの「ライフワーク」をお続けになる個人的な望みを何かお持ちでしょうか。
クリスタル氏:もっと多くの人が心を開いて、一人ひとりを高次元意識と呼ぶ存在に結び付けるこの方法を受け入れるにつれて、やがてもっと一般的に受け入れられるようになるでしょう。
詳細は:Phyllis Krystal foundation:www.phylliskrystal.com 参照