今月号の内容概説

 現在、世界の現状を困難なもの、不可解なものとして経験していない人はほとんどいないはずである。今月号でベンジャミン・クレームの師である覚者の記事「新しい状況の到来」を選んだのは、このような時代の落ち着かない状態から尻込みすることなく、人類の苦境の中から生じて「この時代のチャレンジに応えるために彼らの能力をますます発揮」するかもしれない可能性を指摘しているからである。

 チャレンジに応えるというテーマは、今月号の記事やインタビューで取り上げられている。例えば、コロナウイルスの衝撃で悪化した不景気、失業、貧困や、(たとえ臨時措置としてであれ)国連が最近提案したようにユニバーサル・ベーシックインカム(全世界市民向けの最低所得保障)のようなアイディアを推進することによって人々がどのように応えているかが取り上げられている。フランスの経済学者、セバスチャン・ヴィユモ氏は、主流の資本家たちがどう言おうとも、分かち合いがいかに現実の選択肢であるかを指摘している。

 日常生活の大部分が今や新型コロナウイルスという観点から見られており、科学はウイルスの起源を調査しているが、本誌は動物たちとの関係や動物たちの意識について探るマクネア・エザード氏によるインタビューを掲載する。

 本誌は哀悼の意を表することなく、ジョン・ルイス米下院議員のような公民権運動の英雄の逝去を忘れてしまうことはできなかった。彼の価値観はシェア・インターナショナル誌の価値観をかなりの程度反映しているからである。オバマ前米大統領はジョン・ルイス氏とその業績を思い起こしながら、すべてのアメリカ人のために一票を投じることによってルイス氏を称えるようアメリカ人に熱心に訴えかけた。「もし時間があれば行うようなこととして、投票を扱うことはできません。民主主義のために取ることのできる最も重要な行動として、投票を扱う必要があります」

 もし現在、国家経済が苦しんでいるとしたら、社会的に疎外された人々──パンデミック(世界的大流行)以前から生活が不公正な闘いそのものであった難民や移民労働者──の苦境を想像するよう、ジャーナリストのグラハム・ピーブルズ氏は私たちに求めている。

 今月号は、より良い世界や、この惑星への奉仕、改善に向けた、実際的な志向の模範を提示している。ジョン・ルイス氏であれ、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス米下院議員であれ、あるいは原住民の環境保護活動家であれ、「普通の」人々の生活上の英雄的行為も繰り返しテーマとなっている。オカシオ=コルテス氏は米国の保守層の既得権益と闘う一方、本誌のブラジルの通信員が描写しているように、アマゾンでは、熱帯雨林の商業化や搾取、破壊を阻止するために活動家たちが文字通り自分の人生を犠牲にしている。オカシオ=コルテス氏へのインタビューの書き起こし記事では、彼女独特の実際的理想主義と、彼女が代表する人々の生活状況を改善しようという決意が掘り下げられている。どのような霊的態度が効果的な仕事に最もつながると思うかと問われて、彼女はこう答えた。「私が最もよく実践している霊的な訓練は、無執着であると思います。私の使命は、より良い世界の原則を推進することです。この『ポスト』に過度に執着していると、仕事をすることができません。……私は自我や評価に対する無執着を実践する必要があります。強力で裕福な人々の小さな階級による社会的受容に執着することはできません。彼らは連邦議会の同僚です。この富裕層による社会的受容に執着する場合、私は自分の仕事をすることができません」