中東の危機──覚者の視点

 世界の最近の危機については、シェア・インターナショナル誌から通常とは違った反応が必要とされると思われる。そのため、ベンジャミン・クレームの師である覚者による三つの記事からの抜粋を掲載したい。
 世界はイスラエル・パレスチナ紛争の激化を深く憂慮している。今月号においてできるだけバランスの取れた方法でこの状況を提示するために、マイトレーヤの教えとベンジャミン・クレームおよび彼の師の著作が引用されている。
 永続する平和的な解決策は、万人のための正義にしか基づき得ない。現在の惨事は、パレスチナ人に対する長期的な不正義と抑圧という観点から見られなければならない──それは1948年から何十年にもわたって続いている。
 この複雑な問題に対するわれわれの貢献は限られていることは承知している。ベンジャミン・クレームは多くの書籍やこの雑誌の中で、解決や和解を目指さなければならないものの、「この和解を成立させるためにはマイトレーヤ御自身が必要でしょう」と指摘してきた。
 次の記事は少し前の出来事や緊張について述べているが、イスラエル・パレスチナ問題への解決策を見つけるのに国際社会がこれまで失敗してきたことが、いかに今日の恐ろしい戦争につながったかについての洞察も提供している。分かち合いと正義が、この紛争や他の紛争を解決するに当たっての鍵である。
 次の三つの記事はベンジャミン・クレームの師によるものである。

行動の必要性

 すべての者により良き生活を保証する人間の計画と夢を実現するために、行動が必要なことを、わたしはこれまでに何度も述べてきた。マイトレーヤが言われるように、「何事もひとりでに起こらない。人間はその意志を実施するために行動しなければならない」。〔*〕このことを念頭において、最も注目を必要とする問題を見てみよう。そしてそれらの解決に何らかの光を当ててみよう。
 解決が待たれる主要な問題は、公正で持続的な平和の達成である。今日、平和なしには、人類にとって未来はない。諸国家はすでにこのゴールに向かってゆっくりとにじり寄っているのだが、本当の平和が確保される前に、まず一定の基本的条件が満たされなければならない。
 まず初めに、本当の平和は信頼に依存する。その信頼は、正義の法が成就されるときにのみ生じるのである。金持ちと貧乏人の生活様式の間の隔たり、富める国と貧困な国の生活様式の間の隔たりはますます拡大しており、それが今日、平和の達成に最大の障害となっている。多様なイデオロギーが分裂的な役割を果たしているが、しかしこの要素の影響力は減少しつつある。それよりもずっと重要なことは、先進開発国に深く染み込んだ自己満足感と貪欲である。
 平和はバランス(均衡)から生じる。バランスが欠けるとき葛藤と戦争が生じることは確実である。バランスを達成するには、国家も国民もすべてが相互依存しているという認識が、そしてすべての者の必要は公正な分かち合いによって満たすことができるという認識が必要である。その認識が目覚めて、そしてそれに続いて行動が起こるまでは、われわれが見ることができるのは不安定な世界である。世界の半分が飢えており、毎年何百万も飢えている間は、本当の平和は夢にすぎない。
 中東における現在の危機は、発展途上国に武器を売ることの愚劣さを、産業大国に思い知らせた。この利己的な貿易によって野心が育成された国家はたくさんあり、イラクはその一つにすぎない。西洋諸国の工場が、世界中の専制君主や保守反動の政権を維持することで繁栄するということは許されるべきではない。……
 現在の状況の解決は、アラブとイスラエルの間の調和なしには、そしてイスラエルの建国以来、ズキズキとうずいてきた激しい敵意に終止符を打つことなしには、不可能である。パレスチナの人々は彼らの故国を持たなければならず、そして持つようになるだろう。長い間苦しんできたあのグループの正当な志向を満足させるものは、それ以外にない。そしてそれ以外には、長い間、繰り返し発生して中東地域に絶えず緊張をつくり、かくして世界の平和を脅かしてきたところの危機を終わらせる方法はない。
 出来事(イベント)は急速に進行している。もし指導者たちが現在のこの機会をつかみとるならば、そして、賢明な長期的な見解をもって、軍事力を行使しようとする手を引っ込めるならば、敵意と戦争の終わりを、そして資源の公正な分配と、諸国家間における新しい健全な関係の出現を、世界は目撃することができるだろう。
 このことのために、マイトレーヤは長い間、懸命に働いて来られた──様々な危機の中で入れ替わり登場してくる主役たちに助言を与え、彼の洞察と広い見解を授けることを試みてこられたのである。マイトレーヤの努力に彼らは徐々に反応してきており、マイトレーヤが世界の前に公に出現することのできる時期はそれだけ早められる。〔*〕=マイトレーヤからのメッセージ第31信
(『いのちの水を運ぶ者』を参照)
(シェア・インターナショナル誌1990年11月号)

  • 前世紀に、世界は二度、全面戦争に、すなわち一つの戦争の二つの恐ろしい局面〔訳注=第一次と第二次世界大戦〕によって震撼させられ、何千何百万人もの犠牲者を出した。それぞれが「戦争を終わらせるための戦争」となるはずであった。しかし、いまだに、さらに強力な破壊力を持つ兵器で、もう一度、力比べをすることを企み、計画する者たちがいる。戦争は何事も解決せず、何も証明せず、地球の住民に苦痛と喪失を加えるだけにすぎないということに人間が気づくまで、一体どのくらいかかるのか問わねばならない。……マイトレーヤが今にも彼の公の使命を始めるとき、彼はこの問題とその結果に人間を直面させ、そして彼の解決法と助言を提供するだろうことを確信してよい。戦争は冒涜であり、それに関わるかどうかに関係なく、それはすべての人間に対する犯罪であり、嫌悪されるべきことであることを、彼は人々に思い出させるだろう。もし人類と低位王国が生き延びようとするならば、戦争をそのように見なさなければならないと彼は言われるだろう。分かち合いと正義のみが人間の未来を保証するだろうと、彼は言われるだろう。和合と協力に励みなさい、地球上の人間はひとつであるのだから。「あなたの兄弟をあなた自身として見なしなさい」、そして神聖への最初の一歩を踏み出しなさい。(「戦争の冒涜」、シェア・インターナショナル誌2009年9月号)

中東

 中東における最近の出来事が、困難に満ちたあの地域に新しい方法で世界の注目を集中させた。放置しておけば、そこにある多くの問題はおのずと解決するか、なくなるだろうという考えは消え去った。紛争や分裂はあの地域特有であり、もしその地域だけに抑えられていれば、大した問題ではないという考え、そして歴史的、戦略的に重要な世界のこの部分のためにできることは何もないという考えは過ぎ去った。
 近代戦争の性質と技術的進歩がそのような考え方を変えさせ、それは国連があの舞台において果たす役割の再評価につながりつつある。中東を非核地帯にするという可能性が、初めて、真剣な注目を集めつつある。また、多くの陣営の中で、初めて、イスラエルとパレスチナ紛争への最終的な公正な解決がこの上なく重要だと考えられはじめている。他方、民主的改革を要求する者たちの声の中に新しい緊急性が聞かれる。
 ここに、世界の諸国家がこれらの多くの問題にエネルギーと智恵をもって対処する機会とチャレンジが横たわる。覇権を競って相争う多くの派閥や利害を統御しておくために、自由放任主義で十分だろうという日は過ぎ去った。
 国際社会はこの地域に、平和と繁栄を維持する責任を受け入れなければならない。そして新しく確立された権威を利用して、様々な民族の代表を交渉の席に集わせて、真剣な交渉に伴う妥協に基づく協定の実施を保証しなければならない。そのようにしてのみ、公正で長続きする解決が見いだされ、そして真の平和が回復されるだろう。そのような行動のための時は熟している。長い年月、世界平和を脅かし、そして今回、文字通り太陽を暗くしている黒雲を永遠に吹き飛ばす時がやってきた。
 そのような協定に到達することは、そしてそのような行動を実施することは容易ではないだろう。簡単な解決法は手近にない。様々な争い合う者たちが、広範囲な変化を求めるアプローチではなしに、あの地域の将来の見直しを、現実性をもって見る用意があるかどうかに、多くがかかっているだろう。彼らが智恵と善意をもって問題に対処することを拒むならば、未来はまさに厳しいものとなるだろう。
 いまその状況に取り組んでいる者たちよりもずっと賢明な方たちが、助言を提供してくれる時はそんなに遠くではない。長い間、引っ込められていたハイアラキーの手が、間もなく公に援助のために差し延べられるだろう。これを心に置いて、長い間苦しんできた世界のあの部分の将来をもっと希望をもって見ることができるだろう。そして新しい光が憎悪と戦争の暗雲を散らすのを見るだろう。
 最近、イエス覚者が、戦い合う両側の兵士たちにビジョン(幻影)で姿を現した。そして両側がそれぞれに、彼の出現は自分たちの大義について祝福してくださったものと主張している。間もなく、マイトレーヤ御自身が大勢の人々に姿を現されて、彼の援助を提供されるだろう。もしマイトレーヤの導きに従うならば、世界を健全で安全なものに戻すことができるだろう。そして中東において現在分割され疎外されている人々の、当然なる同胞愛の実践に道が開かれるだろう。(シェア・インターナショナル誌1991年5月号)

平和運動を促進する

 国家が世界のために良いと考えることのために行動を起こすことが、しばしば世界的規模の大混乱を引き起こす。彼らの行動を取り巻くグラマー(幻惑)の霧があまりにも深く、彼らの思考があまりにもイリュージョン(錯覚)に満ちているので、理由はともあれ、大きな害と多くの苦しみと災難がもたらされる。
 今日において然りである。……
 それゆえ、中東における平和がいかに必要か、パレスチナ人に本当の正義と持続可能な故国が与えられることがいかに必要かが分かるだろう。これが今日、人類の直面する最も重大な問題である。それを解決することができなければ、世界にとって悲惨なことになるだろう。
 この悪質なフォース(エネルギー)を決定的に征服するためには、ハイアラキーと人類の両方の結合した知恵と意志の力が要るだろう。かくして、この脅威の本当の性質を人間が明確に理解することが必須である。人々は組織し、統一して行動しなければならない。
 パレスチナ人の抑圧を終らせることを呼びかけ、そうしてイスラエルの人々につきまとう恐怖感に終止符を打つことである。国際連合はスーパーパワー(超大国)に立ち向かい、アメリカとイスラエルの両方にあらゆる限りの圧力をかけて、平和運動を促進しなければならない。世界の民衆はすでに行進している。彼らはその声をさらに強めて、平和が彼らのものであることを要求しなければならない。彼らが未来を受け継ぐ者たちであり、それを平和のうちにつくり上げなければならない。
 覚者であり、あなた方の兄であるわたしたちは、わたしたちの役割を果たすが、しかしわたしたちはあなた方の理解と意志の欠如によって足枷をかけられている。よって告げる。恐れることなく行動しなさい。賢明で勤勉なやり方で行動しなさい。そうすればすべてが良くなるだろう。
(シェア・インターナショナル誌2003年7月号)

マイトレーヤからのメッセージ 2008年3月27日

「……あなた方の声を大きく上げなさい。あなた方の必要を世界に告げなさい──平和の必要を、
正義と自由の必要を、宗教や皮膚の色や人種が何であれ、
すべての人間が調和のうちに生きることの必要を告げなさい。
すべての人間は本質的にひとつである。
彼らはわたしの兄弟であり、わたしは一人ひとりを愛する。……」

(パリのラジオ局「Ici & Maintenant」でのベンジャミン・クレームへのインタビューの最後に伝えられた)