ナイジェリアで環境意識が高まりつつある

アレックス・アキグベ氏へのインタビュー
ジェイソン・フランシス

 アフリカ・クリーンアップ・イニシアチブ(AC I )は、清掃事業、環境に関する教育および環境擁護プログラムを通して、環境維持に対する人々の意識を高めたり関心を集めたりするために活動している。
 2010年にナイジェリアで創立されたACIは、2017年に非営利団体として公式に設立された。安全な水、下水設備および公衆衛生に関するプログラムだけでなく、子供たちを学校に通わせるための費用援助を目的に、リサイクル品を収集するリサイクルプログラムも行っている。ACIは、協力団体、補助金、協賛企業や個人からの援助によって資金を得ている。ジェイソン・フランシスが、本誌のためにACI創設者のアレックス・アキグベ氏にインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以下SI):ACIを思いついたきっかけは何でしたか。
アレックス・アキグベ:私が情熱をもって携わっている地域社会への奉仕活動がきっかけです。ACIを始める前に、私は幾つかの奉仕活動にボランティアとして関わっていました。
 何かしら影響力をもつ事業に関わるときはいつでも満足感や達成感があります。私はナイジェリアのラゴス州にある都市アジェグンレで育ち、それが今日私が行っていることの一因となりました。アジェグンレは、かつては汚いことで有名なジャングルの都市として知られていました。私はそのことを決して好きにはなれませんでした。また、何かをしようと誰も気にかけないことに対して、心が痛む思いでした。実はこのことがきっかけとなり、私たちのプログラムや事業を通して、アジェグンレがアフリカの他の地域に追いつくことができるように、組織として活動し始めたのです。

SI:これまでに、環境に関する清掃事業が幾つナイジェリアで始められましたか。幾つか例を挙げていただけますか。
アキグベ:今までのところ、アブジャ、イバダン、ムシン、ジャカンデ、アジェグンレ、アルファビーチ、アムココ、スルレレで、約30の大規模な環境衛生的な清掃プログラムを実施しました。

SI:清掃プログラムはどのようにして始まりましたか。また、ACIには何人のボランティアがいますか。
アキグベ:ACIの清掃プログラムは、環境的な活動が必要な汚い地域を判断し、緻密に計画を立てるところから始まりました。それから地方自治体や地方都市開発区域に対して、活動の実施に関する承認を申請しました。ACIには400人以上のボランティアがいます。

SI:環境に対して責任を持つように生徒を教育することを目的とした、グリーン・フット・プロジェクトについて話していただけますか。
アキグベ:グリーン・フット・プロジェクトは生徒、特に小学校、中学校の生徒に焦点を当てています。私たちの目的は、(国連サミットで採択された)持続可能な開発、気候変動、環境維持について教育することです。そしてそれだけでなく、社会的に影響のある環境事業に参加するように導くことです。また、生徒が幼いうちから、ボランティアを実践したり、地域に奉仕したいという思いを持ったり、廃棄物管理を適切に行ったり、(リサイクル品を学校の費用に変えるなど)無駄を富に変えるように積極的に活動したりすることができるように教えています。私たちのグリーン・フット・プロジェクトは、2019年3月に始まりましたが、これまで5つの学校、900人以上の生徒が参加しています。

リサイクル可能品で支払いを行う

SI:ナイジェリアでは、親は子供の教育に対する学費を支払う責任があります。学校へ通うのに、どのくらい費用がかかるのですか。また、親が教育費を支払えないために学校に通うことができない生徒は何人いますか。
アキグベ:私たちの調査結果では、1学期につき最低500ナイラ(約14米ドル)かかる学校もあれば、私たちと共に活動しているサービスが十分でない地域では、費用が1日50ナイラ(約14米セント)の学校もあります。
 2018年12月にユニセフが行った調査によると、学校に行くことができないナイジェリアの子供の人口は、1,050万人から1,320万人にも上り、世界で最も多いとされています。

SI:リサイクルペイ教育プログラムと、それが家族および環境にもたらす効果について教えてください。
アキグベ:リサイクルペイ教育プログラムはACIにおける革新的なものです。環境に良いリサイクル実践を通じて、プラスチック製品による汚染を減らしながら、教育を推進していくプログラムです。今では親はリサイクル可能品を子供が通う学校に持っていき、学費に変えることができます。自発的に行動することによって、住んでいる場所や家庭環境に関係なく、子供が教育を受けられるようになります。私たちのゴールは、少なくとも1万人の子供が退学することのないように支援することです。
 この事業は、私たちが現在活動している地域社会に非常に大きな影響を与えており、今やその環境はとても美しいものになっています。また、これまではプラスチック製品が私たちの排水システムや排水溝を塞いでいたのですが、劇的なまでに減少しています。このプログラムは学校経営者、親、協賛企業や個人からの支持を得ています。

SI:リサイクルペイ教育プログラムの恩恵を受けている子供たちはどのくらいいますか。
アキグベ:これまでのところ、10の学校でリサイクルペイ教育プログラムを立ち上げており、合計で子供427人、128家族がその恩恵を受けています。14人の個人と、5つの企業が提供者となっています。1年に200万個のペットボトルが再生されています。

安全な水と公衆衛生

SI:WASH4クリーナー・スラム・プロジェクトについてお聞かせください。
アキグベ:私たちは、安全な水、下水設備、公衆衛生(WASH)プログラムにも積極的に携わっています。それは、安全な水と下水設備の提供を追求するACIの核を成しているものです。このプロジェクトは、私たちがスラム社会で、安全な水、下水設備、公衆衛生に関する問題に取り組む機会を与えてくれます。スラム地域の住民が、どうすれば自分たちでスラム地域の状態を改善し、より健康になれるかに関して、彼ら自身が責任を持つことができるようにしようとする機会です。私たちはサービスが不十分な地域に住む人々に、正しい手洗い方法、健康でいられることや安全な飲料水を手に入れられることがどれほど良いことなのかを教えています。

SI:ACIは、その事業の一部をアフリカの近隣諸国にまで広げていますか。
アキグベ:アフリカ・クリーンアップ会議が、2017年にガーナのケープ・コーストで開催されました。2018年にはトーゴのロメで、2019年にはガーナのアクラで開催されています。私たちはこの機会を利用して熱心な環境活動家を集め、人脈を得たり、専門家から学んだり、有益な協力関係を築いたりしています。また、母なる地球を守るために素晴らしい活動を行ったり、環境維持に向けて貢献したりしている人々に賞を与えています。目下、私たちは事業の幾つかを近隣諸国へ持っていくように取り組んでいます。

SI:ビヨンド・ウェイスト・プロジェクトについて、ほかに何かお話しされたいことはありますか。
アキグベ:ビヨンド・ウェイスト・プロジェクトは、低所得者が住む地域で健康および社会的なニーズに取り組むことを目的としています。このプロジェクトを成し遂げるために、母親と子供に人間ドックを実施したり、現地でマラリアのスクリーニング(症状が現れる前に病気を発見するための検査)や治療を行ったりしています。他にも、衣服や食料品などの救援物資の支給を行っています。

SI:ナイジェリア政府は人々のニーズや国の環境問題に取り組むために、他にもっと何ができると思われますか。
アキグベ:最重要課題のひとつは、人々に情報を提供することと、ナイジェリア人が環境の保護や維持に関して持っている認識レベルを上げることです。どうすればナイジェリア人が生活や仕事ができる環境をつくることができるかということについて、政府はもっと関心を持つべきです。すべての国民に影響を及ぼす主要な政策を実施する前に、地域レベルで利害関係者に働きかけることはとても大切です。国民に、自分が現在置かれている環境に対する当事者意識と責任を持たせることです。

SI:環境や清掃への取り組みに対して、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による影響は何かありますか。
アキグベ:新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちのビジネスに直接影響を与える社会的な集まりといった活動が制限されています。ステイホームや在宅ワークを要請される人が増えるにつれて、ごみの量が増えています。例えば、マスクや手袋が周囲に捨てられています。ソーシャルディスタンスに関するガイドラインが示されたことで制限されるのに伴い、草の根レベルの支援運動が滞っています。また、既存の奉仕活動計画の変更を要求するような干渉があり、人々が清掃活動のために集まることにも制限がかかっています。

 [編集部による最新情報:ACIは新型コロナウイルス感染症の危機の中、活動を続けている。一例を挙げると、2020年9月19日にラゴス市とイバダン市内の3カ所で清掃・支援活動イベントが行われ、218人のボランティアが参加した。1,360キロのごみに加えて、272キロのリサイクルごみが回収された。ボランティアメンバーは、環境に関する責任を担うことで、気候変動に対する行動を取るように一般の参加者を励ました。
 ACIはさらに、ラゴス市内にある低所得者が住む地域における新型コロナウイルス感染症の地域感染を減らすため、タグ付きメッセージとして「#MaskUpSlum」を使用したフェイスマスクを提供する特別な介入プロジェクトを始めた。]

詳しくは、acuinitiative.orgをご参照ください。