今月号は、人類の善と悪、極悪と優しさ、そして最高の美徳を浮き彫りにする力強い内容となっている。読者の皆様がこの10月号によって鼓舞されることを願う。
今月号の誌面には、読者に希望を与えてくれる内容が掲載されている。例えば、ベンジャミン・クレームの師による「一対の極」という記事には、次のような慰めとなる言葉がつづられている。「すべての人間に内在するものは完全無欠への願望であり、善きもの、美しいもの、 真なるもの──すなわち魂の属性──を表現したいという衝動である。行動がいかにぐらついたものであろうとも、それがいかなる表現方法をとろうとも、より良いものへの欲求を持たない者は誰もいない。裡にこの願望を持たない者はいない」。この言葉は──日々の現実を目の当たりにすると──同胞の人間の本性は最悪だと信じてしまいがちになる現代において、どれほど慰めとなることか。同じ記事の後半では、「葛藤や戦争、暴力や憎悪は、人間がその本当の特質をいまだ実演することができないために現れるのであり、通り過ぎていくものにすぎない」という考え方が示され、いっそうの心の安らぎが得られる。
いくつかの書評や特集記事では、人類が真の神聖な存在としての潜在的可能性に到達するのを阻む、根深い問題の根源を解き明かしている。グラハム・ピーブルズ氏は「視点」の記事で、「新自由主義は本質的に分断的で不公正であり、したがって平和や社会正義をもたらすことはできない」と記している。私たちが樹立したこの世界秩序と政治経済システムは、抑圧や、仕組まれた政権交代、侵略、最も残忍な戦争によって維持されてきたため、いずれはこのような事態になるということを、私たちは認識すべきであった。こうした主張の真実性は、ミッチ・ウィリアムズ氏の著書『ザ・ラケット──反骨のジャーナリストがアメリカ帝国に挑む』で裏付けられている。同書の最終段落では、私たちが自らを救うためには、こうした陰謀を暴き、理解しなければならないという考えが強調されている。「秘教的な観点から見ると、経済と政治の領域に蔓延するこの問題は、蔓延する物質主義の分離や利己主義、貪欲さを象徴し、より霊的な人生観を体現する統合、共有、そして協力に反抗するものである」。グレアム・マクストン氏の新著、『西洋的思考の愚行』というタイトルの本は、私たちの思考そのものが誤っており、導き出される結論も誤りだと指摘する。意識の座はどこにあるのか、と彼は疑問を呈している。脳なのか、それとも……? 彼はやがて、一体であるという感覚に到達する。「宇宙全体が私たちの中に存在している。それは、私たちの周囲で発展し進化している、生きた、意識ある宇宙である」
マイトレーヤによる米国の現在の傾向についての洞察は、読者に強い衝撃を与える。その一方で、御自身による分析や他の思想家たちの分析を通じて解決策も示している。
ガザへと向かっている船団のことも取り上げられているが、本号が読者の郵便受けに届く頃には多くの出来事が起こっているだろう。ガザについてのドキュメンタリー映画『ヒンド・ラジャブの声』では、亡くなった家族に囲まれた子供の最後の絶望的な数時間について知ることになる。
ポーリン・ウェルチ氏は軍産複合体の影響について論じ、ジェイソン・フランシス氏のインタビューでは、刑務所における読書の重要性に関する興味深い洞察が明らかにされている。
ベンジャミン・クレームの師は、人間が本来持つ神聖な可能性を最大限に発揮して生きるという、究極の目標の達成について次のように述べている。「人間は永遠の魂であり、それが物質の中に飛び込んで、そのために物質が強いる限界に従属させられる。完全を求める人間の闘いは、これらの相対する二つの極にある特性を完全なる和合と解決に導くことを伴う」
月別アーカイブ: 2025年10月
一対の極
──覚者より
ベンジャミン・クレーム筆記
人間が初めて地上に出現して以来、その歴史は争いと葛藤、侵略と戦争の歴史であった。これらの傾向が優勢を占めなかった時代はほとんどなく、それが人間の本質的な特性を表しているように思えるほどである。しかるに、あらゆる証拠が見られるにもかかわらず、それは決してそうではない。では、なぜ人間は自分自身についてそのように歪んだイメージを提供するのか。無秩序な行動や破壊的暴力を行うこの能力は、いずこより出てくるのか。
人間は本質的に魂であり、神の完全なる反映である。言い知れない永いあいだ、数え切れない多くの転生を通して、人間の魂はその聖なる特質を時間と空間の中で表現することを求める。魂は物質界における己自身の対応物をつくり、それ自体の完成に向けて進化していくために必要な手段を賦与した。このようにして、神の大計画は成就されていく。
この発達への鍵は志向(アスピレーション)である。すべての人間に内在するものは完全無欠への願望であり、善きもの、美しいもの、真なるもの──すなわち魂の属性──を表現したいという衝動である。行動がいかにぐらついたものであろうとも、それがいかなる表現方法をとろうとも、より良いものへの欲求を持たない者は誰もいない。裡にこの願望を持たない者はいない。
それでは、人間の逸脱を、暴力や憎悪をどのように解釈すればよいのか。
その答えは、人間の独特の位置、すなわち霊と物質の出会いの場にあり、そしてそれが同時に存在することで発生する緊張にある。人間は永遠の魂であり、それが物質の中に飛び込んで、そのために物質が強いる限界に従属させられる。完全を求める人間の闘いは、これらの相対する二つの極にある特性を完全なる和合と解決に導くことを伴う。
繰り返される転生を通して、進化の過程が徐々にこの目的を達成し、ついに物質(肉体人間)の特質と輝きが霊(スピリット)のそれと一致するようになる。そうして大計画は成就され、またもう一人の「神の子」が家に戻るのである。
永いあいだ、物質の優勢が魂の主要な表現を阻み、進化の速度は遅々としたものであった。やっと永い時を経て、人間の特質の相対する極が解決を見るとき、両分法〔*〕は単にそのように感じられるだけであり、対立は非現実のものであることを人は認識するだろう。そうすると人間は、すべてが一つであることを、霊と物質は唯一なる聖なる総体の二つの様相であり、過去の限界は単なる幻覚にすぎなかったことを知る。
相対立するものの闘いと、それに続いて起こる摩擦なしには、人間の進歩はまさに遅々としたものであろう。摩擦は火であり、それが人間をその道に押しやる。志向は光であり、それが人間を絶えず向上へと招く。このようにして、人は、やがて、物質の限界を放り捨てて、その裡に霊の輝きを賦与する。人間の任務は物質を霊化し、すべての王国においてこの惑星の資質を天帝(ロゴス)の完全なる反映にしていくことである。この惑星はロゴスのからだである。葛藤や戦争、暴力や憎悪は、人間がその本当の特質をいまだ実演することができないために現れるのであり、通り過ぎていくものにすぎない。人間の真実が支配し、その美が輝き、善がすべての者の視界に顕される時が急速にやって来つつある。
(シェア・インターナショナル誌1989年7月号)
〔*〕:両分法=物事を対立的な概念に二分する論法。
2025年10月号目次

視点
これは必然であった
グラハムピーブルズ
私たちの問題:
『ザ・ラケット』-書評
ミッチ・ウィリアムズ
ブガの球体
ダグ・グリフィン
条件づけから自らを解放する-選集
Freeing ourselves from conditioning-a compilation
重い心でビオラに向き合う
書評
「私たちは孤独ではない」
『隠された真実─禁断の知識』 今こそ知る時 (第二部)
(著) スティーブン・グリア博士
コルネ・クワテル
飲み水が不足する世界?
時代の徴
笛吹き 他
世界の貧困層にとって歓迎すべき進歩
ガザの映画 『ヒンド・ラジャブの声』
グレアム・マクストン著
『西洋的思考の愚行 : 叔父からの手紙』
フィリス・クレームによる書評
銃の恐るべき怒り:
世界的な武器取引きが世界を破滅させている現状と私たちにできること
書評と議論 (第二部)
ポーリン・ウェルチ
刑務所内で読書する権利を求めて闘う (第一部)
ジェイソン・フランシスによるデイブ・“マック”マーキス氏へのインタビュー
指導者が失敗したなら、 私たちが行動する―グローバル・スムード船団
エリッサ・グラーフ
直観的で霊的な知性―魂が私たちにインスピレーションを与えるとき 第二部
クロード・シャボッシュによるヴァレリエ・セギャン氏へのインタビュー
米国に関するマイトレーヤの見解
読者質問欄