変化の促進者となるように女性に力を与える

エリッサ・グラーフによるオーラ・フリーダム・インターナショナルのマリッサ・コッコロス氏へのインタビュー

オーラ・フリーダム・インターナショナルはカナダの慈善団体であり、女性に対する暴力や人身売買を終わらせるために、カナダや世界中で活動している。2018年11月に、エリッサ・グラーフがマリッサ・コッコロス事務局長に、トロントでインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以下SI):オーラ・フリーダムについてお話しいただけますか。何をきっかけとして設立されたのですか。
マリッサ・コッコロス:私は常に燃えるような正義感を持っていました。それは、何らかの形で不当な扱いを受け、抑圧され、置き去りにされながら、どうにかして復帰し、尊厳のある生活を送り、正義を見届けることができた人々の意識です。私はイタリアに住んでいたことがあり、そこを拠点として何度も旅をしました。私は様々な国に行き、世界中の女性の社会的地位について研究した結果、本当に多くの国で私たちは同じであると分かりました。私たちはどの国に住んでいても、村の責任を背負い、水を背負い、財政を背負っていたりします。私は、アフリカの幾つかの国、ネパールとインド、ヨーロッパの国々に滞在し、同じパターンを見て、「何かをしなければならない」と思いました。私は、イタリアの自宅の前で物乞いをするナイジェリア人の女性と出会い、友人になりました。あるとき彼女が携帯電話で英語を話しているのを聞き、彼女が英語を話すことを知っていました。私は彼女に「コーヒーでも飲みに行きませんか」と誘いました。私たちは朝食をとり、彼女は私に体験を話しました。彼女は、衣料品店での仕事を約束するナイジェリア人によってナイジェリアからミラノに人身売買されました。彼女は、本当に貧しい村の出身でした。私は同じような話を、数多くの国で聞きました。そしてまさに地元のトロントでも、別の角度から聞いたのです。

SI:彼女に出会ったのは、人身売買されている途中でしたか。それとも逃亡した後でしたか。
コッコロス:彼女は以前にトリノで売春をしていて、私が彼女に会ったときには、すでに辞めていました。彼女は私の目を人身売買に対して開いてくれ、それから私は、世界中で人身売買の調査を開始しました。最終的に私は、メンターの一人とネパールに行くことになりました。彼女の名前は、アヌラダ・コイララです(本誌日本語版、2012年8月号のインタビューを参照)。彼女はネパール人の女性で、本当に驚くべき仕事をしました。私はただ彼女から学びたくて、文字通りネパールに行き、彼女の家をノックしました。彼女は私を招き入れてくれました。今では、彼女は3回もカナダに来たことがあり、私の家の空いている部屋に泊まり、私が今知っている沢山のことを教えてくれました。私は人身売買の世界的な視点を持ちましたが、トロントの家に戻りオーラ・フリーダムを始めたとき、人身売買がまさに地元のトロントで行われていることを知りました。

SI:では、あなたの地元のトロントで人身売買がどのようなものかに関して、一番驚いたことは何ですか。
コッコロス:それが映画で見るものとは違うことはご存じでしょう。映画では、女の子は薬漬けにされ、車で国境を越えて運ばれるか、あるいは、何らかの形で操られ仕事を約束されます。トロントでは「ロメオ・ポン引き」です。彼らは愛の約束をします。そして共通しているのは、付け込まれるような弱さがあることです。弱さが貧困であれ、女の子の自尊心の感覚であれ、自分自身でいてもいいと思うだけでは十分ではありません。女の子は、男性が言うことを何でも信じるでしょう。私が気づいた世界中での共通点は、少女たちの価値が認められていないことです。そして少女が先住民や有色人種の他のコミュニティーの出身の場合には、なおさらです。女性や少女の価値が十分に認められていれば、付け込むのは難しいと思うでしょう。それは、私にとっての根本的な動機です。それは貧困だ、警察活動の欠如だ、などと言う人々と議論をしたことがあります。しかし、男女不平等、家父長制度、植民地主義、組織的な人種差別主義には、本当に対処しなければならないと私は確信しています。取り残された女性や少女のコミュニティーが力を持つ必要があります。結局のところ、力を持った人物に付け込むことは、非常に難しいのです。そのため、私は「トロント反人身売買ネットワーク」と共に市内で多くの活動を行い、現在は1年限りの資金を提供するトロント市と共に活動しています。私は6人の若い女性を受け入れました。彼女たちの多くは人身売買の経験者です。そして私たちは、研修や指導により、彼女たちが外に出て、自分たちのコミュニティーで同僚と一緒にアウトリーチを行えるように援助しています。

SI:あなたは、トロントで援助できた人たちと、どのようにして出会ったのですか。
コッコロス:彼らはあらゆるコミュニティーにいます。それはどこででも起きるのです。人身売買の供給源の国であれ、実際に搾取される国であれ、世界で人身売買のない国はありません。私たちが着る服から、飲むコーヒーや性風俗まで、どこにでもあります。私は、トロント市でコミュニティーの会合に出席することから始めました。お話ししましたように、反人身売買ネットワークのお陰で、市内で誰が何をしているのかに詳しくなり、問題は巨大であることが分かりました。そして私は、学校でのアウトリーチ活動を開始しました。私たちはプレゼンテーションをつくり上げました。反応率は83%です。つまり、私たちが外部でプレゼンテーションを行った後で、83%の確率で若者が私か私の同僚に話しかけます。私たちは必ず、性的暴力を熟知している訓練を受けたトラウマ・カウンセラーと共に行動します。彼女は、カウンセリングを行うために、人身売買に関して教育を受けているのです。次に私たちは、カウンセリングや被害者に対する治療を提供している市内の団体との提携を開始しました。私たちのプロジェクトが、教育と知識に基づき、子供たちに情報を与えているために、彼らは信頼してくれています。私たちは9年生か10年生から始めます。なぜなら、その位の年齢が付け込まれる年代だからです。オーラ・フリーダムは、今でも非常に小さな草の根団体であり、市から資金援助を受けています。フルタイムのスタッフは私だけです。可能な場合に援助してくれる理事会があり、現在ではこの6人の若い人がアウトリーチ活動をしていますが、市内で私が知っている人たちのスキルを活用する必要がありました。一度私がエネルギーを注ぐと、それは起こったのです。扉が開き始め、人々が来て「あなたは助けが必要ですか」と言い始めました。私は本当にこのプロジェクトに確信を持っています。プロジェクトでは、少女たちに研修を行っています。プロジェクトは研修やカウンセリングや指導の費用を負担し、彼らが地元のコミュニティーで変革ができるように援助しています。6人の研修生が受けている教育や指導は波及効果を生み出し、彼ら自身の人生だけではなく、彼らのコミュニティーにも永続する違いを生み出すでしょう。すでにそのようになっています。私たちと共に活動するある若い女性は、実際に学校で私の元にやって来て「助けが必要です」と言った人たちの一人です。そして、それは繰り返されます。現在では彼女は、私たちと共に他の人を援助するために活動しています。暴力に対処する場合に本当に良い仕事をする唯一の方法は、被害者とつながることだと思います。私は人身売買の被害者ではありません。暴力の実際の体験はありますが、人身売買の経験は一度もありませんので、彼らと一緒に活動します。私の同僚の一人は先住民の人身売買の被害者であり、カナダ人です。私は彼女に助けを求め、大いに頼りにしました。彼女の名前はブリゲット・ペリエです。彼女は、このような少女たちのメンターの一人です。

SI:プロジェクトの目的は、少女たちが規則正しい日程に従い、学校で話をすることですか。
コッコロス:はい。学校や避難所で話をすることです。私たちは、青少年の避難所にも行って話をします。なぜなら人身売買は、ホームレスの青少年の間でも蔓延しているからです。売春の多くは必ずしも強制されたわけではないことを私たちは認識していますが、多くの場合に強制が関係しており、生活状況などから多くの影響を受けます。子供時代に性的虐待を受け、貧弱な社会福祉制度の裂け目に落ちてしまった若い女性たちを、私は見てきました。

SI:提携している団体について、少しお話しいただけますか。
コッコロス:「トロント性暴力危機センター」は、私たちの非常に大きなパートナーです。なぜなら、私たちが企画するプレゼンテーションに、彼らのカウンセラーの一人が必ず同席しているからです。そして、反応があった場合には、現地でトラウマ・コンサルティングが直ちに行われ、次に継続的なケース・マネジメントがあります。その提携関係により、私たちの若い世話役の一人がプログラムに入ります。彼女は、トロント性暴力危機センターから2年間のカウンセリングとケース・マネジメントを受けていたのです。オーラ・フリーダム以前にも、反人身売買の活動を行っていた団体があります。私たちは、まだ若い団体です。私たちは、カナダで2014年から慈善活動をしているにすぎず、4年の慈善活動状態を維持していますが、私たちだけではできません。私たちには、被害者のためのベッドを持つコヴナント・ハウスのような団体が必要です。私は一緒に活動することに確信を持っていますので、提携先のコミュニティーに問い合わせます。私たちはまた、数多くの政策の立案も行いました。トロント市の政府は、人身売買の被害者を巡る新たな戦略のための立案を私たちに求めました。被害者が住宅やより一層のサービスを得られるようにするためです。連邦の新しい反人身売買のプランが発表される予定であり、私たちはプランについて被害者に伝えることを依頼されました。

SI:あなた方は、「マイティ・ネパール」とも提携されていますね。
コッコロス:はい、私たちはマイティ・ネパールと共に、資金集めと活動を行いました。マイティ・ネパールはアヌラダ・コイララ氏の団体であり、そちらとの提携により、私たちはネパールで、何人かの被害者に援助や治療を提供しました。2015年の地震では、私たちは多くの出資を(カナダの様々な団体から)受け、イタリアとネパールの「アペイロン」という団体と共に女性に優しい空間をつくり上げました。それは、難民キャンプに設営する移動式シェルターでした。何千人ものネパール人に家がなく、難民キャンプが各地につくられ、それらは女性や少女にとって安全な場所ではありません。私たちはこうした仮設避難所をつくり、カナダのグローバル連携省の援助を受けていました。私は提案書を書き、2年間連続して出資を受け、私たちはネパールで10カ所の避難所を開きました。それは素晴らしいプロジェクトでした。それらはすべて、地元の方言を話す地元の女性たちによって実行されたものです。私たちは、そのプロジェクトを地元の女性たちと共に設計しました。私たちは環境を整備し、援助が必要な所で援助を行いましたが、基本的には、地元のコミュニティーから生まれるものでなければなりません。それは、文化的に適切である必要があります。私たちは教育を提供しており、このような若い女性や少女に、権利に関して情報を提供しています。私たちは、40以上の出生証明書や、離婚証明書を登録しました。それは、人々が全く経験したことがないことです。60歳の女性が、識字教室で初めてアルファベットを学んでいました。大災害後や、戦争やコミュニティーの移転の後で、少女や女性への救援は、本当に違って見えます。それは、力を与えることです。教育です。そうです。毛布や米は必要ですが、キャンプでレイプされたときに、あるいは夫や父親に虐待されているときに、あなたには権利があることを知る必要があります。あなたは助けが得られるのです。安全な移住と安全でない移住があります。少女たちがキャンプの外に連れ出され、孤児になることがあるのです。本当は、親が生きていて孤児ですらないのです。少女たちは連れて行かれ、ある種の教育が与えられ、食べ物が与えられると(それは本当です)、親たちは伝えられています。少女たちは孤児の状態に置かれます。これは、ネパールで多く起こっているのです。そして同時に、マイティ・ネパールの提携先で聞いたことですが、再建が必要な学校があります。特に地震の救援のために得られた他の資金があったため、私たちは、ネパールのカブレ郡で直ちに学校の再建を行いました。そこは小学校であり、多くの建物が安全ではなく、幾つかは完全に破壊されていました。私は現場を見に行きましたが、ブリキの建物のような場所で 250人の子供たちが授業を受けていて、彼らはそこをTLC(仮設学習センター)と呼んでいました。政府がそれらを設置したのです。しかし、そこはとても寒い場所でした。私が行った日には雨が降っており、どのような種類の勉強の助けにもなりませんでした。私は、校長や教頭と会いました。そこは、ネパールの民族の一つであるタマン族のコミュニティーであり、そこでは、女の子の子供の結婚が現実のものです。彼女たちは結婚のために学校から引き離されます。アルコール依存症とジェンダーに基づく暴力が大きく広がっています。そのため、学校教育が本当に大切です。なぜなら、このような若い人が長く学校にいればいるほど、子供の結婚だけでなく暴力も減り、彼女たちに仕事の機会を与える上で良い状況になります。もし教育があれば、人身売買は問題にはなりません。カナダの採掘企業、ハッチ社が6万カナダドルを寄付し、私たちが残りの資金を集めました。最終的には、プロジェクトを開始するために、10万ドル以上が必要でした。そして現在では開始しています!私たちは2月に工事に着手しました。

SI:では、あなたが人々に本当に知って欲しいことは何でしょうか。それはどのように役に立つのでしょうか。
コッコロス:知ることは大切です。人々は泣くことを再び学ぶ必要があると、私は思います。私が現在活動しているこの反人身売買の空間では、ストーリーを聞いたり、苦痛を見たりすることで、心を閉ざすことは容易です。地元の女性の避難所や、女性を援助する基金に寄付してみてください。そして、フェミニズムは、平等だけに関するものであり、少女たちや女性たちが、安全で尊厳のある生活を送れるようにするものであることを、ただ知ってください。それが、そのことが意味するすべてです。しかし、すべての人がすることができると、私が言えることは、自分自身の中に持っている人間性を認識し、再発見することだけです。共感と思いやりを再発見してください。路上で誰かを見たとき、その人は何を経験してきたのでしょうか。その人は、なぜ物乞いをしているのでしょうか。その人は、なぜ乞食をしているのでしょうか。その人は、なぜそこにいるのでしょうか。判断するのではなく、ただ見てみてください。

詳しくは、次のサイトを参照: http://aurafreedom.org