リチャード・D・ウルフ著 『病んでいるのは制度である』

セバスチャン・ヴィユモによる書評

新型コロナウイルス感染症の大流行は、私たちの経済制度の欠陥について何を明らかにするのだろうか? この悲劇は、重大なシステム変革のきっかけとなり得るのか? マサチューセッツ大学アマースト校経済学部の名誉教授であるリチャード・D・ウルフ氏は、最新の著書『病んでいるのは制度である──資本主義がパンデミックや資本主義そのものから私たちを救えないとき』でこれらの疑問に答えようとしている。

 ウルフ氏はこの短いエッセイ集で、現代の問題の多くが、私たちが生きている経済制度、すなわち資本主義に根ざしていることを論じている。
 今や世界中で主流となっている資本主義制度は常に様々な問題に悩まされているが、本質的に不安定であることは最も重要な問題の一つである。ウルフ教授は、資本主義は定期的に、ひどさに程度の差はあるものの、崩壊していると指摘しているが、これは通常「景気循環」と呼ばれる現象だ。このような危機は、平均して4年から7年に一度の割合で起こる。21世紀だけを見ても、2000年から2001年のドットコムバブル、2007年から2008年の世界的な金融危機、そして現在のコロナ危機と、すでに三つの大きな景気後退を経験している。興味深いことに、これらの出来事は、そのきっかけとなった要因にちなんで命名されることが多く、資本主義そのものの崩壊として紹介されることはない。しかし、崩壊が繰り返し起こっているという事実そのものが、崩壊が資本主義制度の本質的な特徴であることを示している。特に、コロナが引き金となって現在の不況を悪化させたことは事実だが、いくつかの経済指標は、コロナのパンデミック以前に資本主義はすでに危機に瀕していたことを示している。もしコロナウイルスがなければ、別の引き金が崩壊を引き起こしていただろう。
 もちろん、このように繰り返し起こる危機は、抽象的な出来事ではない。何百万もの人々、特に社会階層の底辺にいる人々の生活に、はっきりと目に見える形で、しばしば悲劇的な結果をもたらす。収入や仕事が失われ、個人やビジネスのプロジェクトは失敗に終わり、家族や社会的なつながりはなくなり、身体的・精神的な病気が発症する。資本主義制度の不安定性にかかる人的・社会的コストが莫大であるため、何十年にもわたって様々な解決策(ケインズ主義的な政府支出計画、新自由主義的な緊縮財政と構造改革、積極的な金融政策)が試みられてきたが、いずれも資本主義の好不況を抑えることはできなかった。
 ウルフ氏は、現在の経済的・社会的危機に対する責任は、コロナウイルスよりも資本主義制度の方にあることを示した上で、資本主義がいかにしてコロナウイルスへの備えと封じ込めの両方に失敗したかを暴露している。
 歴史上、人類は新興の病気に繰り返しさらされ、時には非常に多くの犠牲者を出してきた。さらに具体的に言えば、ここ数十年で、新しい呼吸器系ウイルス(SARS:重症急性呼吸器症候群、MERS:中東呼吸器症候群)が出現した。そのため、おそらくコロナウイルス系列の別の呼吸器系ウイルスが大規模なパンデミックを引き起こし、私たちの社会生活を混乱させるのは時間の問題にすぎないと、科学者たちは警告していた。警告されていたにもかかわらず、なぜ私たちはコロナが発生したときにほとんど準備ができていなかったのだろうか。その理由は、やはり社会経済的な構造にある。資本主義の論理では、企業は利益が見込まれる場合にのみ生産を行う。新しい呼吸器系ウイルスの出現に備えるには、マスクや人工呼吸器を備蓄したり、予めコロナウイルス向けのワクチンや治療法を研究したりする必要がある。しかし、このような活動は、経済的にリスクが高すぎるのだ。パンデミックはいつ、どのように起こるか前もって分からないため、民間の医療機関はパンデミック予防に関するリスクをとりたがらず、むしろ、別のより利益を多く生むチャンスに重点を置きたいと考えている。
 このように資本主義が不完全であることを考えると、政府が介入してマスクや人工呼吸器を購入して備蓄したり、医療研究に直接資金を提供したりすることが解決策となるだろう。興味深いことに、ウルフ教授は、軍事分野ではすでに政府がこのようなことを行っていると指摘している。なぜなら、軍事的な紛争は予測不可能であるため、民間企業が武器やさまざまな機器を製造したり、新しい技術を研究したりしても利益にならないからである。国家安全保障があまりにも重大であるため市場原理に任せられないならば、なぜ間違いなく同じくらい重要である医療について同様のことが行われていないのだろうか。その答えは、特にアメリカでは、民間の医療機関が政府に自分たちの怠慢を暴露されたくないからであろう。彼らは医療から利益を得続けたいと考えており、持ち得る政治力をすべて使ってあらゆる公的介入を「社会主義」として悪者扱いすることに成功している。
 したがって、資本主義は崩壊しやすく不十分なものであり、公衆衛生上の緊急事態から私たちを守ることができない。しかし、ウルフ教授が示すように、資本主義は、不平等、失業、民主主義の危機、人種差別、性差別など、社会的な病気の多くに関しても責任を負っている。
 不平等は資本主義につきものである。ごく少数の人々と雇用者だけが経済的意志決定権のほとんどを握っているので、当然、彼らが最も多くの収入を得ることになる。さらに悪いことに、このような不平等が放置されたままだと、時がたつにつれて何世代にもわたって不平等が拡大していくという制度の論理がある。歴史的に見て、この傾向は1930年代のように人々が大規模に抗議して立ち上がった時にのみ中断されてきた。
 このような構造上の不平等は、それ自体が問題であるだけでなく、民主主義の質にも悪影響を及ぼす。より経済力のある人々は、献金を通じて直接的に、あるいは政府が従わなければ「投資ストライキ」を行うと脅すなど間接的に、政治的決定に影響を与えることができる。したがって、資本主義は、政治の世界において私たちを不平等にするため、民主主義の原則を揺るがすものと言える。
 大量の失業は、資本主義の構造的特徴の一つだ。すべての人を働かせることが、社会全体の利益になることは明らかであり、より多くを生産することでより多くの利益を得ることができる雇用者にとっては短期的な利益になるかもしれない。しかし、資本家は失業者の「予備軍」を維持することでも利益を得ている。失業の脅威は、従業員に言うことを聞かせるために利用されている。従業員は、解雇されて、より低賃金で働くことを希望する失業者候補にすぐに取って代わられないように、低賃金と悪い労働条件を受け入れざるを得なくなる。したがって、資本主義制度は定期的に非常にたくさんの失業を発生させており、これが利益率を維持し、従業員に対する雇用者の支配を強化するのに役立っている。
 このような考え方に基づいて、ウルフ氏は性差別や人種差別が、それぞれの原因が経済分野の外にあるにもかかわらず、資本主義の利益のために利用され、加速する過程についても述べている。
 資本主義制度は極めて不適切であるため、どのようにして私たちはより良い制度に移行するのか。様々な改革の試みがこれまでになされてきた──特に米国のルーズベルト大統領の時代に顕著であった──が、それらは短命に終わってしまった。社会運動からの圧力が弱まると、資本家はそれらの改革をほとんど元に戻すことができたからだ。したがって、より構造的で永続的な変化が必要であり、ウルフ教授は、より良い制度への移行を達成するためのシンプルかつ広範囲に及ぶアイディアとして、職場の民主化を提唱している。
 資本主義は確かに、ごく少数の株主や取締役が、大多数の従業員に対する責任を取ることなくすべての重要な決定を下すという点で、根本的には非民主的な社会組織だ。代替案としては、企業を労働者協同組合として運営し、何をどのように生産するか、利益をどうするかなどの決定を、一人一票制を用いてすべての労働者が行うようにすることだ。これは、民主主義の理想とより一致しているだけでなく、資本主義の核心であり、先に述べたすべての問題を生じさせている、雇用者と被雇用者の間の矛盾を解決するものである。
 今回のパンデミックの教訓の一つは、資本主義は利益目的であるために基本的な健康ニーズに十分に応えることができないということだ。実は、同じことが、食料、住宅、教育、エネルギー、高齢者介護など、他のすべての基本的ニーズにも当てはまる。したがって、これらの分野の企業は、労働者協同組合に変えられるべきだ。すべての人の利益になる結果が出るように、消費者やコミュニティーも、労働者と共に経済的な意思決定に関わるべきである。しかし、それ以外の日常生活に必須ではない経済分野では、資本主義企業が存続することになる。このようにして、社会は両タイプの企業がどのように行動するかを監視し、資本主義と協同組合社会主義の望ましいバランスについて十分な情報を得た上で決定することができる。
 ウルフ氏はこの本で、現在のような制度を理解するのに大いに役立つツールを提供してくれた。同時に、実用的で魅力的な代替案のビジョンも提示してくれた。そしてそれを、非常に明快で直接的、かつ理解しやすいスタイルで表現しているので、幅広い読者にアピールすることができるだろう。

リチャード・D・ウルフ『病んでいるのは制度である──資本主義がパンデミックや資本主義そのものから私たちを救うことができないとき(The Sickness is the System: When Capitalism Fails to Save Us from Pandemics or Itself)』デモクラシー・アット・ワーク、2020年9月
www.democracyatwork.info/books参照