シェア・インターナショナルの協働者によるレポート
2017年7月9日にカナダ、エドモントンを拠点に活動する協働者のマイケル&シェリーン・タイルズ夫妻は、アメリカの元大統領、ジミー・カーター氏とどうしたらインタビューの約束が取れるのだろうかと話し合っていた。カーター氏がエドモントンに来ていて、彼が34年間活動している慈善団体「人類の住まい」と共に家を建設していたからである。彼らは「人類の住まい」宛てにその夜 Eメールを送り、カーター氏が市内に逗留されているときにインタビューをさせてもらえないかと要請した。
翌日仕事へ向かう車の中で、マイケルともう一人のシェア・インターナショナルの協働者であるティム・ボーツクとは、このまま仕事をさぼって、カーター氏を探しに出かけようかと冗談を言ったりしたが、もちろんそうしたわけではなく、仕事場へ向かった。午前中の休憩時間に彼らはコーヒーを買いに出かけ、仕事場へ戻る途中、付近に不案内だったので、曲がり角を間違えてしまった。彼らが見慣れぬ通りを数分走ると、突然大きな工事現場に行きつき、そこには『人類の住まい』というサインが掲げられていた。彼らは車を止め、工事現場に行く時にはいつも行う通常の手続きである作業装備を身に着けた。
現場の入り口では、驚いたことに、警備員が彼らを入れてくれた。彼らは、少なくとも写真を2、3枚撮らせてもらおうと、カーター氏が家を建てる仕事をしているところへ進んでいった。彼らはどうしたらもっと近づいて質問ができるのだろうかと思案していたが、彼らのすぐ後ろには、カーター氏の報道担当官がいて、自分の名前はブライアンだと名乗った。それでマイケルとティムは、自分たちはシェア・インターナショナルのボランティアだが、間もなく行われようとしていた記者会見に出席できるだろうかと尋ねた。報道担当官は、これには報道関係者だけしか出席できないが、聞いてみようと言ってくれた。
マイケルとティムは記者会見が行われるテントへ向かった。するとほどなく、ブライアン氏が現れ、そこに出席してもいいが、質問をできる保証はない、と告げた。この記者会見ではカーター氏の他に妻のロザリン夫人ほか数人が話をした。終わり近くになって、幾人かが質問をしようと挙手をしたが、マイケルも手を挙げた。マイケルとティムだけは報道関係者の名札を付けていなかったが、マイケルが最後の質問者に選ばれた。質問は3人の協働者の間で話し合って決めていたものだった。すなわち、「普遍的ベイシック・インカムについてあなたはどう思われますか? それはどの人も家族も、安全で、こぎれいで、手ごろな家を持つ助けになるとお考えですか」というものだった。
「確かに誰でもが、生活し、生きていけることのできる適正な所得を持っていてほしいと思います。カーター・センターは、世界80カ国にプログラムを持っていて、私たちはエチオピアやその他の収入が非常に少ないアフリカやラテンアメリカ諸国にもよく行きます。例えば、南アフリカに幾つかの家を建てましたし、リベリアでもたくさん仕事をしました。リベリアでは平均的な人でも1日にわずか50セントしか収入がないことを知りました。1日1ドルや2ドルでどうやって暮らしていけるのかを考えてみたら、とても無理だと思うでしょうが、彼らはそれで生き延びてきたのです。
貧困の中で生活している人々を、稼ぐ努力が足りなかったせいだと過小評価しがちです。
しかし、私たちはこの住まい造りの仕事の中で、またカーター・センターの仕事の中でも、時に劣っていると見なしている人々は私同様懸命に働いており、私同様大きな望みもあり、家族に対する価値観は私同様に素晴らしいことを発見しました。ですから、私たちより時に低い位置にいると思っている人々を同等だと認めるには、私たち自身を低く見ることによってではなく、他の人々を高く認めることによってなのです」
ジミー・カーター氏は第39代アメリカ大統領であった。彼は2017年10月に満93歳になるが、2017年7月には、妻ロザリンとの結婚71周年を祝ったばかりである。
写真:元アメリカ大統領ジミー・カーター氏と元ファーストレディのロザリン夫人は、カナダ、エドモントンの『人類の住まい』の仕事を手伝っている/photo: Habitat for Humanity