ジェイソン・フランシスによる
ジャスティン・ワイルダー・ドーリング氏へのインタビュー
「50個のサンドイッチ(Fifty Sandwiches)」は非営利のプロジェクトであり、ホームレスになってしまった人々と、ホームレスの横を通り過ぎておそらく無視することを選ぶか、ただ単にホームレスを理解しない人々との間に理解の架け橋をつくり出そうとしている。ジャスティン・ワイルダー・ドーリング氏は「50 個のサンドイッチ」の創設者である。彼はアメリカ中を巡り、ホームレスの人々にインタビューをしていた。その過程でドーリング氏は、ホームレスであるとはどういうことか、ホームレスとは誰かということに関して厳しい現実を見た。それは多くの場合、社会の先入観に反するものである。彼はまた『50個のサンドイッチ──ホームレスの人間性を回復する(Fifty Sandwiches: Humanize the Homeless)』という本を著した。ジェイソン・フランシスが、本誌のために彼にインタビューを行った。
シェア・インターナショナル(以下SI): あなたは何をきっかけとして、アメリカ中を巡り、ホームレスになってしまった人々にインタビューをするようになったのですか。
ジャスティン・ワイルダー・ドーリング: 私は15歳の時にある考えを持ちました。私はよく路上でホームレスの人々を見てきました。しかし、本能的な反応、特に私の家族の本能的反応は、ただ単に近寄らないというものでした。家族を守るために、威圧的に見える人には近寄りたくないと思うでしょう。誰もホームレスから始めようとするわけではなく、そこには物語があるはずだと私は思いました。ですから私は、大学卒業後にこのアイディアを行動に移すことに決めました。幸運にも「キックスターター」というクラウドファンディングのサービスを見つけ、プロジェクトを開始しました。私はバンを購入して105日間アメリカ中を巡り、物語や体験談を集めました。
固定観念を破る
SI:あなたの仕事は、ホームレスに関して「認識と現実の間の隔たりに架け橋をつくる」ことです。あなたは、そうした認識について少しお話をされました。現実とはどのように違うのですか。
ドーリング: 認識は相当異なり、それは実際、ホームレスは依存症や精神疾患や選択の結果であるという固定観念に基づいています。たとえそのような固定観念に多少の根拠があったとしても、私はそれ以上のものがあることを物語によって示したかったのです。もしホームレスを選んだり依存症になったりするとしたら、明らかにその人には精神疾患よりももっと多くのいろいろなことがあります。私は問題の背後にある複雑さを示したかっただけなのです。プロジェクトが進行する中で、私がインタビューした人々はそれぞれが違っていて多様であり、アメリカのホームレスの状況を少しでも理解することができました。
SI:人々がどのようにホームレスになったのか、家のない生活はどのようなものかについて、あなたが聞かれた物語をお話しいただけますか。
ドーリング:私は大学教授をしていたある男性と話をしました。彼はカビが見つかったために自宅から立ち退くことになりました。また、お母さんが亡くなり医療費が払えないというだけの理由でホームレスになった女性とも話をしました。多くの人が予期していなかったことに遭遇し、路上生活をしなくて済むような貯蓄や援助がないだけでホームレスになりました。私は長期プログラムに従う避難所でインタビューを行いました。路上生活をしていれば、脆弱な立場にあります。手元から離した荷物が盗まれたり、他人に付け込まれたりする恐怖の下に常に置かれます。本当に多くの人が私に物語を話したがることに驚きました。私はバンの中に住んでいて、綺麗だったとは言えません。そして、カメラを持ち運んでいました。人々がホームレスの体験と、ホームレスになった経緯について明かすことを望んでいることに驚きました。
SI:多くのホームレスの家族や子供がいましたか。
ドーリング:非常に多くのホームレスの家族がいました。私の本で紹介した家族は、その中の一部です。問題は、こうしたインタビューを集めることが非常に難しいことです。なぜなら、彼らのほとんどはすでに避難所に入っているか、ウォルマートの駐車場で自分の車の中で寝ているからです。物語を集めることに関して、問題の大きさを公平に評価することはできないと思いました。
SI:あなたがアメリカ中を巡ってインタビューをしていたときに、身の回りの必要をどのように満たしていたのですか。
ドーリング:私はプラネット・フィットネスというジムの会員であり、そこでシャワーを浴びることができましたが、衛生状態は急落しました。しかしながら、私はミニマリストのライフスタイルを楽しみました。しかし大抵の場合、ほとんど例外なくウォルマートの駐車場で寝ていました。米とソーセージを食べ、わずかな予算で生活しました。私がホームレスの真似をしたがっていると思う人もいました。バンに住んでいましたが、本当に素晴らしい援助の制度と行く場所がありました。決してホームレスの体験の真似をしたかったわけではありません。ホームレスについて学びたかっただけなのです。
SI:あなたは旅をする中で、幾つの州や都市や町に行きましたか。
ドーリング:1万4,000マイルを走り、34の州と、同じ数だけの都市に行きました。
SI:ホームレスの人にインタビューをする際に、どのようにアプローチするのですか。気配りや共感やプライバシーの尊重が必要に違いありません。
ドーリング:私は最初のうち神経質でしたが、人々にインタビューをし、心を開いてもらうことが少しずつ上手くなっていきました。堅苦しくならないように話しかけました。二人の見知らぬ人が議論しているようでした。もっと心地よく感じて、自分について打ち明けてもらえるように、私自身の個人的な苦難と、私がどのような逆境に遭遇したかを話すことが必要だと感じました。それは、会話をしながら体験を分かち合う二人の間の一時的なつながりのようでした。
SI:「50個のサンドイッチ」という名前はどこから来たのですか。
ドーリング:私の当初のアイディアは、国中を巡り、インタビューと引き換えにホームレスの人々に食事を提供するというものでした。アイディアは、二人の見知らぬ人同士がランチを囲んで話をするというものでした。もちろん実際の旅では、誰かが一時避難所にいて長期プログラムに従っている場合、インタビューのために外出できないことが分かりました。路上生活者の場合は、所有物を後に残してレストランのランチに出かけることはできません。私が誰かをランチに連れ出すことができたのが数回だけであることを考慮すれば、プロジェクト名自体がほとんど不適切なものになりました。
SI:今までに何人の人にインタビューしましたか。
ドーリング:およそ150人から200人です。
それはあなたにも起こるかもしれない
SI:あなたが会った人や聞いた物語の中で、何か特別に感銘を受けたものはありますか。
ドーリング:毎回のインタビューで、私の最後の質問はこうです。「ホームレスの体験がどのようなものかについて社会に対して何か言うことができるとしたら、何と言いますか」。 そのような答えの圧倒的多数は、次のような気持ちに行きつきます。私たちは皆同じであり、それはあなたにも起こるかもしれません、という気持ちです。それが、ホームレスを避けるために道を横切る人とホームレスの人自身を隔てる細い線を私が認識した時でした。大部分の人は予期しないことに遭遇してしまっただけであり、その場にいてどうしてよいか分からないのです。答えは、あなたが横を通り過ぎる人々には生涯にわたる経験、物語、苦難などがあることを結局は示しており、それはあなた自身のものと同じく複雑なものです。
SI:ホームレスの人々や家族と一緒に時間を過ごし彼らの人生の物語を聞くことは、あなたの人格やあなた自身のホームレスに対する見方をどのように変えましたか。
ドーリング:私が話したあらゆる人に関して、彼らと話をし、彼らの人生を掘り下げ、彼らをより深く理解するまでは、何を期待するかについて何も考えはありませんでした。まず私が学んだことは、一つひとつの物語がいかに多様であるかということです。ホームレス問題は、実際の問題というよりはむしろ、精神衛生事業や退役軍人、あるいは医療のいずれにせよ、失敗した社会構造の結果であると私は思いました。個人的な成長と発展の観点では、相手がホームレスであってもなくても、毎日路上で見かける人に対する新たな共感が得られました。それは私を個人的に大きく成長させてくれたと思います。特に見知らぬ人に話しかけ、体験を分かち合い、個人として成長し発展するために自分に可能なことを取り入れようとする姿勢においてです。
SI:精神疾患、物質使用障害、HIV/エイズなどの深刻な健康問題を抱える人々への支援サービスと居住支援を組み合わせた恒久的な支援住宅については、どのようにお考えでしょうか。それはホームレス問題への費用効率の高い成功した解決策だと一般には考えられています。
ドーリング:恒久的な住宅という選択肢は、ホームレスの人々が恒久的に自立できるように支援する活動を行う極めて重要なプログラムの有効性を高めます。簡単な食事や数ドルが問題を解決すると信じたいところですが、短期的な解決策は長期的な安定性をもたらしません。より没入型のプログラムは、援助を受ける人々から一貫性と専念を要求します。そのような姿勢があれば、このようなプログラムは包括的アプローチを提供します。それはホームレスに住宅を提供するだけではなく、先に進むために単なる安定した住宅の提供以上のものを必要とする人々への援助を提供することで、ホームレス問題の原因に対処するものです。
(詳しくは次を参照: fiftysandwiches.com)