「人類の問題の核心は何でしょうか」という質問に対する要約された簡潔な答えとして、ベンジャミン・クレームと彼の師はいつもこう返答してきた。分離という間違った認識と、霊性は宗教的な文脈の中に属するものであり、そうでない場合は避けるべきものであるという誤った考えである、と。そうだとすれば、私たちの生活のほんのわずかな部分だけが霊的と見なされることになる。こうした態度のせいで、利己的で貪欲で競争的になることはより容易になる。
ベンジャミン・クレームの仕事を通して響き渡っているアイディアが一つあるとすれば、すべてのものが本質的に霊的であり、徐々にそのように見なされるようになるということである──そのため、彼は他のグループとの協力を促進しようと努力した。今月号(*)には「世界政府のための議員連盟」のメンバーとの興味深い往復書簡の断片が掲載されており、ベンジャミン・クレームは社会の各方面で提携を推進する必要について語っている。このことが意味するのは、生活におけるあらゆるものが霊的であり、政治や気候変動対策、経済、教育、医療制度などすべてがそうした霊的なものとして扱われるべきだということを認めることである。こうした書簡は、霊的な志向を持つグループへのクレームの公開書簡とあわせて、世界中のグループが考慮すべき新鮮なアプローチを提供しているかもしれない。
ベンジャミン・クレームの師は「新しい文明」という記事で未来を垣間見ている。「新しい文明を構成する要素の特性を考慮してみよう。新しい時代の顕著な姿勢は、正しい関係を創造し、善意を表現するための試みであろう。個人に強調を置くことから集団(グループ)に強調を置く方向に大きく移行し、それが人類をより実りの多い線に沿って再教育するだろう。そしてそれが、神の大計画により一層沿う機構を創造していくなかに反映されるだろう」
クレームはこれと同じ傾向──和合と融合の必要性──を強調している。これは将来の関係の特色となる特質である。さらに、彼は課題を提示し、実際的な解決策と新しい取り組み方を提供している。「私たちが新しい時代に入る用意を整えるにつれて、統合をもたらす偉大な力が地球に作用し、より大きな和合と融合をもたらしているということが多くの人にとって明白になるでしょう。現代は、あらゆるグループが自分たちの活動方法と、一般大衆および他のグループへの接近の仕方を見直してみることのできる時代です。私たちはまさか、分離主義と排他主義という長い間に深く染み込んだ習慣に従って働き続けることにより、時代の必要に適切に反応することに失敗しようとしているのでしょうか。こうした融合と統合の偉大な力に備わる特質を現し、目指すべき社会の方向性にもっと効果的に影響を及ぼすために、あらゆる分野にいる霊的な志向を持つグループはどのような手段を取ることができるでしょうか。活動の調整不足が現在、主な障害になっている、と私たちは考えます。この国の霊的な運動は、広まってはいますが、バラバラです」
こうした統合的なアプローチを取ることにより、今月号の記事の収まりが良くなっている。「すべての人に公正な賃金を」という運動は、飢きんや洪水、干ばつに脅かされている人々を救えという呼びかけと結び付いている。秘教的な観点から歴史と心理学を考えたり、私たちは奉仕するためにここにいるのだということを認識するよう呼びかける若くて聡明な自閉症の女性について読んだりすることを、読者は楽しみに思うかもしれない。この号の記事の中では、「普通のお父さん」が気候チャンピオンになったり、若い女の子が社会と気候の正義を呼びかけたりする。
世界中で活動家やジャーナリストが逮捕され、殺害されている。パレスチナ人の活動家、シリーン・アブ・アクレ氏の事例を考えていただきたい。しかし、世界にあるその同じ場所から、トリノの聖骸布の年代についての新たな研究という形で、イエスの生涯に関するさらなる証拠が出てきた。次々と現れる「徴」や奇跡、尋常でない体験を記した読者からの手紙は、今月号の内容にそれぞれの独特な響きを加えている。
(*) 英語版は7・8月合併号であるが、日本語版は7月号と8月号に分けて発行される。