視点 中東におけるトランプ・ネタニヤフ戦争の集結

ジェフリー・D・サックス、シビル・ファレス

早急に止めなければ、この戦争は容易に世界的な大戦争、事実上の第三次世界大戦へと発展する恐れがある。

 イスラエルと米国によるイラン攻撃は中東全域を巻き込んでおり、世界的な戦争へとエスカレートする恐れがある。経済的な影響はすでに深刻であり、壊滅的な事態となる可能性がある。ホルムズ海峡は、世界中で取り引きされる石油の約5分の1、世界の液化天然ガス(LNG)の30%を輸送している。海峡の封鎖が長期化すれば、現代において前例のないエネルギー危機が引き起こされるだろう。
 この紛争は制御不能に陥る可能性が高い。米国とイスラエルが、アラブ世界および西アジアにおける覇権を強固に目指しているからである──その覇権とは、イスラエルの領土拡大と、米国が支援する政権による地域支配が組み合わさったものである。最終目標は、歴史的パレスチナ全域を吸収した「大イスラエル」であり、それに加え、石油や天然ガスの輸出方法や輸出先に関する選択権を含めて、真の主権を剥奪された従順なアラブ諸国やイスラム諸国の政府を併合することである。
 これは妄想である。この地域のどの国も、イスラエルが現在のように暴走し、地域全体で民間人を殺害し、ガザ地区やヨルダン川西岸地区を破壊し、レバノンに侵攻し、イラクやイエメンを攻撃し、テヘランを絨毯爆撃することを望んでいない。自国の炭化水素輸出が事実上、米国の支配下に置かれることを望む国などない。この戦争が終わるのは、米国とイスラエルの侵略に対する世界的な反発が、この両国に停止を強いる場合に限られる。それがなければ、中東は炎に包まれ、世界は現代史において類を見ないエネルギー・経済危機に陥るだろう。この戦争は容易に世界的な大戦争、事実上の第三次世界大戦へと発展する恐れがある。
 しかし、別の道は存在する。イスラエルと米国が世界各国から断固として責任を問われるならば、戦争は合理的な根拠に基づいて終結する可能性がある。戦争を終結させるには、すべての当事者、ひいては世界全体に基本的な安全保障を確保するための、相互に関連した一連の措置が必要である。イランは、米・イスラエルによる侵略の恒久的な終結を必要としている。湾岸諸国は、イランによる報復攻撃の終結を必要としている。パレスチナ人は独立国家を必要としている。イスラエルは、恒久的な安全保障と、ハマスおよびヒズボラの武装解除を必要としている。全世界は、ホルムズ海峡の開放と、イランが核不拡散条約を遵守することを確実にするための、イランの核開発計画に対する国際的な監視を必要としている。そして、すべての国は、自国と領土における真の主権を望んでいる。あるいは、望むべきである。
 集団安全保障は、相互に関連した五つの措置によって実現できる。第一に、米国とイスラエルは、地域全体にわたる武力侵略を直ちに停止し、軍隊を撤退させること。第二に、イランは湾岸協力会議(GCC)加盟国に対する報復攻撃を停止し、トランプ大統領が2018年に無謀にも破棄した「包括的共同行動計画(JCPOA)」の改定版に基づき、国際原子力機関(IAEA)の監視下に戻ること。第三に、ホルムズ海峡がイランとGCCの相互合意により再開されること。第四に、パレスチナを国連の正式加盟国として承認することで、二国家解決案を直ちに実施すること。イスラエルは、西岸地区および東エルサレムの占領を終了し、レバノンおよびシリアから軍を撤退させることが求められる。第五に、国連によるパレスチナ国家の承認が、国際的な監視下で検証される、すべての非国家主体による包括的地域軍縮の基盤となること。最終的には、国際法と国連憲章への回帰が実現するだろう。
 この計画で勝つのは誰か。この地域の民衆、つまりイスラエル、パレスチナ、レバノン、シリア、イラク、イラン、そして世界の他の地域の人々である。負けるのは誰か。世界を破滅の瀬戸際に追いやったベンヤミン・ネタニヤフ氏やイタマル・ベン・グヴィル氏、ベザレル・スモトリッチ氏、マイク・ハッカビー氏に率いられた、「大イスラエル」の支持者たちだけである。
以下に、五つのステップについてより詳しく説明する。

第一に、米・イスラエルによる武力侵略を終結させること。
イスラエルと米国は侵略を停止し、軍を撤退させる。その見返りとして、イランは報復攻撃をやめる。これは単なる停戦ではない。むしろ、包括的な和平合意と集団安全保障体制に向けた第一歩となる。

第二に、JCPOAに復帰すること。
核問題は、イランの濃縮ウランを国際監視の及ばない場所に追いやるだけの爆撃作戦ではなく、国際原子力機関(IAEA)による厳格な監視を通じて解決される。国連安全保障理事会は、2015年の包括的共同行動計画(JCPOA)の基本枠組みを直ちに復活させる。これに基づき、イランはIAEAの監視と核計画に関する合意された制限を厳格に遵守しなければならない。その一方で、イランに対する経済制裁は解除される。

第三に、イランとGCCの枠組みによりホルムズ海峡を再開させること。
ホルムズ海峡は速やかに再開され、イランと湾岸協力会議(GCC)が共同で安全な航行を保証する。GCC諸国は、自国の軍事基地に対する主権を主張し、こうした基地がイランに対する新たな攻撃の拠点として使用されないようにすべきである。

第四に、二国家解決。
パレスチナを国連の194番目の正式加盟国として承認することで、二国家解決案が実施される。これに必要なのは、米国が拒否権を行使しないことだけである。パレスチナ国家の樹立は、国際法に合致し、2002年から議論されている「アラブ和平イニシアティブ」とも一致する。これに伴い、域内の各国は、イスラエルとの外交関係を樹立し、国連安全保障理事会はパレスチナとイスラエルの双方の安全を確保するため、平和維持軍を派遣する。

第五に、武力紛争の終結。
二国家解決と並行して、ハマスやヒズボラなどの非国家武装勢力の武装解除を含め、地域におけるあらゆる武力紛争は直ちに終結する。パレスチナの場合、ハマスの武装解除はパレスチナ国家の権威を強化することになる。レバノンの場合、ヒズボラの武装解除はレバノンの完全な主権を回復させ、レバノン軍が国内唯一の軍事権威となる。
この武装解除は、国際監視団によって検証され、国連安全保障理事会によって保証される。

 重要な点は、イスラエルと米国によるイラン攻撃が、何もないところから始まったわけではないということである。1996年にネタニヤフ氏と米国にいる彼のネオコン(新保守派)支持者たちによって策定され、それ以来実行されてきた「クリーンブレイク」戦略は、米国を実行パートナーとして、政権転覆戦争を通じてイスラエルが地域における覇権を確立することを目的としている。北大西洋条約機構(NATO)最高司令官のウェスリー・クラーク氏が9.11後に明らかにしたように、米国は四半世紀前に7カ国の政権を転覆させる計画を策定していた。「イラクを皮切りに、次にシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイラン」である。したがって、私たちは今、アラブ世界と西アジアを支配し、大イスラエルを創出し、パレスチナ国家の樹立を永久に阻止するという、イスラエルと米国による長年の計画の集大成を目の当たりにしているのである。
私たちの計画が実現する可能性について、私たちは楽観視していない。イスラエル政府は残虐であり、トランプ氏は米国の力について妄想を抱いているからである。私たちは恐らく、すでに第三次世界大戦の初期段階にあるのかもしれない。 しかし、事態の重大さを考えると、たとえ成功の見込みが薄くても、現実的な解決策を提示する価値はある。非西洋世界――つまり米国の属国ではない国々――は平和と安全保障の緊急性を理解している、と私たちは信じている。
 では、誰が和平計画を主導できるだろうか。米国とイスラエルは、あらゆる手段を尽くして抵抗し、世界的な反対の重みと経済的な破滅によって受け入れざるを得なくなるまで抵抗し続けるであろう。
 主なグループは一つある。それは新興5カ国(BRICS)である。
 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして現在ではアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、インドネシアを含む拡大メンバー諸国は、世界人口の約半分、全世界の国内総生産(GDP)の40%以上を占めている(称賛されながらも過大評価されているG7諸国の割合は28%にすぎない)。BRICS諸国は、信頼性と経済的影響力がある一方で中東帝国主義への歴史的な加担はないという点で、世界を正気に戻す力を持っている。BRICSは緊急サミットを招集し、平和と安全保障の条件を盛り込んだ統一的な枠組みを提示すべきである。それから、その枠組みは国連安全保障理事会に提示されるべきである。世界の世論はその理事会の場で、米国とイスラエルに対して世界を破滅へと追い込むのをやめるよう求め、すべての国に対して国連憲章を遵守するよう促すことになるだろう。
(Common Dreams)

ジェフリー・サックス教授は、アメリカの経済学者、研究者、公共政策アナリストである。持続可能な開発、経済開発、貧困対策に関する研究で知られている。国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(UN SDSN)会長であり、国連開発のためのブロードバンド委員会の委員を務めている。 
シビル・ファレス氏は、持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(UN SDSN)において、中東政策および持続可能な開発の専門家兼アドバイザーを務めている。