ジェイソン・フランシスによる
スティーブン・クレッツマン氏へのインタビュー
2005年に創設されたNGO「オイル・チェンジ・インターナショナル」は、化石燃料の本当のコストを暴露し、政治における化石燃料マネーの影響力に対抗することによって、クリーンエネルギーの未来への移行を実現しようと努力している。この団体のウェブサイトによると、彼らが化石燃料産業へと努力を集中するのは次の理由による。「私たちは石油、ガス、石炭の生産と消費を、地球温暖化、人権侵害、戦争、国家安全保障上の諸問題、企業のグローバリゼーション、格差の拡大の根源と見ています。また、クリーンエネルギーへの移行に対するあらゆる大きな障壁の背後に、化石燃料産業の利権があると考えています」。ジェイソン・フランシスが本誌のために、オイル・チェンジ・インターナショナルのスティーブン・クレッツマン事務局長にインタビューを行った。
石油の影響力のもとでの法制化
シェア・インターナショナル(以下SI):各国政府は「石油の影響力のもとで機能している」とオイル・チェンジ・インターナショナルは述べています。化石燃料産業はどのようにして各国政府に対してそうした大きな影響力を持つようになったのでしょうか。
クレッツマン:歴史を振り返ると、石油は本質的に、とてつもなく戦略的な商品となってきました。ウィンストン・チャーチルが英国王立海軍を石炭動力から石油動力へと転換して以来、各国政府が戦略目標の追求のために石油を確実に入手することができるように、地政学的な舞台での計略がますます増えることになりました。最近の一つの例は、アメリカによるイラク侵攻です。人々は一般的に、石油は軍事目的のための戦略商品だと考えています。しかし、もう一つ重要な点があります。多くの政治家は、特にガソリン価格の上昇が選挙の投票において不利になることがあることを認識しています。したがって、彼らは消費者価格を下げるためにできることを何でも行おうとします。
もう一つの見方は(これは私たちが好む傾向のあるものですが)、石油産業は選挙資金やロビー活動のための出費、あらゆる種類の関連する選挙経費に関して極めて寛大であるということです。残念なことに、今日のアメリカ政府について言えば、お金は選挙にあたって非常に重要です──とりわけ、シチズンズ・ユナイテッドとマカッチャンの判決以来そうです〔アメリカ最高裁判所は2010年のシチズンズ・ユナイテッド裁判において、合衆国憲法修正第1条に基づいて企業は無制限に選挙献金を行ってもよいという判決を下しました。最高裁判所は2014年のマカッチャン裁判において、個人による政治献金の制限を撤廃しました〕。そのために、化石燃料産業が巨額の現金を使える立場にあるという事実、あるいは、使うと脅しているという事実は、各国政府にとてつもない影響力を及ぼすことになります。
SI:毎年世界中で、どのくらいの額が補助金として石油会社に支払われているのですか。
クレッツマン:補助金の定義の仕方によります。高めの見積もりでは、急進的な組織ではない国際通貨基金(IMF)でさえ、納税者に対する化石燃料の補助金コストは全世界で年間5兆3,000億ドルと算定しています。この定義には、産業製品の燃焼による二酸化炭素の増加や健康面への影響という社会的コストも含まれています。しかし、これよりも高い数値を出す人もいます。化石燃料の供給のための軍事防衛コストまで含めた場合です。私たちの軍隊がなぜ中東にいるのか、年間でどのくらいの経費になるのかを考えると、このコストについては明白でしょう。
それは別にして、世界中の国々で税法や税政策に具体的にどれほど盛られているかを見てみましょう。基本的に生産補助金として、年間約4,400億ドルが支払われています。これは、ほとんどの生産補助金が支払われているG20諸国の合計です。そのうちアメリカの分は、州レベルの補助金を含めて約200億ドルです。
SI:オイル・チェンジ・インターナショナルが「石油と国家の分離」と呼ぶものを引き起こすために、何が行われる必要がありますか。
クレッツマン:民衆は、代表者に説明責任を負わせなければなりません。代表者が化石燃料産業からどのくらいのお金を受け取っているかをDirtyEnergyMoney.comで追跡することができます。代表者のところに行って、こう言ってもよいでしょう。「私たちはあなたが汚染企業ではなく、民衆を代表することを望んでいます」と。大手たばこ会社の場合と同様に、こうした産業と連携すれば、やがて選挙の投票において不利になるということを明確にする必要があります。連邦議会で石油と化石燃料産業の味方をしている政治家は一般大衆の友人ではないことを人々が認識し始めるまで、石油と国家を分離させることはできないでしょう。しかし、代表者がクリーンエネルギーとクリーンな未来の味方になることを民衆が要求するとき、私たちはそれを実現することができます。
アメリカでの選挙後
SI:あなたが焦点を当てている問題の中で、最近の最も重要な進展は何であると考えていますか。
クレッツマン:ドナルド・トランプ氏の選出と、気候問題の否定論者の多い共和党に支配された議会が、現実の問題になっています。環境保護運動はより団結し、より活発な運動を志向し、パイプライン闘争やフラッキング[水圧破砕法]禁止のような地域や州のインフラ問題に焦点を当てることを余儀なくされるでしょう。これらは良いことです。それによって人々は力を蓄えるからです。人々が地域や州のレベルの闘いに参加するとき、化石燃料産業が何をやっているのか、どのように人々を傷つけているのかが見えてきます。その産業が実際にどのようなものなのかを人々が理解するとき、私たちの側に有利になる傾向があります。標的となる企業や投資家が増えるからです。
この状況にどう対処すべきかについてみんなが話しています。明らかに、ワシントンの現政権からも多くの防衛策が出てこなければならないでしょう。個人的には、クリーンパワー計画(発電所からの二酸化炭素排出量を抑制しようとするオバマ政権の計画)のようなものを救済しようとして、多くの時間を費やす必要はないと思います。それは所詮、それほど野心的ではないからです。その代わり、ずっと攻撃的で抜本的なことを考えるべきです。
私たちの活動に関連した他の大きな変化はおよそ2カ月前に起こりました。世界で現在稼働しているすべての井戸と鉱山にどのくらいの炭素が含まれているかに関する、きちんとした最新のデータをついに入手したのです。こうした調査計画は数十年も続く場合がありました。稼働中のすべての井戸と鉱山から生じると産業界や投資家が見込んでいる炭素をすべて合わせただけで、パリの[2015年のパリ協定の]目標を達成するための炭素関連予算が吹き飛んでしまいます。
このことから得られる結論は、化石燃料産業の拡大は止まる必要があるということです。より多くの生産を促すような新しい用地や建物、新しいインフラやパイプラインを貸し出すことをやめる必要があります。私たちに対抗する人たちはこの点について誇張して述べていますが、一夜にしてガソリンや発電所をなくしたいとは誰も思わないでしょう。私たちが言っているのは、30年から40年かかる移行になるだろうということです。私たちは今、進行を管理しながら、この産業の衰退の過程を始める必要があります。つまり、拡大を止めること、化石燃料の使用をやめること、この産業の拡大のために納税者のお金を使うのをやめることです。
いわゆる公正な移行を実現するためには、地域社会や労働者のことをどれほど気遣うつもりがあるのかに関して、もっと真剣になる必要があります。率直に言えば、化石燃料に関連してつくり上げられてきたものについて、非常に多くの労力や努力を注いできた人々に感謝する必要があります。明らかに、現代社会にはあらゆるプラスとマイナスがあります。たいていの環境保護活動家はその多くを変えたいとは思わないでしょう。しかし、どこからエネルギーを得るのか、どのようにエネルギーを使うのか、環境とどう関係するのかについては、ぜひ変えたいと思うでしょう。それはやがて、他の様々な変化のきっかけになるでしょう。しかし、これは実現可能な移行です。30年か40年にわたって何かをすることについて語るとき、達成可能に思えるのはこうした点でしょう。問題は、2年か4年ごとにリーダーが変わる政府制度の中で、そのような予定表に従って、社会全体として機能することができるかどうかです。
最近の運動
SI:オイル・チェンジ・インターナショナルが最近取り組んでいるキャンペーンについて話していただけますか。
クレッツマン:私たちは化石燃料の補助金をなくそうとするために、化石燃料の補助金を数値化し、アメリカ国内と国際社会の両方において組織の連合体をつくろうと活動しています。こうした補助金をなくすために政治的リーダーシップを構築しようと活動しています。それを達成可能なものにしようと活動しています。なぜなら、率直に言って、いまだに化石燃料に資金提供をするのは馬鹿げているからです。
私たちはまた、特にアメリカにおいて、新しいインフラ建設を止めようとすることに深く関与しています。ダコタ・アクセス・パイプラインの分析によって、パイプラインからの二酸化炭素排出量は新しい石炭発電所30基分に相当することが明らかになりました。建設阻止のために、先住民の地域社会とともに活動しています。明らかに、キーストーンXLパイプラインに関しては、再び闘いに挑むことになるでしょう。
この運動が化石燃料産業をストップさせるのに役立つよう、できることを行うことに関心を抱いています。それは過去数年の間に起こった、本当に励みになることです。キーストーンXLのあと、多くの人がこう尋ねました。「次のキーストーンXLは何でしょうか。次は何をするつもりですか。化石燃料インフラのどの部分に焦点を当てるつもりですか」と。すべてに焦点を当てる、というのがその答えです。何らかの大きな計画を通して行うわけではありません。なぜかと言うと、化石燃料産業は気候にとって脅威だということに草の根の人々が確信を持つようになっているからです。人々は自分の裏庭で行動を組織し、行動を起こそうとしています。これは素晴らしいことです。
詳細については次のウェブサイトをご覧ください。
www.priceofoil.org; www.dirtyenergymoney.com; www.shiftthesubsidies.org