編集部より

 周知のように、法の支配はどの文明の存続にとっても必要不可欠である。それは国際関係において決定的に重要である。世界が根本的な基準として定めてきたあらゆる国際的な条約や協定、道徳規範の尊重と順守は、万人のための正義を確実にし、信頼と平和を可能にする。

 この枠組みが崩れたり故意に反故にされたりするときに何が起こるかは、知られていないわけではない。歴史には、法の支配と基本的な道徳規範の崩壊の傷痕が散らばっている。すべての人の安全や生存、繁栄を確実なものとするために、私たちはそうした規範を拠り所として生き、行動する。しかし、私たちは比較的最近の歴史でさえも忘れてしまったのだろうか。「二度と繰り返さない」ことに皆が同意し、望んでいたのではないか。

 歴史に関する問題は、もちろん、それが記憶であり、主観的になりやすいということである。そのため、人類全体という集団の利益の代わりに、私たちは他者に対して行われる不正義には目をつぶる一方、自分たちは苦難の歴史を歩んできたからと言って、自らの復讐の権利を要求する。こうして、苦痛を与えたり傷を抱えたり、相互に非難し合ったりして、おぞましい苦しみの連鎖が続き、傍観者たちを残虐性の泥沼に引きずり込んでいくのである。

 私はホロコースト、あなたはナクバというように、犯罪や過ち、苦しみを同一視することに時間を費やすのは正気の沙汰とは思えない。交渉の出発点として、なぜ正義と賠償の平等を求めないのか。いつ、どのように終わるのか。世界は、罪悪感と復讐の間で揺れ動き続け、そうすることで、武器売却や地政学的利益、膨張と拡大を通じて、少数の億万長者にさらなる富をもたらす絶好の機会をつくり出していかなければならないのか。不必要なのだがよく植え付けられた罪悪感が、あまりにも長い間、私たちを人質に取ってきた。そのため、私たちには今日の悲惨な現実が見えなくなっている。

 世界が未来を持つためには、交渉が行われ、正気が優勢とならなければならない。これは、スーダン、イエメン、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの紛争など、地球上のあらゆる紛争地域に当てはまる。しかし、戦後賠償においては、これが決して対等な戦いではなかったことが認識されなければならない。現代政治の構造の中には誤った物語が根付いている。何十年もの間、土地を奪われたパレスチナ人にとって正義はなく、その結果、イスラエルには法に基づく安全保障が欠如しているという明白な真実が、世界の指導者たちによっていまだ認識されていない。指導者たちは道徳的な指針を失い、明らかに人間性も失ったように見える。このようなひどく不快で残虐な殺戮に加担せずに傍観することなど、どうしてできようか。私たちが目撃しているのは、明白なジェノサイド(集団殺害犯罪)であり、明らかな民族浄化であり、間違いなく戦争犯罪と人道に対する犯罪である。新しい公正な社会へと指導者たちを導くのは民衆であることを、私たちは知っている。数十万人が国を失い、数万人が命を失おうとしている。もし沈黙していれば、私たちは人間性を失うことになる。

 沈黙していることができるだろうか。一つの民族全体の生命や国だけでなく、私たち全員の人間性が危機に瀕しているときに、私たち民衆は何もしないでいられるだろうか。これは、私たちの本質──つまり人間性──への攻撃である。私たちの精神(マインド)と心(ハート)が危険にさらされている。歴史上のこの時期は、国際社会にとって決定的な転機ではないにせよ、試練の時である。この非人道的な時代に、停戦や正義、虐殺の終結を要求する勇気を見いだすことができないならば、私が考えるに、私たちはさらなる悲劇と、人間性を奪い取るこのフォース(勢力)とのさらに恐ろしい戦いに身を委ねなければならなくなる。中東だけの話ではない。すべての市民が、汚染されていない豊かな自然環境の中で、幸せで、健康的で、快適で、安全で、教養のある、創造的な生活を送っている国は、この地球上にはない。人々と地球を守るためには、より良い統治と政策が必要であることを、私たちは知っている。すべての人のための真の正義、新しい道徳規範、文明社会についてのより明確な定義が必要とされている。

 今月号には、ベンジャミン・クレームの師による多くの記事や、ベンジャミン・クレーム自身による、難しいが今の世の中にふさわしい質問に対する回答が含まれている。また、もし真摯に受け止めれば、私たちの魂を救うことができるような情報を明らかにする記事や統計も掲載されている。こうした情報は、私たちが交渉や、真実と和解、賠償、巨大な集団的努力の過程を開始するのを助けるだろう。それは、正気さと地球の未来に向けて、再構築し、再定義し、人々を方向転換させるための努力である。

 ベンジャミン・クレームの師は「人類の歴史的選択」という記事でこう書いておられる。「人間が歴史的選択をするときは到来した。間もなく人類は極めて重大な決断を、すべての男、女、子供の未来を、まさに地球上の生きものすべての未来を決める決断をしなければならないことに気づくであろう──惑星地球において途切れることなく、限りなく発展する創造性か、あるいは、われわれの住処(ルビ:すみか)であるこの惑星上の人間および人間以下のすべての生命の恐ろしい滅亡かの間の選択である。……

 分かち合いと正義のみが平和をもたらすだろう、とわれわれは言う。すべての人間が、心(ハート)の中で、平和を願う。われわれの勧告は本当に単純である、しかしこれまで、人類にとってそれを把握することは困難であった。人間は神聖なる自由意志を持ち、彼らの運命の支配者である。分かち合いと正義の道を取りなさい、とわれわれは勧告する。それは『同胞団』の衣であり、それなしには、人は十分な人間とは言えない」(シェア・インターナショナル誌2013年3月号)

 私たちはマイトレーヤからのいつもの祝福から、強さと慰めを得ることができる。それは12月25日のクリスマスの日、どの国にいるにせよ、現地時間の午後3時に始まる。マイトレーヤと覚者たちは人類と共に立っておられる。どんなにちっぽけに見えるにせよ、私たちは自分たちの役割を果たさなければならない。