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未来に備えて

──覚者より
ベンジャミン・クレーム筆記

 一つの時代の終わりと新しい「宇宙の周期」の始まりにかけて、すべてがばらばらになり始める。古い、試みられてきた生活のあり方はもはや機能しないか、あるいは前進しつつある人類の必要を満たさない。確信が不確かに代わり、知られていることはその説得力を失い、人々は当惑し、途方にくれ、恐怖でいっぱいである。かくして、古い双魚宮(パイシス)の時代と新しい宝瓶宮(アクエリアス)の律法の間にあるこの移行の局面にあって、今日われわれは当惑しながら立つ。
 宝瓶宮の時代はおよそ2,350年続くだろう、そしてそのエネルギーが次の数世紀にかけて力を増大させていくにつれて、人々に多くの恩恵をもたらすだろう。しかしながら、現在は双魚宮の、もはや用をなさないのだが、まだ抜け出せない古いやり方が大多数の人間の思想と行動を左右し、支配する。そうであるから、数え切れないほどの大勢の人間が、現在のところ強力で支配的な国々のリーダーたちの行動によって牛耳られている。かくして今は激変とストレス、不調和と葛藤の時である。
 この苦悩の時はもはやあまり長く続かないだろうということは確実である。すでに、変化の兆候は、あなた方の兄であるわたしたちには明らかである。現在のものとは全く異なった状況の輪郭がはっきりと見える。わたしたちには、平和な世界が、正義が支配し、自由が至るところにいる人間の生活を飾る世界が見える。現在の病は過渡的で過ぎ去るものであることを、新しい夜明けの光が人間の生活を照らし、彼らを行動へと駆り立てることを、わたしたちは知っている。また、人々は心(ハート)の中で変化への用意ができており、それを願望していることを、そしてそのチャレンジに熱意と意志をもって立ち向かうだろうということを、わたしたちは知っている。彼らは鼓舞(インスピレーション)と導きを待つのみである。
 マイトレーヤは約束の時刻を待ちながら、その鼓舞(インスピレーション)と導きを、完全に、そしてより多く授けることを切望する。それは、カルマの法則によって、彼が進行するのを可能にする。
 そのとき、偉大なる主は公に人間の分野にお入りになるだろう。そうして、彼は権力と富を持つ人々の思い上がりに挑戦するだろう。マイトレーヤは声なき何千万の人々のために、日々苦悩の中に生きる貧窮し飢えた人々のために、彼らの“上位”の者たちの勅命にあえて挑戦し獄中で衰えている人々のために、語るだろう。マイトレーヤは、正義と自由を愛する者たちのために語り、彼らの大義の声を高らかに上げるだろう。彼は、戦争によって支配する者たちの激怒を和らげるだろう。そして人間の王国を汚す戦争が入り込む扉を永遠に閉ざすだろう。これらのすべてを、マイトレーヤは人間を通して達成し、地球に平和と健全さを復興させるだろう。
 穏やかに、そして目的をもって、彼は人間が受け継ぐべき黄金の未来に備え、そのような未来を形づくっていく男女である“輝ける光”を集合させるだろう。

(シェア・インターナショナル誌2007年12月号)

今月号の内容概説

 私たちは毎月、述べる必要のあるあらゆること、注目を要するすべてのことについて書くことができればと思っている。すべての人が認識すべき問題が非常に多くあるからである。早急に解決策を必要とする危機や状況、問題を省くのは困難である。世界の全領域は、善意の人々がそれぞれ適切な行動を取ることを求めている。この11月号も例外ではない。良い点や問題点、解決策、後退、進歩が提示されている。非常に多くの奉仕の機会に関して述べるべきことは非常に多い──そのため、今月号は通常よりもページ数が多くなっている。
 ベンジャミン・クレームの師である覚者は、問題の核心を突いている。つまり、古い秩序の崩壊と、何がそれに取って代わるかという論点である。覚者はこう述べている。「今は激変とストレス、不調和と葛藤の時である」と。しかし覚者は、絶望が入り込む前に、正義や自由、平和という美しい規範を持った未来の概略を描いている。「未来に備えて」という同じ記事で、マイトレーヤがいかにして働かれるかを覚者は明らかにしている。マイトレーヤは「権力と富を持つ人々の思い上がりに挑戦するだろう。マイトレーヤは声なき何千万の人々のために、日々苦悩の中に生きる貧窮し飢えた人々のために、彼らの“上位”の者たちの勅命にあえて挑戦し獄中で衰えている人々のために、語るだろう。マイトレーヤは、正義と自由を愛する者たちのために語り、彼らの大義の声を高らかに上げるだろう。彼は、戦争によって支配する者たちの激怒を和らげるだろう。そして人間の王国を汚す戦争が入り込む扉を永遠に閉ざすだろう」
 フランスの通信員の一人、ルーク・ギオリーは、アメリカの低迷──民主主義や国の諸機構、国の未来に対する寡頭制の悪辣な影響──についてのトム・ハートマン氏の分析に脚光を当てている。別の書評(『あなたが思っているよりもあなたは重要』)では、ノルウェーの通信員、アナ・ビエが、相互に結び付いた世界において、肯定的な変化の連鎖反応に寄与するためにそれぞれの人が果たすことのできる役割に焦点を当てている。紛争の継続に対するフラストレーション(不満)の高まりが世界中で見られ、それに付随した核エスカレーション(深刻化)に反対する運動が盛り上がりを見せている。
 瞑想とは何か、なぜ瞑想をするのか。ベンジャミン・クレームと彼の師、そしてマイトレーヤが、人を奮い立たせるような選集の中で説明している。
 ケニア農村部での遠隔治療の進展についての記事は、新興国が健康管理などの基本的権利のためにいかに苦闘しなければならないかを明らかにしている。教皇や国連事務総長、世界中の若い気候活動家、ジェフリー・サックス教授らは皆、私たち──人類──に正気に返って、私たちの惑星と生命を救う解決策を見つけるよう促している。彼らの訴えは緊急性を帯びている。
 現在の危機にもかかわらず、マイトレーヤは人類を通して、私たちが長らく待ち焦がれてきた未来を成し遂げられるということを、シェア・インターナショナル誌の読者は知っているだろう。マイトレーヤは今でも働いておられ、「人間が受け継ぐべき黄金の未来」に備えておられる。

瞑想と魂 ――選集

Meditation and the soul ──      a compilation

Q   なぜ瞑想はそんなに重要なのですか。

A 魂は肉体人間ではなくリアリティ(実相)です。物質界はそれ自体の観点から見れば現実ですが、魂の観点から見れば現実ではなく、それは相対的なものです。問題は、私たちがそれを全体だと思っていることです。しかし、それはより偉大な全体の相対的な部分でしかありません。部分は全体を見ることはできませんが、全体は部分を──そして様々な部分を──見ることができます。魂の観点から見れば、何度も何度も転生する魂の努力はこの橋を徐々に築く一連の器を創造し、バラバラであったものを融合することです。物質への退化の過程を逆に戻り、物質の霊化が起こります。
 私たちは自分自身の諸体の物質(メンタル体、アストラル体、肉体)を霊化します。魂は各々の転生で、螺旋上のより高い旋回において、より高い振動の一連の諸体を創ります。(もしすべてうまくいくならば)私たちはやがて、あまり多くの制限なしに、そして究極的にいかなる制限もなしに魂を表現することのできる肉体を持ちます。
 瞑想はそれを始動させる過程です。あらゆる宗教や精神修養の中に、上昇へのあらゆる道の基礎に、何らかの瞑想があるのはその理由によります。伝導瞑想ではないかもしれないし、あなたが本で読んだり、知ったりした様々な瞑想でもないかもしれません。しかし、何らかの瞑想によって魂との整列が起こるに違いありません。なぜなら転生しているのは魂だからです。魂を避けたり回避したりすることはできません。魂がリアリティ(実相)です。その現実を認知しなければならず、それを認知する方法は橋、帰還の道、アンタカラーナの構築を通してです。

(『マイトレーヤの使命 第Ⅲ巻』)

 今までは、「超魂」についてのわれわれの知識は宗教の関連からきていた。そのため、「超魂」は人間から遠い存在であり、認識され、遠くから崇拝されるべき何かであるという印象を残した。しかしながら、人が進化するにつれて、「超魂」は自分自身であることを、自分の、より高位でより純粋な部分であるが、にもかかわらず、自分自身であることを理解するようになる。かようにして、人は進化し、自分の真の本質と目的についての知識を深めていく。
 今日、非常に多くの人間がそのような道程を歩むことについて、意識的に認識している。彼らにとって人生の意味は深まり、より優れた知識と体験を探究する。かくして、やがて彼らは瞑想に向かい、その実践を通して、より大きな発見が彼らのものとなる。一歩一歩、彼らは自分たちが「超魂」であることを確信し、それは何か遠く離れたアイディアではなく、まさに彼ら自身であることを知る。徐々に、彼らの人生のテンポ(速度)は変化し、より深い意味と目的が彼らの行うすべてを強化する。かようにして、人間は超魂の神性と知恵をますます反映させながら、完全への道程を前進する。

(『覚者は語る(Ⅱ)』─上昇の道─より)

 瞑想には、いろいろなやり方がありますが、一般的には、多かれ少なかれ魂との接触を持ち、徐々に魂と一体となるための科学的手段です。そして魂はこの物質界に明確に強力に自身を顕すことができるようになります。
 魂の特質を顕している人間に出会うとき、生命の意義と目的とが輝き出ているような人間であると感じます。例えば、ずば抜けて創造的な科学者とか芸術家とか政治家とか教育者とかのように。そのような人々は、明らかに普通一般の人々と全く異なるエネルギー、力によって支配されています。それは魂のエネルギーであり、それが彼らを通して流れ出るのであり、われわれの文化、文明を豊かにしてくれる創造的人間をつくり上げています。
 伝導瞑想は、魂との繋がりを持ち、そのエネルギーがわれわれを通して流れる最も簡単な手段であると思います。普通、瞑想を正しく行うためには、非常に強力な精神集中の力が必要であり、ほとんどの人にとってこれはかなり困難な仕事です。一般に人々が瞑想と呼んでいるのは、しばしば瞑想ではなく、単なる精神集中あるいは沈思にすぎません。瞑想には、精神集中も含めれば、五つの段階があり、第一段階から次の段階へと徐々に深められていきます──精神集中、瞑想、観照、照明、霊感。

(『伝導瞑想──21世紀のヨガ』)

 誰もあなたを導くことはできない。あなたは、自分自身について認識するように、自分自身の裡なる師を知るように、生まれついているのである。あなたの内的な空間は聖なるものである。そこで、すべての物事が、あらゆる問題が解消するのである。あなたが疲れて、脅えて、腹に据えかねたとき、あなたが自分の空間を見つけるために一人にしておいて欲しいとき、そこに行くのである。「あなたはその空間を与えられているのであり、そこであなたの周りの混乱や混沌を解消するのである。その空間をあなたの本当の真我以外に、誰にも譲り渡してはならない。瞑想とは実に、安らぎと幸せを見つけるためにその空間に戻る旅である」

(『いのちの法則』)

 ダーウィンおよび彼の考えに正しく従った者たちは、われわれはすべて意識の発達に従事しているということを大体において無視しており、人間の外的な肉体的発達のみを描写する。人間の肉体はほとんど完成の段階に到達しており、さらに成し遂げるべきものはほとんどない。しかしながら、意識という面からは、人間はその開花に向けてほとんど最初のステップすら踏み出していない。その開花は人間がまさに神性を内在させていること、すなわち魂が転生しているということを証明するだろう。いつの日か、魂の事実が科学によって証明され、一般的に受け入れられるようになるだろう。そして古い意見の対立は癒されるだろう。

(『覚者は語る(Ⅱ)』─進化論 対 創造説─より)

 瞑想の真の目的は、自分自身を己の魂とつながり、整列状態にもっていくことです。瞑想を通して肉体の頭脳と己の魂との間に橋をかけること、光の導管をつくることです。サンスクリット語で、これをアンタカラーナといいます。アンタカラーナを通して、魂のエネルギーがその媒体であるパーソナリティー(肉体人間)に注ぎ込まれます。瞑想は個人がだんだんに魂と融合していくことに関連しているのです。自己の魂のエネルギーがだんだんに染み込んでいくのです。それは魂の目的のエネルギーであり、愛の特質であり、知の側面のエネルギーです。

(『世界教師と覚者方の降臨』)

 すべての人間の裡に神が宿る。その神はあなたの真我である。わたしの任務は、その聖なる存在をあなたの裡に解き放ち、神の大計画を完了させることである。
 神よりも単純なるものは存在しない、なぜなら、すべてのものの背後にその聖なる原理があるのだから。人がこれに気づくとき、真に偉大となる。そしてその人から、創造的エネルギーが流れ出づる。わたしの計画は、その聖なる原理を顕す道を一歩一歩あなたがたに示し、あなたがたを本源へと導くことである。

(『いのちの水を運ぶ者』第54信より)

 人間は本質的に魂であり、神の完全なる反映である。言い知れない永い間、数え切れない多くの転生を通して、人間の魂はその聖なる特質を時間と空間の中で表現することを求める。魂は物質界における己自身の対応物をつくり、それ自体の完成に向けて進化していくために必要な手段を賦与した。このようにして、神の大計画は成就されていく。
 この発達への鍵は志向(アスピレーション)である。すべての人間に内在するものは完全無欠への願望であり、善きもの、美しいもの、真なるもの──すなわち魂の属性──を表現したいという衝動である。行動がいかにぐらついたものであろうとも、それがいかなる表現方法をとろうとも、より良いものへの欲求を持たないものは誰もいない。裡にこの願望を持たない者はいない。それでは、人間の逸脱を、暴力や憎悪をどのように解釈すればよいのか。
 その答えは、人間の独特の位置、すなわち霊と物質の出会いの場にあり、そしてそれが同時に存在することで発生する緊張にある。人間は永遠の魂であり、それが物質の中に飛び込んで、そのために物質が強いる限界に従属させられる。完全を求める人間の闘いは、これらの相対する二つの極にある特性を完全なる和合と解決に導くことを伴う。

(『覚者は語る(Ⅰ)』─ 一対の極─より)

 瞑想を通して魂との接触は深まり、強められ、徐々に魂によってパーソナリティーの融合がもたらされる。魂のエネルギーと属性──霊的意志と愛と知──が肉体人間を通してますます顕現し、その二つが完全に融合するまで続く。

(『マイトレーヤの使命 第Ⅰ巻』)

 変化のための手順を開始し、人間の裡なる神が輝き出づるように、人の生活を変換させる時がきた。これは、我が友よ、なにもむずかしいことではない、なぜならあなたがたの裡にそのような聖なる存在が宿るのであるから。わたしの任務は、その輝かしい光をあなたがたの裡に呼び起こし、本源へお連れすることである。

(『いのちの水を運ぶ者』第74信より)

 魂をますます多くその人の生活の中にもたらすために、二つの過程──瞑想と奉仕──が存在しています。瞑想と奉仕以上に、私たちが魂を呼び込むのに役立つものはありません。それらは与えられた道具であり、魂が浸透するようになるための道です。魂の浸透は非常に緩慢です。それは少しずつ発達します。転生する度に、人は魂へと近づきます。あまり多くのものが取り込まれないとき、非常に怠惰な生涯や後退的な生涯があるかもしれません。しかし、すべてがうまく行けば、魂はその人に光を分け与えます。……
 人が正しい方法で、利他的に、自我の感覚を持たないで瞑想し奉仕するにつれて、自動的に魂からの光を吸収していきます。人は瞑想の中で、その光を絶えず喚起しています。魂は自身の光を、発達しつつある人間に注ぎ、諸体は変化していきます。旅路の終わりまでに、その人は完全に亜原子的つまり光になります。

(『光の勢力は集合する』)

 すべての意識の拡大の前には緊張がある。人間が今通過している争いと困難のこの時期の後に、平安と落ち着きの時が続き、直観が徐々に開花するための舞台が整えられるだろう。それが起こるとき、人間は、すべての論争を通り越して、神のイメージに似せて創られた魂としての自己の特性を直接知るだろう。

(『覚者は語る(Ⅰ)』─理性と直観─より)

 わたしの教えは、もし必要とあれば、この世には人間がなし遂げ得ないものは何も存在しないことを示すであろう。人は神であり、その神性を顕し、栄えさせることのみ必要なのである。これが確かであることを、わたしの存在が保証する、なぜならわたしの兄弟である覚者たちとわたしとが共に、あなたがたの聖なる本性の驚嘆すべき不思議を見せてあげるのだから。このようにして、あなたがたは己の可能性に気づき、光の中に成長するであろう。

(『いのちの水を運ぶ者』第71信より)

 瞑想は魂との接触への王道であるが、いったんこれが達成されたら、真の志向者が弟子道へと進む道は奉仕の生活をも共に受け入れることである。内的焦点と外的焦点との均衡が保たれなければならない、そして最も低い弟子からキリスト御自身、そしてさらにその上位のすべての真なる神の子たちを招く無限の道、奉仕の道の上の歩みが始まるのである。その同じ奉仕への要求がロゴスをして顕現せしめ、われわれに生命を与える。

(『マイトレーヤの使命 第Ⅰ巻』)

 あなたがたに新しい生き方を見せてあげたい、人間に生来そなわる同胞愛に基づく生き方を、愛し、分かち合う能力と、人間の本質的な神性に基づく生き方を。聖なる人間になる過程は、単純で自然であり、すべての人間に開かれている。それは、あなたがたの裡にはじめから宿るあの神を解き放つ過程である。わたしは約束しよう──もしあなたがたがわたしに従いて新しい時代に前進するならば、あなたがたの裡に宿る聖なる本質を解き放ってあげよう。

(『いのちの水を運ぶ者』第28信より)

 世界は人間存在の真理に目覚めつつある──人間は神聖なる存在であり、魂としての本当のリアリティ(実相)の外的な表現である。あらゆる栄枯盛衰を通して、人間の魂はその人を守りそして道を示してきた。神経がすり減っているときも、高邁な仕事をしているときも、いやいやながら努力をしているときも、魂がそこにいなかったときは決してない。人間(肉体人間)と魂はひとつである。それが、人間に発見されることを待っている真理である。魂はこの啓示の目覚めを待っている。人間は人生における見習い修行の終わりにきている。これからは、その魂がより高位のそしてより明確な道を示す。

(『覚者は語る(Ⅰ)』─ ミッシング・リンク─より)

“傲慢さの衝突”

ジェフリー・サックス教授へのインタビュー

ジェフリー・サックス教授は、アメリカの経済学者、学術研究者、公共政策アナリストである。彼は、持続可能な開発、経済開発、貧困との闘いに関する研究で知られている。フェリシティ・エリオットは2022 年10月9日、 シェア・インターナショナル誌のために彼にインタビューを行った。

シェア・インターナショナル(以下SI): ウクライナ戦争について一般に流布されている情報は次のようなものです。一方は完全な悪であり、もう一方はすべて善であるというものです。常識と実際は違うかもしれません。これをどう見ますか。

ジェフリー・サックス:これは、ウクライナを中心とする二つの超大国間の戦争です。一方で、米国は軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)をロシアとの国境どころか、黒海全体にまで押し進めたいと考えています。ロシアは30年間、「軍事同盟を東方に移動させるのはやめなさい」と言い続けてきました。他方、ロシアは、1991年にソビエト連邦が解体し、ウクライナが独立国となった時に、進行中の国内紛争と国境紛争の渦中にあったのです。ウクライナ戦争は、二つの異なる側面を持っています。一つは、ウクライナにおける政治の内部分裂です。ウクライナ語を話す西部とロシア語を話す南東部です。1991年以来、そこにはずっと緊張が続いていました。しかしその後、私の見るところでは不運なことに、米国は2008年に、ウクライナが米国主導の軍事同盟の一部になると言って、この状況に最も挑発的な方法で首を突っ込んで来ました。それはヨーロッパの指導者たちには無謀で挑発的であると知られていましたが、米国は非常に強力であるために、米国の思いどおりとなり、ヨーロッパの指導者たちは陰では話すことを公の場では言わなくなっているのです。
 これは2014年にさらに悪化しました。親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領は、ある種の微妙な安定を保っていましたが、ウクライナは中立であるべきだと述べたのです。しかし、彼は放り出されてしまいました。西洋諸国の言い分は、彼は大衆の抗議行動によって打倒されたというものです。ロシア側の言い分は、彼は米国主導のクーデターで追い出されたというものです。

SI:これらの見解は正しいですか。

サックス:はい。米国は抗議運動の組織化に深く関与しており、2014年に資金提供を行ったため、これらの立場の両方に真実があります。
 米国は他人のビジネスに干渉し、挑発と被害をもたらします。そして、西側の主流メディアがそれについて語らないので、あなた方はそれについて聞くことはありません。そのため、多くの宣伝活動(プロパガンダ)が行われるが、米国政府は非常に強力であり、これが知られることを望んでいません。その結果、親ロシア派のウクライナ大統領が2014年に追放されたというわけです。この出来事は、内政・外交の両面でウクライナを完全に不安定な状況にさせました。なぜなら、新しい親米ウクライナ政府は北大西洋条約機構(NATO)への加盟を望んでいると発表したからです。

SI:米国はどのように対応しましたか。

サックス:米国は何十億ドルもの軍備を惜しみなく投入し始めました。そしてロシアの人々は「そんなことはやめて!」と言い続けました。ロシアがクリミアを奪還したのは、そこが彼らの海軍基地であり、ロシア語を話す人々がいる場所だからです。そして、米国は事態を徐々に深刻化させました。実際、私たちは2014年にすでに代理戦争に突入していました。そして、両陣営には分別のある人々がいないため、事態はさらに悪化しました。
 2021年、プーチン大統領は次のように述べました。「あなた方は私たちの隣国を武装している。これは非常に挑発的です。私たちはNATOの拡大を止める必要があります──これは私たちの安全保障にとって核となる脅威だからです」。米国の反応は、「あなたと話す必要はない」でありました。それが外交の終焉となったのです。そして今年2月、ロシアは侵攻を開始しました。

SI:この責任は双方にあると思いますか。

サックス:誰がこの紛争を引き起こしたのかを問うことができます。両陣営です。そして信じられないほど苛立たしいのは、私たちがこれを止めなければ、私たちを核戦争に導く傲慢さの衝突があることは明らかだということです。しかし、私たちは自分の傲慢さを見ることができません。その理由の一部は、西側メディアがほぼ完全に政府主導のプロパガンダを流しているからです。
 私はこれについてよく知っています。この地域に携わって32年間、私は直接関与してきました。ゴルバチョフ大統領とエリツィン大統領に助言をしました。私はウクライナのクチマ大統領にも助言しました。言い換えれば、私は両方の側で働いてきました。私は細部に至るまで状況をよく知っています。米国がいかに挑発的であったかを知っています。

SI:イライラする要素の一つは、主流メディアです。既得権団体は明らかにメディアの口封じをしました。たまたま、あなたがインタビューを受けているニュース番組を見た時、あなたはいきなり番組から外されましたね。あなたがその時に語ったことに対して反発の声が上がりました。民主主義はどこへ行ってしまったのでしょうか。

サックス:はい、私はこれらについて言及することを許されていません。バイデン大統領がまさに語ったように、ノルドストリーム・ガス・パイプラインを爆破したのは米国だと思うと私が言ったので、彼らは私をプログラムからすぐに追い出しました。バイデン大統領は、そのことを2月に話していたのです。すべての証拠を合わせると、米国である可能性が最も高いのです。ついでながら、もしジャーナリストに個人的に聞いてみるなら、そう答えます。これらの同じ新聞の記者たちが、あなた方にそれを内密に話します。でも西側のメディアでそれを言うなら……まあ、言わないかもしれませんが、意見や見解を述べたり、レポーターに米国政府に対して質問してもらったりすることはできません──これはレポーターがなすべき義務なのですが。

SI:はい、残念ながら主流メディアは大衆を失望させました。数分前にあなたが言ったことに戻りたいと思います。あなたは現在、分別のあるリーダーが不足していることを嘆いていました。そして、そのことが非常に分別のあるアメリカの指導者、J・F・ケネディ大統領を思い出させました。私は彼のスピーチを読んでいます。この素晴らしいスピーチは、この時代とこの特定の危機に非常に関連しています。彼の平和へのアプローチは素晴らしいです。そして彼の常識は今とても必要とされています。あなたがこの演説を賞賛していることは知っていますが、言い換えれば、核保有国や敵対者に対して屈辱を与えるか、核兵器に訴えるかのどちらかを選ばなければならない立場に追いやることは絶対に避けるべきだと彼は言っています。そして、私の考えでは、まさにそれが今日の私たちの置かれた状況です。

サックス:そのとおりです。それは狂気の沙汰です。それでは、この事実の前後関係を紹介させてください。私はこのスピーチがとても好きだったので、これについて本を書きました。人々はオンラインで、1963年6月10日のアメリカン大学卒業式でのJ・F・ケネディ大統領の演説を見つけることができます。事実の前後関係は次のとおりです。米国とソビエト連邦は、異なる時代(1962年10月)に、同様な緊張をもたらしました、キューバのミサイル危機に遭遇したのです。それは奇妙に聞こえるかもしれません。なぜなら、西側の人々の耳には異なった情報が流布され、とにかく一方的だったからです。「ソビエト連邦がキューバにミサイルを設置していただけ」であったのです。 
 実際の物語は、キューバがソビエト連邦との同盟を望んでいたため、米国がその前年にキューバを侵略したということです。米国のキューバ侵攻は失敗に終わりました。ソ連の最高指導者フルシチョフ首相は米国に教訓を与えることにしたのです。当時、アメリカはソ連を狙った核ミサイルをトルコに配備していたので、キューバにミサイルを配備することにしました。当時の外務大臣アンドレイ・グロムイコ氏はぞっとし、これは戦争を意味するのか、とこの政策に疑問を呈しました。フルシチョフ首相の反応は、これが戦争ではないことは確かだ、というものでした。単にアメリカ人に同じ手口で仕返しをすることを意図した動きであったのです。私がこれに言及する理由は、リーダーは、賢明であろうとなかろうと、災難に遭遇するためです。こうした人々を信頼することはできません。当時、J・F・ケネディという素晴らしいリーダーがいました。しかし、彼でさえ、核による絶滅にすんでのところで遭遇したのです。

SI:サックス教授は、ソビエトのミサイルがキューバで発見された時、ケネディ大統領に攻撃を促したすべてのトップ・アドバイザーたちを、ケネディ氏はどのように結集させたかを説明した。当時の米国国連大使であるアドバイザーのアドレー・スティーブンソン氏は、危機の初日にケネディに偶然会い、ケネディに攻撃しないように忠告した。彼は外交の必要性を強く主張した。翌日、ケネディはフルシチョフを理解し解決策を検討することに時間を費やした。タカ派のアドバイザーたちからの圧力が高まっていたが、ケネディは彼らを抑えてフルシチョフ氏と話すことにしたのである。両者は、どちらも戦争を望んでいないことに気づいた。彼らは譲歩するために妥協と外交という方法を見いだした。ケネディは妥協した。トルコからミサイルを撤去し、キューバを侵略しないことに同意した。ソ連がミサイルを撤去することを想定し、双方が約束通りに行動したのである。

サックス:どちらの指導者も、継続するのは正気ではないと認識していました。部分的核実験禁止条約として知られるようになったものに署名することを決定しました。そして、あなたが適切に言い換えた素晴らしい引用文を、その雄弁さと重要性のゆえに、今読ませていただけるなら、次に紹介します。
 「何よりも、核保有国は、われわれ自身の重要な利益を守りながら、屈辱的な撤退か核戦争かの選択を敵に迫る対立を回避しなければなりません。核の時代にその種の方針を採用することは、私たちの政策の破綻の証拠、または、世界に対する集団的な死の願望の証拠にすぎません」
 しかし、現在、私たちの愚かな指導者たちは──失礼、このような表現は使いたくないのですが──私たちを核戦争へと駆り立てています。なぜゼレンスキー大統領は、核兵器を保有している隣国をあざけっているのでしょうか。核兵器の多くは世界中の都市を狙っているというのに。からかわないでください──抜け道を見つけてください。
 最後に、バイデン大統領は、キューバのミサイル危機以来、ハルマゲドンに最も近づいていると述べました。多くの人が彼を攻撃したり、なぜ彼がそのようなことを言っているのかと尋ねたりしました。彼がそれを言った理由は明らかです──それが本当だからです!
 「私たちの側」では、人々は歴史を知らないようで、完全な悪に対する善の観点から考えています。バイデン政権が北大西洋条約機構(NATO)拡大について正直に、かつ、まともに交渉できなかったことを知りません。NATOは、ウクライナとグルジアに拡大する権利を持っていません。それは挑発でしかありません。嘘に基づいています。アメリカはゴルバチョフ氏に「ワルシャワ条約機構を破棄するなら攻撃しない」と約束したのです。その後、米国は「考えを変えた」と述べています。それは嘘と呼ばれ、現代における最も重要な問題の一つとなっています。

SI:あなたの見通しは、かなり暗いようです。交渉の余地はありますか。

サックス:いわゆる「思想的指導者」や政治指導者が、私たちの命が無謀で無意味な方法で危機に瀕していることを理解していないように見えるため、私たちは本当にひどい混乱に陥っていると思います。バイデン氏とプーチン氏は(交渉の準備のために)座っているべきです。あなたの質問への答えはイエスです、双方の間で交渉することができます。しかし、それに反対する声もあり、「われわれは勝たなければならない」と言います。核兵器を持っている敵に対して勝つ、というのです。

SI:それでは、交渉の条件は何でしょうか。NATOの侵略を核心的な要因にしなければならないと思いますか。あなたもホワイトハウスに電話して、ロシアとの交渉を開始するよう懇願したと思います。言い換えれば、この段階でさえ、あなたは交渉を信じていますね。

サックス:「この段階でさえ」だけでなく、とりわけ今です。もちろん、核戦争に行く前には交渉するでしょうが、「私たち」はエスカレートし続けるでしょう。ですから、そうです、交渉なのです。

SI:サックス教授は次のように続けた。ロシア人が実際に交渉を歓迎するだろうという事実を反映して、多くのロシアのブログ (および「私たち」の側のブログ)で外交的解決を求める意見を何カ月間も目にしている、と。プーチン大統領は交渉を呼びかけたが、サックス教授が言うには、「私たち」は交渉すべき相手がいないと主張している。これはサックス教授の体験と真っ向から矛盾している。

SI:振り返ってみると、3月に非常に奇妙なことが起こりました。ある種の交渉を仲介しようとする試みがありました。調停役のトルコとの会談がありました。かなり早い段階で、交渉にはいくらかの希望があったようです。突然、不思議なことに、それは中止になったのです。何が起きたのでしょうか。

サックス:分かりません。私たちの政府はこれらのことについて真実を語っていないので、正しく解釈することはできません。私たちが知っていることは、3月に三者すべてが、目前に突破口があると述べたことです。書類の交換もありました。当時、私は高官に話を聞きました。ウクライナは、保証に裏打ちされた中立の考えを提唱し、ロシア側にそれを伝え、ロシア側は肯定的な反応を示しました。プーチン大統領はそれに基づいて、「交渉文書、合意草案を提出しましょう」と言いました。その文書はウクライナに渡されましたが、ウクライナは突然、そこから身を引きました。その理由は分かりません。私は、米国と英国がウクライナの中立の申し出を拒否したことを示唆する状況証拠を持っています。両国は中立の申し出にノーと言い、ゼレンスキー大統領とウクライナ指導部に、さらに多くの武器輸送により支援すると述べ、この戦争に勝利するために前進するよう促しました。それは私自身の見解です。この進展への支持を表明するどころか、米国は交渉が可能な瞬間に強硬路線を取ったのです。最近、ゼレンスキー大統領はプーチン大統領と交渉しないと述べました。ウクライナは平和を要求するべきですが、毎日のようにウクライナはロシアに屈辱を与えることを目指し、完全な軍事的勝利を要求しています。これが私たちの同盟国でしょうか。挑発を続けるよりも、私は交渉して地球を救いたいです。 

SI:現在の緊張状態と関係当事者たちの立場を考えると、交渉できるのは誰でしょうか。トルコにはまだ可能性がありますか。また、中国はどのような役割を果たすことができますか。

サックス:はい、トルコは依然として有効な仲介者であり、他の国々もそうです。中国は良い仲介者になる可能性があります。中国はこの戦争を望んでいませんが、ロシアの正当な安全保障上の利益が危機に瀕していると考えています。実際にそのとおりです。インドもまた、インドネシアと同様に建設的である可能性があります。しかし、今なすべきことは、バイデン大統領が電話を取り上げてプーチン大統領と話すことです。これは私たち全員にとって非常に破壊的であり、この混乱から抜け出す方法を見つける必要があるからです。それがアメリカ大統領の仕事です。

SI:ホワイトハウスがサックス教授の電話にどのように対応したかを尋ねたところ、サックス教授は、2021年末にホワイトハウスと話をしたと述べた。これに対する彼らの反応は、以前からずっと話し合うという考えは拒否しており、NATOに参加するのはウクライナの選択であるが、ウクライナは交渉の検討を拒絶した、というものであった。サックス教授は、これは馬鹿げた考えだと思っている。それはウクライナの選択の問題ではないからである。ロシアとの国境が1,000キロを超える国に軍事同盟を押し付けないというアメリカの抜け目のなさに関することである。西側はそれがどれほど危険かを知っている。サックス教授は、ホワイトハウスに通信を送り続け、平和のために働くよう行政に要請していることを示唆した。幸いなことに、バイデン大統領は状況がいかに不安定であるかを認め、問題視している。それはサックス教授にとっては朗報である。バイデン大統領はまた、プーチン大統領の「出口」とは何かを尋ねている。

サックス:プーチン大統領の「出口」または条件は、30年前から知られていました。 つまり、NATO のウクライナへの拡大を止めることです。もちろん、クリミアなど、他の問題もありますが。

SI:平和コミュニティーには役割があると思いますか。何が起こる必要がありますか。

サックス:平和コミュニティーは各国政府と話し、交渉のために声を上げるよう要求する必要があります。「この惑星を破壊しないでください!」と主張するだけでよいのです。平和コミュニティーは、国連総会に次のように言うことができます。「交渉のための全会一致の決議に投票してください。誰が交渉に反対しているか見てみましょう。投票しましょう。実際に見てみましょう。何ですって。米国が決議案に反対票を投じようとしているのですか。本当ですか。確かめてみましょう」。このようなことが今起こるべきことです。
 全世界がこれに関係しています。私たちは皆、この状況に利害関係があります。2人、3人、または10人の男性に──通常は男性ですが──地球の結末を決定させることはできません。あらゆる人が声を上げる必要があります。私たちは次のように言う必要があります。「ドンバス、クリミア、NATO拡大についての議論で世界を終わらせるつもりはありません。私たちは地球を爆破しない方法を見つけるつもりです」と。それは私にはかなり基本的なことのように思えます。平和コミュニティーは大きな役割を果たすことができます。街路に出て、政府指導者たちと連絡を取り、正気を取り戻し、完全に手に負えなくなる前にこの狂気を止めるよう促すべきです。

SI:私の理解では、すでに手に負えなくなっています。つまり、ここには時間的要素があるに違いありません。

サックス: 交渉に行く時間はありません。二つの超大国が一時後退して話し合う必要があります。バイデン大統領とプーチン大統領は、お互いに話し合う必要があります。ツイートや仲介者を通してではなく、向き合って話し合い、仕事を始める必要があります。彼らの仕事は世界を救うことです。

SI:ちょっと話はそれますが、私はこれが恐ろしい混乱であると考えずにはいられません。世界は気候危機、大規模な生態学的劣化が起こっていることを忘れています。私たちは飢饉、飢餓、貧困、干ばつなどを忘れています。

サックス:これらの問題を解決するには、グローバルな協力が必要です。これがベースライン(基本線)です。戦争中にこれらの問題を解決することはできません。そして、対立の最前線は一つだけではありません。ここ数日間にすべての混乱に加えて、米国は中国へのハイテク、マイクロ回路の輸出を遮断しています。中国経済を壊そうとする意図的な試みです。私たちはもう一つの戦線を開いています。アメリカ合衆国下院議長ナンシー・ペロシ氏を台湾に行かせました。それは信じられないほど挑発的でした。

SI:アメリカ合衆国とこの政権を正気に戻すものは何ですか。

サックス:バイデン大統領は危険に気づき始めています。今は、平和コミュニティーと真実を知っている世界中の150カ国 のすべての指導者たちが声を上げ、交渉による平和を要求する必要のある時です。ウクライナの中立性は国連や他の国々によって保証される必要があり、私たち全員が狂気を終わらせるよう呼びかける必要があります。

編集長への手紙

シェア・インターナショナル誌には、未掲載手紙の保留分が多数あり、それらはベンジャミン・クレームと彼の師によって、覚者方あるいは「代弁者」との本物の出会いであると確認されたものである。その他の掲載された手紙は新しいものであり、覚者が関わっているかどうかを確認すること、もしくは示唆することもできないが、読者の考慮のために、これらの手紙は提供されている。

遊び旅の仲間

次の2通は同じ人物からのものです。

いたずら好きな旅の仲間

(1)2004年2月、メイク・ア・ウィッシュ財団から資金提供を受け、家族と一緒にハワイに向かう飛行機に乗っていました。その財団は生死に関わる病気の子供たちの願いを叶える機会を提供しています。私たちの11歳の息子セバスチャンは再生不良性貧血を患っていて、ハワイを見ることが彼の願いでした。
 私は年配の夫婦の隣の席で、子供たちと夫は後ろの列の席になりました。8歳の娘は私と一緒に座りたかったので機嫌が良くありませんでした。すると私の隣の女性が娘と席を替わってくれたのです。そういうわけで、その後、私たち一家とそのご夫婦との会話が始まりました。
 女性の方は大変に社交的で、自分の人生の体験について率直に語ってくれました。そうした話には不思議なほど、私自身の人生と似通っていると思われるものがありました。彼女は夫の隣に座っていたので、夫が読んでいたサイエンス・フィクション(SF)の本を文字通りひったくって、その本について尋ねていました。彼女はSFについて聞いたことがなかったと言い、夫がそうした本を読む価値は、新しい社会のあり方や未来へのアイディアを思い描けることだと説明しました。彼女から、夫はきっとこのような本を書くことができると言われました。それから彼女は、ふざけた様子で息子の頭から野球帽を取り上げて、それを通りすがりのスチュワーデスに手渡すと、パイロットにその帽子にサインさせてほしいと伝えました。彼女は息子に大変関心を持ってくれて、息子の生活についてたくさんの質問をしてきました。彼女はとても楽しげな表情で、遊び心のあるきらめいた瞳をしていました。
 空の旅の終わりに、私たちは飛行機から降りるのを待ちながら、座席の場所に立っていました。息子がその女性の年恰好にしては、とても若く見えると伝えました。彼女は少し誇らしげに、毎日いかに念入りに手入れをしているかについて話していました。それから彼女が着ていたスマートなスポーツ用のジャージの上着のファスナーを開くと、とても大ぶりな銀のペンダントが首の回りに見えました。それは太めの長い銀のチェーンから提がっていました。皆の目がそれに引き付けられました。彼女はそれが何を表現していると思うか尋ねてきました。私はそれをじっくり眺めていて、宗教的なシンボルが付いているようだと気づいたのです。サンスクリット語のOMの記号、キリスト教の十字架、イスラム教の三日月形の鎌と星、そして仏教の法輪について話しながら、私はシンボルのことを指摘しました。彼女は何年も前にメキシコでそれを買ったこと、そしてお気に入りのアクセサリーであることを説明してくれました。それから私たちは飛行機から降りて、自分たちの目的地へと向かいました。
 この女性はもしかして変装したマイトレーヤだったのでしょうか。

【ベンジャミン・クレームの師は、その『女性』がマイトレーヤであったことを確認した】

ボロは着ていても

 (2)1996年のある夏の日、ニューヨーク州オルバニーの自宅の玄関に一人の若い男性がやって来ました。地元の草の根環境活動グループのための寄付を求めて、近所で依頼をして回っていた人でした。彼と気持ちよく長い会話を交わし、悟りを開いた特別な存在が世界におられることを、何とか彼に伝えられるように話をもっていきました。社会や環境問題の重荷を負う人類を、その存在が助けることができるという話をしました。私がこのことを口にした時、何だか合図のように思えるくらいのタイミングで、豊かなあごひげをたくわえた、明るい茶色の長髪の・痰「男性が、歩道を通って私の家を通り過ぎていったのです。茶色の背広を着ていましたが、少しだらしなく見えていて、裸足でした。彼は何も持っていませんでした。私たちはびっくりして、彼が通り過ぎるのを見つめていました。私の住む界隈は、ホームレスの人々が訪れることはあっても、まれなことなのです。貧相な外見にもかかわらず、彼は本当のホームレスのようには見えませんでした。彼は通り過ぎる時に、振り向いて私たちを見ました。彼は覚者でしたか。

エリッサ・グラーフ
ドイツ、シュタイアーベルク

【ベンジャミン・クレームの師は、その『通りすがりの若い男性』がマイトレーヤであったことを確認した】

アラーム音から静寂へ

 2006年10月30日の遅くに、私が滞在していたテキサス州ブエナビスタ近くの食料品店に立ち寄りました。ほんの数分後に駐車場の車に戻ってみると、私の車のアラーム音がけたたましく鳴り響いていたのです。アラームは切っていたので、「不思議なことだ」と思いました。さらに言うと、エンジンは止まっていました。
 私は腰を下ろし、このこと全部に途方に暮れていると、二人の男性が私を手助けするために別々の方向からやって来ました。最初の人は小柄で清潔な服装の男性で、歩くというより足を引きずっていました。彼はアラームを止めようとしていましたが、うまくいきませんでした。いったんは止まるのですが、またすぐに鳴り始めるのです。二番目のとても大柄な男性が近づいてきて、二人で頭をボンネットの下に寄せていると、すぐにすべてが正常に戻りました。ああホッとしたと思ったのは、私の財布も銀行口座もほとんど空だったからなのです! 言うまでもなく、彼らに十分なお礼はできませんでした。
 辺りが暗くなっていたので私は心配になり、4キロメートルほど先の滞在場所まで戻ることができるだろうかと疑問を口にしました。大柄な男性がその方角へ向かうので私の背後から運転してくれると言って、そのとおりに車庫の真ん前まで送ってくれました。私の不安はだんだんと落ち着いていき、その平穏さは数日留まっていました。そのことを思う度に私の精神は高揚するのです。その後、私の車は完璧に作動していました。
 二人はただ優しく親切な男性たちだったのか、それとも彼らは、私が多くの導きをいただくイエスとマイトレーヤだったのでしょうか。

ワンダ・ジョーンズ
米国、テキサス州ヒューストン

【ベンジャミン・クレームの師は、大柄な男性がイエス覚者で、小柄な男性がマイトレーヤであったことを確認した】

読者質問欄

世界中のあらゆる講演において、そして生涯のほぼ毎日、ベンジャミン・クレームは広大な範囲に及ぶ大量の質問を受けました。この大量の記録から、過去の年月にベンジャミン・クレームと彼の師である覚者によって提供された回答を掲載したいと思います。そのいずれもこれまでシェア・インターナショナル誌に未掲載のものです。

1989年11月27日、「インパクト」での質疑応答

Q この国(米国)は大きな薬物の問題を抱えています。犯罪も問題であり、多くの暴力があります。非常に暴力的な社会です。これらすべては何から来るのでしょうか。これは一体何なのでしょうか。(1989年11月27日、「インパクト」でのインタビューより)

A マイトレーヤは、アメリカにいくつかの大きな問題があると言われます。三つの大きな問題は、腐敗、混乱、薬物です。これらは大きな問題ですが、大統領や政府はいずれにも取り組んでいません。取り組むべき多くのことがあります。
 社会的混乱と腐敗は、アメリカのトップから下まであらゆる分野(政治、経済、社会、宗教)に浸透しています。すべてが民営化され、根元まで腐りきっています。腐敗した国は多くありますが、この国は特に腐敗しています。それは混乱した伝統につながり、トップの犯罪的な行動を可能にし、助長しています。「より巧みな詐欺師」が利益を得て、地位と富を維持しています。既得権益があり、それが混乱を助長しています。紛争の双方に武器を提供し、混沌とした状況を生み出しています。
 既に述べたように、もう一つの深刻な問題は薬物問題です──社会に広がる薬物使用です。これは大きな脅威です。私の師によると、覚者方がご覧になると、このドラッグ(麻薬)の脅威は、もちろん全世界的なものですが、今や最高潮に達しつつあります。いったん最高潮に達すれば、あとは下降するしかありません。つまり問題は減少する希望があるということです。それは最高地点に達するでしょうが、まだそれは来ていません。
 覚者方によって紹介される光のテクノロジーが、薬物の脅威に対処するのに利用できるでしょう。覚者方が理解するところでは、光は波動であり、色と音です。この新しい技術を用いることで巨大な物体を世界の一つの場所から別の場所に動かすことができます。医学的な見地からは、病気の器官を再構築するために利用できます。遺伝子工学と組み合わせれば、医学は超越したレベルへともたらされ、肉体は急速に再生するので外科手術は過去のものになるでしょう。人々は長生きするようになり、健康な体で再活性化するでしょう。

【編註:「色と音と振動を利用するこのテクノロジーが21世紀の科学である」──マイトレーヤの教え、『いのちの法則』】

 これらの解決策とテクノロジーは、人類がある基本的な原則──私たちが一つであるという主な原則──を受け入れるやいなや利用可能になるでしょう。私たちは人類の兄弟姉妹です。肌の色が違っても、背景や政治制度が違っても、私たちは一つの人類の兄弟姉妹であり、神々のような存在です。それが受け入れなければならない最初の原則です。
 論理的にそれに続いて、世界の資源が世界中で平等に配分されなければならないことを受け入れる必要があります。今日(1989年)、世界人口の3分の1を占める先進国が世界資源、エネルギー、科学、テクノロジー、教育などの4分の3を乱用し浪費しており、途上国は残りのものでやっていかねばなりません。昨年、440億ドル以上が途上国から先進国に移動しました。先進国から渡った金額の2倍以上です。それは暴利であり先進国と途上国の格差はますます広がっています。今日何百万もの人々が飢え、文字通り餓死しています。それが、何にも増して、キリストを世界にもたらしたのです。彼は言われます。「この罪悪はわたしを悲しませる。この分離という辱めは、世界から追放されねばならない」と。

【編註:2022年の今日、過去6年以上の間に世界最悪の気候危険地点10カ所で極度の飢餓が2倍以上に増えた。世界最悪の気候危険地点である10カ所、つまりアフガニスタン、ブルキナファソ、ジブチ、グアテマラ、ハイチ、ケニア、マダガスカル、ニジェール、ソマリア、ジンバブエで、気候変動は飢餓を深めている。これらの国々──極端な気候現象により国連への要請が最も多い国々──は、過去20年間に極端な気象によって繰り返し打ちのめされてきた。今日、これらの国々の4,800万人がひどい飢餓に苦しみ(2016年には2,100万人だった)、そのうち1,800万人が餓死の一歩手前にある。(オックスファムの報告書『温暖化する世界における飢餓』、2022年9月5日)】

Q 私は不思議に思います。あなたはマイトレーヤの仕事の優先順位について話されますが、社会には多くの犯罪やドラッグ(麻薬)があります。なぜでしょうか。

A 犯罪とドラッグの問題は人々が、自分が誰であるかをよく知らず、それを表現できないことの結果です。誰もが魂であり、物質界に転生した神の聖なる反映です。しかし、教育の貧しさや条件付け、自分に不利に働く社会状況のために、日常においてその神性を反映することができず、自分自身と闘い、自分自身の延長にあるものとして、自分がその一部である社会と争います。社会が分断されればされるほど、豊かな社会と貧しい社会が分断されるほど、豊かな国家と貧しい国家が分断され、国家の中でも貧富の差があればあるほど、より多くの分離が起こります。それが必然的に、より断片化した社会、より多くの犯罪、より多くの薬物使用につながります。
 人々は人生から逃避し、人生の緊張を和らげるためにドラックを使用します。それには無益感、自分は偉大な何かだがそれを表現できないという感覚が伴います。人々は不満を募らせ、敵対的になり、「何の役に立つのか。死んだ方がましだ」と考えます。ドラッグを使用する人々の多くにとって、それはゆっくりとした自殺です。彼らは自分が死ぬだろうことを知っており、それを望んでいます。自尊心をすべて失ってしまったからです。社会から疎外されたと感じ、絶望した人々は犯罪やドラッグのような反社会的行為に走ります。
 最初にすべきことは自己尊重を養うことです。それなしには、進歩はありません。自己尊重は次第に自己認識へとつながり、自己認識から真我実現(魂の実現)に至ります。それが全人類の目標です。それを実践しなければなりません。実際にそれをしなければなりません。実践することです。心(マインド)の正直さ、生気(スピリット)の誠実さ、無執着を実践すれば、自己を知るようになるでしょう。神を知るようになるでしょう。それほど単純なことなのです。

2022年10月号目次

 

覚者より 神の代理者
ベンジャミン・クレーム筆記

今月号の内容概説

視点
気候非常事態が地球を襲う今、新たな「ウォール街の責任を 追及する」キャンペーンが開始された
ジュリア・コンリー

民衆の力が生活を変革する
ドミニク・アブデルヌール

『限界とその先』ウーゴ・バルディ、カルロス・アルバレス・ペレイラ編
シェア・ギルモアによる書評

『モリヤの庭の木の葉』

統一のマントラム

マイトレーヤの教え
ベンジャミン・クレーム

時代の徴
心強い徴

世界情勢
「国境なき外交団」:問題だらけの世界を修復する新たな奉仕活動

編集長への手紙
ビブーティの奇跡 他

新しい時代の教育

意識
アート・ユリアーンス

ウクライナ戦争が激化する中、和平交渉は不可欠である
メデア・ベンジャミン、ニコラス・J・S・デイビス

ゴルバチョフ――「英雄、偉大なる人間」

読者質問欄
回答 ベンジャミン・クレーム

神の代理者

──覚者より
  ベンジャミン・クレーム筆記

 人間は、前進への道に迷ったとき、問題解決の道を見いだせずに希望を失ったときはいつでも、救いを求める本能的な叫びを、苦悩の中で神に助けを求める訴えを発する。このようにして、20世紀の始めの(世界)大戦中に人類がくぐり抜けてきた労苦がキリストを呼び、彼を再び世界の中に呼び招いたのである。過去のあらゆる変遷を通じて、今ほど多くのことがキリストの到来にかかっていることはなかった。なぜなら、人間がこれほどの破壊力を支配したことはかつてなかったから。
 今日、国家は限りなく分裂している。それぞれが世界の智恵の貯蔵庫であることを主張し、人間に自由と正義のどちらかの選択を提供する。人間がそのような選択を迫られるとは何とばかげたことであろうか。自由と正義は(どちらも)聖なるものであり、神性なるものは不可分である。正義なしに自由はあり得ず、自由を奪われた正義は存在しない。間もなく人間は、真理のこのひどいこじつけを永遠に終わらせ、国家間の不和を癒す機会を与えられるだろう。人間はすべて聖なる存在であり、神の贈り物と計画を分かち合う平等の権利を持つことを認識することのみが必要である。そのような認識なしには、人間は平和を知ることはないだろう。
 人類がキリストを見るとき、自分たちが孤立した存在ではないことを、神の代表者が人類の呼びかけに応えて援助するために戻られたことを知るだろう。キリストは、人間がその本源を神の中に有することを、そして彼らすべてが兄弟であり同族関係であることを思い出させるだろう。キリストは人類の前に、未来の選択を示し、勧告する資格を有する彼の権利を行使するだろう。すべてのためにより良き人生へ向かうステップの輪郭を描かれるだろう。それは人間の霊的本性により適った生活である。キリストは、教え、導き、かくして人間の行動を通して、世界を変えるだろう。
 はじめは、人間が変化の恩恵に慣れるまでは進歩は遅いかもしれないが、やがてその速度は早まり、すべての者が沸き返るような変動の中に誘い込まれる。その過程を止めることのできるものは何もない。なぜなら、それは神の御心の中に源を発しているのだから。神の大計画の磁力に長い間抵抗し得るものは何もない。
 大計画が成就されるのを妨げる最大の要因は、疑いもなく人間の恐怖心である。人間は自分たちの周りに敵意ある世界を見、あらゆる側において貧窮と欠乏に脅かされている。
 核の脅威は、すべての者の上に重くのしかかっている。マイトレーヤは、人間は彼ら自身の恐れ以外に恐れるものは何もないことを勧告されるだろう。人間が自分たち自身にとっての最大の利益のために行動しさえすれば、祝福された未来が待つことを、そして神の意図こそが人間の持つ最良のものであることを示されるだろう。人間は、自分たちの欲する世界を創造するために行動しなければならないことを示され、彼は救うためではなく、道を示すために来ることを、示されるだろう。マイトレーヤは、奉仕の重荷と歓びを自ら担う者すべてに力を与えるだろう。彼の重荷を分かつ者すべてに油をそそいで聖別されるだろう。
 古いあり方を保持する者は危険を感じるが、負け戦を戦い続ける。彼らは城の壁を強めようとして空しい努力をする。正義の潮の流れが変わるにつれて、彼らの塁壁は弱まる。人間が自由に向かって突き進むにつれて、彼らの擁護者は彼らを裏切る。この混乱の中にマイトレーヤはやって来られた、ご自身の聖なる資質を人間のために喜んで供するために。

(シェア・インターナショナル誌1987年7月号)

今月号の内容概説

 私たちのシステムのほとんどが壊れているため、社会を組織する新しい方法を早急に創出する必要があることを、私たちは皆知っている。今月号の記事は、構造内の亀裂を浮き彫りにし、前方への新しい道を指摘しているが、現代の経済や政治、産業、教育、生態系に関わる規範の誤りと内在する弱点を特定することから始めている。シェア・ギルモア氏による『限界とその先』の書評は、過去には耳を傾けられなかったが今は理解されなければならない警告を、実に良いタイミングで思い出させてくれる。視点の記事「ウォール街の責任を追及する」はまさしくそうした警告を発しており、巨額の利益と資本主義体制の極端な例を非難している。
 今月号はまた、混沌とした時代に対する人類の生来の霊的・心理的な反応──高位の力に対する私たちの本能的な訴えかけ──を明らかにしている。しかし、私たちの行動は依然として恐怖と不安によって駆り立てられている。ベンジャミン・クレームの師は次のように述べている。「大計画が成就されるのを妨げる最大の要因は、疑いもなく人間の恐怖心である。人間は自分たちの周りに敵意ある世界を見、あらゆる側において貧窮と欠乏に脅かされている。核の脅威は、すべての者の上に重くのしかかっている」。クレームの師はさらに続けて次のように述べ、私たちを安心させている。「マイトレーヤは、人間は彼ら自身の恐れ以外に恐れるものは何もないことを勧告されるだろう」。必要な変化を成し遂げる方法は極めて単純である──自分たちが望むような世界、共通の利益に奉仕するような世界を創造しなければならない。
 マイトレーヤ御自身が『モリヤの庭の木の葉 Ⅰ』(アグニ・ヨガ協会刊)で伝えられた言葉の一部が転載されている。マイトレーヤはその中で、御自身の臨在について読者に安心感を与える一方、新しい世界を建設するための行動へと人類を促している。「この重苦しい日々には、君は労役により、無罪放免されるだろう。そして行動により、君は高められるだろう」。自分の環境のせいにして自暴自棄になることも容易であったはずだが、そうはならずに自分自身と近所の人々がより良い生活を築くために働くよう3人の若者たちを動機づけたのは、彼ら自身の労役と社会正義の追求であった。この過程は「民衆の力が生活を変革する」という記事で描写されている。
 万人への奉仕のために自分の人生を捧げ、マイトレーヤのアイディアに対して敏感であり、世界規模の途方もない変化の火付け役となったのは、ミハイル・ゴルバチョフ氏であった。その生涯を追悼するために、1990年代にベンジャミン・クレームによって伝えられた情報が掲載されている。次の言葉はゴルバチョフ氏の幅広い包括的なアプローチをよく示している。「平和とは、類似性の中の和合ではなく、多様性の中の和合に、様々な違いを認めて和解することにあります」
 意識の特性についての(アート・ユリアーンス氏の)短い論文、教育に関するミニ選集、国連世界人権宣言第26条、和平交渉の必要性の強調は、もしこの惑星が繁栄し危機を乗り越えようとするなら学ばなければならない他の教訓を明らかにしている。「徴」と「手紙」のページは、私たち──人々と惑星──は独りではなく、マイトレーヤや覚者方、スペース・ブラザーズ(宇宙の兄弟たち)からの助力を当てにすることができるということを多くの読者に確信させる。

マイトレーヤの教え

ベンジャミン・クレーム

 キリスト・マイトレーヤの教えの概要をジュワル・クール覚者がわれわれのために記述してくださった。その教えは、われわれすべてが生まれながらにして知っており、真理であると認めているものであることに気づくだろう。正しい関係はわれわれの生活の基礎であり、そのような正しい関係をつくるために、われわれは何度も何度も生まれ変わってくる。マイトレーヤはその必要を繰り返し語り、実行に移す方法を再び示されるだろう。
 正しい人間関係の創造への最初のステップは、われわれの政治、経済、社会の構造の変革である。人間は今日、霊的精神的危機を通っており、それがこれらの分野に集中して顕れている。そして、経済問題の中核に分配、再分配の問題がある。正しい人間関係は人間が次に達成すべきことであり、神によって定められたものである。われわれが贅沢と浪費の中で生活しているのに、他方、第三世界の何百万もの兄弟姉妹たちは飢え死にしている。そのような状態の中で、われわれは彼らと正しい関係にあるとは言えない。
 解決法は明らかである。この豊かな世界の資源を分かち合うことが正しい関係への欠くべからざる最初のステップである。マイトレーヤはこのことを明らかにされ、この目標に向かって人類が行動することを鼓舞されるであろう。分かち合いと正義を、真の平和への(したがって人類の存続と世界の救済のための)唯一の道として、呼びかけられる。それは、本質的には、正しい人間関係の確立と今日の世界にある明らかに悪い関係を廃棄することへの呼びかけである。個人的、国家的、国際的競争と貪欲、かつてないほど強烈な世界的な憎悪と暴力、分離主義と排他性、自分自身の理想に対する狂信的執着、われわれを自己破壊の淵までもたらしたすべての痛恨と不信を廃棄することである。

裂開の刀

 マイトレーヤの愛のエネルギー ──「裂開の刀」──の効力が現在の世界にある極化をつくり出したのであり、それは人類に前進への道をはっきりと示すであろう。包括性と愛、正義と人間の精神の自由のために闘う者はすべて、彼の周りに集うであろう。分離主義と搾取、競争と貪欲に味方する者は、同じく明らかになるだろう。そして人類の前にある選択は非常に明瞭になるだろう──愛と憎しみ、分かち合いと貪欲、平和と戦争、生と死との間の選択である。マイトレーヤは(メッセージ第11信の中で)言われた。「わたしの心はあなた方の答えを、選択を知っている。そして喜んでいる」と。彼の愛のエネルギーに応えて、人々はすべての国々において、様々なグループをつくり、正義と平和と正しい関係を要求するだろう。(それはもうすでに始まっている)。間もなくこれらのグループは世界で最も大きな、最も強力な勢力となり、平和と善意の新しい時代を招じ入れるだろう。

再生誕の法則

 再生誕(転生輪廻)の法則の認知と理解の中に、正しい人間関係と人類の問題の解決への鍵がある。これは西洋ではほとんど完全に無視されてきた(しかし、現在それは変わりつつある)。他方、東洋ではそれを従順に受け入れすぎたこと、そしてその意味についての誤解が彼らの努力の停滞をもたらした。マイトレーヤは、われわれが完成への長い進化の旅路を行くに当たって、この法則がいかに関係しているかを示される。そしてこの教理が新しい世界宗教の基調の一つとなるだろう。
 今日、西洋においてこの法則が受け入れられているところでは、ほとんど完全に過去世の記憶の回復に強調が置かれ、そのような活動に伴うあらゆるグラマー(自己眩惑)と惑わしで満ちている。マイトレーヤは、この法の真の働きを、転生している魂の完成への過程として示すだろう。(すべての形態の中に)再生誕してくるのは魂であり、魂自身の特性が三次元の世界における人間生活の中で──肉体的、情緒的、識心的に──完全に実演されるようになるまで、次々とその乗り舟である肉体人間をつくり変えては再生誕してくるのである。
 マイトレーヤは、再生誕の法則と因果の法則(東洋ではカルマの法と呼ぶ)との関係を示すだろう。この関係を正しく理解することによって、人類はすべての活動において無害であることの必要性を知るようになるだろう。魂は、お互い同士の間に、そして根源なる神との間に正しい関係を達成するために、グループ集団で周期的に転生してくる。この事実に必然的に備わる責任と義務が理解され、正しい関係の必要性と実務牲が明らかになるだろう。

イニシエーションの秘法

 今日のマイトレーヤの再臨は、彼がその長をしている霊的ハイアラキーの外的顕現でもある。アトランティス時代以来初めて、ハイアラキーの覚者方とイニシエートたちが世界で公に働かれるのであり、われわれは彼らの本当の姿を知るだろう。
 彼らはいにしえの秘法の管理者であり、その秘法の中に進化の過程についての鍵が含まれており、それは数字や儀式やシンボルの中に隠されている。その秘法はまた、生命そのものの秘密を人類に解き明かし、宇宙のエネルギーをわれわれの手の中に置くであろう聖なる科学への鍵も含む。これらの大昔の秘法が明かされ、魂の事実が証明され、人間の本質的不滅性が知られるだろう。
 イニシエーションの秘義の秘められた過程は今日、何千人ものイニシエートの意識的体験である。来るべき時代には、それは何百万の人々にとっての外的世界での儀式の体験となるだろう。本質的に、イニシエーションは意識の拡大の結果であり、そして高位の価値と霊的理解に対する認識と受信能力を精妙化する結果であり、またそれに導くものである。この意識の拡大を通して、イニシエートはそれまで自分から切り離されていたところの真我(聖なる存在)の様々なレベルと様々な意識の状態に気づくようになる。この体験はイニシエートの放射能力(発光)を増し、さらに大きな奉仕を世に行うことができるようになる。その人はまさに「覚醒し者」となっていくのである。
 マイトレーヤはこのイニシエーションの秘法について教えるだろう。彼は最初の2段階のイニシエーションの司祭として、人類を神の王国、つまり彼が長を務めるハイアラキーへと導かれるだろう。この体験を通して、人間は自分たち自身を本来の神として認識するようになるだろう。

グラマーの消散

 人類の大多数はいまだアトランティス時代の意識を持つ。つまり、意識が情緒界に極化しており、普通の日常の意識の活動は情緒(感情)界にある。そしてその界のグラマー(自己眩惑)の迷路の中で迷っている──ゆえに現在の世界の混乱と問題が存在するのである。ジュワル・クール覚者の言葉を引用すると、「人間が同胞に提供することのできる最大の奉仕は、自分自身で、己の裡なるキリストの力を通して、エネルギーを方向づけ、自分自身をその界(アストラル界)の支配から解放することである」。そして「人間の心(ハート)が活発になる瞬間、その瞬間には感情的な、太陽神経叢(みぞおちチャクラ)の活動は終止する」。人間はハートを通して、マイトレーヤの呼びかけに応える。この愛の様相を刺激することによって、マイトレーヤはすべての者を通して働き、世界を変え、同時に、われわれをグラマーや無知や恐怖から引き上げるのである。彼のエネルギーが授けるより大いなる生命を通して、われわれを光の中へ、神性のまことの顕現へと導くだろう。

(シェア・インターナショナル誌、1982年7月)